これにて、今回のリクエスト企画は終了です!
お付き合い及び、リクエストを本当に有難うございました!
今後のスケジュールについては、また改めて日記などでお知らせします。とはいっても、暫くは猫の日ネタの完結を目指す形になりますが……と、いったところで本文へどうぞ!
お付き合い及び、リクエストを本当に有難うございました!
今後のスケジュールについては、また改めて日記などでお知らせします。とはいっても、暫くは猫の日ネタの完結を目指す形になりますが……と、いったところで本文へどうぞ!
<箱の中の悦楽>
「う……ふ……く……っ」
ぎっと引き絞っても、少しすれば緩む口唇。隙間から洩れ出てくる吐息混じりの喘ぎ声が、自らのものとは思えないほどに甘さを増してゆく。
「や、だ……止めろって……」
硬く閉ざされた扉に手を当てて何度か押してみる。だが、矢張り底なしの魔力の持ち主が魔法で封じただけはある。ぴくりともしない扉と、その向こう側から聞こえてくる技術者たちの話し声。彼らの仲間が一刻も早く戻ってくることを願いながら、マサキは自らの乳首にぴたりと張りついているシュウの指先に意識を寄せた。
たった数本の指――しかも局所的な愛撫であるというのに、身体の芯を嬲られているような感覚がある。あっ、あっ。途切れ途切れに口を吐く喘ぎ声。ホント、止めろって。マサキは扉に付いた手に顔を被せながら、小声で抵抗の意を唱えた。本当にそう思っているのですか。マサキにより身体を密着させてきたシュウが、耳介を口唇で挟み込んできながら囁きかけてくる。
「当たり、前だろ――……ここ、を、何処だと、思って……」
「ここでなければいいの?」
深く考えずに吐いた言葉が意味することに気付いたマサキの背中を怖気が走る。シュウがこういった隙を逃すような男でないことを、マサキは良く知っている。藪蛇だ。公開先に立たずとは良く云ったものだが、今更口にしてしまった言葉を引っ込められる筈もない。
するりと肌を伝って下りてきたシュウの手が、マサキのジーンズにかかる。止めろ止めろと口にする割には、正直な身体ですね。脳を溶かすような甘い低音。耳孔に舌を挿し入れてきながら、シュウがマサキのジーンズの留め具を外す。
「駄目、だ。こ、こじゃ……」
微かに擦り下ろされたジーンズ。臀部で止まった履き口を、けれどもシュウはそれ以上下ろすつもりはないようだ。下着の中に手を潜り込ませてきたかと思うと、とうに硬くなって久しいマサキの男性器に手を這わせてくる。
「安心してください。こんなに狭い場所では流石に無理ですよ」
亀頭をやんわりと包み込んでくるシュウの手。指の腹で尿道口を摩られたマサキは声を上げた。っ、ああっ。腹の底に突き抜けてくる快感が、立っているのも覚束ないほど膝から力を奪ってゆく。や、め。ホントに、やめ。扉越しに聞こえてくる耳障りな技術者たちの声。シュウとの関係が露見するのが怖いからこそ、一向に止むことのないその声が鬱陶しく感じられる。
如何に艦の日常を支える技術者たちとはいえども、たった一枚の扉で隔てられたせせこましい空間で、艦のエースパイロットが淫欲に耽っているとは思わないに違いない。軽やかに響いてくる笑い声。それは例えるのであれば、夜と昼だった。マサキと彼らが身を置いている世界にはそのぐらいの隔たりがある。
わかっているのに、逃れられない。
非日常的なシチュエーションで与えられる半ば強制的な快楽。それはマサキを逃げ場のない袋小路へと追い込んでいった。
「好きでしょう、こうされるの」
ぞっとするほどに柔らかい声音。紡がれる言葉に頷きたくなるのを堪えながら、マサキはシュウの愛撫に身を任せた。
「ねえ、マサキ……」
男性器の先端から滲み出た体液が滑りを良くしているのだろう。尿道口を攻めてくる彼の指の動きは滑らかで、乳首を撫で回している指や耳を舐っている舌と相俟って、例えようのない快楽をマサキに齎していた。
だのに、|達《い》けない。
ゆったりとした|律動《リズム》で動く彼の指は、マサキに決定的な快感を与えまいとしているかのようだ。それがマサキには憎らしくて、もどかしくて、そして焦れったかった。あ、あ、シュウ。いい加減に。けれども、その先を口にしないだけの理性が残ってしまっている。マサキは、今一度、口唇を引き絞った。そして、いつの間にか大量に口内に溜まっていた唾液を飲み込んだ。ごくりと喉が鳴る。ん、んんっ……くぐもった喘ぎ声が熱を増した吐息とともに、口唇の合わせ目から滑り出てくる。
