140字って
何のことです?
思いっきり後退している今回のSS。そろそろ中断しているあれこれを書きたくなったので、シフトのゆるい今週は頑張ろうと思います。
何のことです?
思いっきり後退している今回のSS。そろそろ中断しているあれこれを書きたくなったので、シフトのゆるい今週は頑張ろうと思います。
「徹夜三日目だって?」
グランゾンの分解メンテナンスに手を付けること三日目。それまで自機のメンテナンス作業を見守るだけだってマサキは、唐突にグランゾンに与えられているブースに足を踏み入れてくると、作業に勤しんでいる担当|整備員《メカニック》たちを押し退けるようにしてシュウの眼前に仁王立ちとなった。
「まだ三日、ですよ、マサキ」
煤けたパーツを洗浄して組み直す。言葉にすればたったそれだけの作業でも、巨大な機械の塊ともなれば膨大な手間となる。司令部に許可を得て一週間の作業工程を組んでいるとはいえ、戦列復帰にかかる時間は短い方がいい。シュウにとって自身の徹夜は、作業を短く済ませる為に払うべき当然の|代償《コスト》である。
「それにしても、どういった風の吹き回しです? わざわざ足を運んでみせるとは、そんなにグランゾンの内部構造が気になりますか」
「そういう意味じゃねえよ。いい加減に寝ろ。こっちは心配してんだ」
「これはまた妙な話もあったものだ」シュウは嗤った。「あなたが私を心配するなど」
「|整備員《メカニック》たちの間じゃてめえの話題で持ちきりだ。自分たちを休ませておきながら、当の本人は休むことをしないってな」
当然ですね。シュウは作業の手を休めることなく続けた。
分解したパーツを作業台に乗せ、それを更に部品単位で分解してゆく。細かく分けれた部品は|整備員《メカニック》たちによって特殊溶液で洗浄され、再びシュウの元に戻される。その再組み立てを行うのは勿論シュウだ。
「私の我儘で始めたこと。それに付き合わせているのですから、彼らの休みを私が保証するのは当然のことでしょう。ですが、それで納得がいきましたよ。あなたが自発的に私を心配するなど有り得ない」
「同じ部隊に属してともに戦場に立つ以上、お前であろうが味方には違いねえ」
憮然とした表情でマサキが口にする。そして、のらりくらりと話をはぐらかすシュウに堪忍袋の緒を切らしたようだ。次の瞬間には問答無用でシュウの上着の襟元を掴みあげると、自身の方へとその身体を引き寄せて、
「忘れるんじゃねえよ。こっちはてめえに命を預けてるんだ」
間近に在る、苛烈な瞳。
薄く膜を張った角膜の奥で水晶体が揺らめいている。黒い瞳を持つ日本人は、感情の動きが瞳に現れることは稀だ。けれどもマサキは違う。シュウはその瞳をまじまじと眺めた。色を薄くした瞳の中に、自らの顔が映っている。
「無事に戦列に復帰出来る日が来たら寝ますよ」
我ながら嫌味な笑顔だとシュウは思った。
それがマサキを更に激高させたようだ。彼はシュウの身体を突き飛ばすように襟元から手を離すと、そんなのは当たり前のことなんだよ。吐き捨てるように口にして、いいから寝ろ。そう言葉を残すと、自身の機体の整備は終わっているのだろう。|格納庫《バンカー》を後にしていった。
kyoさんは『心配してんだよ』という台詞を使って、絵または漫画、小説を描いて(書いて)ください。
台詞で創作ったー:https://shindanmaker.com/524618
<さよならだけの人生>
kyoさんは『心配してんだよ』という台詞を使って、絵または漫画、小説を描いて(書いて)ください。
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<さよならだけの人生>
「見送りはここまでで結構です。マサキ殿」
「そうか。向こうに行っても元気でやれよ」
「一日も早い戦争の終結を願っております。マサキ殿もお元気で」
