前回が寂しい話になってしまったので、続けます。多分、次回で終わると思います。
今回の話を書くにあたってwikiなどで調べたのですが、破嵐財閥の設定は今のスパロボシリーズではなくなっちゃったんですね。万丈の話し方はうろ覚えですので、イメージと合ってなかったらすみません。あ、短いですがエロ有りです。
今回の話を書くにあたってwikiなどで調べたのですが、破嵐財閥の設定は今のスパロボシリーズではなくなっちゃったんですね。万丈の話し方はうろ覚えですので、イメージと合ってなかったらすみません。あ、短いですがエロ有りです。
<続・再会の操縦者たち>
暖かい風が吹き抜ける地底世界ラ・ギアス。今日も中天にぽっかりと雲が白く浮かんでいる。その流れゆく雲を開け放した窓から見上げながら、自室のベッドの上、横になってマサキは考えていた。
会えば会ったで必ず何かをしてくる男は、だからといって、マサキと馴れ合うつもりはないようだ。
甲児たちと一緒にダーツをしてから二週間。連絡一つない男のいつも通りの行動に、マサキはやっぱりと思いつつ、その口唇の温もりを思った。何度も交わした口付けの感触は、その温もりを大分薄れさせてしまっている。だというのに。
どうしていつもこうなるのだろう。日常の合間にふと静けさを感じたその瞬間に、マサキは何度も考えてきた。何故、シュウは自分と会おうとする努力をしてくれないのか、と。
ファーストフード店での一幕。隣に立っていた女性がビジネスの相手だとわかっていながらマサキが寂しさを感じてしまったのは、シュウとふたりきりで会う機会が滅多にないからでもあった。
月に一度チカを通じて連絡を寄越せばまだまし。大抵はマサキがサイバスターでどこかを放浪しているときの再会だったりするのだからやりきれない。しかもマサキはシュウがどこに住んでいるかを知らないのだ。
長い付き合いにも関わらず、シュウはマサキにその情報を教えようとは思わないようだ。聞いても適当にはぐらかされてばかり。だったら自分で探してやる。そう思ったこともあったが、呼び出されて出向かなければならない場所が毎回異なるものだから、マサキはその家がどこにあるのかを探すのを諦めてしまった。
そんな居所の定まらない男にマサキからアクションを起こすのは難しい。偶然に頼りきりになった結果、三ヶ月近く顔を合わせることがなかったときもあった。そのくせ、会ったら会ったで甘い言葉を囁きかけてきては、その関係を続けさせてしまう。
それに流されてしまう自分も良くないとマサキは思う。何を考えているのかわからない男の自分への態度の数々は、どう考えても普通の恋愛感情ではない。これが他人の話だったら都合のいい関係を求められているだけだと、いかにその手の話題に疎いマサキでもばっさりと斬って捨てているだろう。
「ああ、もうじっとしてられるか。こんなの!」
だからといって当てもなく彷徨ったところで無駄足に終わるのだ。いつもそうだ。マサキが会いたいと望んでいるときには何故か会えず、会うことを期待していないときにばかり顔を合わせてしまう。タイミングが悪いなどというレベルではない。神の気まぐれにも限度がある。
何をどうすればいいのだろう。マサキは考えて、そうだ、と閃いた。
「それで何、マサキ。僕に頼みたいことって」
破嵐財閥の御曹司。ダイターン3の操縦者、破嵐万丈は多忙な中。突然訪れたマサキに少し驚いてみせたものの、懐かしい顔に会えたことを喜ばしく感じてくれたようだ。その豪奢な住まいに招き入れてると、執事のギャリソンに頼んでお茶を用意させながら言った。
「恋愛相談だったら喜んで受け付けるけど、君はそういう話をするのは苦手そうじゃない?」
勧められた席に着くなり、開口一番。出されたお茶に口を付けた瞬間の発言に、マサキは盛大に咽せた。
「あれ? 適当に言ってみただけだったんだけど、図星だったかな?」
「な、何でいきなり恋愛相談なんて話に」
まるで自分の考えを見透かされているような突然の発言にマサキは焦る。まさか、何か自分に関する情報を聞き及んでいるのだろうか。破嵐財閥の情報ネットワークを使えば、地上でのマサキの行動を捕捉するなど容易いことかも知れない。マサキがそう考えた瞬間、
「この間、甲児がふらりと訪ねて来てね。マサキは周りに女性があれだけいるのに、男とばかりつるんでるけど大丈夫かって言ってたから。ほら、君はその点ストイックだろう。そういった話にあんまり付き合いたがらないって聞いたもんだから」
