エロが書きたいなあ。
でも実際にエロシーンに入ったら、進まなさに泣くんですよ。知ってる。笑
拍手&コメ有難うございます。明日はわたくし新年会パート2ですので、申し訳ないのですが、返事は明後日にさせていただきたく存じます。本当に済みません。
でも実際にエロシーンに入ったら、進まなさに泣くんですよ。知ってる。笑
拍手&コメ有難うございます。明日はわたくし新年会パート2ですので、申し訳ないのですが、返事は明後日にさせていただきたく存じます。本当に済みません。
<インモラルオブザーバー>
「ちゃんと身体は拭けよ」
「粗相をしたのはどなたでしたっけ」
マサキに背中を向けて衣装を脱いでいたシュウが、クックと嗤い声を上げた。半身を返して肩口より、物云いたたげに眺めてくる彼にマサキは肩を竦めた。確かに粗相をしたのはマサキではあったが、元を正せばシュウがマサキに施した催眠暗示の所為だ。
「捕虜の分際で偉そうな口をきくじゃねえか」
コートにシャツ、スラックスに靴下、そして下着。脱いだ衣装を畳むこともせず、シュウが床に落としてゆく。マサキはタオルを手に取ってシュウに声を掛けた。早くしろよ。どういった奥の手を持っているかわからない男の手足を、首輪を嵌めているからといっていつまでも自由にはさせておけない。
「あなたこそ捕虜を相手にしている割には、随分と優しくしてくださる」
「お前の手足を自由にさせておいたら、何をされるかわかりゃしねえ」
「自分の剣の腕に自信がないとでも云うつもりですか。弱気になるなどあなたらしくもない」
「お前の頭脳に俺の知恵が及ぶと思ってるのか。お前は」
「確かに」シュウが声を潜めて嗤った。
マサキはシュウの身体にタオルを掴んでいる手を伸ばした。腰回りから脚、濡れて冷えた肌を拭いていき、次々と衣装を渡してゆく。急かされているからではないだろうが、普段と比べるとシュウの着替えのスピードは早い。時々、その視線が天井の隅に仕掛けられている監視カメラに向く。稼働を示す緑色のランプ。その向こう側ではあの男がシュウとマサキの様子を見守っている筈だ。
今更、その視線を気にするなどらしくない。マサキはシュウの動きに警戒を強めた。前回の彼は、男の前で幾度もマサキを犯してみせた。あれからマサキの感覚は壊れてしまった。自身とシュウの関係を他人に知らしめたい。それはシュウがマサキに向けている以上の執着心であったかも知れない。
「ねえ、マサキ」
着替えを終えたシュウがマサキの頬に手を這わせてくる。し足りなくはない? 耳元で囁かれた言葉にマサキは唾を飲み込んだ。
彼がマサキを誘惑する声は、眩暈がするほどに蠱惑的だ。それもこれも整ったその顔の所為だ。マサキは自身を凝視《みつ》めているシュウの顔を見詰め返した。性衝動を感じている男という生き物はこれだけの色気を発するようになるのだと、同性であるマサキにも思わせる艶めいた表情。それは心を奪われきってしまいそうになるぐらいに美しい。
「また衣装を汚されたいのかよ、お前は」
「久しぶりですからね。一度ぐらいでは満たされませんよ。ほら、マサキ。起《・》き《・》て《・》」
シュウの宣言にマサキの身体が一気に熱を帯びた。
マサキの肌を辿った彼の指先の記憶。時に苛み、時に嬲り、時に慈しむ。それが脳内に一度に溢れ出てきたかと思うと、その温もりを蘇らせた。やめ、馬鹿……マサキは儚い抵抗だと知りながらも声を上げた。脳裏に浸食してくる記憶の数々が、次々と身体にフラッシュバックする。
「そんな風に躾けたつもりはありませんがね。起きなさい、マサキ。離れていた時間の分、あなたが恋しくて仕方がないのですよ。もう少し私を悦ばせてくれてもいいでしょう」
「飯、を、食って、からにしろ……」
近頃はあまり使われることのなくなっていた催眠暗示。マサキを快楽漬けにすることに強い性的興奮を感じるらしいシュウが、自らの最大の武器を封じた原因は単純だった。ふたりだけの世界ではその執着心が満たせない。彼は自身を求め溺れるマサキを他人に晒したいのだ。だから戦場や独房といった“他人の目がある場所”では、躊躇うことなく暗示の効果を呼び覚ましてみせる。
けれどもその効果は、マサキを引き返せないところに追い込んでゆくのだ。
