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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

インモラルオブザーバー(6)
あれ?この話、こんなにエロが遠かったですっけ????(呆然)
おかしいな。@kyoさん、この話ただエロをやるつもりで書き始めたんですけど!笑

ってことで何かよくわからない回です。この話の良くわからない回は雰囲気回だと割り切っていただきたいのですが、雰囲気長過ぎじゃね?ってなってるので、ここから頑張ってエロに励みたいと思います!←


<インモラルオブザーバー>

「好戦的なヤツだからな。ぶつける先が欲しいんだろ」
 自治区の防衛戦からここまで、マサキはほんの数十分ばかりの仮眠を取っただけだ。王都や王立軍への連絡に、自警団との対応協議。何せ彼らは自治区の治安を守る部隊なのだ。全ての人員をこの場に割ける訳でもない。指揮系統が決まり、増援が配置されるるまで、現場の混乱はまだ続くだろう。
 目まぐるしく過ぎた二日間。そろそろマサキの疲労も限界だ。
 だのに高揚する心。敵味方に分かれても――否、分かれているからこそ、シュウと戦える大義名分を得られたマサキの心は高鳴った。
 姿を消したことに不安を感じてしまっていたのに、戦場で対峙した瞬間に吹き飛んだ意識。シュウを捕まえるのは自分だ。ふたりで暮らしていた間、マサキは彼に従属し続けていた。もしかしたらそうした関係に鬱憤でも感じていのかも知れない。彼を拘束している現状に安堵を感じているマサキは、椅子の背もたれにうなじを預けながら、ふとそんなことを思った。
「そうかね。相変わらず執着心が強いようにも思えるが」
 淡々と言葉を継ぐ男は、相変わらずシュウの執着心には思うところがあるようだ。
 口調や表情、態度の割には面倒見のいい男。前回の騒動から現在まで、彼に世話になりっ放しなマサキは、けれども彼のその評価についてはまさかと思わずにいられなかった。
「今更、何を執着する必要があるんだよ」
「私には妻子がいるということは君も知ってるだろう」
「ああ、ああ。自慢の妻と息子な。ホント、あんたは好きだよなあ、家族が」
 怜悧なナイフのような口の利き方をする男は、ぱっと見、近寄り難く映ったものだった。職業軍人と呼ぶに相応しい佇まい。何故これだけ職務の為に己を殺せる男が自警団にいるのか。マサキには今でも理解出来ない。
 その男の唯一の弱点と呼べるのが妻子であることは、自警団員の間では周知の事実だった。特に子どもの話となると目元が柔らかくなる。背中を向けたままの男の表情を想像したマサキは、子どもが寂しがってんじゃねえの? これでまた暫く家に帰れなくなった男を不憫に思いながら声をかけた。
「だから思うのだよ。彼は子どものようだとは思わないかね」
「子ども、ねえ。まあ、思わないこともないが」
「私の息子などはね、妻が大好きなものだから、しきりと仲の良さを私にアピールしてくるのさ。私が妻と話をしていると割って入ってきたり。今頃は妻を独占出来て喜んでいる頃ではないかな」
「それとあいつのアレを同じに扱っちゃ、あんたの息子に失礼だろ」
 微笑ましい独占欲。それをシュウの捻くれた感情を同じにするのは暴論に過ぎる。何せシュウと来た日には、アパートメントの両隣に自警団員を配されてしまっているからか。自治区の往来でマサキにかけた暗示の効果を発揮させることもある。
「根本的には同じようなものだと思うがね」
「根本的に、なあ」
 そこに若い自警団員が姿を現わした。失礼します、マサキ殿。云って敬礼を済ませる。
 自警団とはいったものの、そこいらの街にある消防団のような集まりとは異なる。踏んできた場数の量が、彼らにラングラン正規軍にも引けを取らない統率力を与えた。末端の団員まで行き届いた躾。きびきびと動き回る団員たちは誰もが皆、自治区の平和を守るのは自分たちだという気概に溢れている。
