諦めた。
だって、やればやるほど文章力が低下してゆくんですよ。それじゃあやってる意味がないじゃないですか。ということでここからは140字を諦めて、とにかく起承転結をしっかりすることを目標にしてゆきたいと思います。
だって、やればやるほど文章力が低下してゆくんですよ。それじゃあやってる意味がないじゃないですか。ということでここからは140字を諦めて、とにかく起承転結をしっかりすることを目標にしてゆきたいと思います。
鮮血が滴り落ちてきそうなまでに紅い月を眺めながら、窓辺に凭れてひとりきり。シュウは地底世界をともに去ることになったマサキのことを考えていた。
旧元老議会系の議員たちは、立憲君主制となった現在のラングランでも、一定の影響力を議会に対して有している。その彼らが魔装機神という存在に強い不快感を示した以上、こうなることは避けられない運命でだったのだろう。
恐らく、魔装機神とその操者たちは力を持ち過ぎてしまったのだ。
人は共通の敵を生み出すことでその繋がりを強固にする生き物だ。神聖ラングラン帝国において、それはバゴニアやシュテドニアスといった周辺国家であっただろう。もしくはルオゾールであり、破壊神サーヴァ=ヴォルクルスであり、闇に堕ちた大公子たるシュウでもあっただろう。いずれにせよ、そうした共通の敵の存在こそが、ラ・ギアス最大国家の面子を強力に保たせていたのに違いはない。
だからこそ魔装機神は神聖ラングラン帝国に生れ落ちた。
その結果、ひとつ、またひとつと敵を失っていったラングランは、面子という強固な鎧を剥がされていったのだ。
融和する世界。魔装機神が積み重ねていった平和は、近隣諸国の態度を軟化させた。それは決して明るい未来を意味しなかった。国家制度の崩壊。神聖ラングラン帝国は終わりの時への道程を歩み始めていた。
だからこそ、帝国は更なる敵を求めた。
かつてラ・ギアス世界の覇者だった彼ら。人間を捻り潰せるほどの身の丈を誇った巨人族。彼らは滅びの時を迎えた後も思念体となって世に残り、度々神を騙って現世に顕現してみせては、幾度もラ・ギアスの大陸に災厄を振り撒いてみせたものだ。
サーヴァ=ヴォルクルスもそのひとり。
ラ・ギアスが三柱神に数えられる破壊神は、けれども地上にて語り継がれている神話という御伽噺に出てくるような善悪の二面性を持つ存在ではなかった。混じりけのない邪悪。人間とともに歩んでこなかった巨人族は、人の世を支える為には存在し得ないのだ。それは創造神ギゾース=グラギオスや調和神ルザムノ=ラスフィトートの在り方からしても明らかであった。
殺戮にこそが慈愛。
彼らの存在こそ、ラングランが国家として在り続ける為に必要な共通の敵。最後の希望であったことだろう。しかしそれさえも魔装機神は打ち砕いてみせた。そうである以上、魔装機神が共通の敵に成り上がるのは時間の問題だった。旧元老議会系の議員たちが強い不快感を示すのも尤もである。
――憎々しい。
自らの頭の回り具合が、シュウには忌まわしいものに感じられることが多々あった。見えなくともいいものが見えてしまう。そうでなくとも、科学者として、或いは元王族として、多方面に人脈を持つシュウの元には実に様々な情報が集まってきたものだ。それらを繋げて世界を俯瞰すれば、点と点が結び付くのも時間の問題。シュウは自然と世界の裏側を識る観測者となっていった。
そう、だからこそシュウもまたラングランの外敵と見做されたのだ。そしてだからこそ、マサキたちとともにラ・ギアス世界を放逐されるに至った――……
地上世界に強い人脈《コネクション》を持つシュウは、身を寄せる場所には困らなかったものの、さりとて生まれ育った世界からこうも容易く手のひらを返されて、それを物分かり良く受け入れられるほどにお人好しではなかった。一度に限らず二度、三度。裏切られては実力で捻じ伏せてきた世界。シュウはまた戦わなければならない立場に立たされている。
ましてやマサキたちにとっては、縁もゆかりもなかった世界なのだ。
彼の胸中を思えばこそ、シュウの胸には苛烈な炎が灯ったものだ。このままでは終われない。シュウが誓いを新たにしたその瞬間、カチャリ、と玄関ドアが開く音が響いた。ああ、寒い。云いながらマサキが部屋に上がり込んでくる。そして手にしているコンビニの袋をシュウに差し出して、肉まん。と笑った。
