お題リベンジ編第二回なんですけど、なんだかまた雲行きが怪しく……
おかしいな、マサキがもうちょっと小狡く甘える筈だったんですけど。その為にこういう設定にした筈なんですが、何故こんなことに……まあふたりが仲良くしてはいるので、いずれはどうにかなると思いながら書き進めることにします!!!!!
では、本文へどうぞ!
レスは夜に返しますヽ(´ー`)ノ
.
おかしいな、マサキがもうちょっと小狡く甘える筈だったんですけど。その為にこういう設定にした筈なんですが、何故こんなことに……まあふたりが仲良くしてはいるので、いずれはどうにかなると思いながら書き進めることにします!!!!!
では、本文へどうぞ!
レスは夜に返しますヽ(´ー`)ノ
.
<家族の肖像>
誕生日なのだそうだ。
愛娘の誕生日を盛大に祝ってみせる養父は自身の誕生日には全く頓着しないらしく、毎年のこととはいえ、プレシアがプレゼントに欲しいものを尋ねても碌に答えることがないのだとか。それだったらせめて豪華な料理を揃えて、きちんとした誕生日の席を設けてやりたい。彼女の望みに、尤もだとマサキは頷いたものだった。
それとマサキがゼオルートを連れ出す話がどう関係してくるのかというと、プレシアとしては父親の目の届く場所でその支度をするのが嫌で堪らないらしい。他にプレゼントらしいプレゼントのない誕生日。だったらせめてパーティを始めるその瞬間まで、その祝いの席に並ぶメニューがが何であるかわからないようにしたい。
確かに彼女のその考えもわからなくはない。
起き抜けのマサキ相手に早口でまくしたててきたプレシアは、時間のなさにかなり焦っている様子だった。どれだけの料理を準備するつもりでいるのかは不明だが、家事が得意なプレシアのことだ。きっと相当に豪勢な料理を準備するつもりでいるに違いない。だからこそパーティの準備が終わるまで、マサキにゼオルートを連れ回して欲しいのだろう。
要はプレシアはゼオルートにサプライズを仕掛けたいのだ。
――早く帰って来たら、その分、料理が減るからね。おにいちゃん。
かくてプレシアに背中を押されたマサキは、適当な用事をでっちあげてゼオルートを街に連れ出すことに成功したのが、いざ彼女がパーティの支度を終えるまで時間稼ぎをするとなると、買い物ひとつ程度の用事では用を足すのに満たない気がしてならなくなった。
それもこれもゼオルートの厄介な性格の所為である。彼は日常生活に修行の要素を盛り込むのが好きらしく、掃除のついでに体力づくりをさせるなどといったことなどは日常茶飯事だったが、よもやたかが買い物出掛ける道にまでにそうした要素を盛り込んでくるとは――。街に入ったマサキは、相好を崩して立っているゼオルートに愚痴めいた言葉を吐かずにいられなかった。
「魔装機で駆けっことかどういう神経してんだよ、おっさん」
「いい訓練になったでしょう、マサキ」
「訓練とかそういう問題じゃねえよ。偶にはゆっくり買い物って思ってたのに」
時間稼ぎをしたいマサキとしては、公共交通機関を使ってゆっくり街に出るつもりであったのだが、腐っても剣聖として数多くの弟子を育て上げてきただけはある。ゼオルートはそうのんびりとマサキに用事を済まさせる気はないようで、当然とばかりに魔装機に乗り込むと、街にどちらが先に着けるかと競争を仕掛けてきた。
勿論彼のことだ。決定的にマサキを置いて行くような真似はしなかったものの、プレシアから時間稼ぎを命じられているマサキとしては、彼のこうした振る舞いはいつものこととはいえ、先行き不安な思いに囚われずにいられなく。
「ゆっくりしたかったのですか、マサキ」ゼオルートの丸眼鏡の奥の瞳が瞬く。
マサキの言葉を聞き留めてわざわざ尋ね返してきたゼオルートに、マサキはなるべく不自然にならないよう言葉を選んで答えた。
「せっかちにするもんじゃないだろ、買い物って。安物買いの銭失いって云うしよ。下手な物を掴まされちゃ堪ったもんじゃねえ。ましてや服なんだぜ? あっという間に傷んじまったら元も子もないだろ。多少は吟味をしないことには、長く着れる服は買えねえしな」
「ちゃんと考えていたんですねえ」これは意外と表情を変えたゼオルートが、マサキの頭に手を置く。「大丈夫ですよ、マサキ。流石に街の中では何もしませんよ。下手にはぐれられてしまっては、あなたを探すのが難しくなりますからね」
「子どもじゃねえっての」マサキはその手を払った。
確かにマサキは目を離されたが最後。どこまでも果てしなく迷っていける才能を有している奇特な人間ではあったが、だからといって年齢に対する自尊心を失ってしまうまでに意気地のない人間でもない。それをゼオルートは駆けっこの所為だと思ったらしかった。「帰りは普通に魔装機を操縦して帰りましょう」と、にこやかに云ってのける。
「そうしてくれよ。制限時間を意識しながら家に帰るなんて、愉しくもなんともねえだろ」
「ちゃんと家だと思ってくれているんですねえ」ゼオルートが再びマサキの頭に手を置く。「嬉しいですよ、マサキ」
時にまるでよちよち歩きの赤子を愛でるようにマサキを扱ってくるゼオルート。彼の父性はマサキを安心させる時もあれば、居心地を悪く感じさせることもままある。こういう時は後者だ。やたらとマサキを構ってきては過剰なスキンシップを試みてくるゼオルートは、マサキがどれだけ拒否を繰り返しても挫けるということを知らない。
