ついに重い腰を上げました。
シリーズ最新話、四月の魔装機操者たちです。ゲーム内では精霊祭がいつの時期に行われているのか明示されていませんが、それをいいことにこの季節にすることにしました。なんとなく、春な気がしてるんですよね。
今回は初心に返ってさっくり終わらせる予定です。
シリーズ最新話、四月の魔装機操者たちです。ゲーム内では精霊祭がいつの時期に行われているのか明示されていませんが、それをいいことにこの季節にすることにしました。なんとなく、春な気がしてるんですよね。
今回は初心に返ってさっくり終わらせる予定です。
<爛漫の春に賑やかな狂想曲を>
ゼフォーラ姉妹の足取り探索を打ち切ったとの報せがマサキの許に届いたのは、ザルダバでの悲劇から半月が経過した日のことだった。
執念深くラングラン西方を中心に調査を続けていたファングも王都に呼び戻されたようだ。生真面目にもマサキの自宅に立ち寄って、調査の失敗を詫びていった男に、マサキは労いの言葉をかけてやることしか出来なかった。何せ、ゼフォーラ姉妹は正攻法が通じない特殊能力の持ち主である。自身の魂を好きに他人の身体に乗り移らせることが出来る彼女らが、追手の存在を認識して尚、同じ人間に取り憑いてもいまい。そうである以上、マサキたちに出来るのは、せめて、彼女らの歪んだ正義が他人を傷付けることがないように――と、願うことだけだ。
Ⅰ-Ⅴ
祝祭行われし日に、■■の雨
セニアが|飛躍論理演算機《デュカキス》に分析させたところによれば、次の予言は高い確率で王都が舞台になるだろうとのことだった。どういった被害が及ぶのかはまだ計算が済んでいないようだが、これまでの被害状況からして死人が出ずに終われる可能性は低そうだった。そう、ラングランは一週間後に精霊祭を控えていた。国民の眼前に国王が姿を現し、精霊との交信を行う重要な祭り。国をあげての祝祭は、例年、王都に数多くの観光客を招き入れている。この場をどうして邪神教団が狙わない筈があるだろうか?
Ⅰ-Ⅴ
祝祭行われし日に、■■の雨
セニアが|飛躍論理演算機《デュカキス》に分析させたところによれば、次の予言は高い確率で王都が舞台になるだろうとのことだった。どういった被害が及ぶのかはまだ計算が済んでいないようだが、これまでの被害状況からして死人が出ずに終われる可能性は低そうだった。そう、ラングランは一週間後に精霊祭を控えていた。国民の眼前に国王が姿を現し、精霊との交信を行う重要な祭り。国をあげての祝祭は、例年、王都に数多くの観光客を招き入れている。この場をどうして邪神教団が狙わない筈があるだろうか?
調和の結界の守り人である国王に何かが起きては、さしもの大国ラングランもひとたまりもない。守りを薄くした国家がどうなるのか。その結末を、マサキたちは忘れていないのだ。心優しく気高き王子を喪ったあの内乱は、今でもマサキたちの心に少なからぬ傷を残している。
だからこそ、同じ轍を踏んではならない。
セニアに限らず、ラングラン政府や軍部も、今回の予言にはナイーブになっているようで、王立軍の半分をラングラン州に集結させ、有事に備えていると聞く。特に、ファーガートン炎舞劇団の一件で大黒星を喫している軍部の気合の入りようは凄まじく、王都には王立軍の兵士が溢れ返っていた。これではさぞや過ごし難かろうとマサキが顔馴染みの商店の店主に話を訊けば、彼らが怪しい怪しくないに限らず職務質問を行うものだから、非常に窮屈な思いをしているのだという。
「ちょっとそこまでと思っても、兵士に色々尋ねられるものですから、たまったもんじゃないですよ。何とかなりませんかね、ランドール様」
石頭な軍部は、こうと思い込んだら一直線な面がある。とはいえ、これも恙なく精霊祭を終える為だ。今、このタイミングで国の柱を喪う訳にはいかない。マサキは店主に詫びの言葉を述べてから情報局に向かった。
道中で兵士に呼び止められること三度。彼らにとって、風の魔装機神たるサイバスターが操者でも、警戒すべき人物の例外ではないようだ。面倒臭さは感じたが、マサキはその全てに協力を惜しまなかった。備えあれば憂いなし。そのぐらい厳重な警備にしておいた方が、今のマサキにとっては安心出来る。ファーガートン炎舞劇団の凱旋公園での失敗は、マサキの心にも暗い影を落としていた。
「あら、来たのね、マサキ」
「凄い警備状況だな。兵士の方が、市民より人数が多いんじゃないか」
セニアが陣取る執務室に辿り着いたマサキは、今目にしてきたばかりの光景をセニアに伝えた。とはいえ、セニアもまた軍部に横槍を入れる気はないようだ。「あと、一週間だしねえ」と、寛容にも彼らの暴走を許容する言葉を吐く。
「まあ、仕方ねえよな。ここまで被害なく終わった予言はひとつもねえし」
「その通りよ。後手に回り過ぎている以上、警備を厳格にするのは安全を買うという意味で必要なコストだわ」
取り巻くホログラフィックディスプレイの中央に、今日も今日とて多忙そうなセニアが陣取っている。顔を明るく照らし出すディスプレイの明かり。陰影を濃くした顔の中央で、マサキを窺うように深い藍色の瞳が動いた。
