あおいほし

<２>

　

　まあ、多分、きっと、また、某《なにがし》かの機密のようで実はそうでないファイルを入手しようとしているのだろう。マサキはそう思った。

　以前、ＶＩＰＰＥＲだったシュウは『王女様の極秘画像流出』なるスレッドから、セレブ雑誌の過去画像の詰め合わせという“タイトルに偽りあり”なファイルを入手していた。「まあ、こんなものでしょうね。本当の流出画像でなくてよかったですよ」などとのたまっていたが、実際のところ、タイトル通りの画像だった場合、それをどういった目的で何に使うつもりであったのかは定かではない。

　シュウの説明によると、書き込みの末尾にあるＩＤは使用端末やＩＰアドレス等で変動するらしい。いわば個人識別番号である。そのＩＤ頼りに、そのスレッドでのシュウの発言を追ってみる。そうしたらまあ出るわ出るわ。“マンさんが喜ぶファイルって聞いたら黙ってられないンゴねえ”だの、“アッネがファンなンゴ”だの、“ニート万歳ンゴ。だからアッネに売るンゴ”だのと、実にスマートにネットスラングを使いこなしている書き込みばかり。

　その前にこれらの文章を読んでその意味するところをスムーズに理解できているマサキにも問題があるのだが、本人はその問題には全く気付いていない。それどころかこうも思ったのだ。ンゴンゴ煩いのは仕方のないこととして諦めるとして、内容が微妙に穏便ではない――と。

　どうやら今回シュウが入手しようとしているファイルは女性が喜ぶものであるらしい。一体、それはどういった類のファイルなのだろう？　普通に考えればイケメン芸能人のプライベート画像などになるが、そんなものをシュウが欲しがるかと聞かれると、いかにシュウとあれやこれやの仲であるマサキであったとしても首を傾げざるを得ない。

　マサキは画面を上にスクロールした。スレッドタイトルか、１の書き込みを見れば内容がわかるだろう。そう思って。そしてその考え通りに、そんなに時間もかからずにその答えを手に入れた。

　

　“風の魔装機神操者のシャワー画像流出！”

　

　マサキはその瞬間、頭を抱えたままその場に座り込んでいた。
　
　
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