ひとりの|乗組員《クルー》が艦を下りた。
補給に立ち寄った街では出会いと別れが交差する。補充人員として艦に新たに乗り込んでくる|乗組員《クルー》たちに、配置換えで艦を下りる|乗組員《クルー》たち。戦時に於いては当たり前の光景とはいえ、長くともに戦ってきた仲間たちには違いない。一抹の寂しさを感じながらマサキは彼らを見送り、そして新たな仲間を迎え入れた。
尤も、彼はそういった軍の都合で艦を下りるのではなかった。今日付けで軍を去ることとなった彼は、これから戦禍で運行に支障が出ている公共の交通機関を利用して、いつ辿り着けるかも知れない故郷に帰るのだという。
街の雑踏の中へと、次第に小さくなる背中を見送りながら、マサキは彼の旅の無事を願わずにいられなかった。
「彼はどうして除隊を」
優秀な通信兵でもあった彼に戦場で世話になった|操縦者《パイロット》は数多い。名前は知らなくとも顔は見知っている。そういった|操縦者《パイロット》のひとりであるのだろう。いつの間にかマサキの背後に居場所を定めていたシュウに、お前、気配を殺して人の背後に立つその癖を改めろよ。マサキは先ずそう言葉を吐いてから、
「|故郷《くに》に帰るんだとよ。戦争で父親が重傷を負ったらしくてな」
「家族の側にいてやりたいと? あれだけの腕を持っていながら勿体ない。彼がいたからこそ|通信妨害《ジャミング》の激しい戦場であっても、艦とスムーズに意思疎通を行うことが出来ていたのですがね」
「実家が地域じゃ有名なスーパーマーケットらしい」
「成程。地域住民への生活物資の補給を担っている――と」
そう。マサキは深く頷いた。
彼の実家があるナムダラは、人口5万人程度の小さな街ではあったものの、国の主要都市に続く道が複数開かれていることもあって、交通の拠点として狙われ易いとのことだった。特にここ一か月は攻撃が激しく、住民たちも武器を手に、敵軍と戦いを繰り広げているようだ。
「太い仕入れルートを持っている店が他にないらしくてな。定期的に商品が入ってくるのがそこのスーパーだけなんだと。だから……まあ、苦渋の決断だったみたいだぜ」
「それが戦争であると理解していても、日常的に顔を合わせていた人間との別れは寂しいものでありますね。これが彼との今生の別れにならないことを願うばかりですよ」
恐らく、今回の戦争が終わっても、彼は直ぐには軍には戻ってこないだろう。マサキは彼との別れの挨拶を噛み締めた。一日も早い戦争の終結を。そして改めて、自らがこの場に立っている意味を振り返った。
戦争は様々に人の人生を狂わせる。その悲劇を食い止める為に戦うのも、マサキたち|戦う力を持った者たち《パイロット》の務めであるのだ。
「そうは云っても、出会いと別れなんざ日常的なもんだろ。戦時中は特にな……」
昨日の敵は今日の友。今日の友は明日の敵。裏切りと共闘が日常の戦場にあっては、一兵卒の去就など五分も持たない話題でもある。いつか彼の記憶も薄れてゆくのだろう。マサキは今まで繰り返してきた出会いと別れを思い出してみようとしてみたが、その大半を忘却している事実に気付いて目を伏せた。
目まぐるしく過ぎてゆく日々にあっては仕方のないことであるとはいえ、ともに死線を潜り抜けた仲間たちのことだ。せめて顔ぐらいは覚えていてやるべきであるだろう。だのに思い出せない記憶の数々。マサキは自らが非情な人間になってしまったように感じられてならなかった。
「いつか、てめえとも別れる日が来るんだろうな」
シュウはマサキを通り越して、その背後に広がる街の雑踏を見詰めている。
「さよならって挨拶をしたきり、二度と顔を合わせなくなる日が――」
「それはどちらの意味で、です」
簡単には命を落とすものかという覚悟が窺える強い口調。シュウ=シラカワという男は、何事にも執着していないように見えて、誰よりも生に執着している。だからこその非難。