「と、いうか、あなた何しに来たの? 必要なことは全て伝えたと思っていたのだけど」
「王都の警備状況を見るついでに、こっちがどう動くのか訊いておこうと思ったんだよ」
「あんまり早く伝えたくないのよね。内通者がいないとも限らないし」
「警備計画はお前の胸の内だけってか。それって危なくねえか。お前が狙われたら終わりだぞ」
「他に奴らの裏を掻く方法も思い付かないしねえ」
それだけの気合を入れねば、事態を決着させられないと見込んだのだろう。豪胆なる情報局の女傑は、自身の命さえも囮にしてみせるつもりでいるようだ。ならば、これ以上は余計な口を挟みもしまい。マサキは手土産に持たされたプレシア自作の焼き菓子をセニアに渡した。「多忙そうだからって、心配してたぞ」そう伝えると、微かにその口元が緩む。
「義妹はこんなに出来がいいのにねえ」
「何だよ、それ。まるで俺の出来が悪いように云いやがる」
「あなた、あたしに手土産を持ってきたこと、ないじゃないの」
云われてみればその通りである。言葉を詰まらせたマサキは頭を掻いた。
いつもセニアに気を遣うのはマサキ以外の操者たちだ。プレシア然り、テュッティ然り、シモーヌ然り、ベッキー然り……勿論、全員が全員という訳ではなかったが、あのシュウですらバレンタインにかこつけてセニアに礼の品を届けているのである。それもこれも、彼女が情報局の女傑として大きな実権を握っているからだ。各部署との調整役として、そして議会や政府との折衷役として、情報局に詰め切りなセニア。マサキは近頃、彼女が外に出ているのを見たことがない。それは彼女が、神聖ラングラン帝国に欠かざる要人に上り詰めたことを意味していた。
「とにかく、前日には必ず伝えるから、それまでは待機をしてくれていればいいわよ。変にあちこちうろついたりしないでね。敵は裏を掻くのが好きみたいだから、あたしが連絡をしたら直ぐに駆け付けられる距離にいること。いい?」
「ああ、わかった」
マサキは頷いて情報局を出た。
そして何処にも寄ることなく真っ直ぐにゼオルートの館に戻った。
玄関扉の奥から漂ってくる甘い香り。プレシアのお菓子作りはまだ続いているようだ。ここ数か月、予言騒動でばたついていた義兄が腰を据えて家にいるのが嬉しくて堪らないのだろう。連日、胃袋を掴もうとするかの如く、菓子に料理と手をかけ続けている。
どれも唸るほどに美味いのだが、ハイカロリーなのが玉に瑕だ。お陰でマサキは嫌でもトレーニングに励まないとならなくなってしまった。今日も頑張らねば、肝心なところで身体が重くて思うように動かないという事態に陥ってしまう。そんなことを考えながら玄関扉を開く。
「お帰り、マサキ」
サイバスターの駆動音で帰宅を察したのだろう。扉の向こう側でリューネが待ち構えている。
シュウから貰った指輪の件で一時期はマサキに対する当たりが強かった彼女だったが、マサキが指輪を外す気配を見せなかったからか。それについては見ない振りをすることに決めたようだ。以前と同じく無邪気に接してくるリューネに、シュウとの関係をどうするつもりもないマサキとしては心苦しさを感じもしたが、かといって険悪なままでいい筈もない。マサキとリューネは戦場で命を預け合う仲間でもあるのだ。関係が良好に保てるのであれば、それに越したことはなかった。
「何だ、リューネ。お前来てたのか」
「へへーん。ヴァルシオーネRを隠しておいた甲斐があった。驚いたでしょ」
「何だ、それ。俺を驚かせてどうなるってんだ」
「あたしがちょっと嬉しいだけ」
「お前、変な奴だな」マサキはエントランスを上がって、ダイニングに向かった。「他に誰か来てるのか?」
「ううん。今はあたしだけ。でも、後からミオとかも来るよ」
リューネと連れ立ってダイニングに入ると、テーブルの上にはプレシアが作った料理が並んでいた。豚の丸焼きに鶏のから揚げ、カルパッチョ、グリーンサラダ、ミネストローネときて、マサキが家を出る前から作り続けていたデザート類まで。ケーキにクッキー、マドレーヌ、ババロア……まるでこれからパーティでも始まるのではないと思うほどの料理の量に、成程な。リューネの返事を聞いたマサキは思った。
「ねえ、マサキ。明日って暇?」
「明日? 暇は暇だがな。王都が厳戒態勢だろ。遠出は出来ないぞ」
「プレシアと話をしてたのよ。最近、予言騒動で気が詰まる生活してたでしょ。だから皆でピクニックなんてどうかなって」
「へえ、いいな」
確かに、バレンタイン以降のマサキは東部だ西部だで、仲間とゆっくり余暇を過ごせずにいた。それだけではない。プレシアにも寂しい思いをさせてしまっている。「なら、明日は久しぶりの息抜きにピクニックと洒落込むか」キッチンを覗き込みながらそう口にすれば、喜んだようだ。リューネとプレシアが同時に「やった」と、声を上げた。
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