諸君、私は帰って来た!!!!
巫山戯た展開なんですけど、書いてる本人としては面白くなってきちゃいました。来月の半ばまでには終われるよう頑張ります。ちな書いたかどうかわかりませんが、この次に書く予定でいるイベントシリーズは春のピクニック編です。宜しくお願いします。
拍手有難うございます!励みにしております!
亀の歩みで進んでいるこのシリーズですが、きちんと成就出来るよう頑張ります!
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<インモラルオブザーバー>
独房を出て仮眠を取ったマサキは、僅かな自由時間を使って自治区の自宅に戻り、シュウが所望した玩具《グッズ》の数々を鞄に詰めて施設へと戻った。
勿論、マサキの個人的な所有物とはいえ、独房に閉じ込めておかねば何をしでかすかわからない男に使わせるものである。自由に持ち込めるものでないことはマサキも承知していた。だからこそ、施設の入り口で行われる持ち物検査にも進んで鞄を差し出してみせた。
「マサキ殿とあの方の関係は承知しておりますが、流石にこれらは私の一存では持ち込みを許可しかねます」
マサキ自身は今更何を思うこともなくなっていたが、検査官としては正視に耐え兼ねたようだ。努めて冷静であろうとしながらも、動揺が隠せぬ口振り。検査官はそう云うとあの男に連絡を取り、玩具を持ち込ませてもいいものかについて真面目に議論を始めた。
「制限付きで持ち込みを許可されるようです。詳しくは副団長にお聞きください」
ややあって、鞄の持ち込みを許可されたマサキは、思ったより重くなってしまった荷物を肩に掛けながら、例の男がシュウの監視を続けている管理室へと向かった。道中で幾人かの自警団員と擦れ違ったが、シュウの服の替えを持ってきたぐらいにしか思っていないのではないだろうか。マサキの持つ鞄に注目する者は誰もいない。
「君たちのことだ。ありきたりな性行為で満足しているとは思っていなかったがね」
シュウに勝るとも劣らぬ鋼の精神力の持ち主である男は、どういった事態を目の前にしても眉ひとつ動かすことがなかったが、流石にこの事態は予想を超えていたとみえる。マサキが持ち込んだ玩具の数々を自らの手で改めると、微かに眉根を寄せてみせた。
眉間に際立つ皺。初めて見る男の表情に、流石にマサキも途方に暮れる。
自治区に醜聞が出回らぬようにと、シュウとマサキが住まうマンションの両隣を自警団員に固めさせているぐらいに気を遣ってくれている男である。少なからずマサキを気に掛けてくれているのはわかっていたが、だからといって慎めるほどに深い付き合いでもない。
そもそもの出逢いが出逢いだった。シュウとマサキの性行為を間近に、淡々と用件を告げてみせる男。マサキは彼の前で取り繕うことが如何に無駄な行為であるかを思い知ってしまっている。そうしたマサキの態度にも思い含むところがあるのだろう。男は鞄の口を閉じると、それらを手近な椅子の上に置いてから、
「流石にここまでとなると、私としても君には自分を大事にするよう云いたくもなる」
「あんたにしては珍しいことを云いやがるな。石仮面の副団長様だろうに」
どれだけ残虐な現場に居合わせようとも表情一つ変えずに物事を処理してみせる男は、それ故に自警団内で高い評価を受けてはいるが、余りの鉄の心臓ぶりに恐怖を感じている団員も少なくないと聞く。
マサキのようにある程度の付き合いともなれば、彼の本性が人情家であることは容易に知れるのだが、訓練程度でしか接点を持たない団員からすれば、物事を淡々と処理してみせる男に人間らしさがあるなど考える余地もなし。故に付いた|通り名《ニックネーム》が石仮面。男はどうやらこの通り名を気に入っているようで、自ら石仮面と口にすることもままあった。
「趣味嗜好のことにまで口を挟むつもりはないがね。一歩間違えば細菌感染で使い物にならなくなる、ぐらいの知識はあるものでね」
しかしそれだけ肝の据わった男でさえも、ひとこと口にせずにいられない玩具《グッズ》の数々。ディルドにバイブレーターは元より、エネマグラにアナルプラグ。ニップルクリップにコックリングときて、拘束具に貞操具もある。しかも、シュウが不服を感じない程度にとマサキが選んで持ち込んだ玩具《グッズ》は、これでもまだ一部であったりするのだ。
それを知ったらこの男はどう感じることだろう。マサキは自分を振り返った男に視線を合わせながら、彼の胸中を様々に想像した。
「それはさておき、これらを規制なく独房に持ち込ませるのは、流石に私としても許可しかねる。彼の手に掛かればこれらの玩具《グッズ》から、首輪の解体用具を作り出すのも容易いだろう。君が彼と対峙する危険性を増す選択肢は出来れば避けたいのが本音だ」