「お前は流石に食ったことないだろ。一緒に食おうぜ」
もっといい住まいを提供出来ると云われたのを断って、マサキとふたりで身を置くことにした安アパート。全てはここから始まるのだ。ええ、マサキ。シュウは努めて柔らかく微笑みながら、コンビニの袋を受け取った。
シュウマサで、禍々しい赤い月が照らす窓辺で、大切な人を想いながらこの世の全てを恨んでいる場面が出てくるお話を書いてみませんか?(2ツイート以内)
幻想狂気な小説お題ったー:https://shindanmaker.com/481026
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陶器と思しき滑らかな肌に深く色を湛えた紫の瞳が浮かんでいる。
|渺茫《びょうぼう》とした世界を遥か彼方から眺望しているかのような眼差し。手元の書を読むことに専心しているシュウの表情はひたすらに穏やかだ。恐らく彼は書をつまびらくことで、三千世界を一里と駆けているのだ――……その横顔に吸い込まれること暫く。自分がその顔に見惚れていることに気付いたマサキは、シュウの不躾な視線に晒されてつとと顔を逸らした。
「私の顔に、何か」
「何でもねえよ」
「その割には随分と長く、私の様子を窺っていたようですが」
ぱたん、と閉じた書を膝の上に乗せたシュウは、どうやらマサキがその顔を眺めていた理由に思い至っているようだ。良くあることですがね。面白くなさそうに呟くと、テーブルの上のカップに残っていた紅茶をひと思いに飲み干して立ち上がった。
「何処に行くんだよ。読書の邪魔をしたのは悪かったって」
「あなたに限っては、そうしたことはないと思っていたかったのですが、そうまじまじと顔を|凝視《みつ》められてしまってはね。読書に集中出来ないでしょう」
どうやら自らの部屋に戻るつもりなようだ。
決して意識しての行動ではなかったにせよ、不快に感じさせてしまったのは事実。悪かった。重ねてマサキが口にすると、「云ったでしょう。良くあることだとね」シュウは|眉《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》|動《・》|か《・》|す《・》|こ《・》|と《・》|な《・》|く《・》云ってのけると、いたたまれない気持ちでいるマサキに目を遣ることもせずに、そのままその場を立ち去ろうとする。
けれども何かを思い付いたようだ。
一歩、二歩……シュウはマサキの元へと歩んでくると、その長躯を屈めた。耳にかかる息。彼は声を潜めると密やかに、私の顔に見惚れていたのでしょう? 甘い響きでもってマサキに囁きかけてきた。
「……そんなことは、ねえよ」
「どうでしょうかね」ふふ、と嗤った彼は、「そのぐらいの見分けはつきますよ」
そう言葉を残して、そっとマサキから顔を離すと、今度は振り返ることなく。悠々とした足取りで、マサキの視界から姿を消してゆく。
kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【横顔】です。
ワンドロ&ワンライお題ったー:https://shindanmaker.com/1068015
<Paraphilia_overture.>
kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【横顔】です。
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<Paraphilia_overture.>
にゃん。と、目の前に姿を現すなり口にしたマサキに、シュウは微かに目を見開いた。マサキ? 尋ね返してみれば、にゃん。と繰り返して口にする。
咄嗟に思い出される昨年の出来事。詳細を口にするのも憚られるような格好をさせられて、一日を猫語で過ごすという羞恥に塗れた扱いをされておきながら、どういった風の吹き回しか。シュウはマサキの顔をまじまじと見詰めずにいられなかった。
「自分で云うとは思っていませんでしたよ、マサキ」