どうやら甲児は自分の女性への関心の高さに対するマサキの反応を、つれないものとして受け止めていたようだ。マサキとしてはそれなりに付き合ってみせていたつもりだったものの、そこは悪友。マサキの苦手意識を甲児は見抜いてしまったのだろう。
「別に男ばかりつるんでるつもりはねえけどなあ。こっちにいるとそうなっちまうってだけで。それに甲ちゃんの話が明け透け過ぎるんだよ。女の胸のでかさがそんなに大事なことかね……ってそういう話じゃねえよ。甲ちゃんが来てたなら話が早い。シュウの話は聞いたか?」
「ダーツやったって話じゃない? それがどうかしたのかい」
「その前の話だよ。女とつるんでてな。ビジネスの相手だって話だったが、もしかしたらまた碌でもないことを企んでいるんじゃねえかって、ちょっとな。今更だけど思ったもんだから」
「成程。君としては心配なところだな、マサキ。わかった。その女性についてはこちらで調べてみよう」
破嵐財閥の情報ネットワークは伊達ではない。地上での大戦でも何度世話になったことか。しかも万丈には、不可能を可能にしてみせる万能執事のギャリソンが付いているのだ。これで例の彼女の素性が判明しなかったら、それはそれで重大事である。
「そうだな……ギャリソン、何日あれば結果を出せる?」
「二週間ほど前のことということでしたので、多少時間がかかるでしょうが、三日もございましたら確実に」
「わかった。なら、あとのことは任せよう」
そういった重要な情報網を自分の個人的な感情の発散の為に、嘘を吐いてまで使うことにマサキは後ろめたさを感じはしたものの、だからといっていつまでもシュウへの感情を何もせずに燻らせているのも耐え難い。心の中で、すまない。と謝りながら、マサキは例の女性についてはギャリソンに任せることにした。
「それでは、早速、調査に取り掛からせていただきます」
万丈とマサキに恭《うやうや》しく一礼をして、ギャリソンがその場を辞する。さて、すべき用事は済んでしまった。マサキは残った紅茶を啜りながら、今日のこの先のスケジュールをどうすべきか考え始めた。
万丈のところにまで姿を現してマサキの話をしていったらしい甲児のところに、今遊びに行くのは気まずい。素直に地底世界に戻るべきだろうか? それともついでに他の操縦者たちのところにでも顔を見せに行ってみようか? マサキは宙を睨んで思案する。
「で、マサキ。君の用はそれだけかい? 何か土産話があったりはしないのか」
「土産話ねえ……そんなに面白いことも起こってねえしな。それに、長居をするのはあんたに悪くないか。色々しなきゃいけないこともあるんだろ」
「折角、友人が訪ねてくれたものを、そんな邪険な扱いもしないさ」
だったらその言葉に甘えて少しぐらいは万丈の時間を奪ってもいいだろう。甲児と違って、長く顔を合わせずにいたかつての仲間なのだ。ともに死線を潜り抜けた仲間を、自分の用事を頼むだけ頼んで別れてしまうのも忍びない。
「しかし、君はそんなにあちらの世界では女性に囲まれて生活しているのか。羨ましいご身分だね、マサキ。魔装機神の操者も丁度、女性と男性が半々か。君のいる世界は女性が大いに活躍している世界なんだな。いいねえ、そういう世界は。夢がある」
「どうだか。どいつもこいつも気が強いっつーか、クセがあるっつーか。一筋縄じゃいかない連中だぜ。ああじゃないと女性が活躍するのは無理なもんかねえ。俺はもうちょっとおとなしい方が好みだけどな」
「そういった女性ほどチャーミングに感じるものさ。しかし、なんだマサキ。ちゃんとそういう話ができるんじゃない。甲児の口ぶりだと、まるで興味がないって感じだったけど」
「そりゃ好みがどうのこうのぐらいだったら俺だって言うぜ。でも甲ちゃんは胸の話だのなんだの、そうやって直ぐそっちの話にしちまうから、扱いに困っちまうんだよ。恋愛ってそういうもんじゃないだろ。容姿がどうのこうのよりも、性格だよ、性格。一に性格、二に性格、三四がなくて五に性格だ」
そう、マサキは甲児のその点に理解が及ばないのだ。そもそも、甲児ときた日には、あちらの女性が綺麗だと言ってはふらふら。こちらの女性が可愛いと言ってはふらふら。見ていて危なっかしこと他ない。傍で見ている分には、さやかがいるのに何故? と思うほどの好き勝手ぶりだ。
しかも、それでさやかに説教されるのをわかっていながら、である。その根性はある意味尊敬に値する。値するけれども、マサキとしては納得が行かない。あれだけのいい女を周りの男たちが放っておくだろうか? その中にはもしかしたら、さやかが心を動かされる男もいるかも知れない。そうなってしまったときに甲児はどうするのだろう?
