@kyoさん20周年おめでとう記念祭
リクエスト内容は「シュウマサ前提のフィルロード×マサキ」となっております。
のんびり話を進め過ぎて、なんとこの時点で4000字ぐらい! 残り6000字でこの話が終わるかわかりませんが、エロだけはホントに頑張るので許してください!!!! では本文へどうぞ!
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<神のまにまに(2)>
囁かれた瞬間、マサキの鼓動が一気に高鳴ったかと思うと、全身が熱を帯びた。
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サイバスターから眼下に見下ろしている分には平坦に映った大地は、いざ足を付けてみると思ったよりも起伏に富んだ地形をしていた。
底に厚みのあるブーツを履いているからこそ、足にダメージを受けずに歩いていられるが、石も多い。なだらかな斜面を上っては下りを繰り返しながら、マサキは一歩々々慎重に前に進んで行った。
燐光を発している人影が徐々にその輪郭を色濃くする。見覚えのあるシルエット……足元から立ち上る胞子が、不意にふわりと一斉に舞った。その光球に照らし出された彼の人の姿を目に映し出したマサキは口元を引き締め、その前に立った。
フェイルロード=グラン=ビルセイア。
命を削ってラングランを平定に導くべく戦った彼は、生前のいでたちそのままに。優美という言葉が良く似合う佇まいでマサキが自らの目の前に立つのを待っていた。
「殿下、どうしてここに」
「久しぶりだね、マサキ」風がその髪を払った。「私がいつまでも君たちにばかり気を向けているのがお気に召さなかったのだろう。呼び立てるようなことになってしまってすまなかった」
「俺をここに招いたのは殿下なのか?」
「まさか、私にそこまでの力はないよ。私が頼み込んだところで、サイフィスが云うことを聞いてくれる筈もなし。私にできることはこの世界から君たちを見守ることだけだ」
精霊界からは万物に命が宿る世界の全てが見通せるのだという。それがどういった視点でどう映って見えるのかまでは、人の身たるマサキにはわからない。ただ、意識せずとも視えてしまうのだと、いつかマサキが精霊界に足を運ぶこととなったときに、サイフィスはそう答えてくれたものだった。
それはどうやらフェイルロードも同様なようだ。
彼はこの幻想的なれど原始的な世界で、今も尚、離れた世界で戦い続けるマサキたちを気にかけ続けてくれている――マサキにはその事実が、やけに心苦しく感じられた。
ただ一度の過ち。ラングランの内乱が治まろうとしていたあの瞬間に、フェイルロードが道を違《たが》えることがなければ、今でもマサキたちは彼とともに在れただろう。マサキたちがラングランに召喚されたときから、その成長を見守り続けてくれた彼と。いや、それよりも彼の命が尽きる方が先だったか……。
マサキはつい物思いに耽りそうになる自らの中から、思い煩う気持ちを追い出すように頭《こうべ》を振った。
「どうやらサイフィスが気紛れにも余計な気を回してくれたようでね。と、云っても、私が君に何かを伝えたいといったことではなかったのだが」
「なんだろうなあ、あの女。本当にいつも気紛れにコトを起こしやがる」
「まあ、折角来たんだ。少し精霊界を覗いて行かないか。ラングランのようなテーマ―パークとは行かないが、胞子の谷のような自然が織り成す素晴らしい景観なら幾らでもある。いかにサイフィスといえども、君をそんなに長く足止めすることもないだろう。息抜き気分で付いてくるといい」
云ってマサキに背中を向けると、フェイルロードは来《こ》し方へと足を進め出した。
残してゆくサイバスターと二匹の使い魔たちが気がかりではあったが、ここは精霊界。魔装機に宿る精霊たちのお膝元だ。サイフィスも自ら招いておいて、マサキたちをピンチに陥らせるような真似もすまい。そう自分を納得させて、マサキはフェイルロードの背中を追いかける。
