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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

汚れちまった悲しみに
原稿に行き詰ったので。

今回の個人本はとても難しいですね。自分でもなんでこんなに沼ってるんだ。という勢いで先に進みません。一時間で数百字とかざらにあります。でも悩んだ分、愛しさが増すというもの。頑張ります。



<汚れちまった悲しみに>

「どうしたの、マサキ。何かへろってない?」
 戦闘を終えたミオは、通信モニターに映し出されているマサキにそう語り掛けた。
 任務は廃坑を根城とする山賊の捕獲だった。
 シュテドニアス軍が領内に放置していった魔装機を使っているとはいえ、サイバスターとザムジードであれば、呆気なく片が付く敵だ。実際、戦闘にかかった時間は三十分程度だった。墜とした山賊たちは王立軍が回収を済ませ、収容施設へと移送を始めている。
 けれども、その戦闘の内容は悲惨のひとことだ。魔装機神の名を冠しているとは思えぬ泥仕合。叩かれては叩き返すだけの戦いなど、歴戦の覇者たる魔装機神でしていいものではない。
 そもそも、マサキがサイバスターで広域攻撃サイフラッシュを撃っていれば、ここまで時間がかかることはなかった筈だ。だのにマサキときた日には、生彩を欠いた動きで大太刀を振るうばかり。いつもであれば華麗に躱せる攻撃でさえも見事に食らっていたのであるから、それはミオでなくとも何かあったのではないかと勘繰りもする。
「昨日、あんまり寝てなくてよ」
「ああ」
 ミオは合点がいった。
 合流の時点で不穏だったのだ。あの野郎と不機嫌な様子でミオの前に姿を現したマサキは、セニアに休暇を中断させられたことに腹を立てていたようだ。戦闘中もしきりとセニアの人使いの荒さを愚痴っていた。
 マサキがこういった態度をみせることは稀にある。
 魔装機神の操者としての自覚が存分にあるマサキは、そこまで必死にならずともと思うぐらいには、セニアから与えられる任務に忠実だ。それこそが魔装機神の存在意義だとでも云うように、短い休暇を挟んでは次の戦場へと旅立ってゆく。セニアもマサキを頼りにしているのだろう。サイバスターを出すまでもないという事態に対しても出動を要請することがままあった。
 とはいえ、マサキも人間である。
 時には戦いばかりの日常から離れたくなるのだろう。時々、行方をくらますマサキに、何処に行っていたか尋ねても迷ったの一点張り。けれども、それが気まずさからくる嘘であることをミオは知っていた。迷いに迷った後の割には元気過ぎる。それはマサキが迷ったと云い張っている間に、彼の気力を回復させる出来事が起こっていたからに他ならなかった。
 ――あんまり大っぴらにしていい話じゃねえだろ。
 ミオがその推理を披露すると、苦々しい表情を浮かべながらも、マサキは自分がとある場所で休暇を過ごしていた事実を認めた。
 シュウの許にいたと。
 傍目にもマサキに執着心を抱いているのが伝わってくる|総合科学技術者《メタ・ネクシャリスト》は、いつの間にかマサキの懐の奥にまで潜り込んでいたようだ。だからといってミオは彼らの仲を批判しようとは思わなかった。むしろ、マサキにもそういった感情があったのだと感心したぐらいだ。
「お盛んなのは結構だけど、任務に支障があるのはいただけないなあ」
 数日に渡って行方をくらましているのだ。マサキがシュウの許で夜を過ごしているのは間違いない。
 だからミオはそう釘を刺した。
 シュウとマサキの間に肉体関係があろうがなかろうがミオは一向に構わなかったが、任務に影響を及ぼしているとなると事情が異なる。どれだけ簡単そうに見える任務でもあっても、兵器を扱って戦場に出る以上、そこには命の危機が付き纏うのだ。そうである以上、節度は保ってもらわなければ。
「お前、何か誤解をしてないか」
「誤解って、何?」
 何を云われているか理解出来ないといった表情。通信モニターの向こう側でマサキが首を傾げている。
「俺が寝られなかったのは、あの野郎が俺を抱き枕代わりにするからだぞ。そのくせ、空調エアコンを入れようとしないときてる。昨日の夜はちょっと気温が高かったからな。暑苦しくて敵わなかったぜ」
「そういうこと!?」
「他に何があるんだよ」
 純朴にも限度がある。
 きっとシュウは相当に我慢を重ねているに違いない。シュウの内心を慮って溜息を吐いたミオは、同時に、自身の汚れた思考回路に苦笑いを浮かべるしかなった。





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