それに対して、マサキは精一杯の笑顔を浮かべてみせた。
「俺は自分が長生き出来るとは思ってねえよ」
そうしてシュウの肩を軽く叩き、行こうぜ。マサキは艦に戻る道を歩き始めた。
kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【さよなら】です。
ワンドロ&ワンライお題ったー:https://shindanmaker.com/1068015
kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【さよなら】です。
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各地で小競り合いを繰り返しながら進軍を続けるマサキたちに合流を果たしたシュウは、敵方の行軍ルートの割り出しを済ませると、その所見を窺うべく、彼が身体を休めている艦内の部屋を訪れることにした。
「痛えんだよ、お前! もう少し優しくやれよ!」
「あっらあ、お言葉! これでも充分優しいわよ、この軟弱男!」
部屋の前に立てば響いてくる声。どうやらミオと何かをしているようだ。
歳の近い割には仲睦まじくとはいかない二人組は、寄ると触るとこの騒ぎだ。かといって仲が悪いのとはまた異なる。マサキをおちょくる態度にフォーカスが当たりがちなミオではあったが、彼女は彼女なりに同郷の徒であるマサキを慕ってはいるようだ。
「嘘吐け! お前、さっきから滅茶苦茶笑ってるじゃねえか!」
「そっりゃあマサキがこんだけ痛がってる姿、滅多に見られないしー」
「てっめえ、巫山戯んなよ……もういい、自分でやる! お前に頼んだのが間違いだった!」
「出来る筈ないでしょ、このスカポンタン! ほら、諦めて大人しくしなさいよ! マサキ、さっきからいちゃもん付けてはちっともじっとしてないじゃないの! だから嵌まるものも嵌まらなくなってるのよ!」
それにしても騒々しい。シュウは取り込み中の様相を呈している彼らの言葉に逡巡した。
――果たして今、彼の部屋に足を踏み入れていいものか……
そうは思いもしたが、シュウの抱えている用事は後回しにしていい類のものではない。ルート選択によってはいらぬ被害を出してしまう可能性もある。マサキには時間をかけて慎重に情報を吟味して欲しいところだ。
躊躇っている場合ではないのだろう。マサキ。シュウは部屋のドアをノックしながら彼の名を口にした。
しかし言葉を途切れさせることなく騒ぎ続けているマサキには、その声は届いていないようだ。この様子では許可を待っていては、いつまで経っても本題に入れないに違いない。シュウは仕方なしにドアに手をかけた。
「もう、動くの止めてって云ってるでしょ!」
「わ、馬鹿。お前どこを押さえて」
ドアを開いた瞬間にシュウの目に飛び込んできたのは、ベッドの上で上半身裸になっているマサキを、馬乗りになって押さえ込んでいるミオの姿だった。
「これは大変な失礼を」
マサキとミオのふたりが、間違ってもそういった関係でないことをシュウは理解している。とはいえ、この光景を間近にして、他にどういった言葉が吐けたものか。ドアを開けてしまった己の愚かさに後悔を感じながら、時期を改めるべくシュウは一歩下がる。
「ち、ちちち違うのよ、シュウ!」
「てめえ、何を勝手な誤解をしてやがってんだ!」
それが余計な誤解を招いていると気付いているのか。揃って同時に声を張り上げてきたマサキとミオに、わかっていますよ。シュウはせめてものユーモアをと微笑みかけてみた。しかし、馬鹿々々しさが先に立っているからか。思ったように笑えない。
その顔に貼り付いたような笑みは、却ってふたりの不安を煽ってしまったようだ。
「ちょっと、シュウ! 余計な誤解をしたまま去ろうとしないで!」
