またぁ?
またなんですよ。違うんです。例の話がエロに入ったので、最近血中エロ濃度が下がっている@kyoさんとしては、気分の高まりを待つしかなく。てかもう1月18日ですよ!このままだとバレンタインに間に合わない!何とかせねば!!!
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<主人と世話人と>
緊急事態だとチカに呼び出されたマサキは急ぎサイバスターを駆って、彼の|道案内《ナビゲート》を受けながら、シュウが現在住んでいるというアパートメントに向かった。
「来たね、マサキ。チカから話は聞いたかい?」
玄関チャイムを鳴らすと出てきたのはテリウスだった。一体、何が起こったというのか。道案内に必死なチカから話を聞けぬままここに来てしまったマサキとしては、先ずは緊急事態の内容が知りたいところだ。
「聞いてねえよ」
「話せるほど、マサキさんに方向感覚はないので」
マサキとチカの言葉を聞いたテリウスが、だよね。と、納得した様子をみせる。
「だよねって何だよ。てか、あいつらはどうした」
「一気にふたつも質問を重ねないでくれないかなあ。まあ、いいけど」
そう云って、家の中に上がるよう促してきたテリウスに、マサキは一羽と二匹の使い魔を引き連れて続いた。
こじんまりとしたアパートメントの部屋数は三つであるようだ。恐らくはキッチンとリビングと寝室だろう。廊下の左側に並ぶに扉のひとつをテリウスが開く。一面が窓となったリビング。中天に座す太陽からの光が眩いくらいに溢れている室内で、勧められたソファに腰を落ち着けたマサキは、向かいに腰を下ろしたテリウスからの説明を待った。
「先ず、さっきの話だけど、君の方向音痴が重症なのはラングラン国民も知るところ。ラ・ギアス世界を縦横断しても道に迷ってるって気付かないのは君ぐらいだからね。チカが命懸けで君の道案内をしたのも頷けるよ。次、サフィーネと姉さんは、諸事情によりここには立ち入れない。これでいいかい?」
「謎が増えただけじゃねえか。俺の方向感覚の欠如についてはさておき、諸事情って何だ」
「シュウの家に立ち入る許可を出したら、ふたりとも相手を出し抜くのに必死になるからね。だからここは立ち入り禁止にするってシュウがさ」
「あいつも相変わらず苦労してんのな」
金魚の糞――と決して褒められた例えではなかったが、サフィーネとモニカのふたりは、放っておけば四六時中をシュウに引っ付いて過ごしてくれたものだ。
それは彼が読書に励んでいようが、自機の整備をしていようが関係なく。
僅かな隙を見付け出しては手伝いをさせろだの構えだの喧しい彼女らに、さしものシュウとしても思うところが出来たのだろう。彼女らをシュウが立ち入り禁止にしたと聞いたマサキは、彼と彼女らの捻れた関係をこれまでさんざん目にしてきていたからこそ、シュウに同情せずにいられなかった。
「”も“、かあ。君の周りの女性たちに同情するよ」
「煩えなあ」マサキは眉を顰めた。
テリウスはそれほど口が堅くない。こうした発言がいつの間にか仲間の知るところとなっているのは、彼がここだけの話としてモニカに流してしまっているからだ。
その結果、リューネに責められるのはいつでもマサキである。マサキとしては、シュウの話が自分のことにまで飛び火するのは避けたいところだ。
「いいからさっさと本題に入れよ。緊急事態が何だって?」
「シュウの目が見えなくなってね」
「は?」
さらりとテリウスの口から放たれた言葉に、マサキの脳が理解を拒否する。
「まあ、召喚システムをマイクロセンサーに組み込んで、地底世界から地上軍の動きを|電波探信儀《レーダー》に反映させようなんて妙なことを考え付いたシュウが悪いんだけど、システムを組み込んでる最中で事故っちゃって」
「それで失明した? お前、その割には暢気過ぎるだろ」
「別に永遠に失明するって訳じゃないからね。頭を打った衝撃で一時的に見えなくなっただけだって医者は云ってたし」