「にゃにゃ、にゃにゃにゃにゃ、にゃんにゃにゃにゃにゃん?」
どうやら本人は意味のあることを話しているつもりらしい。しかもそれはそれなりに真面目な話であるようだ。笑ってはいないものの生真面目とも云えない表情。にゃにゃにゃ、にゃーん。しきりと猫語で訴えかけてくる。
「まさかあなたは、またああいった扱いをされたいとでも云うつもりですか」
「にゃ、にゃにゃにゃにゃんにゃんにゃん!」
否定をしているつもりらしい。険のある表情は不服を訴えているからなのだろう。騒々しく猫語で抗議を始めたマサキに、だったら何を求めているのです? シュウが問えば、
「にゃにゃにゃん!」
早くもマサキは自分が云いたいことが伝わらないことに焦れたようで、丸めた手でシュウの身体を掻いてくると、にゃにゃにゃん! 繰り返し、同じ声のトーンで訴えかけてきた。
「そうは云われても、あなたが何を私に伝えたいのか、私にはさっぱり――」
「もう、何でだよ! このぐらいわかるだろ!」
ついに根負けしたのだろうか。拙速にもシュウの膝の上に乗り上がってきたマサキが、ばんばんと胸を叩く。とはいえ、先程までの発話の内容については口にするつもりはないらしい。頑固にも口を結ぶとシュウを睨み付けてくる。
「しかし、マサキ。家に上がり込んで来るなり猫語で話しかけられて、その意味を理解しろと云われても。私とて人間ですよ。超能力者にはなれない」
にゃん。それに対してマサキはひと言、しつこくも猫語で返してきた。仕方なしにシュウは云い訳めいていると思いながらも、更に言葉を継いだ。
「そもそもヒントも何もない状態ですよ。あなたの猫語の法則を見つけ出すには、もう少しその発話パターンを集める必要が」
「これで伝わらない方がどうかしてるだろ!」
ばん。再び胸を叩かれたシュウは、その力強さにバランスが崩れるのを感じた。
後方に倒れ込む上半身。ソファに深く埋もれる形になったシュウに、マサキは暫く不機嫌も露わな視線を投げ続けていたが、やがて諦めが付いたようだ。誕生日。そう口にすると、ああ、と頷いたシュウの胸倉を掴みながら続けた。
「お前、今年はちゃんとした衣装を用意するって云っておきながら、何もしてないじゃねえかよ!」
「ちゃんとした装いであなたにさせてみたい格好が思い付かなかったのですよ」
「そんな理由かよ! 人が覚悟を決めて待ってれば!」
マサキ。シュウはその背中に腕を回した。覚悟を決めて待っていた、ということは、彼はシュウの如何なる要望も受け入れるつもりでいたに違いない。マサキの身体を抱き寄せながら、自らの中にある悪戯心が騒ぐのを感じ取ったシュウは、衣装はありますよ。耳元でそう告げた。
「但し、ちゃんとした衣装とは云い難いものですがね」
その瞬間のマサキの脱力しきった表情! 約束を信じて受け入れた屈辱が何の意味もなしていなかったことに気付いた彼は、けれどもシュウからのそうした扱いを拒否しきれなくなっているのだ。
ねえ、マサキ。シュウは嗤った。その誘いかけるような呼び声に、先ずはその衣装がどんなものか見せろよ。抵抗と、好奇心。葛藤がありありと窺える表情で、マサキはシュウの腕の中。そう口にしてみせた。
さてさて、今日kyoの福音書に記されている言葉は…
☆大罪司教
☆戻った先に
☆にゃん
の3本です
組み合わせても、1つを選んでもOK
ワンライドロお題を考えてみた:https://shindanmaker.com/671790
<膝の上の小さな奇跡>
ワンライドロお題を考えてみた:https://shindanmaker.com/671790
<膝の上の小さな奇跡>
決して油断をしていた訳ではなかったものの、出会い頭の攻撃。弾道が残像を刻みながら、光速で軌道を描いて迫りくるのを、マサキはただ見ていることしか出来なかった。
禍々しい光を放つ光弾。それは、てめえ……! と、マサキが相手に向かって声を上げるより先に、サイバスターの胸部に着弾した。衝撃に軋む身体にバッククラッシュが生じる。マサキは歯を食いしばって、全身に走る一瞬の痛みに耐えた。
コンパウンドアイの向こう側で炸裂した光で役立たずとなったモニターは、何ひとつ状況を伝えてきてはくれない。マサキ! 危機を察した二匹の使い魔が声を上げるも、闇雲に攻撃を放ったところで無駄にサイバスターを消耗させるだけだ。マサキは警告音を発する計器類から、可能な限りの情報を読み取ろうとした。
