忍者ブログ

あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

神の采配
最近、WPの方を更新していないので、WPどうしたの?とお思いかもしれませんが、あんまりシュウマサぽくないなあと感じてしまうものを載せるのが躊躇われてしまうんですよねえ。

多分、どこかで思いきって、まとめて載せることになるとは思うのですが。



<神の采配>

 気付いたら、もう姿が見えなかった――のだ。
 方向音痴という才能に恵まれたマサキは、少しでも目を離そうものなら即座に行方がわからなくなってしまう。何処に行ったのかと思えば、呑気に通り二本挟んだ店でホットドックを食べていたりするのだから侮れない。だが、そのぐらいならまだ可愛いい方だ。いつぞやなどは、街から数キロ離れた平原で寝そべっていた。どうしてそんなところに出るまで足を止めようと思わなかったのか。最早、神の導きである。
 流石にあの時は、寛容なテュッティも二の句が続かなかった。
 だのに本人はあっさりとしたもの。マサキ曰く、どう頑張っても街に辿り着けないものだから、諦めて不貞寝に走ったということらしい。探す方としてはこんなにも心臓に悪い展開はないというのに、だ。
 何せ敵も多い魔装機神操者だ。方々で出張っては争いを鎮圧して歩く正義の執行者を目障りに感じている輩は限りなく、隙を見せようものなら直ぐに喉元に食らい付いてくる。特にマサキは四大魔装機の頂点に君臨する風の魔装機神の操者だけあって、狙われる率がかなり高い。とはいえ、彼の場合は、桁違いの身体能力にものを云わせて、そういった連中を即座に地に沈めてしまうのだが。
 だからといって、姿の見えないものを探さない訳にもいかない。
 仕方なしに足を止めたテュッティは、今来た道を戻るか、それとも大通りを抜けるべく、人の流れに沿って真っ直ぐに歩いてゆくか思案した。つい先程まで隣にいたということは、何かに気を取られてはぐれたと考えるのが妥当だろう。つまり、先に進んだところでマサキを発見出来る確率は低いということだ。
 テュッティはよくよく周囲を窺った。どうやら通りの右手側と左手側で人の流れが逆になっているようだ。
 仕方がないわね。テュッティは人並みを突っ切って、道の反対側に向かった。
 顔が売れているのが幸いした。水の魔装機神操者の無茶な横入りに、人々は有事を予想したのだろう。さっと道を開けてみせる通行人に笑顔で会釈を済ませたテュッティは、反対側の人波に身体を潜り込ませようとした。
 その瞬間だった。
 人波の中に、頭ひとつ突き抜けた長躯が見えた。
 隠匿の術で姿を変えていようとも、滲み出る独特なプラーナまでは誤魔化せない。そう、それは紛れもなくシュウ=シラカワ、その人だった。あら、丁度いいところに。彼の存在に気付いたテュッティは、歩調を遅めてその様子を窺った。
 ふわりと浮かぶ笑み。それは、まるで畦道に咲く野花を目にしたかのような優しさに満ちたものだった。
 その細められた瞳が通りの先に向けられているのを見て取ったテュッティは、彼の目が何を捉えたのかを確認すべくその視線を追った。しかし予想は付いたもの。そもそも、彼がこうした表情を浮かべる相手などひとりしかいない。
 人垣ではっきりとは見えないものの、揺れるボトルグリーンの髪。特徴的な髪色に、それならば善は急げだ。テュッティは人波に潜り込むと、シュウの元へと足を進めていった――……。

 ※ ※ ※

 思惑通りにテュッティがマサキとの再会を果たしたのは、ここから五分ほど後のこと。はぐれたらその場でただ待つ――との教えに忠実にフランクフルトを齧りながらテュッティを待っていたマサキは、思わぬおまけシュウの登場に、盛大に顔を顰めたとか顰めなかったとか。






PR

コメント