いかん!?
敗北の気配がひしひしと……!
何かまだマサキが甘える気配がないんですけど、甘えるってどうやるんでしたっけ?(汗)
駄目だったら最悪別ネタで書き直すことにして、続きです。
釣りってどうやるか知らないまま書いてるんですけど、これでいいんですかね……
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敗北の気配がひしひしと……!
何かまだマサキが甘える気配がないんですけど、甘えるってどうやるんでしたっけ?(汗)
駄目だったら最悪別ネタで書き直すことにして、続きです。
釣りってどうやるか知らないまま書いてるんですけど、これでいいんですかね……
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<For the longest time.>
持って出たのは釣り道具だけだった。
家の裏手にある森の中を、魔装機にも乗らず、食事も持たず、歩くこと1時間ほど。木々の合間から差し込む陽射しが柔らかく降り注ぐうららかな陽気の中、清流と呼ぶに相応しい透明なきらめきを湛えた小さな川に行き当たったゼオルートが、早速と河原に居場所を定める。
「ほら、マサキ。あそこに魚が溜まっていますよ。これは釣果が期待出来そうですね」
岩場の影を指差して微笑むゼオルートに、視線を川へと向けてみれば、確かに数匹の魚が身体を休めるように岩場の影に溜まっている。釣れるといいんだけどな。マサキは肩に下げていた釣り道具を河原に置いた。
「大丈夫ですよ。糸を垂らしていれば、いつかは釣れます」
「その台詞が不安なんだよ、おっさん。もっとこう、テクニック的なこととかさ、心構えとかさ、他に云うことあるだろ」
釣りをしたことはあるが、まともな魚を釣ったことは数えるほど。食事を持たずに家を出たということは、釣果を食事とするつもりでいるのだろう。そろそろ空腹を感じ始めているマサキとしては、大して腹を満たせずに帰路に就くのは避けたかった。
道中では大した話をしなかった。
既に姿のなかったプレシアが何処に行ったのか……他の魔装機操者たちが何をしているのか……季節によって香りを変えるラングランの風が清涼とした森の匂いを伝えてくる中、マサキはゼオルートと並んで歩きながら、彼の止め処ない話を聞き続けた。
「しかし、マサキ。先ずは糸を思ったところに垂らせないことには始まりませんよ」
「まるで俺が釣りひとつ出来ないみたいに云うじゃないか」
鬱屈とした感情は未だにマサキの心の中で燻ぶり続けている。
たかが悪夢、されど悪夢とはいえ、馬鹿には出来ないものだ。夢ひとつに振り回されている自分が馬鹿らしくて仕方がないのに、自分で自分の気持ちを鎮めることが出来ない。苛立ち紛れに言葉を吐けば、出来るんですか? 真面目な顔付きでゼオルートが尋ねてくる。やったことはある。マサキは答えて釣り道具が収まったバッグを開いた。
「そういうおっさんはどうなんだよ。出来るのかよ、釣り」
「糸を垂らすぐらいなら出来ますよ。まあ、見ていてください。今日の晩御飯は豪華に魚料理と行きましょう」
「本当かねえ」
ゼオルートと話をしながら釣竿を組み立て終えたマサキは、早速とそれを幾度か振ってみた。少々硬く感じられはするものの、ゼオルートもそこまで道具に拘るほど釣りに造詣がある訳ではないのだろう。
まあ、こんなもんだよな。マサキは呟いた。
マサキ自身も釣りの玄人という訳ではない。これでいいだろうと早速餌を付けた釣竿を投げる。ぽちゃん。狙い通りに川の中心付近に沈んだ釣り針に、ほらな。と、マサキはゼオルートを振り返った。
「なら、ふたりでいっぱい魚を釣り上げることにしましょう。先ずは今日の昼食の分ですね」
「やっぱ魚料理なのな。昼も夜も魚ってなると暫く魚はいいってなりそうだ」
隣で釣竿を振ったゼオルートが、プレシアは料理上手ですからね。どこか得意げに言葉を吐く。泰然自若とした剣聖の唯一の泣きどころ。愛娘のこととなると表情が変わるのは何処の世界の父親も同じであるようだ。
「少しは可愛い娘の負担を軽くしてやろうとは思わないのかね、このおっさんは」
「はは……それは……その、私にもやらなければならないことが多くて……」
その可愛い愛娘であるプレシアに家事を任せきりにしているゼオルートに、マサキは嫌味混じりに言葉を吐いた。ゼオルートもその点には自覚があったようだ。気まずそうに笑ってみせると、歯切れ悪く言葉を継ぐ。
「それに、その……手伝おうにも、プレシアに怒られるのですよ。余計なことをしないで、と」
「おっさん、そういうの本当に苦手そうだものな」
「幾ら私でも、庭に水を遣るくらいは出来るんですがねえ」
国の剣術指南役の栄誉に与っているゼオルートの許には、日々様々な人間が訪れる。魔装機操者は云うに及ばず、王宮騎士団の面々に歴戦の戦士たち……それはそれだけの数の人々に、ゼオルートが剣技を授けた証でもあった。
彼らをもてなすのは、いつだってプレシアの役目だ。
お茶だ世間話だとかいがいしく立ち回ってみせる彼女は、自分より遥かに年嵩の客人にも動じることがない。まるで女主人といった風格すら漂わせているプレシアに、誰に似たんだか。マサキが呟けば、妻ですよ。ゼオルートは懐かしそうな眼差しで言葉を継いだ。
「家のことは任せてと笑う女《ひと》でしたよ。いつも家の中を忙しそうに動き回っていましたっけね。そうした妻の姿をプレシアは覚えているのでしょう」
「そっか。それじゃあ仕方ねえな」マサキは釣り竿を引いた。
手応えを感じた筈の釣り針には、けれどももう餌は付いていなかった。はあ。先行き不安な始まりに、マサキが大袈裟に溜息を吐いてみせれば、ゼオルートは眼鏡の奥の瞳を柔和に細めてみせた。
「大丈夫ですよ。まだ釣りは始まったばかり。最終的に釣果があればいいのですよ」
「こうしたことが続けば釣果もへったくれもないだろ」
再び釣り針に餌を付けて竿を投げたマサキに、「何事も順風満帆とはいかないのが世の常ですよ、ほら」どうやら魚がかかったようだ。ゼオルートが釣竿を上げた。小さな川魚。手のひらに乗るサイズしかない小魚に、ゼオルートは残念そうな様子をみせる。
けれども餌を取られただけで終わったマサキに比べれば、遥かに立派な釣果だ。
くそ。マサキは糸を巻きながら竿をゆっくりと左右に振った。魚が餌を突いている感触はある。後は上手く餌を食わせて釣り上げるだけだ。
「絶対に大物を釣ってやる」
「おや。やる気ですね、マサキ」
「腹が減ってるんだよ」巻き上げた糸をまた川に放る。「さっさと大物を釣って、昼飯だ」
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