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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

お題消化:Crimson Lips
私は脳内では割と「シュウ×マサキ×サフィーネ」はアリだと思っている人間です。どのくらいアリかと思っているかと申しますと、三人がベッドで同衾する話を書きたいぐらいにはアリだと思っています。
ということで、今回のお題は「シュウマサ前提で、サフィーネにちょっかい出されるマサキ。結果シュウに叱られる(おしおきされる)2人」です。こんなんここまで腐っている私が書いたら大変なことにしかならないんですが……笑 むしろここから中編一本書けるよ!笑
 
と、いうことで、上の前提条件が大丈夫な方のみお読みください。あ、大丈夫です。性的描写はありません。キスまでですので!
<Crimson Lips>
 
 まるで朝食が終わる頃合を見計らったようにゼオルートの館に姿を現したヤンロンに誘われてグランヴェールとの模擬戦に挑んだマサキは、昼過ぎになってようやく終わった長い戦いに休息を求めてサイバスターを降り、既にグランヴェールが去って久しい平原に身体を横たえた。
 魔装機神同士の模擬戦とあっては、他の正魔装機に稽古を付けるのとは訳が異なる。ましてや相手は圧倒的火力を誇るグランヴェールだ。攻撃を受ける度に操縦席に走る衝撃は、幾ら衝撃緩和を施された機体であっても、積み重なれば相当のダメージと化す。マサキの身体の端々に刻み付けられた痣。せせこましい操縦席でダメージに堪え続けた身体の節々は軋み、悲鳴を上げていた。
 それを「鍛え方が悪いな」と一笑に付したヤンロンは、グランヴェールを駆って、颯爽とマサキの目の前から姿を消してしまった。
 向かった方角からして、恐らく今度はグラフドローンを使った自主的な鍛錬に励むつもりなのだろう。よくもまあ、来る日も来る日も鍛錬だ修行だのと続けて飽きないものだ……日課の筋トレを怠ることはないものの、ヤンロンほどストイックに魔装機神を扱うことに向き合えないマサキとしては呆れ果てる他ない。
「あら、珍しいところで顔を合わせるわね、ボーヤ」
 そこに姿を現したのがウィーゾル改。紅蓮のサフィーネの二つ名に相応しいシンボリックな紅の機体から平原へと降り立ったサフィーネは、平原に横たわるマサキの姿を目ざとく見付けると、珍しくも隣に腰を下ろしてきた。
「ヤンロンだったら西に向かったぜ」
 何がそんなに気安くさせるのかはわからなかったが、女であることを最大の武器にして憚らないサフィーネは、正魔装機操者きっての堅物であるヤンロンをいたく気に入っているようだ。ヤンロン曰く、その修行先だの鍛錬先だのにふらりと姿を現しては、他愛もない話をして去って行くのだという。サフィーネがわざわざウィーゾル改から降りてきた理由はそれだろう。事情を知っているマサキはそう口にしてみるものの、サフィーネの目的は別にあるらしい。
「あたしだっていつもいつもあの男の修行だの鍛錬だのの邪魔をして歩いてるワケじゃないわよ。今日は他にちょっと用事があってね、その帰りなのよ。まあ、情報収集ってトコね」
「お前の情報収集ねえ。どうぜロクでもねえことなんだろ」
「さあ、どうかしら。それにしても酷い有様ね。そんなに疲れ果てちゃって。風の魔装機神の操者にしてはらしくない姿よねえ。何があったのかしら?」
「ヤンロンと模擬戦をやったら中々終わりにしてくれなかったんだよ。四時間もやってりゃこんな有様にもなるだろ。実戦でだってそんなに長く戦うもんか。お陰であちこち痣だらけだ」
 身体を起こしたマサキは袖を捲ってサフィーネに見せてやる。腕の外側。肘当てにしこたま打ち付けたそこに広がる青い巨大な痣。触らない限り痛みはないものの、見栄えは悪い。