「精霊レーダーに反応! 二時の方向!」
「接敵予想時刻まであと一秒!」
「仕方ねえ、行くぞ!」
モニターの機能が回復するのにはまだ時間がかかりそうだったが、幸いコントロール機能を奪われた訳ではないようだ。マサキは即座にコントロールを始めた。そして気配を近くするグランゾンに向けて、勘で攻撃を放った。
レーダーを頼りに攻撃を打ち込み、同じくレーダーを頼りに攻撃を|躱《かわ》す。まるで今立ったばかりの赤子を動かしているような操作感。ぎこちなさばかりを伝えてくるサイバスターに、マサキは焦れた。
それでも次第に回復を進めるモニターに、そうした不満も解消されつつあった。
再びサイバスターに撃ち込まれる光弾を、着弾の直前で避ける。視界さえ回復しきればこちらのものだ。マサキは自らの手足となって動くまでに回復したサイバスターを操って、いざグランゾンへと反撃を開始しようとした。
その矢先に。
「もう結構ですよ、マサキ。データは取れました」
ようやく開かれた通信回線から響いてくる声。それを契機に一切の攻撃を止めたグランゾンに、またかよ。マサキは呆れながらも、ダメージを負ったサイバスターと自身の回復が先と、自らもまた反撃するのを止めた。
「少しは手加減しやがれ。何だあの攻撃は。グランゾンの武装に|炸裂弾なんて《そんなもんは》なかっただろ」
「新型武器をテストしようと思ったのですよ」
打ち身に擦り傷。身体の各所に負った傷の深さを確認したマサキは、救急キットを用意しながら、通信モニターの向こう側に姿を現したシュウの顔を見遣った。
端正な面差し。口元にうっすらと笑みを浮かべている彼は、問答無用で攻撃を仕掛けてきておきながら悪びれることもない上に、謝罪の言葉ひとつすら口にしてこないのだから性質が悪い。
「人をグラフドローンみたいに扱うんじゃねえ」
「滅多に使えない標的という意味では、グラフドローンよりは高品質でしょう」
「云ってろ。それで結果はどうだったんだよ。まさか人にこれだけの傷を負わせておいて、実装を見送る、なんてことはねえよな」
薬を塗り、湿布を張り、ガーゼや包帯を当てる。そのマサキの様子を通信モニター越しに眺めているシュウは、日頃の訓練が足りませんね。冷ややかに断じてみせると、目の前に浮かんでいる拡散ホログラフィックディスプレイに指を走らせた。
層になっているディスプレイを次々と表示しては、データを確認しているようだ。その表情の乏しさからして、どうやら今回のテストは芳しい結果を残すものではなかったのだろう。残念ですが――と、言葉を継いだ。
「光の拡散範囲が狭すぎますね。相手の視覚情報を奪う為に精密射撃の腕を必要するとなると、乱戦での効果は殆ど期待出来ない。お遊び程度に積んでおいてもいいですが、そうした無駄を重ねるぐらいなら、時間をかけて|改修《アップデート》をした方がいいでしょう」
「てめえの相手は割に合わねえ。この間もそうだったよな。訳のわからない武器を開発して、それをサイバスターでテストしておきながら、結局実装はしないって」
「それに見合うだけの礼はしますよ、マサキ」
シュウの思いがけない台詞にマサキは目を|瞠《みは》った。どんな気紛れが彼をしてこんな殊勝な台詞を吐かせたものか! けれどもそれも少しのこと。どうせ無粋な男のすることだ。マサキの期待に応えられるだけの礼には程遠いに違いない。
「へえ、礼かよ。何をしてくれるって云うんだ。まさか食事を奢って終わり、なんて云わねえよな」
それを挑発するように言葉を紡げば、あなたは何をして欲しいですか? シュウはそうマサキに尋ね返してきた。
「欲しい物があるというのであれば買って差し上げましょう。して欲しいことがあるというのであればして差し上げましょう。あなたの望みを何でもひとつだけ、叶えて差し上げますよ。何がいいです、マサキ?」
そうは云われても、いざ問われると言葉に詰まる。