「本当かよ」マサキは宙を睨んだ。「まあ、あいつなら自力で治しそうでもあるしな……」
死ねば生き返り、記憶を失えば取り戻す。マサキには原理や構造の理解が出来ないシステムだの理論だのを作り上げてみせる男に不可能の文字は似合わない。恐らくは今回も自身の力なりでどうにかしてしまうのだろう。
「そうなんだよ。だからあんまり心配はしてないんだ。で、僕は今日これから用事があって、明日の朝まで戻って来れないんだけど……」
「あー、それで俺にあいつの世話をしろって」
「御明察」テリウスが、ぱん。と、両手を叩く。「普段ならいざ知らず、シュウの目が見えていない状態だろ。姉さんたちに任せたら、何をしでかすかわからないから」
「あいつ、お前らの他に知り合いいねえのかよ」
「それはシュウに直接聞くんだね」
「冗談だろ。誰がんなこと出来るか。で、世話って何をすればいいんだ」
マサキは視線をテリウスに戻した。世話をするといっても半日程度であれば大したことでもないだろう。だったらそのぐらいのことは手伝ってやってもいいかも知れない。そう思いながら、念の為にテリウスに尋ねてみる。
「食事の世話と、風呂の世話と、着替えの世話と……後は本を読んで聞かせるぐらいかな。退屈してるみたいだしね」
本。とマサキは鸚鵡返しに口にした。そして視線を宙に彷徨わせた。
よもやシュウ相手に絵本を読めという話でもあるまい。
「俺にお前らが読むような本が読めると思ってるのかよ」
「大丈夫だって。読めないところはシュウが推測して読み方を教えてくれるだろうから」
「その回数が問題だろ。虫食いの本になっちまう」
「やってくれなきゃ、さっきの話をモニカ姉さんに云うけど?」
どうやらテリウスからの情報流出は確信的な行動であったようだ。
突っぱねても良かったが、自身の肉体的なダメージを考えると気乗りはしない。ウエンディはまだしもリューネは時として肉体言語に打って出てくるのだ。マサキは盛大に舌を鳴らして、ソファに仰け反った。
「わかったよ。やるよ。やりゃあいいんだろ」
「いやあ、助かるよ。マサキ」
云うなりソファから立ち上がったテリウスが、後は任せたよ。と、慌ただしくリビングから出ていこうとする。おい、待てよ。細かい説明のないテリウスに、マサキは抗議の声を上げるも聞く気はないようだ。
「わからないことがあったらシュウなりチカなりに聞くといいよ。じゃあ、また明日」
そうして、最早、一刻の猶予もないといった様子でアパートメントを後にしていったテリウスに、マサキはソファに並んでいる一羽と二匹の使い魔を見渡して――役に立つのかねえ。と、ただただ深い溜息を洩らした。
「まあ、ご主人様のことですからね。目が見えないくらいでどうとなる人じゃないですよ。直ぐに良くなると医者に云われてもいますしね。あたくしが家を出た時も、大人しく寝室でラジオを聞いてましたし。いい大人なんですから、やれることは自分でやりますよ。マサキさんはテキトーに食事や飲み物を運んで、ちょっと話し相手にでもなってくれればいいですって」
途方に暮れたマサキに、慰めてくれているつもりなのか。そう言葉を吐いたチカに、それで済む話でもねえだろ。と、マサキはソファの上に伸びた。
シュウはいつもそうだ。些細なことでもここぞとばかりにマサキを頼りにしてくる。しかもマサキが困っているとみるや否や、頼みもしていないのに手を貸してきては、勝手に借りを返したことにしてしまう。
善意の押し付けにも限度がある。
マサキは天を仰いだまま、暫く身動ぎせずにいた。どうせ今回にしても、シュウがマサキを呼べと云ったに決まっている。
「ねえ、マサキ。本当に本を読むの?」
「マサキに読み聞かせは無理だと思うんだニャ」
「お前らにまでそう云われると流石にムカつくな」
マサキはソファから立ち上がった。そしてチカに行くぞと声を掛けた。
いつまでもリビングでじっとしている訳にもいかない。