「皆は元気でやっているかい?」
「ああ、相変わらずだぜ。セニアはお転婆のままだし、モニカは……まあ、少しはしっかりしたんじゃないか。テリウスは大分、神経が図太くなった気がするよ。魔装機の連中もいつも通りだしな」
「それならよかった。君たちが元気で恙なく暮らしていてくれれば、私はそれだけでいい」
他愛ない言葉を交わしながら道なき道をゆくこと暫く。高く生い茂った巨大な蔦のような植物が薄暗く辺りを包む土地に出た。
既に胞子は姿を消し、周囲は闇に包まれつつあった。けれどもどこかに光源があるのか、仄かな明かりが行《ゆ》きし方に淡く広がっている。「もう少しだよ」フェイルロードの目的はあの明かりのある場所なのだろうか? マサキは再び足を進め続けるフェイルロードの背中を追った。
長く精霊界に身を置いているからか、それとも魂だけの存在となったからか。フェイルロードは荒れがちな道であるにも関わらず疲れ知らずといった風で、歩き慣れない道を歩かされているマサキでは付いていくのがやっとだった。
それでも徐々に光は明るさを増していく。
もう少しだ。マサキがそう思った直後、その光が眩く顔を照ら出したかと思うと、その眼前の景色が広がりを見せた。
そこに在ったのは自ら光を放つ紫色の薔薇。巨大な蔦が覆い絡まり洞窟を作っていたその奥まった行き当たり。紫の薔薇は所狭しと群生し、光の洪水でもってマサキたちを迎え入れた。
「あんたやっぱり」マサキは口元を緩ませた。「ロマンチストなんだな」
「そうかな。どうせ君に見せるのだったら、派手なものがいいと思っただけなのだがね」
「この蔦か? これも凄いけどな。まるで洞窟みたいに道を作ってやがる」
「突き当りの空間に、こんな世界が広がっているとは思わなかっただろう?」
「確かに」
自ら光を放つ紫の薔薇。きっと魔装機操者の女性陣が目にしたら、声を上げて喜ぶに違いない。
「テュッティやプレシアに見せてやりたかったな」
「ここでしか生きられない植物だ。外の世界に出せば、急速に萎れてしまうだろう。だから、いずれ彼女らと来た時にでも見せてやるといい。きっと喜んでくれるに違いない」
「その頃には道を忘れちまってるよ。そもそもここまで目印らしい目印なんてなかったじゃねえか」
「そうでなくとも君は方向音痴だしね」ふふ、とフェイルロードは笑った。「果たして、案内なしにここまで来れるかどうか……」
そして彼はマサキにもっと近くでよく見るようにと、薔薇の側近くに立つ自らの元へと手招いてみせた。何を疑うでもなく、招かれるがまま。マサキはフェイルロードの隣に立ち、輝ける紫の薔薇を凝視《みつ》めた。
高貴で、優美で、冷ややかさを感じさせる紫の薔薇。
まるで誰かのようだ。
紫水晶《アメジスト》のように硬質的な瞳と、ビクスドールのように色白き肌を持つ男……マサキがその人物を脳裏に思い浮かべたその瞬間だった。ふとフェイルロードの手がマサキの肩に置かれた。
さりげないスキンシップ。けれども何故か訝しい。マサキは怪訝な表情で、「殿下?」と、フェイルロードを振り仰いだ。
その双眸《そうぼう》が暗い光を孕んでいるように見えたのは気の所為だったのか……。
けれどもそれも束の間のこと。フェイルロードは何事もなかったかのように微笑んでみせると、マサキ、とその名を呼び、「もう忘れてしまったのかな、君は」意味深に言葉を吐いた。
「忘れたって、何を?」
「この光景をだよ」
そしてフェイルロードは体を屈めると、マサキの耳元に口を寄せて、
――夜の帳の向こう側で。
――夜の帳の向こう側で。
囁かれた瞬間、マサキの鼓動が一気に高鳴ったかと思うと、全身が熱を帯びた。
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