@kyoさん20周年おめでとう記念祭
今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。
今回は比較的おとなしく、且つ字数通りに収まるんじゃないでしょうか。思ったよりも話の進行が早いです。もう三分の一は消化しましたよ! っていうか、私にゼオルートは崩せないことがわかり申したッ!!!笑
と、いうことで本文へどうぞ!
今回のリクエスト内容は「ゼオルート×マサキで『一夜の過ち』的な話」となっております。
今回は比較的おとなしく、且つ字数通りに収まるんじゃないでしょうか。思ったよりも話の進行が早いです。もう三分の一は消化しましたよ! っていうか、私にゼオルートは崩せないことがわかり申したッ!!!笑
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<愛しい君へ(2)>
昔のことが思い出されて仕方がなかった。
全く習慣の異なる世界に放り込まれながらも、地上に戻りたいと思ったことのなかったマサキは、それでも稀に郷愁を感じることがあった。そんな時、振り返ればプレシアがいて、ゼオルートがいた……彼らはマサキの為に帰れる場所を用意して、日々任務に追われるマサキの疲れを、さりげなく癒してくれたものだった。
独立心の強いマサキは、彼らのそうした心遣いを煩わしく感じてしまうことの方が多かった。苛立ちを露わにしてまで放って欲しいと訴えたことはなかったものの、他人との同居生活に面倒くささを感じずにいられなかったマサキは、ひとりでよく魔装機を駆って放浪の旅に出たものだった。
今ならわかる。疲れた時に休める場所があるということは、有難いことなのだと。
攫われるように放り込まれた激動の日々。凄惨な光景ばかりが目に付く戦いの中で、マサキは時代の潮流に流されそうになりながらも、精一杯に今を生きている。
敵はこちらの生活リズムなど考慮してはくれない。就寝中だろうが食事中だろうがお構いなし。夜討ち朝駆けも当たり前に戦闘は始まり、生理現象も顧みずに続いたものだ。複数国家が入り乱れた戦場では、様々な思惑が交錯する。昨日の敵は今日の友だったし、今日の友は明日の敵でもあった。
散り散りになった魔装機の仲間たち。その何人かとは、袂を分かたってしまった。
戦場とはそういった場所であるとわかり始めたばかりのマサキにとっては、精神的負荷の多い戦況。ましてやマサキは魔装機神の操者。ラングランの旗印として扱われることも多い最高位の人型戦闘機。敵がマサキを狙わない必要はどこにもなかった。
どこに居ても気の休まる暇のない生活……マサキの神経は擦り減り、精神は疲弊しきっていた。
だから尚更に、あの温かかった日々が、色鮮やかに思い出されて仕方がなくなるのだろう。マサキは思い出を懐かしく噛み締めながら、葬送の列を歩いた。
やがて間遠に見えて来る神殿の墓所に続く巨大な門。数多くの戦士たちが眠るゼノサキス家の墓は、その巨大な門の向こう側に広がる墓所の一角にある。もう少しだ……マサキは傘を握り直し、プレシアを庇うように歩を進めた。
ふ、と脳裏が焦げ付くような感触があった。
何故だろう。思い出してはならないような……嫌な予感にざわめき出す心を、マサキはどうにも静めることが出来ないまま、暫く。不意に浮かんできた記憶に、嗚呼――、と溜息を洩らした。
「じゃあ、パパ。いってきます。晩御飯と明日の朝御飯は冷蔵庫の中にあるから」
「じゃあ、パパ。いってきます。晩御飯と明日の朝御飯は冷蔵庫の中にあるから」
友人の家に泊まりに行くのだと云っていたプレシアが、家事を全て済ませてゼオルートと住まう館を出て行ったのは午前中のことだった。「お泊り会か。女子は好きだよな、そういうの」玄関先までの見送りを終えてリビングに戻って来たマサキはソファに転がり込んで、誰にともなく呟く。
手早く家事を片付けて友人宅に向かいたいプレシアにマサキが起こされたのは、まだ朝も迎えきらぬ時刻。
寝足りない――そう思いながら軽く目を伏せる。「洗濯を干すのを手伝えだの床を磨くのを手伝えだの騒々しかったったらありゃしねえ……流石はあんたの娘だよ……」向かいのソファに腰掛けるべく、リビングに続けて姿を現わしたゼオルートにマサキが皮肉めいた台詞を吐いてみせれば、そこはひとり娘。ましてや先立たれた妻の忘れ形見だけあって、ゼオルートはマサキの皮肉を意にも介さず。見事に相好を崩してみせたものだ。
「歳を取るごとに妻に似てくるんですよ。しっかりしたところなんかが特にね」
「あー、はいはい。しっかりもので気立てが良くて綺麗な奥さんな。もう聞き飽きたって……」
「嫉妬してるんですか、マサキ?」
「何でだよ! あんたの突然に出てくるその手の冗談、あんまり洒落になってないんだよ!」
スキンシップも過剰なゼオルートはプライベートゾーンの認識が狭く、やたら近くに寄ってきては何かれ理由を付けてマサキの身体に触れたものだった。肩に手を置いたり、頭を撫でて見せたり、剣の持ち方を教えるといって手を握ってきたり……それは決していやらしさからくるものではなかっただろうけれども、マサキを揶揄《からか》うことに楽しみを見出している魔装機操者の女性陣からは、恰好の餌を与えられているように映るものらしい。「ゼオルート師匠も独り身が長いからねえ……」などとシモーヌやベッキーに云われる始末!
これでマサキがゼオルートの吐くこの手の台詞を警戒しない筈がない。
だというのに、ゼオルートときたら呑気なもの。「云いたい人には云わせておけばいいのですよ」と、さらりとマサキの抗議を右から左へと。綺麗に受け流して見せると、言葉を継いだ。
「子供というものは時に親とですら愛情の奪い合いをしてみせますからね。プレシアも今はしっかりしてしまいましたが、『パパ、あたし将来パパと結婚する!』なんて云ってた時期もあったぐらいですよ」
「今は『パパみたいな人とだけは絶対に結婚しない』だもんな」
「何でですかね。自分で云うのもなんですが、身の回りのことはひと通りこなせますし、そこまで毛嫌いされるほどではないと思うんですが」
「まあ、女の子ってのはそういう時期あるしな。何だっけ? この間は歯磨きしながら新聞を読むな、だっけ。それで娘から嫌われちまったら、世の中の父親なんてやってらんねえよなあ」
「だから息子には嫌われたくないんですよ、マサキ」
穏やかに微笑みながらマサキを見詰めていた表情が、次の瞬間、不意に引き締まった。
朝食を終えてひと段落ついた時刻。いつもと同じスケジュールをゼオルートがこなすつもりならそろそろに違いない。マサキは身構えた。「丁度いい頃合いです。稽古の時間にしましょうか」ほら、と思いながら重い腰を上げる。
――プレシアがいない以外は、何事もなく過ぎて行った一日だった……。
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――プレシアがいない以外は、何事もなく過ぎて行った一日だった……。
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