次回、感動のフィナーレです!ヽ(´ー`)ノよく書きました。
ギャグはどこまで羽目を外せるかが肝だと思うのですが、キャラクターを壊し過ぎないようにするその匙加減が難しいところです。まあ、人によっては白河のこういった扱いは嫌かとは思いますが、完璧超人(パーフェクトヒューマン)の彼にも欠点があって欲しいなあという私なりの白河への愛情表現だったりします。
私はシュウマサスキーの白河スキーなので、ギャグでマサキを弄るのは最低限にしようと努めている(人によっては最推しでないキャラクターを破壊されるのは嫌だろうと思うので)のですが、白河には!永遠の好き!を捧げているので!それなりに弄ってしまうんですよね。でもそれは好きな子を虐めたいといった支配欲ではなくて、彼の意外な一面を見たいという願望の表れです。例えば足が臭い!でもいいのですよ!それでもこの気持ちは変わらないのです!そういった感情を御理解いただけると有難いなと思います。
……と、思いましたけど、モブマサやってる時点で言い訳効かないってことに気付きました!
本当にすみません!あれは趣味です!気の強い受けが堕ちるの好きなんです……これ私ある時突然マサキスキーに刺されても文句は云えませんね……腹は括った!で、でもひとつだけ言い訳をさせて欲しいんですけど、私の脳内ではあの後に白河が出てきて以下略な展開になるんですよ!ただモブマサスキーもシュウマサスキーもどっちもそういった展開は望んでいないと思うことから出さずにいるだけです。
そんな感じで本文へどうぞ!ヽ(´ー`)ノ
ギャグはどこまで羽目を外せるかが肝だと思うのですが、キャラクターを壊し過ぎないようにするその匙加減が難しいところです。まあ、人によっては白河のこういった扱いは嫌かとは思いますが、完璧超人(パーフェクトヒューマン)の彼にも欠点があって欲しいなあという私なりの白河への愛情表現だったりします。
私はシュウマサスキーの白河スキーなので、ギャグでマサキを弄るのは最低限にしようと努めている(人によっては最推しでないキャラクターを破壊されるのは嫌だろうと思うので)のですが、白河には!永遠の好き!を捧げているので!それなりに弄ってしまうんですよね。でもそれは好きな子を虐めたいといった支配欲ではなくて、彼の意外な一面を見たいという願望の表れです。例えば足が臭い!でもいいのですよ!それでもこの気持ちは変わらないのです!そういった感情を御理解いただけると有難いなと思います。
……と、思いましたけど、モブマサやってる時点で言い訳効かないってことに気付きました!
本当にすみません!あれは趣味です!気の強い受けが堕ちるの好きなんです……これ私ある時突然マサキスキーに刺されても文句は云えませんね……腹は括った!で、でもひとつだけ言い訳をさせて欲しいんですけど、私の脳内ではあの後に白河が出てきて以下略な展開になるんですよ!ただモブマサスキーもシュウマサスキーもどっちもそういった展開は望んでいないと思うことから出さずにいるだけです。
そんな感じで本文へどうぞ!ヽ(´ー`)ノ
<YOUTUBER白河>
(七)
その日、シュウの家を訪れたマサキがリビングに入ると、テーブルの上にそれは見事なホールケーキが乗っていた。
その日、シュウの家を訪れたマサキがリビングに入ると、テーブルの上にそれは見事なホールケーキが乗っていた。
どこで購入したのかは不明だが、一目で高級品であると知れる格調高さ。チョコレートスポンジの縁に波を描く、ホイップクリームのレースのような連なり。天面には所狭しとフルーツが並べ立てられている。その中央に咲き誇るのは、食紅で色付けされた赤いクリーム製の薔薇。
「何だよ、これ。サフィーネたちからでも貰ったのか?」
市販のものを購入したのだとしたら、かなりの値段になるのは明白。だからマサキはそれが自分の為に用意されたものだとは思えずにいた。