「操縦席で踏ん張りすぎるとそうなるのよ。もう少し力を抜くことを覚えなさいな」
「お前にそんなことを云われるなんてな」
 顔を顰めるでもなく、うふふ……と笑うサフィーネに、はあ、と溜息を洩らしてマサキは膝に肘を付く。疲労困憊とはまさにこのこと。座っているのですらだるく感じる状態だとはいえ、一筋縄ではいかない女狐が側にいるのだ。そうそう気を抜くわけにもいかず、マサキは草むらの上に座り続けた。
「テリウスやモニカはどうしてるんだよ」
「嫌な聞き方をするのね、ボーヤ。シュウ様のことは聞かないなんて。そんなことは聞かなくとも、知り尽くしているって感じかしら?」
「お前らは本当に隙さえありゃそっちに話を持っていくのな。単純に見かけねえから聞いてみただけだって云うのに。それに、どうせお前ら全員、あいつの云うことを聞いて動いてやがるんだろ。だったらあいつのことは聞くだけ時間の無駄ってな」
 ふわり、とサフィーネの上半身が動く。揺れる髪。マサキの顔を覗き込むように近く、サフィーネが顔を寄せてくる。夜に咲く花を思わるような甘ったるい中にも凛とした清々しさを感じさせる香り……サフィーネが身に纏うその香りが一層強く感じられたかと思うと、次の瞬間。マサキの口唇にその赤い口唇が重ねられた。
「な……っ!」
 弾かれたように身体を後ろに退いたマサキは、手の甲で口元を拭いながらサフィーネを睨み付けた。「何を考えてやがるんだよ、お前は……っ」突然、奪われた口唇。不意の口付けの理由を訊ねたくもあったが、相手が相手だ。詳細までは知らないものの、かなり派手な男関係を持っていると聞く。どうせ、したくなったからした、ぐらいの理由であるのだろう。
 そうでなくとも掴みどころのない性格をしている女。まともに聞いてもはぐらかされるに違いない。訊ねるだけ馬鹿をみるのも癪だと、「男と見りゃ見境のない性格をしやがって」マサキは手の甲に付いた口紅を草むらに擦り付けた。
「間接キス」
 にっこりと蠱惑的に微笑んでみせたサフィーネが、鼻歌交じりに立ち上がる。間接キス……? 少し考えてその言葉の意味するところを悟ったマサキは慌てて否定しようとするも、既にサフィーネの後ろ姿はマサキの声の届かないところにある。
 
 いつまでも平原に寝そべっている訳にも行かないと、ウィーゾル改が去ったのを契機に、マサキもまた移動を開始することにした。
 グランヴェールとサイバスターの戦い。勝ち負けで云えば、負けに等しい。模擬戦の結果をああだこうだとテュッティたちに評論されたくないマサキは、疲れの取れない身体を休められる静かな場所を求めて、シュウが仮住まいにしている独り家へと足を運んだ。
 サフィーネにされてしまったこともある。気紛れな女狐からの突然の口付けの理由をマサキが訊ねられるとしたら、その相手はシュウひとりしかいない。諜報活動に励んでいたらしいサフィーネがその結果を報告しに来ている可能性もあったものの、それはそれで都合がいいというもの。そう考えてのことでもあったが、どうやらシュウは家にずっとひとりだったようだ。ふらりと何の前触れもなく訪れたマサキを家に上げると、後は我関せずとばかりにソファの上で本を読み耽っている。
「あのさ」その隣に座り、肩に身体を預ける。「さっき、サフィーネと会ったんだけど」
「それでここまで足を運んだという訳ですか」
「情報収集の帰り道、みたいなことを云ってたからな。お前にまた何か頼まれたのかって思ったんだけど。違うのか?」
「今は特には何も。恐らくは人脈の維持に時間をかけていたのでしょう。強いコネクションほど、情報収集に効果のあるものはありませんからね」
