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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

狡さ聡さも恋のうち(終)
この話が何であるかという話をしたいと思うんですが、白河の心遣いのひとつでもある「マサキに女性ふたりの気持ちを気付かせようとするムーブ」は彼の気持ちの表れなんじゃないかという深読みです。

私には!
何をしても!
白河がマサキを!
好きなようにしか見えないッ!

とまあ腐り目を披露したいという話でした。まだまだSSのストックはあるのですが、これやってると永遠に終わらなさそうでちょっと怖くなってきました。自分のことだけど私テラ基地外wwww


<狡さ聡さも恋のうち>

(三)

 彼女の台詞にシュウは|微笑《わら》った。
 そもそもこれ見よがしにマサキと腕を組んで歩いていたのはミオの側だ。それを良くないと云われても、シュウとしては見たままに対する当然の感想を吐いただけである。だのに彼女は憤慨してみせた。シュウの反応が間違っていないにも関わらず。
 実に面白い。
 マサキの周りにはシュウの興味を喚起する|標本《サンプル》に溢れている。感情豊かな地上人たち。それはラ・ギアス人がとうに失ってしまった人間性の表れだ。
 だからシュウは彼らから目を離せない。ミオの言葉に足を止めてしまったのも、彼女が次にどういった反応をみせるのかを見たくなってしまったからだ。
「何が良くないというのです」
「良くないでしょ。ハラスメントだよ、それ」
 ハラスメント。と、思いがけないミオの指摘に、シュウは口の中でその言葉を繰り返した。
 決して嫌がらせのつもりで吐いた言葉ではなかった。むしろマサキ=アンドーという人間の人となりを知っていれば、彼に好意を寄せる女性が多かろうと、それは当然のことと認められるようになる。
 それだけ彼の精神は逞しく、雄々しく、そして気高い。
 それはまさしく彼が乗機する風の魔装機神の在り方そのままだ。ありきたりな、しかし数多くの偉人たちが叶えられなかった理想の達成に、純情にも己を賭して挑む彼。それにどうして惹かれずにいられようか!
 輝けるラングランの旗印はサイバスターだけに限らない。剣聖ランドール。英雄に祀り上げられた彼は、その立場に相応しい魂を磨き上げている。
「しかしあなたがマサキと腕を組んで歩いていたのは事実でしょう」
「だからって直ぐにデートだって結び付けるの良くない!」
「しかしですよ、ミオ。一般的にはそれをデートと云うのではありませんか」
「しかしももしももないの!」
 云うなりに目の前に指を突き出してきたミオに、シュウは腰を引いた。
 彼らの言葉はいつも感情的で直感的だ。何を云いたいのかが焦点が判然としない。だが、その中に時として金塊以上の真理が潜んでいたりするのであるから侮れない。
 聞き逃せば損をするのはシュウの側でもあるのだろう。仕様のないことだ。シュウは続くミオの言葉を待つことにした。
「ねえ、シュウ。シュウってマサキの恋愛に絡む話になるとおかしくない?」
「おかしい――とは?」
「だってそうでしょ。他の話になるとちゃんと相手を気遣った言葉が吐けるのに、何でかそれだけマサキの気持ちなんてどうでもいいみたいな言葉を押し付けていくじゃない。それって何? そんなにマサキに彼女が出来るのが怖いの?」
 怖い? シュウはミオの指摘の意味を即時にして悟った。そして激しく動揺した。
 シュウはマサキがいずれ真っ当な家庭を築いていくものだと思い込んでいた。その相手が誰であるかはどうでもよかった。救世の英雄に相応しい女性であれば誰でも。
 彼には輝ける栄光こそが相応しい。
 だからシュウは折に触れて、マサキに誰を選ぶのかとせっつくような真似をしてしまっていた。
 それをミオは、シュウの恐怖心からくるものであると指摘してきた。それは彼女にとってシュウの態度はそう見えるものであるからに他ならなかった。それにシュウは心当たりがあった。
 前もって覚悟を決めておくことで、やがて訪れ来る未来に対する感情の揺れを少なく済ませようとしている。
 シュウは先んじて未来を予測してしまう癖があった。その方が予め心構えがしておける。対処策も講じることが出来るだろう。だからこそシュウは、滅多なことでは心を揺り動かされることがない。
 確かに。シュウはミオに頷きかけて、その言葉を喉奥に飲み込んだ。
 努めて他人に対して平等であろうとしているシュウは、マサキに対してだけはそうでいられなくなる自分を知っている。その現実を、シュウはミオによって改めて掘り起こされた気がした。
 きっと、それこそが恋だとミオは云うつもりであるのだろう。シュウは黙ってミオの深き藍色の瞳を|凝《じ》っと見詰めた。迷いを知らない瞳。マサキの周りに集まる仲間は、皆が似たような力強い眼差しをしている。
「ってコトで、あとは二人で話をしてねっ! あたしはひとりで苺パフェ食べてくるからっ!」
「あ、おい。ミオ!」
 それまでひとり、シュウとミオの会話に取り残された様子でいたマサキが、弾かれたように声を上げる。
 だが、ミオは振り返ることなくそのまま雑踏へと姿を消してゆく。困った女性だ。小さく溜息を吐いたシュウは、所在なげに立ち尽くしているマサキを振り返った。
「どういう話なんだよ、今のは」
「あなたを私が気に入っているという話ですよ」
「はあ?」意味がわからないといった顔のマサキに、「取り敢えず、そこの店でお茶でもしませんか」彼女の気遣いを無駄にするのもと、シュウは近場の喫茶店を手で指し示しながら誘いの言葉を投げかけた。




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