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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

あなたが思うよりも
ずうっと編集作業をやっていたこともあって、小説の書き方がわからんくなった@kyoさん。(実はよくある)リハビリついでにワンライは?と砂さんに提案されたので、お題を出していただいてやりました。

シュウマサワンライお題:黄色



<あなたが思うよりも>

 風が吹き抜けた気がした。
 ザムジードの操縦席にいる筈のミオでさえ感じ取れる気配。頬を打った風にコントロールを急ぐも、正面モニターに捉えていたサイバスターの姿が掻き消える。しまった。と思ったところで、機動力に劣るザムジードでは、その攻撃から逃れるのは不可能だ。
 直後、全身に襲いかかる衝撃。ミオは両足を踏ん張って操縦席にしがみついた。モニターの端に映し出されているダメージゲージが凄まじい勢いで上昇してゆく。耐久性に勝るザムジードであっても耐えきるのが難しいダメージは、マサキが急所を突いてきたことを示していた。
「一本取ったぜ!」
 衝撃が収まるより先に、通信機から響いてくるマサキの陽気な声が、勝負が決したことを伝えてくる。
 後は|自己回復能力《サバイバビリティ》に任せるしかない。ミオは|警報音《アラート》が鳴り響く操縦席から、使い魔たちとともに脱出した。ひと足先にサイバスターから降りていたらしいマサキが、清々しいまでに輝かしい笑顔を向けてくる。
 悔しいわ。ミオは口をへの字に曲げて呟いた。
「お前もまだまだだってことだろ」
「今ならもうちょっと戦える気がしたんだけどなあ」
 ミオは平原に寝転んだ。
 ピクニックに行こうぜと誘ってきたのはマサキだった。他の面子の姿がないことに疑問を感じもしたが、稀にはあることだ。ミオは深く考えずにマサキの誘いを受けた。
 その結果がこれだ。
 昼飯の前に腹ごしらえをしようぜ。開けた平原に出るなり、まるで散歩に出るかのように気軽に云ってきたマサキに、久しぶりの休暇ぐらい大人しく過ごせないのかとミオは思ったが、味方同士で戦闘訓練が出来る機会はそうそうない。とはいえ、受けて立ったミオにも責任があるとはいえ、損壊保持ラインを超えるダメージを一度に叩き込んでくるマサキの容赦のなさには思うところがある。
「っていうかさー」
 ミオはバスケットを片手に隣に腰を下ろしたマサキの顔を見上げた。
 始めて出会った頃と比べると、格段に逞しさが増した。少年の面影が消えつつあるマサキに、ミオは溜息を吐きつつ身体を起こした。プレシアお手製のランチ。バスケットの中のサンドイッチに手を伸ばしながら続ける。
「休みの日にあたしと戦闘訓練って、それでいいの?」
「何でだよ」
「いやー、マサキももういい年頃だしー?」
 スモークチキンにレタス、トマト、キュウリ。マスタードの利いたサンドイッチを口に頬張る。流石は幼少期より家事を一手に引き受けてきたプレシアのサンドイッチだけあって、舌が溶けるかと思うくらいに美味い。ミオはサンドイッチを咀嚼しながら、同様にサンドイッチにかぶりついているマサキの横顔を窺った。
「いい年頃って云ってもなあ。その都度あいつを誘えってか」
「そういうところじゃないの?」
 ミオは眉を顰めた。
 守護精霊の働きそのまま。風来坊気質なマサキは、ときに誰かに縛られることを嫌っているような振る舞いをしてみせる。それは仲間と同じ時間を過ごしているのにも関わらず、一歩引いた位置から言葉を吐くような馴染まなさだった。かといって、輪に加わることを嫌がっているのとは違う。面白ければ笑い、揶揄われれば照れる。要は、自分の深いところに他人を立ち入らせたくないのだ。それにミオが気付いてしまったのは、もう随分と前のことだ。
「そういうところねえ」
「そうやって軽く扱ってると、あとで痛い目見るよ」
「お前ら全員そう云うのな。べたべたした付き合いをするほど、あいつも俺も子どもじゃねえってのに」
「マサキはそうだろうけどねえ」
 ミオは平原の先に視線を向けた。そして、ぼんやりと浮かび上がるシルエットを捉えて目を開いた。
「ほらあ。やっぱり」
 色を濃くする青い影。大地を滑るようにして、こちらに迫ってくるグランゾンに、「あれは絶対マサキを探してたんだって」と、ミオは苦笑を浮かべた。
 独占欲の強い男なのだ。
 戦場ではドライに振舞う男は、マサキを相手にすると途端にウエットになる。それに気付いていないのはマサキだけなのかも知れない。停止したグランゾンから降り立ったシュウが、いつもと変わりない笑みを浮かべているのを見て取ったミオは、ああ怖い。笑いながら、大袈裟に肩を震わせてみせた。




一時間で白河が登場するところまで書けたのが良かったです。
これで白河出なかったら大笑いです!やっちまったどころじゃないwww

ちょっと自信を取り戻しました!
砂さん有難うございました!



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