忍者ブログ

あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Much Ado About Love!(1)
らぶらぶしたエロいシュウマサが読みたい!!!!

しかし私には書けない!!!!

書けないのならばチャレンジすればいいんじゃない???と、いうある種の迷走状態に陥っている@kyoさんがお送りするいちゃらぶエロシュウマサです。尚、本当にそうなるかは不明。

拍手コメ有難うございます。感謝感激雨あられにございます!今週の私は頑張りますよー!


<Much Ado About Love!>

 それまで沈黙を保っていた専用通信回線《ホットライン》に、恐らく初めてとなる入電が生じた瞬間、シュウは期待に胸を高鳴らせずにいられなかった。
 ――あの子たち、ラ・ギアスの世界常識を軽く考えているところがあるでしょう?……だから先に云っておこうと思って……
 有事が起きた際に少しでも早く対応出来ればと構築した専用通信回線《ホットライン》ではあったが、いざ実際に稼働させてみると、思ったほど使い道はないらしい。
 それもその筈。シュウが有している情報網《ネットワーク》は、ラ・ギアス全土の政治的組織のみならず、アンダーグラウンドな違法組織までも網羅していた。セキュリティクリアランスをクリア出来るだけのプログラムを組むのには時間と手間がかかったが、正確で鮮度の高い有益な情報を収集する自動化システムは、高度な人工知能を搭載しているだけあって、新たな情報網の枝葉の開拓も任せきりにすることが可能だ。
 先んじて不穏な事態の芽を摘んでしまえば、大きな問題は起こり難くなる。収集された情報より、細かな問題の対処に当たる日々。沈黙を保ち続けた専用通信回線《ホットライン》は、シュウのそうした日々の努力の賜物でもあった。
 だからこそ、シュウは興奮せずにいられなかったのだ。自身が苦心して構築した情報網《ネットワーク》を擦り抜けるような問題とは、果たしてどういったものであるのだろうか――けれども期待は容易く裏切られた。シュウはウエンディの話に静かに耳を傾けつつも、その平和な内容に、話が耳を素通りしていくのを止められずにいた。
 デスクの上には書きかけの論文が散らばっている。
 佳境を迎えた論文執筆作業。空いた時間を見付けて取り組んできた研究がもうじき世に出る……四分の三ほど書き上がった論文に、このまま夜を徹して完成に漕ぎ着けようと思った矢先の入電だった。
「わかりました、ウエンディ。対応策を考えておきますよ」
 彼女との通信を終えたシュウは、即座にデスクに向かうと論文の続きに取り掛かかり始めた。複層ディスプレイにデータと資料を映し出し、それらを細かくチェックしながら文章を練り込んでゆく。デスクに向かい直して五分、いや三分も経つ頃には、その脳内からはウエンディとの会話の殆どがすっかり忘却されてしまっていた。
 そう、間近に迫ったひとつの危機。ウエンディがわざわざ専用回線《ホットライン》を使ってまで忠告してくれた問題が、どういった内容のものであったのか。シュウにとってはそれよりも、完成が迫った論文の方が重要であったのだ。

 ※ ※ ※

 集中していたからか、家に闖入者がやってきたのに気付けずにいたようだ。論文執筆を再開してから一時間ほど。背後で開いた扉に、シュウは振り返らずにいた。
 比類なき気《プラーナ》の持ち主は、気配だけで誰であるかをシュウに正確に覚らせる。マサキ=アンドー。風の魔装機神の操者である彼は、どうやら無言で室内に足を踏み入れてきたようだ。程なくして背中に重みを感じたかと思うと、髪に顔を埋めているような感触が伝わってきた。
 そう云えば、先程の専用通信回線《ホットライン》でウエンディが彼について何かを云っていたが――と思いながら、「どうしました」と、デスクに向かったままマサキに声をかければ、様子がおかしいのはそういった気分であったかららしい。返事代わりとシュウの首筋を吸ってきたマサキに、「半日ほど待ちなさい。論文が書き上がったら相手をしますよ」そう告げて、シュウは論文の続きを用紙に書き付けていった。
 その態度が気に入らなかったようだ。
 デスクとシュウの足の隙間に身体を潜り込ませたマサキが、腿の上へと乗り上がってくる。マサキ。視界を彼の顔で塞がれたシュウは咎めるつもりでその名を呼ぶが、どくつもりはないようだ。直後に重ねられた口唇に、仕方なしに応じてやりながら――そういえば……と、シュウは先程、専用通信回線《ホットライン》でしたばかりのウエンディとの会話を脳内に呼び起こした。
 ――リューネが東方で手に入れてきたらしいのよ。マサキが飲んだらどうなるかって興味津々で勧めるものだから、そういったものに安易に手を出すなとは云ったのだけど、「どうせ大した効果じゃねえだろ」って、面白半分で飲んじゃって……
 反応が淡白なマサキが珍しくも積極的にシュウを求めてきているのは、どうやらその薬の効果であるらしかった。
 惚れ薬。ラ・ギアスの魔法技術で生成された高純度の液体は、物語世界のように都合良く目の前の人物に恋愛の情を抱かせるものではなかった。あるのは既に恋心を抱いている相手に対する気持ちを強める効果のみ。相手の気持ちを確かめるぐらいしか使い道のない惚れ薬は、そういった背景もあって、今では話のタネ的に土産物屋で扱われるぐらいしか流通がない。
 そういった意味ではマサキの態度はシュウを大いに安心させた。
 シュウを求めてくるどころか、自分の気持ちを口することでさえ稀なマサキ。シュウが三十回ほど与えた先にようやく一度を返してくるマサキの態度は、そういった性質であると納得している筈のシュウにさえ本心を疑わせることがある。
 ――彼はもしかすると、ただ流されて自分と付き合っているだけなのではないか。
 マサキを手放すつもりのないシュウとしては、すぐさま封じ込めてきた不安ではあったが、考えまいとして消せる感情でもない。思わぬ形でその真実を確かめる機会に恵まれたことを喜ばしく感じるも、時期が時期だ。しつこいぐらいに繰り返される口付け。一度、舌を絡めたが最後。終わりを先延ばしにするように激しく求めてくるマサキに、けれども作業を中断させられたシュウとしては、練り上げた論文の最終段の構成を忘れはしないかと気にかかって仕方がない。
「……ねえ、マサキ。半日だけ、いえ、あと数時間で結構ですから待ってはくれませんか」
 ようやく離れた口唇。まじまじと自分を凝視《みつ》めてくるマサキの熱っぽい瞳が愛おしい。その両頬を手で包んでやりながらシュウがやんわりと口にすれば、やだ。と、子どもが駄々を捏ねるような口振りでマサキが口にする。
 俺と論文のどちらが大事なんだと云わない辺り、実にあっさりとした気質な彼らしい。シュウは悩ましい事態に心を乱されながらも、口付けを再開したマサキが吐息の合間に好きと口にし始めたのを耳にして心を決めた。
 酔って醜態を失った際に、極々偶に見せてくるぐらいに数少ないマサキからの告白。惚れ薬の効果時間がどのくらいであるのかは不明ではあるが、数少ない好機だ。だったらその時間をとことんまで味わい尽くしてみせようではないか。




PR

コメント