 ふうん。気のない返事をして、暫く。マサキはシュウの手で捲られる本の頁に目を落としていた。相変わらず何が書かれているのか微塵も理解出来ないような本を読んでいる。サフィーネにされたことを口にすべきなのだろうか? 勢いに任せてここまで足を運んでしまったものの、いざシュウの姿を目の前にすると上手く言葉が出てこない。マサキは黙り込んだ。
「何かありましたか、マサキ?」
 本を捲る手を止めたシュウがその表紙を閉じると、肩からマサキの頭を剥がした。両頬をやんわりと包む滑らかな手。とても工学研究に従事している科学者の手とは思えない。その手にされるがまま顔を上げて、「いや、別に……」自分を真っ直ぐに見凝めてくるシュウの眼差しに耐え切れなくなったマサキは云った。
 訊いてどうなる話でもないのだ。
 だったら取り立てて口にすることでもあるまいと、次いで抱き寄せてくるシュウの腕の中。マサキはそろそろと身体を支配し始めている眠気に目を伏せた。「その割にははっきりとした残り香ですよ、マサキ」このままなかったことにしてしまえばいい。そう思ったマサキの耳元に降りてきたシュウの口唇が、息かかる距離でそっと言葉を吐く。
「それに口の端に口紅が残っている」
「あ……っ!?」
 こうも明瞭りと指摘されれば目も覚めようというもの。マサキは咄嗟にシュウから身体を離すと、再び口元を拭った。うっすらと手の甲に移る赤い口紅の痕。「云ってくれれば見逃したものを」ふふ……と静かな嗤い声を立てて立ち上がるシュウに、マサキの動揺は限りない。
「あなたたちふたりには、何があったのか事情を訊く必要がありそうですね」
 マサキの目の前でテーブルの上に置かれた携帯型小型端末を開いてみせたシュウが、キーを叩いて何かを打ち込んでいる。サフィーネに事情を訊ねるつもりなのか、それとも直接ここに呼び出すつもりなのか。いたままれない気持ちでその姿を眺めながら、マサキはシュウがその操作を終えるのを待つ。
 
 それきり、本を読み耽るシュウの隣で待ち続けること暫し。合鍵を持っているらしい。気楽な様子で家に上がり込んできたサフィーネは、シュウにマサキに口付けた理由を訊ねられると、悪びれる様子もなく。「どういった味がするのか、知りたかったものですから」むしろ愉しくて仕方がないとばかりに艶然と微笑んでみせたものだった。
「それに、間接的にでもシュウ様の口唇の温もりを感じてみたかったのですわ」
 いじらしいというよりは張り合っているようにも取れる態度。女であることを武器に出来る女は、だからといって弱々しい女を演じるつもりはないらしい。しらと云ってのけたサフィーネは、ソファに座るシュウとマサキの前。優美に立って、試すような眼差しでシュウを見下ろしていた。
「いじましい女心の発露というつもりですか。だからといって見逃すほど、私は優しい性格ではないのですがね、サフィーネ」
「承知しております」
「あなたには罰が必要だ」
「それも充分に承知しておりますわ。何をなさっていただけるのでしょう、シュウ様」
 嗜虐と従属、その両方の指向性を併せ持つサフィーネは、シュウにされることであれば何でも受け入れられるのだ。それは罰すら褒美と受け止められるほどに、サフィーネの心を寛容にさせているに違いない。紅蓮のサフィーネの二つ名からは想像も付かないしなやかさとしたたかさ。それはいつでも艶やかに彼女を彩っている。
「あなたには何もしませんよ、サフィーネ」
 ただただ嬉しそうに微笑んでいるサフィーネに、けれどもシュウはシュウでその性質を熟知しているのだろう。穏やかに微笑みながら云って、マサキに向き合うとその両手首を掴んだ。掴んで、両手を肩まで引き上げ、
「口を開きなさい、マサキ」
「な……嫌に決まって……」
「ほら、マサキ」