羞恥を失い、理性を捨て、ただ快楽を貪るだけの雄と化す。そこに魔装機神サイバスターの操者であるマサキ=アンドーはいない。たったひとりの安藤正樹がいるだけだ。
「食事の後ならいいの?」シュウの言葉にマサキは力なく頷いた。
どうかすると欲望に心が支配されそうになる。それを全身で押え付けながら精一杯の力で抵抗した結果だった。
「相変わらず強情なことですね。その精神力には素直に敬服しますよ。私としては食事の前に小前菜《アミューズ》を愉しませて欲しくもあったのですが、あなたがそうまで云うのであれば仕方がない。後《・》に《・》し《?》ま《・》す《・》よ《・》、マサキ」
瞬間、楽になった身体に、シュウの支配が解けたことを知ったマサキはほっと息を吐いた。身体に生じた疼きはそう簡単には和らぎそうにはなかったが、記憶が溢れ出てくることはもうない。この状態でシュウが脱走を試みるようなことがあったら自分はどうすればいいのだろう。脳裏に過ぎった嫌な予感に絶望的な思いに駆られながら、マサキはシュウの足首に足枷を嵌めた。
自分の全てがシュウにコントロールされるという経験は、重ねれば重ねただけ、マサキのシュウへの依存度を引き上げていく。それでもマサキが自分の意思を貫けているのは、鍛え上げられた精神力があってのこと。その力がなければとうにマサキは自治区を裏切っていただろう。
「少ししたら食事を持ってきてやる。それまで読書でもして待つんだな」
「ええ。愉しみに待っていますよ、マサキ」
そう云って差し入れられた書物に手を伸ばしたシュウに、何処にいても自分のペースを崩さない男だ。マサキは褒め言葉とも嫌味とも付かない台詞を吐いてから、独房を後にした。
そうして、一度管理室に寄る。
「無事に受け取ってもらえたようで何よりだ。尤も、彼にしても必要な物資だ。これを断るとは考え難かったが」
男はそう云って、マサキに少し休んで行くように勧めてきた。マサキは手近な椅子に腰かけた。シュウの催眠暗示に抵抗を続けるのは骨が入る。シュウの遣り口を誰よりもよく知る男は、シュウと対面する度にマサキが疲労を重ねてゆくことを案じているのだ。それがわかっているからこそ、マサキは彼の言葉に従った。
そうして暫く、ぼんやりと監視カメラの映像を見守る。
独房内のシュウは大人しく読書に励んでいるようだ。読むのが早い男のすることだ。マサキが食事を持ち込む頃には、一冊ぐらいは読み終えているかも知れない。
「食事は今用意させている。君はどうする? 彼と一緒に食事にするかね」
「ああ――そういやそうだったな。それでいい。あいつの動きを見張る必要があるからな」
差し入れに書物と筆記用具を選んだ男の思惑にマサキは気付いてはいたが、それがどういった理由の下に行われているのかはわからないままだ。想像出来ることがあっても、それが正しいか判断出来ない。けれどもそれはマサキの資質に起因する問題ではなかった。
マサキは様々な非常識が混在しているラ・ギアス世界の常識に疎かった。そう、練金学と科学と魔術が同居しているラ・ギアスでは、様々な方向からアクションが起こせてしまう。だからこそマサキは隠された事情や理由を、簡単には察せないのだ。
数冊の書物と一冊のノート、そして筆記用具。恐らく男はシュウにメモを残させるつもりなのだろう。それはシュウが声での情報交換を封じられていると、男が予想しているからだ。けれども、どういった方法で彼が言葉を封じられているかとなると、ラ・ギアス世界の常識に疎いマサキでは予想が付かない。そういった現状で男に彼の予想を尋ねてみたところで、答えは期待出来ない。目の前の男は確かな事実でなければ口にしないぐらいに寡黙で慎重なのだ。
「無理はしなくていい。どうも彼はこういった状況になると、気持ちが高ぶるタイプなようだ」
マサキの返事に、男はモニターから目を離すことなく言葉を継いだ。その背中からは、シュウが不審な行動をするのを見逃してなるものかという気概が伝わってくる。
男が職務に忠実なのは昔からだ。自身の気持ちを抑え込んででも、命じられた職務を遂行してみせる。だからこそ彼は、シュウやマサキの信頼を勝ち取った……マサキは男の後姿を目に収めながら、束の間の休息を味わうことにした。
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