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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

帰ってきた140字SSまとめ(1)
全然ッ
140字にッ
遠いやんけワレェッ!!!!

そのツッコミは心の中に仕舞っておいてください……(やる気だけはある)
「どうせだったら何か賭けるか。その方がやる気が出る」
 退屈しのぎに始めたチェス。負けが込んできたマサキが云った。
「あなたが賭けるものと云ったら、食事かデザートと決まってますが、今度はどこに店を見付けてきたのです」
 手番の回ってきたシュウが即座に駒を動かす。
 正確無比なコンピューターのような手は、出来のいいゲームソフトのAIのようだ。クリティカルにマサキの予想を超えた手を打ち出してくるシュウに、待った。声を上げたマサキは何度目の長考に入った。
「城下の三番街に西方料理の店を見付けたんだよ。そこの魚料理が旨くてさ……」
 宙を睨んで次の手を考えること暫く。ほぼ詰みじゃねえか。そんなことを呟きながらも諦めきれず。駒を進めたマサキに、それだと5手詰みですね。シュウが笑う。
「あーもう。どうやったら勝てるかね、お前とのチェス」
「あなたに簡単に勝たれるようでは私の立場がありませんね」
 そして駒を並べ直し始めたマサキに、彼は席を立って云った。
「そろそろ外が恋しくなりましたよ。食事に行きましょう、マサキ。勿論、城下のその店にね」

kyoさんは『賭けようか』をお題に、140字でSSを書いてください。
140文字で綴るSS小説お題:https://shindanmaker.com/386208



 彼は稀に夜中にうなされていることがある。
 勿論、強健な精神を誇る彼のこと。うなされると云っても、派手な声を立てるのではなく、声を押し殺して呻く程度。それは、耳をよくそばだてなければ聞き逃してしまいそうなまでに、ひっそりとしたものだった。
 黙して語らぬ彼が何を見てうなされているのか、マサキにはわからない。けれども、寝ているふりをして彼の様子を窺っていると、暫くもすれと飛び起きるのであるから、相当に良くない夢見であるのだろう。
 いや、過去の妄執に、今以て囚われているというべきか。
 彼は様々な因縁を持って生まれてきた。王弟の嫡子、地上と地底のふたつの血、比類なき頭脳、豊富な魔力……そうした彼の立場や才能を利用しようと企んだ輩は多かったに違いない。いつだったか、うっかり彼が口を滑らせたことがある。
 ――私はよく生きていると思いますよ。
 だからマサキは、彼が飛び起きるより先に、彼の身体を強く抱くことにしたのだ。そうして大丈夫だと、何度でも声をかけてやる。
 すると、彼は飛び起きることもなく、再びの穏やかな眠りへと落ちてゆくではないか。
 それがマサキの声が届いているからの結果であるのかはわからない。黙して語らぬ彼は、マサキの声を聞いていたとしても、それを決して口にするような性格ではなかったからこそ。
 だからマサキも、また黙して語らぬことにした。
 ――お前が赦しても、俺がそいつらを赦すことはない。
 繰り返される夜。胸に密やかな決意を秘めて、そうしてマサキは、無事に朝を迎えたシュウに笑顔を向けてみせるのみ。

kyoさんは『強く抱きしめる』をお題に、140字でSSを書いてください。
140文字で書くSSお題:https://shindanmaker.com/320966