「早合点してるんじゃねえよ! とにかく先ずそこのドアを閉めろ!」
喧しいにも限度があるふたりの声に、私の用など直ぐに終わるのですがね――と、長引きそうな話にうんざりしながらも、仕方なしにシュウはドアを閉じた。そして未だベッドの上。誤解を受けそうな体勢のままでいるふたりに向き直る。
「で、何が誤解なのです」
「肩が外れたんだよ。それをミオに嵌めてもらえねえかって頼んでてよ……」
「マサキが他の仲間には内緒にしとけって云うから」
自分でも驚くほどに深い溜息が、シュウの口を吐いて出た。
「そういったことはもっと早く打ち明けるのですね」
シュウはベッドへと近付いた。見た感じでは、どうやら左の肩が外れているようだ。
いずれにせよ、このままミオに任せておくのも危険に過ぎる。ミオにマサキの上から退くように告げたシュウは、次いでマサキの身体を起こすとベッドの端に座らせた。
「ヤンロンに頼めばよかったでしょうに」
「戦闘中のダメージでこうなったのならまだしも、そこでこいつと派手にぶつかっちまったんだよ。それだとヤンロンのことだ。普段の注意が足らないからだとかって云ってくるのが目に見えてるだろ」
「流石に彼も、不測の事態で起こった怪我に対してまで、口煩く云ってくることはないとは思いますが」
日常生活さえも戦いの為の準備期間と割り切れるヤンロンが相手とあっては、警戒を強めたくなるのも仕方のないこととはいえ、その結果がこの騒動では危なっかしいこと他ない。シュウはマサキの左肩に手を置いた。
「肩の力を出来るだけ抜きなさい」
「一瞬で済ませろよ」
「私を誰だと思っているのです」
左上腕を押さえ込む。
そして呼吸を楽にするように告げると、両手に力を込めた。まるでパズルのピースが嵌まるかのように、するりと嵌まりこんだ肩に、マサキは拍子抜けしたような表情になると、そのまま左腕を何度か回してみせる。
「さっきまでの苦労は何だったんだよ……」
「こういったものは力の加減と加える方向なのですよ。わかりましたか、ミオ。今後はああいった荒っぽい方法は控えなさい。余計な怪我人を出さない為にもね」
はーい。反省しているのかいないのか。どこか面白くなさげな表情で返事をしてみせたミオは、ところでとシュウの顔を覗き込んできた。
「シュウは一体、何の用だったの? もしや、あたしの方こそお邪魔虫だったり」
「敵の行軍ルートの割り出しが済んだので、その結果を報告するついでに、マサキに明日の進軍ルートをどうするか尋ねたかったのですよ」
シュウの言葉に表情もあからさまに。なーんだ、と期待外れな結果に声を上げたミオは、「だったらヤンロンやテュッティもいた方がいいでしょ。呼んでくるわよ」と、ドアの向こう側へとその姿を消していく。
閉ざされたドア。直後、あのよ。と、マサキが小さく声を上げながら、シュウの上着の袖を掴んでくる。ええ。頷きながらも、シュウはドアから視線を外さずにいた。
いつミオがヤンロンとテュッティを連れて戻って来ないとも限らない。それに、マサキが何を云いたいのかシュウには察しが付いてはいたが、それを正面切って彼の顔を眺めながら聞きたいとは思えなかった。
「悪かったな……誤解を受けるような真似、しちまって」
「彼女の扱いには気を付けるのですね。あれでも年頃の女性なのですから」
マサキは自分を振り返らないシュウに思い含むところがあるようで、シュウの言葉にごめんと呟いてくる。気にしてはいませんよ。シュウは云いながら、そうっと袖を掴んでいるマサキの手に自らの手を重ねていった。
あなたはシュウマサで、【貼り付けの笑み】をお題に140字SSを書いてください。小説等でもどうぞ。
140字SS向けのお題:https://shindanmaker.com/674263
以上です。
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