「まさか。私が用意したものですよ」
「こんなケーキを用意するようなイベントあったっけか」
取り敢えずとマサキはソファに腰掛けた。
テーブルを挟んだ正面には、いつも通りに三脚に乗った|アクションカメラ《GoPro》が設置されている。マサキが来るのと同時に回し始めたのだろう。起動中を示す赤いランプに、ぎこちなく口元を歪ませる。かなりの本数の動画に映ってきたが、未だにどういった表情をするのが正解なのかわからぬままだ。
「今日は大事な記念日なのですよ、マサキ」
普段よりは幾分柔らかい表情。どうやら機嫌が良いらしい。そう思った直後、思わず見惚れるほどの極上の笑みを浮かべてみせたシュウに、けれどもマサキは警戒心を抱かずにはいられなく。
「……絶対その記念日、俺が覚えてないような些細なことだろ」
優れた容姿を持つのみならず、知に長け、武に通じ、魔力にも恵まれた男、シュウ。けれども彼には欠陥と呼ぶべき重大な問題点があった。
マサキが絡むととかく狂う。
彼にとってはベストショットらしい写真を、焼き増ししてひたすら並べたアルバム。最近仕入れたチカからの情報によると、なんと十五冊もあるらしい。しかもそれをマサキの目に触れぬ場所に隠し、偶に取り出して愛でているというのであるから病膏肓。
しかもマサキが持ち帰った筈のハンドパペット人形も、いつの間にかまたサフィーネたちに作らせて、これまたマサキの目に触れぬ場所に隠しているというのだから恐れ入る。それを使って何をしているのかについては、さしもの使い魔も命が惜しいらしく、マサキがどう脅そうとも口にすることがなかったのだが、それが結果としてシュウ=シラカワという人間の異常性を示してしまっていると感じるのは、マサキの気の所為だろうか。
――それさえなきゃいいヤツなんだがな……
考えるだに身震いがするシュウのマサキへの執着心。覚悟を迫られたマサキは両の頬をぱんぱんと叩いた。そして瞳を閉じると精神統一。胸に深く息を吸い込んで、何度か深呼吸を繰り返す。
「何故、そこまで気合いを入れるような真似をするのです」
「お前、俺が絡むと自分がおかしくなることに気付いてないんだな……」
「心外な。愛情ですよ」
「アイジョウ」
思わず片言の言葉が口を吐いて出た。
決して他人の感情の機微に長けたマサキではなかったし、恋愛に疎いことも自覚してはいたけれども、それでもシュウの一種独特な執着心の持ち方は、普通からかけ離れていることぐらいは理解出来る。
「何か仰りたいことでも?」
にこやかなシュウの顔に、標的とされているマサキとしては云い返したい気持ちもあったが、下手に藪を突いて蛇を出してしまうような事態になってしまっては自身の身が危うい。だからマサキは、それはさておき――と、テーブルの脇に立っているシュウに視線を向けた。
「何の記念日だよ」
「思い出せませんか」
「お前、俺がそういうのきちんと覚えてるタイプだと思うか」
「覚えていて欲しい日ではありましたが、仕方ありませんね」眉間に手を当てて、大仰にシュウが溜息を洩らしてみせる。「あなたと初めて会った日ですよ」
何故だろう。その瞬間、マサキの視界から光が奪われる。
「いや、お前……その頃ヴォルクルスに操られてただろうよ……何で覚えてるんだよ、日にちを……」
「当時の日記を探し出すのは苦労しましたよ」
「そうか……てか、日記に俺のこと、書いてたんだな……」
その事実を恐ろしく感じながら、ゆっくりと面を上げる。目の前にでーんと置かれたホールケーキは、マサキが良く知るホールケーキのサイズをしていない。それがマサキの気をまた沈ませる。
何せマサキの顔より大きいのだ。
ありったけの愛情を詰めたとしてもこの大きさにはなるまい。何より当時の関係が関係だ。斃さねばならない敵。シュウにとっての当時のマサキはそれよりも軽い存在であったようだが、それだけに素直にはシュウの気持ちを受け入れられない。あのな――マサキは絞り出すようにして言葉を吐いた。