 無理に重ねられた口唇にマサキは固く口唇を閉ざす。一度……二度……三度。触れては離れる口唇に、冗談じゃない。マサキは口唇を閉ざし続ける。人前での口付け。しかも目の前に立っている女は自分の口付けの相手に好意を抱いている。こんな入り組んだ状況に耐え切れるほど、マサキの心は無神経にできてはいないのだ。それなのに。
「あなたへの罰でもあるのですよ、マサキ。もう一度云います。口を開きなさい。口を開かなければこのままですよ」
 何度も触れる口唇にいやいやと首を振るも、追いかけてくる口唇はマサキの口唇を奪うのを止めない。「酷いことをなさいますのね」そう云う割には笑っているように聞こえるサフィーネの声。愉しんでいやがる。彼女の目の前で繰り返される口付けに、マサキはついに折れた。
 細く口を開く。
 開いた途端に押し入ってきた舌が、マサキの舌を搦め取る。
 そもそも疲れて油断していたとはいえ、マサキにとっては不意打ちの出来事。だのに辱めを受けなければならないのは自分の方だなんて理不尽だ。シュウとサフィーネ。自分とはまた違った絆を持つふたり。まるで結託しているような結果にも取れるだけに、マサキにはそのどちらもが憎たらしい。
 そう思いながらも、深く合わさった口唇の下。いつ終わるとも果てないぐらいに舌を絡められ続ければ、次第にマサキも馴染んだ行為に応えるようになってゆく。
 息をすることすらもどかしいほどに激しく自分を攫《さら》う口付け。その全てを飲み込むようにマサキは溺れる。自ら舌を絡めてシュウの舌を味わいながら、時に吸い、時に啄み、時に深く合わせる……素直に口付けに応じるようになったマサキに満足したのだろう。やがてゆっくりとその激しさがなりを潜め始める。そうして、味わい尽くしたといった感じで抜き取られた舌に、剥がれる口唇。マサキは伏せた目を開いて、長く息を吐いた。
「お邪魔にならない内に帰りますわ」
 からかうようにそう言い放ち、微笑みながら背中を向けたサフィーネを追うようにシュウが立ち上がる。少しの空白。悠然とした足取りで歩み寄る長駆が、「サフィーネ」と、その名を呼んだ。
「何でしょう、シュウ様」
 ぼんやりと口付けの余韻にひたりながら、シュウの行動の行き着く先を見守っていたマサキの目の前で、一瞬、その口唇が触れ合った。「シュウ……様……?」さしものサフィーネもその行動の可能性には思い至っていなかったのだろう。驚きを禁じ得ない様子で、目を見開いたまま立ち尽くしている。
「帰っていいですよ、サフィーネ」
「畏まりました。失礼いたします、シュウ様」
 そう、そしてそれはマサキも同様に。
 何を思ってシュウはサフィーネの口唇を奪うような真似をしたのだろう。背中を向けてサフィーネが部屋を出るのを黙って見送るシュウの表情は窺い知れない。それが悪戯にマサキの心を騒がせる。
 口付けの激しさに安心したのも束の間。動揺し、さんざめく心。嫉妬とも不安とも付かない気持ちがマサキの中で入り乱れている。
 ――カチャン……。
 玄関扉の閉まる音を聞き届けたシュウが、マサキを振り返る。振り返って、口唇に残る口紅の跡を指先で拭い去りながらこちらに向かって歩いてくる。「お前、何で……」それだけ怒っているということなのだろうか? マサキは恐る恐る疲れ果てた様子でソファに身を収めたシュウに問い掛けた。
「嫉妬ですよ、マサキ」笑顔の消えた表情でシュウは言い放つ。「あなたの口唇の温もりを彼女に覚え続けられるなど、私には耐えられそうにない」
 そして溜息とも付かない息を長く吐くと、「隙を見せるのは止めなさい、マサキ。彼女はああいう女《ひと》だ。あなたも玩具《おもちゃ》扱いされたくはないでしょう」云って、マサキの身体を自分の肩に預けさせてから、ソファの上に置かれていた本を膝の上。シュウは何事もなかった様子でその続きを読み始める。
 
 
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