「食事の支度が出来ましたが、いかがなさいますか」
 きっちりと襟まで留め上げた軍服姿も勇ましく、直立不動で報告を上げた若い団員に、俺が行く。マサキは椅子から腰を浮かせた。
「さて、行くか。食事と性行為《セックス》の時間だ」
 そう口にしながら若い団員の肩を叩く。僅かに表情が動いたのは、まだ彼が新人と呼ぶに相応しいぐらいの団員歴しかないからだろう。いずれはこの青年も副団長たる男のように鉄仮面となるのかも知れない。
 そんなことを考えながら、マサキは管理室を出た。
 厨房のある栄養管理室は管理室前の通路を入り口側に向かったところにある。交代制で食事を済ませる団員たちが会話を繰り広げている中、用意された食事を受け取ったマサキはシュウが待つ独房へと向かった。
 後でとシュウに云った以上、彼にこの身体を預けなければならない。そうでなければシュウのことだ。更にマサキの身体を好き勝手に操ることだろう。
 だのに、疲労に苛まれながらも高鳴る胸。一週間分の飢え。恋しくて恋しくて仕方がなかったあの温もり。それは一度や二度の性行為では満たされなさそうだ――マサキは料理が乗ったプレートを片手に独房に入った。差し入れられた書物はシュウの興味を惹いたのだろうか。壁に背中を凭れさせながら、読書に励んでいる姿が目に入る。
 すっかり独房の主と化している。
 マサキは苦笑しながらシュウの目の前にプレートを差し出した。そこでようやく気付いたといった様子でシュウが顔を上げる。捕虜には捕虜らしい振る舞いというものがあるだろうに、慎む気は一切なさそうだ。彼を拘束する拘束具の数々がなければ、まるで自宅で寛いでいるかのような態度。流石にマサキも苦笑を禁じ得ない。
「捕虜って気がまるでねえな」
「あなたも似たようなものだったでしょう」
「良く云うぜ。さんざ人の身体を弄んでおいて」
 プレートに手をかけたシュウから少し距離を置いて、壁に凭れる。先を潰してあるフォークとはいえ、使い方次第では武器になり得る。目的の為には手段を問わない男に対して油断は禁物だ。マサキはシュウが食事に手を付けるのを見守った。
 スクランブルエッグにベーコン、鶏団子と野菜のたっぷり入ったスープ。そしてパンとサラダ。普通の捕虜であればもう少し貧相な食事を用意したものらしいが、そこは自治区の建て直しに多大な貢献をした男。今後また味方としての助力も期待出来るとあって、扱いがいい。
「あなたは食べないのですか、マサキ」
「お前の相手が済んだらな。吐く訳にも行かないだろ」
「ここから出られるのは大分先になると思いますが」
「どんな予告だよ。お前、とことん捕虜をする気がねえな」
 食事を進めながら物騒な台詞を吐くシュウに、マサキとしては溜息のひとつも吐きたくなったものだが、始めに彼に襲いかかったのは自分でもある。マサキは喉の奥に溜まった唾を、吐き出してしまいそうになった溜息とともに飲み込んだ。
「少しは胃に食べ物を入れておいた方がいいと思いますがね」
 ほら、とシュウが千切ったベーコンを指で抓んでマサキに差し出してくる。フォークを使わないのは抵抗の意思がないことを示しているのだろう。数多くの戦場を経験しているだけあって、こういった際の振る舞い方は身に付いているようだ。
 マサキは身を屈めてベーコンを咥えた。
 それが終わればスクランブルエッグ、その次にはスープ……次々とマサキに食事を与えてくるシュウに、一体どうするつもりなのかと思ったマサキは、シュウの顔をまじまじと見詰めた。
「お前の飯だぞ。食えよ」
「あまりいい顔色をしていないように思えましたので」
「誰の所為だと思ってやがる」
 それに対して表情を変えることなく、私の所為ですよ。そう云い切ってみせたシュウは、そこから少しばかり食事を進めたところで、もう結構とプレートをマサキに返してきた。「残りはあなたが食べてください」





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