「わざわざ日記を辿ってまで調べてくれたことには感謝する。けどな、シュウ。こういうのはさ、改めてやるよりかは、気付いた時にちょっとだけでいいんじゃないか?」
「気に入らないですか、マサキ」
「気に入らなくはないけどよ。でも、何て云うんだろうな。それが記念日になるなら、結局毎日何某かの記念日だろ? 例えば三日後だけどさ、俺が初めてここに来た日だってお前覚えてるか? そういうことだって思うんだけどな」
その瞬間、シュウが動いた。
テーブルを回ってソファの隣に腰掛けてくると、無言のままマサキの身体を抱き締めてくる。突然の出来事に、マサキは何が彼を衝動的にさせているのかわからず、ただただ途惑うしかない。
「……きちんと覚えているタイプではないと云った割には、そういったことは覚えていてくれているのですね」
「まあ、その……あの日はすげー緊張してたからな……」
マサキは気恥ずかしさを感じながらも、身を丸くして自分を抱き締めているシュウの背中に手を回した。
情緒に欠けるきらいがあるマサキではあったが、その日のことはありありと覚えている。チャイムを鳴らしてもいいものか悩んで、何度も何度も手を出しては引っ込めを繰り返した。本当にここにシュウがいるのだろうか? 呼吸を整え直すこと十回以上。ようやく鳴らしたチャイムに飛び出してきた男は、今と同じようにマサキの身体を抱き締めてきた。
「毎日が記念日。全くその通りですよ、マサキ。なら、このケーキは一ヶ月分のお祝いにしましょう。そしてまた来月、再来月と、お祝いを重ねてゆくのですよ」
「お前、本当にマメなヤツだよなあ」
「嫌ですか」
シュウが顔を上げる。
嫌になるぐらいの美丈夫。整い過ぎたきらいのある顔が、けれどもマサキにはとても愛おしい。
「一ヶ月に一度ぐらいなら付き合ってやるよ。ただケーキはもう少し小さくしろよ。一日じゃ食い切れねえ」
マサキは笑いながらシュウの頬を撫でた。冷えた温みが手のひらに馴染む。
その手を取ったシュウが、手のひらを自分の方に向けて口元に引き寄せてゆく。
「あなたがそう云うのであれば」
手のひらに口付けながらそう口にしたシュウに、ああ、やっぱり好きだなあ。そう自らの気持ちを再確認したマサキは、「有難うな」と云いながら、今度は自らシュウに抱き付いていった――……
※ ※ ※
訳のわからない言語が並ぶコメント欄。過去最高額の投げ銭を受け取ることとなったシュウは、その金をマサキとの旅行に使うつもりであるらしかった。何処に行きますか。と尋ねられたマサキは、お前の行きたいところでいいと云いながら、「でも、何で旅行なんだ?」と尋ねた。
※ ※ ※
訳のわからない言語が並ぶコメント欄。過去最高額の投げ銭を受け取ることとなったシュウは、その金をマサキとの旅行に使うつもりであるらしかった。何処に行きますか。と尋ねられたマサキは、お前の行きたいところでいいと云いながら、「でも、何で旅行なんだ?」と尋ねた。
「その方が視聴者が喜ぶからですよ」
「動画は撮んのな」
「それは当然。彼女らの投げ銭ですからね」
何だと云いつつ視聴者ファーストであるらしい。シュウの返事に、マサキとしては、偶には動画に関係なくのんびりしてえな。と思ったりもしたが、それはまた別に自分たちの貯蓄ですればいいことだろうと思い直す。
そして今一度、動画のコメント欄に目を遣った。
殆ど言葉の態を成していないコメントばかりだったが、中にはきちんとした言葉を残してくれているものもあった。その中でも、マサキの心の琴線に触れたのがこれだ。
――何を見せられているのかわからないけど、とにかく幸せな気分になれた。