|達《い》きたい。
マサキの抵抗を儚いものだと嘲笑うかのように震える膝。今にも崩れ落ちそうな身体を支えているのは、外界に繋がる目の前の扉と、背中に身体を密着させているシュウの腕だけだ。暗く、せせこましい魔の4-N資材倉庫。開かずの倉庫の中で繰り広げられている光景を、どうして技術者たちが気付けたものか。
「どうです、マサキ。そろそろ限界が近いのでしょう?」
シュウに耳を吸われたマサキは、腰を逸らした。
あ、あ。長く愛撫を続けられた身体が限界を迎えているのが伝わってくる。あ、あ、シュウ。些細な刺激でさえも、腰に響いて仕方がない。より深く、亀頭の窪みに指を押し込んできたシュウに、マサキは理性の糸が切れるのを感じ取った。
も、っと。根負けしたマサキは、小さく声を放った。
もっと? 自らが放った愛撫を求める言葉を、これみよがしにシュウが反芻してみせる。どうされたいの? マサキの耳元でクックと声を殺して嗤った彼が続けた言葉。マサキの口から云わせようとするのが、性格の捻じ曲がった男らしい。
「イカせろ……って、云ってんだよッ……」
「なら、場所を変えましょう。ここではこれ以上あなたを愉しませては上げられませんから」
肌から離れたシュウの手が、扉に押し当てたままのマサキの手に重なってくる。絡まる指。耳から頬へと口唇を滑らせてきた彼に、マサキは僅かに振り返った。そうして、半身を開いて、彼の口唇へと。自らの口唇を重ねていった。
※ ※ ※
口付けの後はボディタッチ。続く愛撫にマサキはまたも喘がされたが、程なくして仲間が戻ってきたのだろう。扉の向こうから技術者たちの声が遠ざかった。
※ ※ ※
口付けの後はボディタッチ。続く愛撫にマサキはまたも喘がされたが、程なくして仲間が戻ってきたのだろう。扉の向こうから技術者たちの声が遠ざかった。
音の消えた通路に、マサキはほっと胸を撫で下ろした。これでやっと楽になれる。シュウに衣装を直してもらったマサキは、最後にもう一度彼と口付けを交わしてから資材倉庫を出た。
ずうっと暗がりに身を潜めていたからだろう。光が目に痛い。目の前に広がる人けのない通路に目を細めたマサキは、これからどうするのかと背後に立つシュウを振り仰いだ。
「行きますよ、マサキ」
そうした感覚の違いには無頓着らしい。いつもと変わらぬ面白味のない表情。マサキにひと声かけたシュウが、付いてくるのが当たり前だとばかりに先を往き始める。
マサキは後を追った。
ややあって、靴音が重なり合う。あんまり、待たせるなよ。シュウに肩を並べたマサキはそう云って、余裕に満ちた笑みが浮かぶ彼の横顔を見上げた。
まるでマサキが従属するのをわかっているような顔。小憎たらしくて仕方がない。それだのに、マサキはシュウとのこの歪んだ関係を清算出来ずにいる。
「安心してください、マサキ。直ぐ、ですよ。そう、続きは直ぐにね」
マサキは喉を鳴らした。シュウが何処を目指しているのかはわからなかったが、自分がその手中に落ちてしまった自覚はある。だから物云わずに頷いた。頷いて、彼の顔を直視する気恥ずかしさに耐え兼ねて視線を逸らした。
彼と肉体関係を持ってからのマサキは、調子が狂いっ放しだ。
それまでのマサキは、無聊を慰めるように自慰に走ったものだったが、シュウとの性行為を覚えてからは、極端にその回数が減った。そもそも中々達せない。達することが出来たとしても、彼が与えてくれる快楽には遠く及ばない。
それは即ち、マサキに残された道はひとつしかないということだ。
身体に残るこの疼き。シュウの言葉で呼び覚まされた感覚が、呆気なく全身を飲み込んでゆく。モット欲シイ。それは他人が心の中に棲みついてしまったかのような渇望だ。モット欲シイ。逃れたいのに、勝手に足がそちらを向いてしまう。
だからマサキは往った。抗い難い欲望が命じるがまま。
行き先不明なこの道を、シュウとの|性行為《セックス》の為に。
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