「ああ……まあ、確かにな。シリコンは絶縁体だしな……使いようによっちゃ一発で解除するか、あいつなら」
「そういうことだ」
監視カメラの映像が流れるモニターをちらと振り返った男に視線を合わせる。
独房に居るシュウは今は読書をしている最中なようだ。管理室を離れていた時間も長いマサキでは、彼がノートや筆記具を使ったのかは定かではないが、差し入れられた本は彼の暇潰しの道具として一応は機能しているのだろう。こうして見られる分に於いては、真面目に読書をしているようでもある。
「さりとて今のままでも話は進展しない。彼から証言を引き出す為には、その心理的なハードルを下げる必要がある。ここまでは理解出来るかね」
「あんた本当に自警団員か? 云ってることが軍部の対捕虜調査官並みだぞ」
「それだけ先の大戦とラングランの内乱が自治区に与えたダメージは大きかったということだ」
頬の筋肉さえも動くことのない石仮面。真面目な話ともなれば彼は通り名に相応しいだけの態度を努め上げてみせる。マサキは男の胸中を慮った。内乱時の自治区の惨状をマサキは聞き齧った程度ではあったが、その一片だけでも相当な胸糞悪さを覚えたものだ。実際に目にした男はどれだけの無念に駆られたことだろうか。
「すまなかった。俺たちの動きが鈍かったばかりに」
「気にすることはない。我々はそれでもこの自治区で生きることを選んだ人間だ。ラングランとバゴニア、どちらかを故郷とする気がある人間はとうにこの自治区を捨てたよ」
マサキは言葉を返せなかった。
ラングランとバゴニアが別れることがなければ、生まれることのなかった自治区。今この土地で生きている彼らにとっての故郷は、自治区であり、ラングランであり、バゴニアでもあるのだ。
「それだけに、何故この土地に執着するものが現れるのか不思議でならないが、それを知る為にも彼には知っていることを話してもらう必要がある」
「それで玩具《グッズ》を与えるってか? 正気の沙汰じゃねえな」
「勿論、持ち込んでいい数には制限を付ける。君がひとりできちんと管理出来る数が限度だ。それと、使用されても彼を制御出来るもの。私としては二、三個が限度だとは思うが、君としてはどうかね」
「俺はこれでもランドールの名を継ぐ剣聖なんだがな」マサキは笑った。「魔法が使えねえって前提付きだが、全部使われたってあいつぐらい俺の力で止められるぜ」
そう、だったな。と、口にした男の目が――瞬間、瞠られる。それは彼がマサキ=アンドーという人間に油断をしていたからに他ならなかった。
マサキ=アンドー。またの名をランドール=ザン=ゼノサキス。
シュウと連れ合っているマサキばかりを目にしてきた男は、マサキが性的に彼に服従している姿を間近にしていたからこそ、マサキ=アンドーという稀代の英雄の実力をいつの間にか安く見積もるようになってしまっていたのだろう。
「これは失礼した。私は云ってはならないことを口にしてしまったようだ」
「気にしちゃいねえよ。奢らない為にも制限は必要だしな」
確かにマサキは奢ってしまった自分を戒める為にその名を封印してはいたが、その名に見合うだけの実力を手に入れる為にも努力は欠かさなかった。自警団に訓練を付けるのもその一環だ。だからこそマサキは自分の力に自信を持っていた。潜り抜けた修羅場の数が、更にその自信を深めさせるぐらいに。
それをいつだって挫かせるのがシュウ=シラカワという男なのだ。
彼にはマサキにないものが幾つもある。数多の学術を修めてみせた知力は云うに及ばず、調和の結界を保てるだけの魔力に恵まれているからこその魔術の才。剣術にしてもそうだ。他人に教えを施せる程度には明るい。
異なる分野の才能を全て一定レベル以上に使いこなせるだけの器用さにも恵まれた男は、故に向かう所敵なしの猛威と化す。純粋な力のぶつかり合いでならば圧勝の筈のマサキとサイバスターが、時に彼に煮え湯を飲まされる展開となるのは、彼が様々な方面の能力に特異な才能を発揮しているからである。
「あんたの云う通り、あいつに使わせていい玩具《グッズ》は二、三個が限度だろ。どれを使うかはあいつに選ばせてやる。それであんたにはあいつの思惑がわかるだろ。あの首輪を解体する気があるかどうか」
「成程。彼がどう動くか、様子を見てみるのもひとつの手ではあるな」
「俺はあいつが本気で逃げようと思ってるとは思ってねえけどな」
マサキは椅子に置かれたままの鞄を注視した。使いようによってはマサキを拘束し、首輪を壊しきるだけの用途に足る玩具《グッズ》の数々。それをシュウがマサキとの性行為に用いるのか、それとも脱獄の為に使用してみせるのか――口ではそうは云ったが、マサキの本音としてはその確率は五分五分だった。
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