マサキ自身も何をしているのか良くわからないカップルチャンネル。でも、時間が経つにつれて、それ以前よりもシュウとの仲が深まっていっている実感がある。そう考えると、意味のわからないことにも意味はあるのだろう。マサキは|携帯小型端末《PDA》をテーブルの上に置くと、隣に座って本を読んでいるシュウの肩に頭を預けるようにして凭れかかった。
(八)
投げ銭旅行から帰宅した後、二週間ぶりにマサキがシュウの許を訪れたその日。珍しくも機材を用意せずにいる彼は、これまた珍しくもマサキをアフタヌーンティーに付き合わせるつもりらしく、キッチンに立ってその準備に余念がない様子だった。
投げ銭旅行から帰宅した後、二週間ぶりにマサキがシュウの許を訪れたその日。珍しくも機材を用意せずにいる彼は、これまた珍しくもマサキをアフタヌーンティーに付き合わせるつもりらしく、キッチンに立ってその準備に余念がない様子だった。
しかしただ出されたものを口にするだけというのも――と、手伝いを申し出れば、紅茶を淹れるのには繊細さと器用さが必要不可欠だからと断れられてしまった。どちらも欠けている自覚あるマサキとしては、それ以上シュウに強く出られる筈もなく。仕方なしに、マサキはテーブルの上に放置されていた|携帯小型端末《PDA》を取り上げた。
目的はカップルチャンネルの動画のコメント欄。彼女らの声にならない声を表現した言葉の数々は、よくぞそういった表現が出てくるものだと感心するぐらいには、マサキに新鮮な驚きを与えてくれる。勿論、シュウがマサキの自慢をしたいが為に作っている動画である。それを理解出来ない一部の層からの批判的な意見もあったが、今や登録者数七十万人を超える大型チャンネルである。むしろない方がおかしいというシュウの意見を受け入れて、マサキは殆どがコメント欄の下に追いやられているそれらの意見は丸ごと無視ししていた。
ただ、チカ曰く、シュウ自身はそういったコメントとレスバを繰り広げているらしかったが……。
しかしそれをマサキが知ったからといって、出来ることはないにも等しかった。あの理屈でマサキの口に勝る男は、それをひと言窘めようものなら、三十倍以上の言葉で以て反証してきたものだ。これで折れない方がどうかしている。故に、マサキは何も知らない振りをして、ただ自らの愉しみの為だけにコメント欄を眺めることにしていたのだが。
――白河先生! 『白き刃が闇を切り裂きし刹那、迸る朱の血溜まりより生まれ出ずる真理の光に遍く照らされる世界』チャンネルの白河先生ですよね!
スクロールした先に見付けた或るコメント。その壊滅的な厨二病センスのワードを目の当たりにしたマサキは、思いがけず|携帯小型端末《PDA》に伏せた頭をぶつけてしまっていた。
白き刃だの、闇を切り裂きしだの、真似しようと思って真似しきれる単語のチョイスではない。特に朱の血溜まりのくだりが救いがたい。マサキは世界が滅亡してもこんな気分にはなれまいという絶望的な感情を胸に顔を起こした。それは紛れもなく、シュウが以前運営していた『高等教育の普及を目的に掲げた』チャンネルの名称だった。何を血迷ったか、シュウはただ『面白いから』という理由だけで、こんな長ったらしく、且つ黒歴史確定な名称を己がチャンネルに付けてしまっていたのだ。
――改めて目にすると、破壊力抜群だなこれ……。
まじまじとチャンネル名を眺めること暫し。どうやらそのコメントに続きがあるようだと気付いたマサキは、|携帯小型端末《PDA》の画面に指を置いた。折りたたまれているそのコメントの先を読むべきかどうか悩みつつも、けれども好奇心には打ち勝てずに、そうっと『続きを読む』をクリックする。
――先生がいなくなってから、ずうっと寂しい夜を過ごしていました。けれどもこんな形で再会出来るなんて! しかも以前のチャンネルではどれだけ頼んでも聞けなかった甘い囁き付き! これでまた楽しい夜が過ごせそうです。大事に新たな先生のボイスを堪能させていただきます!