 鳴り響くガラの音《ね》が徐々に大きくなってゆく。どうやら何某《なにがし》かの祭りが行われているようだ。マサキは懐かしい響きに誘われて、音がしてくる方へと足を進めていった。
 次第に過密してゆく人いきれの中、マサキは探していた人物を見かけた気がした。まさか、と思いながらもマサキの足は止まらない。急ぎ人波を掻き分けて、ようやくその人物の背中を捉えられる距離まで近付いたマサキは、その瞬間、その光景に目を見開いていた。
 まま、ままと泣きじゃくる少女。
 どうやらこの人混みで母親とはぐれたらしい。
 その目の前に立つ長躯の男。マサキが探し求めていた人物は、身を屈めて何言か少女と言葉を交わすと、躊躇うことなくその肩に少女を担ぎ上げた。そんな馬鹿な。マサキは二度驚かずにいられなかった。
 あの男は顔色ひとつ変えることなく、マサキの養父の命を奪った男であるのだ。
 そして、マサキの第二の故郷であるラングランの王都を壊滅に追いやった……。
 まま、まま、どこー? 自らの身長よりも高い景色の目新しさや、助けとなる人物が登場したことによる安堵からだろう。先程までの涙はどこにやら。笑顔を浮かべながら少女は母親を探している。何か裏があるに違いない。マサキは自らの気配を気取られないようにしながら、慎重に男の様子を窺った。
 やがて人波の向こう側から響いてくる呼び声。母親が少女を見付けたようだ。悠然と、足取りも優雅に人いきれの中を抜けてゆく男に、後を追いながらマサキは自らの鼓動が激しくなってゆくのを感じていた。
 ――まさか、そんなことがある筈ない。
 地底世界であれだけの行いをしてみせた男であるのだ。マサキは警戒していた。これで終わる筈がない。だのに、素直に迷子の少女を母親の許に送り届けてみせた男は、感謝を述べる母親に会釈をしてみせると、他には何もせずにその場を立ち去ろうとするではないか。
 嘘だ。うそだ。ウソだ。マサキは何度も目の前にて繰り広げられた光景を打ち消そうと試みた。見てはならないものを見てしまったようないたたまれなさが胸を占めている。どうしようもない動揺。あの男はラングランに災厄を振り撒いた張本人である。それなのに。
 マサキは男の小さくなる背から目を離せずにいた。
 そのマサキの視界の隅で、ふと男が足を止めた。
 そして彼は、あのいけ好かない笑みを口元に浮かべながら、明確にマサキを振り返ってみせると、次の瞬間、マサキの愚かさを嘲笑うかのように雑踏の中へと姿を消していった――……

kyoさんは『見開いた瞳』をお題に、140字でSSを書いてください。
140文字で書くSSお題:https://shindanmaker.com/320966



 なあ、シュウ。ふたりで訪れた街、洋品店の軒先にあるショーウィンドウを暫く眺めていたマサキが、そのウィンドウショッピングの終わりを待っていたシュウを振り返って、これが欲しい。そう続けたものだから、自分に物をねだってくるなど珍しいこともあるものだと、シュウとしては目を|瞠《みは》らずにいられなかった。
 そもそも着たきり雀な面があるマサキのこと。ファッションに関心を寄せること自体が珍しいことである上に、滅多なことではシュウに物をねだったりもしないのであるから、これで驚くなという方に無理がある。一体、どういった理由で彼が自分に物をねだるに至ったのか――怪訝に思ったシュウがその理由を知るべく、ショーウィンドウを覗き込んでみれば、桁が一桁違う商品ばかりが並んでいる。
 マサキが指し示したブルゾンは、細かい刺繍が施されている上に、ひと目でそれと知れる上質な生地が使われているとあって、ラングランの一般市民が購入する上着の市価と比べれば、十倍以上の値段になったものだ。これだけ立派な商品であれば、如何にファッションに疎いマサキであっても、物欲を刺激されようというもの。彼の我儘の理由に納得したシュウは、件のブルゾンにまじまじと目をやった。
 彼らしいチョイス。スポーティなブルゾンはさぞマサキに似合うことだろう。その姿を想像して、偶の我儘を聞くのも悪くない。そう思ったシュウが、マサキに先立って洋品店に足を踏み入れてみれば、更に物欲を刺激されたようだ。シュウの後に続いて洋品店に入ったマサキは、棚やハンガーに並んだ商品を物色しながら、ついでにとばかりにあれもこれもとねだり出してくる。
「珍しいこともあるものですね。あなたがそんな風に私に物をねだるなど」
「何だよ。俺にプレゼントをするのが嫌だとか云わねえよな」
「云いませんよ。滅多にない機会です。むしろ店ごと買っても足りないぐらいだ」
 毎度のことであれば躊躇いも生まれたものだろうが、偶の気紛れ。むしろこういった機会でなければ、彼が望む品を贈ることも出来やしない。マサキの望みを全てを叶えるべく、シュウは大いに財布の紐を緩めてみせた。
 そうして、大量にせしめた戦利品を両手に抱えて満足気に店を出たマサキに、これも幸せのひとつ。シュウは自らもまた満足を覚えながら、マサキと肩を並べて、更に街の中心部へと。彼とふたりで過ごす時間の残りを有効に活用すべく、歩を進めていった。