昼近くに呼びに来たチカに先導されて、遠路はるばる駆け付けること二時間余り。果たして彼は昼食を摂ったのだろうか。先ずはその辺りを確認しなければならないだろう。マサキは一羽と二匹の使い魔とともに寝室に向かった。
「ごっ主人様ー。お待ちかねのマサキさんでっすよー」
扉が開くなり、呑気にも限度がある声が上がる。マサキの肩を離れて寝室の中に飛び込んでいったチカに続いて、マサキもまた室内に足を踏み入れた。
部屋の中央にベッドがひとつあるが、目が見えないからといって寝ているのは性に合わないのだろう。窓際にあるふたり用のテーブル。太陽の光を浴びるようにして一人掛けのソファに腰掛けているシュウは、今はベッド脇のサイドチェストの上にあるラジオに耳を傾けているようだ。
流れ出るのは荘厳且つ重厚なオーケストラ。とかく重苦しい。大衆文化で盛り上がりをみせている軽い曲調を好むような男ではないとはマサキにしても思っていたことだが、ここまで予想通りの嗜好をしているとそれはそれで面白味がなく感じられる。入るぞ。声をかけたマサキは、シュウの対面のソファに腰掛けた。
「待っていましたよ、マサキ」
声の方角で判断しているようだ。顔を向けてきたシュウの目は開いているものの、焦点が合っていない。見えていない以上は仕方のないこととは云え、見慣れない表情をしているように感じられる。やり難い。マサキは普段通りに振舞うように努めることにした。
「大したことは出来ねえぞ。てか、お前。他にこういったことを頼める奴はいねえのかよ」
「そうニャ、そうニャ。マサキを扱き使うニャニャんだニャ」
「困ったら直ぐマサキに頼るって都合がいいニャのよ」
シロとクロの抗議の声に、そうは云われましてもね――と、シュウが肩を竦めてみせる。どうやらマサキを頼ったのは、それなりに事情があってのことのようだ。
「私の知り合いは自分で自分のことをやらずに済む人たちが多いのですよ。後はこの機会に記録をと経過観察を始めるような人々ですね。どちらにせよ、こういった事態に対しては役に立たないでしょう」
「あー……」マサキは様々に思いを巡らせた。「そりゃ確かに、俺の方がまだ役に立ちそうだ」
上流社会の人間であったり学者世界の人間であったりと、シュウの世界はマサキとは層の異なる人間で構成されているようだ。
それも已む無し。教団に長く身を置いていた彼は、現在に続く人間関係を王室時代の人脈に頼らなければならなかった。そうした中で、庶民的な感覚を持つ知り合いを探せというのも難しい。マサキたちぐらいだろうか。限られた世界で限られた社会の人間としか接触を持てなかった彼に、庶民的な人間関係を期待するのは酷だ。
「なら早速働くかね。お前、昼飯は食ったのかよ」
「それはテリウスが用意してくれましたからね。あなたに期待するのは暇潰しの相手ですよ。目から情報が入らないとなると、音に頼らざるを得なくなるので」
「テリウスは本を読んでやってくれって云ってたけどな」
「テリウスならまだしも、あなたに私が好む本を読めというのは無理があるとわかっているつもりですよ」
「じゃあ何をしろって? まさか話し相手をしろとか云い出すんじゃねえだろうな」
「そのまさかですよ」クックと声を潜めて嗤うシュウに、マサキは顔を顰めた。「今日はじっくりと腰を据えて話をしましょう。ねえ、マサキ」
対して共通項もないシュウを相手に明日の朝まで話をして過ごせとは、随分と無茶な注文もあったものだ。マサキは再び途方に暮れた。他人に対して寛容なシュウ=シラカワという人間は、何が彼の精神をそこまでささくれ立たせるのか。マサキが相手となると、攻撃的に物を云ってくることが珍しくない。
「何回、喧嘩することになるかね」
これまでのことを考えても、穏やかに済むとは考え難い。
先回りして言葉を吐いたマサキに対して、テリウス同様、こちらもまた自覚があったようだ。流石に今日は自重しますよ――そう云ってのけたシュウが、続けて飲み物の準備をしてくれないかとマサキに頼んできた。
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