@kyoさん20周年おめでとう記念祭
pixivでやろうと思っていたのですが、あまりにもお待たせしてしまったので、先ずはいつも通りこちらで更新をかけたいと思います。5000字から10000字という字数制限の関係上、のんびり更新&展開ですが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
リクエスト内容は「シュウマサ前提のフィルロード×マサキ」です。
では本文へどうぞお進みください。
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<神のまにまに(1)>
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精霊界。
ラ・ギアスの万物に宿りし精霊たちの世界。幻想的で原始的な世界に生きる彼らは、その限られた世界より干渉を行い、地底世界に恵みを与えている。
神にも等しい力を有する彼らにとって、人間とは世界を構成する一要素――ちっぽけな存在でしかない。ましてやその一生など、瞬きの間に過ぎゆくもの。だから、ではないだろうが、精霊界と人間界では時間の流れが異なっていた。
終わらない生を与えられ、悠久の時を生きる精霊たちからすれば、時間とは意味の無いものだ。
膨大な量の記憶を所持している彼らは、だからこそ時間という軸に重きを置かない次元に生きているのだろう。そういった彼らの認識が精霊世界に影響を与えているのか、それともそれが高次元世界のスタンダードであるのか、練金学の英知を結集しても明らかには出来ていなかったが、精霊世界の時間は人間世界の時間よりも早いスピードで過ぎていっているようだ、というこどだけはわかっていた。
その精霊界にマサキは居た。
いつも通りの|風の魔装機神《サイバスター》単身での転移作業。ほんのちょっとした用事を済ませに地上に行くのに、マサキが使い慣れた情報処理機構《システム》を利用しようと思ったのは当然の成り行きだった。
転送システムの起動コマンドを打ち込むだけで、後はサイバスターのメインコンピューターが全てを処理してくれる。そこにヒューマンエラーなど入り込む余地もない。仮にそもそもの入力コマンドがエラーを起こしていたとしても、そこは長く利用されているシステムだけあって、フォローアップは万全だ。起こりうる全ての事態に対処できるだけの分岐が組まれた鉄壁のプログラムは、エラーという言葉を知らないかのようにマサキに快適な操作を提供してくれていた。
それが不測の事態を招いてしまったとなれば、考えられる問題はひとつ。
風の精霊サイフィス。
彼女は時に気紛れに、サイバスターを使ってマサキに干渉をしてくるのだ。
それは、それだけマサキが彼女と気が合うことの証左でもあったし、それだけ彼女がマサキを気に入っているということの証左でもあった。
口さがない仲間たちは、そんなサイフィスの慎まない振る舞いをこうも評したものだ。過干渉――。とはいえ、マサキもそれは正しい評価であると思っている。それだけ他の魔装機神の操者たちと守護精霊たちの関係はドライなものであったからだ。
ただ見守り、共鳴はせよ、干渉はしない。
自分に対する|風の精霊《サイフィス》の関わり方は明らかに異常だ……マサキはその事実に気付かないほど胡乱ではない。だからこそ、マサキにはその過剰な干渉が気に入らなく感じることもあるのだと、彼女はわかっているのだろうか……自らの望む効果を得る為に勝手にサイバスターを操る。しかもその目的は後になってからでないとわからないときたものだ。
どうやら今回の彼女もなにがしかの目論見の為にサイバスターを操り、マサキを精霊界に招いたようだ。
「おい、サイフィス! 今度は何だ!」
まるで夜の静寂《しじま》のような世界。時折、オオ……ン、と精霊が嘶《いなな》く声が響いてくる。
巨大植物が点在し、鉱石が柱となっている世界には、今のところマサキたちしか確認出来る存在がない。無論、サイフィスからの反応もない。マサキは舌打ちをすると、操縦席に深く身体を埋めた。
「どうするの、マサキ?」
「長居をしていい場所じゃニャいんだニャ」
こうなってしまった以上、彼女の望みを果たすしかない。しかしそれは何だ?……マサキは変わり映えのしない薄暗い世界を眺めた。
時折、光点がふわりと舞う。
光らしい光のない世界で唯一の光源でもある菌糸類の胞子。その淡い光に照らし出された先に、「おや、あれは……」マサキはそこに在るものの形を捉えようと目を凝らした。
輪郭も不確かな人型。恐らくは人間の魂なのだろう。いつ姿を現したものか、その人型は少し離れた位置にてサイバスターを見上げるように佇んでいる。
万物に宿る魂が精霊であるというのであれば、人間の魂もまた精霊であるのだろう。
精霊界に召し上げられた魂の中には、マサキが知っている人間も数多く存在している。アルザール……フェイルロード……ゼオルート……あの人型はそうした既知の人物の魂であるのだろうか? でなければ、どうしてこんなにも長くこちらを窺っているものか……マサキは更に目を凝らしてみるものの、燐光はその姿を判然とさせないまま。どうやらこの距離では誰の魂であるかまでは判別出来なさそうだ。マサキは諦めて次の行動を取ることにした。
「こっちに向かっては来ねえな」
「サイバスターが大きすぎるからじゃニャいの? 踏み潰されニャいようにしてるとか」
「だとしたら俺が会いに行くべきか……」
「だけど、向こうがこっちに用があると決まった訳じゃニャいんだニャ」
「かといっていつまでもここでじっとしてる訳にもいかねえだろ」
マサキは操縦席から身体を起こし、肘当てに掛けてあったジャケットに袖を通した。そしてブーツを履き直す。そのついでに足元に置いておいた一振りの剣を手に取った。
人間の理解の外側にある世界では非常識こそ常識だ。
何が起こってもおかしくない世界。これまでマサキが立ち入ったことがあるのは精霊界の入り口まで。その奥に何が眠っているかなど知る由もない。もしかするとそこには、この剣だけでは太刀打ち出来ない脅威が存在しているかも知れないのだ。
精霊界とは生身の身体を持つ人間にとっては、未知が広がる世界である。
それでも行かねば。マサキは剣を腰に下げる。
サイバスターの操縦権を取り戻す為には、風の精霊サイフィスの望みを叶えてやる必要がある。沈黙を貫いている彼女が、マサキに何をどうさせたいのかはわからないままだったが、タイミング良くこちらに関心を向けている存在が居るのだ。それがサイフィスの差し金でないと、どうして云えたものだろう。
マサキが自身で口にした通り、ここでじっとしていても事態は進展しないのだ。
ずっしりとした重み。数多の苦難を救ってくれた大事な相棒であるオリハルコン製の剣が、馴染み深くマサキの腰に収まる。
「ハッチを開け!」二匹の使い魔たちにマサキは命じた。
「外は何が起こるかわからねえ。お前らはここで留守番してろ。もしサイフィスがコンタクトを取ってくることがあったら、お前の気紛れに付き合うのにはもううんざりだって伝えておいてくれ」
そしてそう言い置くと、ハッチからサイバスターの外。原始的で幻想的な世界にマサキはひとり降り立った。
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