「人間が第一印象を決めるのは容姿が九割とも言うだろ、マサキ。しかも実際に出会える人間の数には限りがある。理想を持つのはいいことだけれども、世界中の人間と出会えるわけじゃない。最終的には身近な人間の中から自分に合った人間を選ぶものだと僕は思うけど」
「その身近な人間に対する扱いが毎度あれじゃねえかよ、甲ちゃんは。いつか愛想を尽かされても知らねえって思うこともあるけど、人のことだしな。まあ、俺があんまり深く口を挟むことでもなさそうだし、黙ってるけどよ」
「へえ、そんなことを考えていたとはね! 驚いたよ、マサキ。君は君なりに、良き友として甲児のことを心配していたんだねえ。悪友だからこそ、彼に好き勝手をさせていると思っていたよ」
思いがけず口を吐いて出てしまった甲児への不満は、きっと甲児を羨ましく感じているからなのだ。マサキは万丈の言葉に苦笑する。そういった扱いを甲児が繰り返そうとも、仲をこじらせることのないふたり。その強固な絆には、順風満帆な未来が待っているようにしか見えない。
男と女はいい。何度も繰り返し思ってしまったことを、マサキは再び思う。自分はいつまでシュウとそういった関係を続けてゆくのだろう。その先にどんな未来があるのだろう。今のままでは、その未来は決して明るいものとは言えないのではないだろうか。
「そんな優しい男じゃねえよ、俺は。それだったらもっとはっきり言ってやってるぜ。まあ、言っても甲ちゃんはへこたれないんだろうけど」
「違いない」万丈は声を上げて笑った。
「それでいざ本当にどうしようもなくなったら、周りの人間に泣きついてどうにかしてもらおうとするタイプなんだぜ、アレは。嫌になっちまうよな、本当に」
とどのつまり、マサキは甲児に嫉妬しているのだ。
困ったら助けてくれる仲間がいる。相談できる相手もいる。傍若無人に振舞っておきながら、理解者に恵まれている甲児が、身近な同年代の友人であるからこそ、マサキには妬ましく感じられてしまうときがある。
嗚呼、誰かに話をしたい。シュウとのことを話をしてすっきりしてしまいたい。マサキは切実にそう思った。
けれども、地底世界にそういった話ができる相手はいない。迂闊に口を滑らせようものなら、どれだけの醜聞となって返ってくるか。地上にしてもそうだ。甲児に話をしようものなら、絶対に他の人間に筒抜けになるに決まっている。
現に今日だって、ふと思い立って来ただけの万丈のところにまで姿を表しているのだ。内緒話にあれだけ適さない男はそうもいまい。
「嫌だ嫌だ言いつつも、君は甲児に付き合うんだろう?」
「まあ、そりゃあな。でも、甲ちゃんは大丈夫じゃないかねえ」
「大丈夫なものか! 彼は何だかんだで、そういったピンチには弱いと思うよ。さやかにせよ、君にせよ、彼は甘えているんだよ。年齢の近い仲間だからこそね」
結局、万丈のところを辞したマサキは、そのまま地底世界に戻った。こんな気持ちのまま甲児には会えない。だからといって他の操縦者たちに会いにいったところで、話したいことを話せない欲求不満を抱えるだけ。
だったら地底世界を気ままに放浪していた方がいい。
ラ・ギアスの豊潤な大地を見下ろしながらサイバスターを疾《はし》らせる。三日後の調査結果が待ち遠しくて仕方がない。ビジネスの相手でなかったらどうしよう。そう考えるといたたまれない気持ちにもなるけれども、シュウの言葉に頼るしかないあやふやな状態よりかは、確実に一歩は前に進めるだろう。
甲児と違って、頼るべき相談相手を持たない自分。迷い込んでしまった道が、こんなにも深く長く自分を悩ませるものになるとは、当時のマサキは思ってもいなかった。そんな行き場のない感情を、マサキはシュウにぶつけてしまいたいのだ。自分の気持ちが前を向いている内に。
けれども何の理由もなくそういった行為に走るのは、マサキの自尊心が許さない。だからこそ、調査結果を待って、その結果を理由にシュウと話がしたかったのだ。
マサキが自分の気持ちをストレートにぶつけたら、あの男はどんな表情をするのだろう? 面白がって笑ってみせるのだろうか。それとも困惑してみせるのだろうか。どちらでもいい。マサキは思った。
自分に答えをくれるのであれば、どちらでも。
遠い機影。青い影。マサキがその姿を認めるなり、通信機のコールが鳴り響く。ほら、やっぱりタイミングが合わない。マサキはせめて三日後にしてくれればと思いながら、通信回線を開いた。
