ナンバリングが(一)の時点でもはやそれはSSではないんじゃないか?などと思ったりもしますが、続いてしまうものは仕方がありません。えー?まだSS書くの?そうお思いのことかと思いますが、まだ左眼瞼の痙攣が治らないのです。
来週予約を入れて病院に行って来ようと思う次第です。
もうねぴくぴくぴくぴくうっとおしい!
拍手有難うございます。はげみとしております!レスは明日にします!
明日仕事に行けば休みなので!!
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<狡さ聡さも恋のうち>
「わあ。マサキ、何その荷物の量」
抱えた段ボールやら紙袋やらで前が見えなくなりながら、街を抜けるべく歩いていたマサキは、不意にかけられた声に助かったと胸の内で快哉を挙げた。
「何って、サイバスターに積んでおく非常用の食料に決まってるだろ。定期的に補充しておかないと、いざって時に食料に不自由することになるからな」
「そんなに、いる? あたしもザムジードに積んではいるけど、必要最低限だよ? 非常食ってそういうもんでしょ。それじゃまるでキャンプにでも行くみたい。マサキそんなに大食漢だったっけ?」
「いいから持つのを手伝え」
「え、やだ」
マサキは即座に手にしていた荷物を地面に下ろした。そして間髪入れずに、今まさに逃げ出そうとしているミオの首根っこを引っ掴んだ。
「やだやだやだー! 何であたしが! 声をかけただけじゃないのよ!」
ばたばたと手足を動かしているミオに周囲を行き交う民衆の視線が突き刺さるが、今更その程度のことを気にしていは誰とも付き合えない。襟首を掴んでいる手により力を込めたマサキは、ミオの身体を引き寄せるとその耳元で声を発した。
「お前がこの間云ってた苺パフェ」
ぴくりとミオの耳が動いた――気がした。
「手伝ってくれたら奢ってやろうと思ってたんだがな」
ぴくぴくぴく。前後に揺れるミオの耳はまるで兎のようだ。
――いつ見ても不思議な動きをしやがる。
マサキはそうっと襟を掴んでいた手を離した。ミオが苺パフェに心を惹かれているのは間違いない。マサキは駄目押しとばかりに言葉を継いだ。
「まあ、お前がどうしても嫌って云うなら仕方ねえ。俺の荷物だしな。ひとりで運ぶ」
「やっだあ、マサキ! そういうことは先に云ってよ!」
苺パフェなど幾らでも食べられるぐらいに方々で懸賞金を稼いでいるミオだが、自身の懐を痛めるのは嫌なようだ。現金なこと他ない。瞳の中にハートマークを浮かべながら、腰をくねらせつつ、しなだれかかってきたミオをマサキは両手で押し退けた。
「ホント、現金な奴だな」マサキは足元に目を落とした。
段ボール箱に紙袋、そしてビニール袋がふたつ。どれを持たせるか。マサキはミオに持たせる分を見繕った。段ボール箱には飲料水が、紙袋の中にはレトルトパウチがぎっしり詰まっている。
どちらもかなりの重量だ。腕自慢の少女とは云え、あまりにも重い物を持たせるのは躊躇われる。マサキはビニール袋を取り上げて重さを確かめた。このぐらいならば持たせてもいいだろう。
「ほら、持てよ。片方はともかく、もう片方はちょっと重いぞ」
マサキはミオにビニール袋を突き出した。片方には菓子類が、もう片方にはレトルトのライスが山と詰め込まれている。
「すっごい量。こんなにあっても食べきれなくない?」
早速と中身を覗き込んだミオが、不思議そうなものを見る目になるのも無理はない。マサキはミ段ボール箱と紙袋を抱え上げた。重いは重いが、先程までと比べれば随分軽くなった。
「それがなくなるんだな」
「何で? 最近あたしたち別に遠征とかしてないよ?」
「煩えな。迷うんだよ、俺は」
「あー……!」
ミオが合点がいったといった様子で、ビニール袋を手にしたまま拳を打った。
「マサキの姿が見えなかったら、絶対何処かで迷ってるもんねえ。でもあれは酷かったわ」
「俺も流石にこの間のは死んだと思った」
遡ること、つい三日ほど前のことだ。
それまでの放浪で、既に非常食は大分量を減らしてしまっていた。そろそろ補充をしなければ。そう思って王都に向かうことにしたマサキは、そこで運悪く――しかし半ば運命的にお決まりの能力を発動させてしまった。
極度の方向音痴。
西に向かえば南にいる。南に向かえば北西にいる。ここまで思い通りに進めないとなると、最早特技ですらある。
結果、そこから彷徨うこと二日。行けども行けども王都に辿り着けないばかりか、迷い込んだ先でぐるぐると回り続ける有様。北西の山脈地帯から出られなくなったマサキは、その間に非常食を全て食い尽くしてしまった。
幸い、偶然に通りかかったシュウが道案内をしてくれたお陰で家に帰り着けたのだが、これまでの最長記録を優に超える迷いっぷりに、マサキの仲間たちが盛大に呆れ返ったのは云うまでもなく。
「もうさー、ひとりで出歩くの止めたら?」
「巫山戯ろよ。俺の年齢を幾つだと思ってるんだお前は。ラ・ギアス年齢でとっくに成人を超えてるんだぞ。いい大人が付き添いがなきゃ何処にも行けないって情けないにも限度があるだろ」
どうかすると道に迷うマサキは、他の仲間と比べて非常食の世話になる機会が多い。だから一ヶ月は持たせる想定で、非常食になりそうな食料を買い込んだのだ。二度と方向音痴で命の危機を迎えない為に。
――これでちょっとやそっとでは食料が尽きるような事態には陥らない筈だ。
けれどもその程度の備えでは不安であるのだろう。ミオが溜息混じりに言葉を吐く。
「命とプライド、どっちが大事かって話よね」
「その二択だったらプライドに決まってるだろ」
「マサキ、長生き出来ないよ」
「戦士には守らなきゃならねえモンがあるってな。ほら、行くぞ」
マサキはミオの前を歩き始めた。情報局の格納庫に停めてあるサイバスターまでは、まだまだ距離がある。「方向音痴と戦士のプライドってまるで関係なくない?」死ぬほど不信に満ちた声が背後から聞こえてくるが、これを終わらせないことには何処にも行けない。マサキはさっくりとミオの言葉を無視することにした。
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