マサキは溜息をひとつ洩らした。
いつだったか、男の子も欲しかったんですよ。そう云ったこともあったゼオルートは、その望みが叶ったからだろう。公衆の面前だろうと構わず、プレシアを構うようにマサキを構ってみせたものだ。なんだかなあ。頭を撫でてくる彼に、マサキは仕方なしとさせたいようにさせることにした。
「ところで、マサキ。朝食は食べたのですか」
「いや、まだだぜ。街で食えばいいかと思ったしさ」
ひとしきり撫でて満足したのだろう。手を戻して大通りへと目を遣ったゼオルートに、マサキもまた大通りへと目を遣った。
人波が出来ている大通りの両脇には様々な店が軒を連ねている。喫茶店、レストラン、洋品店に宝飾店。骨董屋があれば古書店もある。これだけの種類の店があれば、ただ通りを歩くだけでもかなりの時間を潰せそうだ。マサキはプレシアの頼みを無事にこなせそうな街の様相にほっと胸を撫で下ろした。
とはいえ、腹が空いているからだろう。仄かに漂ってくる食べ物の匂いに食欲を擽られて仕方がない。喉の奥に溜まった唾液もさることながら、鳴り止まぬ腹。そのマサキの様子が目に余ったのだろうか? ゼオルートがにこやかにマサキを振り返った。
「なら、先ずは食事にしましょう。私もそろそろお腹が空いてきましたよ。何か食べたいものはありますか、マサキ」
云われたマサキは考えた。肉に魚、ライスにパスタにサンドイッチ。選べる料理は山程ある。
通りに面しているレストランや喫茶店もさることながら、中央に停まっているキッチンカーも魅力的だ。食べ歩きに丁度いい串焼き、フライドポテト、フィッシュ&チップス……デザートに持って来いなアイスやクレープ、ドーナッツ。どれにするかな。マサキは宙を仰いだ。空腹のときに食事を選ぶ瞬間ほど、人を優柔不断にさせるものもない。
「ゆっくり選びましょう。食事は逃げませんから」
ゼオルートの言葉に従ってひたすらに考え抜く。白米と焼き魚、パンとハンバーグ。脳裏に思い浮かぶ料理のどれもが美味しそうに感じられて仕方がなくなったマサキは、そこから三分ほど。悩みに悩んだ末に口を開いた。
「ハンバーガーにする」
もっとしっかりとした昼食を摂っても良かったが、この後のこともある。今頃、館に残ったプレシアは腕によりをかけたパーティ料理を用意しているに違いない。彼女がどういった料理を用意するつもりかマサキにはわからなかったが、その料理を残さない為にも、ここは腹八分目で済ませておくのが正しい選択だろう。
「好きですねえ、肉料理」
日頃、好んで肉料理ばかりを口にしているのを見ているからか。マサキの言葉を受けて、呆れたような表情を浮かべたゼオルートに、悪かったな。頬を膨らませてマサキは云った。あんたの娘の為だよ――と、続けてつい口を吐いて出そうになる言葉を飲み込む。
「いいから早く飯にしようぜ。腹が減った」
代わりにそう言葉を継げば、ゼオルートは知っている店があるようだ。通りを折れる道を指差してみせながら、
「ハンバーガーなら、そこから少し入った所にある店が美味しいですよ」
「本当かよ。あんたの味覚は時々俺とずれるからなあ」マサキは大通りを眺めた。
昼時とあっていっそうの賑わいをみせている大通りでは、そこかしこに人垣が出来ている。キッチンカーのデザートに群がる若者たち、レストランで順番を待つ家族連れ……独りでゆっくりと食事を愉しみたいらしい人々が喫茶店のショーケースを眺めているのを、マサキは目にしながら、「それに、こういう時は大通りの店で済ますもんじゃないのかね」
「あなたがどうしてもそうしたいというのであれば、それでもいいですよ。どうしますか、マサキ。取り敢えず大通りを歩いてみますか」
「そうだな……」マサキは悩んだ。
食事をして、買い物をする。それでプレシアがパーティの準備を終えられるだけの時間を稼がなくてはならない。公共の交通機関を使っていればまだしも、帰りも魔装機を使う以上、その道程で時間を稼ぐのは無理だ。
行こうぜ、おっさん。マサキは芋の子を洗うように人が押し寄せている大通りへと足を踏み出した。
恐れることなく人波の中へと踏み入れて行ったマサキに焦ったようだ。ああ、マサキ。待ちなさい。ゼオルートが慌ててマサキのジャケットの袖を掴んでくる。「あなたはどうかすると直ぐにはぐれてしまうのですから、気を付けないと」
「ああ、うん。まあそれは……」マサキは鼻の頭を掻いた。
西に向かったと思えば北にいる。東に向かったと思えば来た道を戻っている。そのぐらいの間違いが日常茶飯事なマサキに、さしものゼオルートも心配が尽きないようだ。ほら、掴んで。自身の衣装の裾をマサキに掴ませながらゼオルートが云う。
「いいですか、マサキ。迷ったら、その場でじっとしていること。探すのは私の役目です。動き回られては見付けられるものも見付けられなくなってしまいますからね」
「子どもじゃないんだがなあ」
「そうでもしないとあなたは果てしなく迷い続けてしまうでしょう」マサキが自身の衣装の裾を掴んだのを確認したゼオルートは、それで幾許か安心したようだ。笑みを浮かべると顔を上げた。「先ずは左側の店を見てみましょう。あなたが気に入る店があるといいですね」
.
PR
コメント