「散歩ですか、マサキ。それでしたら、少し話をしませんか――……」
憎々しいまでに涼やかな顔がモニターの向こう側にある。それでも自分は、この男と話をしないという選択肢が選べないのだ。マサキはそんな自分を腹立たしく感じながらも、シュウに誘われるがまま、サイバスターを二匹の使い魔に任せてグランゾンに乗り込んだ。
「いきなりで何だけど、お前、四日後のスケジュールは空いてるか」
「珍しい、マサキ。あなたが私のスケジュールを訊ねてくるなんて」
シュウの使い魔たるチカは今日はグランゾンには同乗していないようだ。いつだったかマサキが姿を見ないチカについてシュウに訊ねてみたところ、「偶には完全にひとりきりになりたいのですよ」とうんざりした様子で洩らしたことがあった。あの口喧しい使い魔の終わりのない話に付き合い続けるのは、この能弁なように見えて寡黙でもある男には耐え難いものがあるのだろう。
来て、と言われて、マサキは渋々ながら操縦席に収まっているシュウの膝の上に乗る。やんわりと頬を包む手。「私に会いたいと思ってくれたの、マサキ?」子供を膝の上に抱くように、シュウがマサキの身体を抱えながら言う。
「その前に、返事を聞かせろよ……お前、いつもそうやって肝心の返事を後回しにし」
口唇を塞がれて言葉の続きが言えない。マサキは口の中に忍んできたシュウの舌の動きに合わせて、自分もまた緩く舌を動かした。いつだってそう。シュウはマサキの都合など関係なく、身勝手にマサキを求めてくる。だのに、それをマサキは拒めない。いや、拒もうと思えない。
心地よく口腔内を犯すシュウの舌を、マサキは自分の舌で絡み取りながら、その口付けを思う存分に味わった。
ぼんやりとその余韻に浸りながら、シュウの腕の中、その温もりに身体を預ける。けれども、今日のシュウはそれだけでマサキとの再会を終わらせるつもりはないようだ。「やだ……お前、待てって」服の中に滑り込んできた手に、マサキは抗議の声を上げる。
嗅ぎ慣れた香水の匂い。耳元でシュウが低く笑う声がする。
「チカならいませんよ。今日は私ひとりです。気にする相手ならいませんよ、マサキ」
「だからって、まだお前の返事を聞いてもないのに」
「聞かせたらさせてくれるの、マサキ?」
藪蛇だ。マサキは服の下で自分の素肌を撫でるシュウの手に、あ……、と声を上げた。本当にこれでは都合のいい関係でしかない。会えばこうやって必ずといって言いほど事に及ぶことになる。そう思いながらも、マサキはその快感から逃げられない。
マサキの口元から洩れ出た喘ぎ声を同意の意味と受け取ったのだろう。シュウはそのまま、マサキをグランゾンの操縦席に沈めるとマサキの肌に舌を這わせてくる。鎖骨を吸い、乳首を舐り、やがてはその男性自身を口に含めながら、マサキの反応を伺うようにその顔を見上げながら、シュウはマサキに愛撫を続けた。
「やだ……やだ、シュウ。こんなところで……」
そう言い続けてみせたところで、力任せの抵抗などできやしないのだ。シュウの手がゆっくりとマサキの両足を抱え上げてくる。足の奥にシュウの男性自身が入り込んでくる感触に、マサキはまた声を上げた。
「こんなところだからいいのでしょう、マサキ。ここは私にとっては城ですよ。自分だけの場所。そこであなたにこういった格好をさせている。どうしようもない幸福ですよ。本当にどうしようもない」
その言葉をマサキはまとまらない思考の奥で聞いた。そんな風に所有欲を露わにしてみせるのならば、もう少し自分に会いに来ればいいのに。それともそれこそがシュウのやり口なのだろうか。そういった気持ちを素直に伝えられない状況がもどかしい。
やがて、与えられる快感に意識が飲み込まれるときがくる。マサキは背中に手を回してシュウにしがみつきながら、ただ快楽を貪り続けた。
「四日後でしたら空いていますよ。どこで会いますか、マサキ」
結局、その返事が聞けたのは、全てが終わって服を着たあとのこと。シュウは再びマサキを膝に抱えて、満足そうにその顔を覗き込んでいる。そんなシュウと会う場所を決めて約束を取り付けたマサキは、やり切れない思いを抱えたまま。少しだけ世間話を交わして、グランゾンを後にする。
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