マサキはそうっとコメントを折り畳み表示に戻した。
これだけ派手に動き回っているのだ。いつかはこういった日も来るだろう。何せ動画の本数の割に登録者数の伸びが異常なチャンネルである。だからマサキは覚悟は決めていた。けれども実際にシュウが以前運営していたチャンネルの視聴者の存在の目の当たりにすると、何故だろう。胸が締め付けられた。
「――見て、しまいましたか」
息苦しさに宙を仰ぐ――と、いつの間にか気配を殺して背後で様子を窺っていたようだ。シュウとまともに視線がかち合う。
「うん、まあ……」
どう反応すればいいかわからぬまま、マサキはそう呟くことしか出来なかった。
情緒に欠けるきらいがあると評されるマサキは、自身が他人の感情や、やもすれば自分自身の感情にも疎いことに気付いていた。特にまるでといっていいほど理解が及ばなかったのが恋心だ。マサキにとって、周囲にいる人間は皆気の合う仲間。そこに優劣など存在しなかったし、そうである以上、そこから誰かを選ぶなど有り得なかった。
けれども今は、そうした感情にも理解が及ぶようになった。
それはマサキを見下ろしているこの男――シュウとの付き合いがあるからこそ。
だからといって、マサキは自分を変えた男を疎んじたり、厭わしく感じたりすることはない。稀には嫉妬を感ずることもあったが、基本的には穏やかな日常。それは、さらさらと流れゆく清い川のように澄んだ心持ちと表現するのが相応しい。
だから苦しいのだ。
マサキはかつてのチャンネルでシュウに懸想していたらしい、所謂ガチ恋勢の彼女らを思った。行き場を失くした彼女らはこれまでどう日々を過ごしていたのだろう……。
「今日、機材をここに持ち込んでいないのは、あなたと今後のチャンネル運営について話し合おうと思っていたからなのですよ、マサキ」
けれどもシュウは、彼女らの気持ちはお構いなしな様子だ。どこか思い詰めたようにも映る表情で話を切り出してくる。
「何だよ、お前。まさかチャンネルを閉鎖しようとか考えていないだろうな」
「あなたはどう思いますか」
ソファを回り込んできたシュウが、マサキの隣に腰を下ろす。
「私のことをこういった目で見る視聴者がいる。それについてどう感じます」
「それは俺がどうって話じゃないんじゃないか? お前がどう感じるかって話で」
マサキの返事に、シュウが苦笑いを洩らす。
シュウのかつてのチャンネルを見ていた彼女たちは、科学には特段思い入れはないようだった。それでもスーパーチャットの額でデイリーの世界一を取らせるぐらいに、シュウ=シラカワという人間に惹かれているようだった。
幼い頃から容姿に纏わるエピソードに事欠かない男だけはある。彼は自己防衛の策のひとつとして、以前のチャンネルではVであることを選んでいた。気品高い女性のモデル。自身の容姿に対するめくらましとして使用していたバーチャルな人物像は、けれども、その向こう側を必要としない女性には何ら意味を持たなかった。
彼女らを惹き付けたのは、耳にするだに心地の良いシュウの声だ。
それをシュウがあまり面白く感じてないようであることに、マサキは気付いてしまっていた。でなければ、高い目標を掲げたチャンネルをあっさり終わらせるなどということはしまい。
「私はあさはかだったのですよ、マサキ。彼女たちがこのチャンネルの存在に気付かない保障などなかったのに」
重苦しく言葉を吐いたシュウが、マサキの答えを待つように|凝《じ》っと双眸に視線を注いでくる。
「俺は、別に」
「嫌な気分になったりはしない?」
「むしろこいつらの方だろ、それは。次にお前を見付けたら俺がいたってさ……」
マサキが見ていないコメントの数々。コメント欄の下方に沈められているそこには、もしかしたら、彼女たちの嫉妬に塗れた意見も紛れているのかも知れない。
「お人好しですね、あなたは。自分のことより彼女らの心配ですか」
「お人好しか……そうだな。そうかも知れないな。でも、それは昔の俺じゃわからないことだった」
マサキは目の前にあるシュウの顔に手を伸ばした。彼のしなやかな手に比べれば無骨な己が手。それで冷えた温もりの頬を包む。
「全部、お前が教えてくれたんだよ。シュウ」
そう。と、口元に笑みを浮かべたシュウの瞳に、温かな光が灯る。
「なら、一生続けますよ」
彼が何故カップルチャンネルを始めようとしたのか。マサキにはその本当に意味するところはわかってはいなかったが、少しずつ前に進んでゆき、そして少しずつ縮まってゆく距離に記録が残されているということは有難いことだと思う。
何せ、何十、何百万人という証人付きだ。
これを裏切ることなどマサキには出来ない。
腹はとうに括っていた。一生、こいつと一緒にいる。その覚悟なしに、どうして動画に顔出しするなどという巫山戯た事態を許せたものか。そう、それもまた愛だ。マサキはシュウの傍にいる自分を誰かの目に晒されたとしても、そんな小さなことと笑い飛ばせるぐらいにはシュウと過ごすこれからの人生に覚悟を決めている。
「一生かあ。そこまで見続けるヤツ、いるんかね」
「少なくとも結婚式と赤ん坊は見たいのだそうです」
「後者は絶対に無理だろ、それ……」
「わかりませんよ」
クックと嗤いながらシュウが席を立ち上がる。キッチンのカウンターの上に並ぶプチガレット。それを甲斐甲斐しくリビングに運び込みながら、「里親になるという手もありますからね」妙案これに極まれりといった表情でシュウが口にした。
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