マサキはシュウに対して、何も期待をしていないのだ。サイバスターのメンテナンスや改造であれば、ウエンディやセニアがいる。剣技の腕を磨く為の稽古の相手であればファングがいる。戦場で命を預ける相手であれば、魔装機操者の面々がいる。不足を感じていない生活。そうした理由があってのこともあるが、自分でもよくぞここまで寛大にこの男との付き合いを許容していられると思うぐらいに、マサキは厄介事を持ち込んでばかりの男に対して寛容でいる。
とはいえ、だからといって、これだけの無礼を働かれたのだ。何もさせずに済ませる訳にもいかない。マサキは様々に自分の欲を掘り返した。そうしてふと、その欲求に行き当たった。
「……褒めろよ」
躊躇いがちにその欲を口にしてみれば、シュウにとっても意外な要求だったようだ。彼は即座には反応出来ないといった様子で、マサキの顔を真正面に見据えてきた。
暫く、ふたりの間に沈黙が降る。通信モニターの向こう側にあるシュウの表情から、彼がどう言葉を発すればいいのか悩ましく感じている様子が伝わってくる。気まずい。マサキはそう感じたものの、今更口に出してしまった言葉を引っ込める訳にもいかない。
「あなたにしてはらしくないことを云いますね」
「煩えよ。自分で自分を褒めるのにはもう飽きたんだよ」
これだけの理不尽な扱いを受け続けながら、それでもマサキはシュウとの縁を断とうとは思えなかった。お人好し――そう、マサキは胡乱と評してもいいぐらいのお人好しであるのだ。そのぐらいの自覚はマサキにもある。
決してシュウはマサキのそうした態度に付け込んでくることはなかったものの、だからといって付け上がっていない訳でもない。だからこそ、自分は何をしているんだ。マサキは時に自らのシュウに対する振舞い方に疑問を抱いてしまうことがある。
そうした報われない自分の行いを、マサキは誰かに褒めて欲しかった。
成程。何を納得したのかは不明だが、シュウはマサキの言葉に心を動かされた様子だった。口元に手を当てて暫く。何事か考え込む素振りを見せると、なら、こちらに来なさい。云うなり通信回線を閉じてしまう。
仕方なしにマサキは操縦席から腰を上げた。行くの? と、不安げにマサキを見上げてくる二匹の使い魔たちに、まあ大丈夫だろ。一抹の不安を覚えながらも、マサキはサイバスターを降りて、シュウが待つグランゾンのコントロールルームに潜り込んだ。
「別に褒めるだけなら、言葉ひとつで済む話だろ」
「しなれないことをするところを、あなたの使い魔にまで見られたくなかったのですよ」
面白くなく感じているようにも映る無表情。それでも云ったことは守るつもりでいるようだ。ほら、とシュウがマサキに手を差し伸べてくる。
ただ褒めるだけで済む話だというのに、一体何をするつもりなのか。何だよ、と躊躇うマサキの手をシュウが掴む。おい、シュウ。ぴくりとも動かない腕に、マサキは仕方なく身体の力を抜いた。
それが契機だった。シュウはそのまま力を込めてマサキの腕を引き寄せると、強引にも自らの膝の上にその身体を乗せて、無表情のまま。まじまじとマサキの顔を|凝視《みつ》めてくる。
「お前、本当に褒める気あるんだろうな」
「ありますよ。ほら」
刹那、ふわりとその腕がマサキを抱いた。次いで髪にかかる手。シュウは静かにマサキの頭を撫でながら、
――よく、頑張りましたね。
頭上から降ってくる声は、柔らかく、そして心地良く、幾重にもマサキの耳を満たして限りなく。ああ、幸せだ。胸に込み上げてくるものを悟られぬように、マサキはシュウの腕の中。ひっそりと安堵の息を吐いた。
kyoさんは【手加減してよ】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー2:https://shindanmaker.com/670615
以上です。
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kyoさんは【手加減してよ】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
140字SSお題ったー2:https://shindanmaker.com/670615
以上です。
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