シュウは珍しくわがままを言われた時に幸せだなと感じました。
嬉しいなと思っています。
幸せを感じる瞬間:https://shindanmaker.com/778207



「何であんなに自信家でいられるんだ」
 待ち合わせの時間に遅れること10分。時間厳守を常とするヤンロンの遅刻に思うところはないようで、先にオープンテラスのカフェでアフタヌーンティーと洒落込んでいたテュッティは、皿に四種と積んだケーキを満足そうに頬張りながら、誰が? と尋ねてきた。
「僕たちの周りで自信家という言葉が似合う人間が他にいるなら聞きたいものだな」
「そうは云われてもね」
 ヤンロンが名前を口にするのも|癪《しゃく》に障ると感じていることに気付いたようだ。頬張ったケーキを咀嚼したテュッティは、苦笑しきりでフォークをテーブルに置いた。次いであなたも飲んだら? とティーポットを掲げてみせる。茶ひとつで収まる気分でもないのだがな。呟きながらも、ヤンロンはウエイトレスに紅茶を頼んだ。
「人生が自分に微笑みかけているように感じている人間というのは、得てしてそういうものよ」
「謙虚さを身に付ける必要もあるだろう」
 つい先程、顔を合わせたばかりの人物の自信家ぶりを思い返す。彼は時として思いがけないくらいに好戦的な面を露わにする、上から人を見下ろしているような普段の言動には目を瞑るとしても、いけ好かないと感じるまでの自信家ぶり。日頃は穏やかであろうと節制しているらしい彼が垣間見せる本性は、ヤンロンに警戒心を抱かせるに充分なものたり得た。
 それがヤンロンをして、彼と好意的な関係を築けずにいる原因でもある。
 せめてもう少しばかり、あの自信家な面を改めてくれれば――自身の性とはいえ、決して万人と好ましい関係を築けるような人間性を有していないヤンロンは、ならば自身の狭い人間関係の中でぐらいは友好的な関係を維持したいと望んでいるのだ。それだのに。
「謙虚でいたら得られないものもあるからじゃないの?」
 そう口にしたテュッティが、ほら、と大通りを挟んだ向かい側の広場の奥。時計塔の下を指差した。
 どうやらヤンロンと別れた彼は、そこを目的地としていたようだ。人目を引く長躯が、開いた文庫を片手に佇んでいる。彼もまた待ち合わせをしているのだろうか? ヤンロンがその姿に視線を注いで間もなく。彼の顔が上がった。
 そこに姿を現わしたのは、ヤンロンの大切な仲間のひとり。見慣れた格好。トレードマークのアリスブルーのジャケットを羽織って時計塔の許へと歩んでゆくマサキの姿を捉えた彼は、ヤンロンでさえもはっとするほど艶やかな笑みを浮かべてみせた。
「だからああも好戦的だと? これだからリア充は」
 その程度のことで自分にまで攻撃的に迫られては堪ったものではない。ヤンロンはテーブルに届けられた紅茶を飲み下して、その思いがけない苦さに顔を|顰《しか》めずにいられなかった。

kyoさんは【これだからリア充は】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー:https://shindanmaker.com/428246



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