まあ全然1時間で書けてないんですけどねッ!←
Twitterがこのまま死ぬかもしれないということで、このシリーズもこのまま終わる可能性が高くなったんですけど、想像以上にイーロンが無能で笑うしかないですよね。何であのシステムで閲覧上限設けて大丈夫だと思ったんだ……
何が笑えるってイーロン本人も閲覧制限かかってるらしいということ。
そらそうなるやろ……
という訳で、本文へどうぞ!
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そらそうなるやろ……
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<選択肢はひとつ>
リューネとウエンディのコンビに引っ立てられるようにして訪れた王都で、やれショッピングだデザートだと彼女らの欲望に突き合わされ続けたマサキは、自らの要望を口にし難いデートにそろそろ飽きを感じ始めていた。
他の場所であれば自然の景観を楽しむということをしてみせるふたりであったが、不幸にもここは栄えある王都だった。最新のファッションやグルメがひしめき合う街で、物欲に歯止めを利かせろというのにも無理がある。限りを知らない欲望。両手に山と彼女らが買い込んだ荷物を持たされたマサキは、今また新たな店を発見したらしいふたりに、どうにかならないものか――と、助けを求めるように辺りを見渡した。
「そんニャ都合のいい展開はニャいのよ」
「諦めて今日はふたりに付き合うんだニャ」
シロとクロの言葉に、マサキはわかってるよと言葉を吐いて、両手に荷物を持ち直した。少女趣味に溢れた雑貨を飾られているショーウィンドウ。次の彼女らのショッピングの標的《ターゲット》はどうやらこの店であるらしい。
マサキはそのガーリーな外観に二の足を踏んだ。パステルピンクに塗られた壁に、ストロベリーピンクのドア。白さが際立つ布製の庇にはレース模様があしらわれ、まるで人形の家とでも呼ぶべき様相を呈している。間違ってもマサキのような無骨なファッションに身を包んだ男性が入っていい店ではない。
「おい、お前ら本当にここに入るのかよ」
「大丈夫だって! ちょっとだけだから!」
「何だったらマサキは外で待っていてもいいのよ?」
流石にその店に足を踏み入れるほどの勇気はマサキにはなかった。リューネとウエンディもマサキの答えを予想していたのだろう。なら、待つぜ。と、答えたマサキにそれ以上構うことなく、店の中へと足を踏み入れて行く。
朝からマサキを叩き起こしてデートデートと煩かった割にはあっさりとした態度もあったものだ。デートって何だっけな。マサキはふたりの女性に対する自身の立場に疑問を感じながら、パステルピンクの壁に凭れた。
「おや、マサキ。珍しい場所で顔を合わせますね」
足元に荷物を置いて待つこと暫く。不意に浴びせかけられた声に、慌てて顔を上げれば、どういった風の吹き回しか。ひとりで城下を闊歩していたらしいシュウと視線が合った。
「いいところで顔を合わせた。おい、シュウ。お前、俺に何か用はないか」
普段であれば厄介者の登場と顔のひとつでも顰めてみせたところだが、今は別だ。マサキは目の前のシュウに救いを求めて言葉を吐いた。ええ……? 主人の考えを悟ったらしい二匹の使い魔が、呆れ果てた声を上げるもマサキに耳を傾けている余裕はない。
憎まれ役にこれ以上となく相応しい人物の登場。これが天の助けでなければ何であろうか! リューネやウエンディもこの組み合わせにまで深く口を挟んでくるような真似はしまい。
「何でもいいぞ。遺跡探索でも、露払いでも、お使いでも」
とはいえ、焦るマサキとは裏腹に、姿を現したばかりのシュウには事情が呑み込めていないようだ。
「何です、突然に。私とていつもいつもあなたに用事を頼んでいる訳ではないものを」
「だったらこの荷物を良く見ろよ。それで理由はわかるだろ」
その言葉を受けたシュウの視線がマサキの足元の荷物に注がれる。彼は紙袋の中身を見るまでもなく、そこに入っている店名ロゴだけで事情を察したようだ。眉根を盛大に寄せると、あなたも大概お人好しですね。と、二匹の使い魔同様に呆れ果てた声を出す。
「しかし私からの用件とあっては却って反発を招くだけでは?」
「あってもなくてもこの際関係ないんだよ。いいから今から俺に付き合え」
「デートの最中なのでしょうに」
「これだけの荷物を持たされてデートもへったくれもあるか」マサキはストロベリーピンクのドアから店内を覗き込んだ。「おい、リューネ、それにウエンディ。俺は用事が出来たから行くぞ。荷物は後でお前らの家に届けるからな」
そうして荷物の半分をシュウに任せて歩き始める。
少しもしない内に、あたしのマサキに何の用よ! と、店を飛び出して来たらしいリューネの声が通りに響き渡るが、そこは流石の鉄皮面。シュウはリューネを振り返ると、それについてはまた後日と、生真面目にも表情を整えながら口にしてみせた。そうして少し先で足を止めていたマサキに並び立つと、
「ねえ、マサキ」と、何処か甘えた声で言葉を吐いた。
「あなたからの誘いに応じて差し上げたのですから、それ相応のご褒美をくださるのでしょうね」
「う……それは、その……」
マサキは言葉を詰まらせた。これだけ明け透けに言葉を吐かれているのだ。どれだけ鈍感あっても、シュウの求めんとしていることぐらいは理解が及ぶ。
もしかするとそのマサキの窮した様子で満足したのやも知れなかった。そう時間も置かずに、冗談ですよ。と、シュウが言葉を継ぐ。マサキはほっと胸を撫で下ろした。借りを倍以上にして返させられるのでは、利用した甲斐がない。
「何処に行きましょうか。これだけの好天に王都で過ごすのも勿体ない気がしますが」
「だったら平原にでも出るか」
いいですね、とシュウが笑う。その心安らいだ笑顔に、この方が楽だ。マサキは胸の内で呟くと、王都を出るべくシュウと肩を並べて通りを歩き始めた。
@kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【デート】です。
ワンワンお題ったー:https://shindanmaker.com/1068015
<親しき仲にも>
@kyoへの今日のワンドロ/ワンライお題は【デート】です。
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<親しき仲にも>
ドンッ、と機体に衝撃が走った。
あの野郎。マサキは地平の彼方に小さく映る青き機影を睨み付けた。サイバスターの有効射程範囲外から|長距離射程《ロングレンジ》の高圧縮エネルギー弾を放ってきたグランゾン。不規則な軌跡を描いて迫りきた複数の高圧縮エネルギー弾を、マサキは全ては避けきれなかった。
幸い、装甲の厚い胴体に着弾したお陰でダメージは軽く済んでいる。ダメージ後のショックから回復したサイバスターの姿勢を戻したマサキは、次は自分の番だと気勢を上げた。
「行くぞ! シロ、クロ!」
「またニャの? どうせ直ぐに終わるんでしょ?」
「無駄な働きはしたくニャいんだニャ」
いけ好かない表情が鼻に付く男は、度々こうしてマサキの不意を突くようにして攻撃を仕掛けてきた。長距離攻撃から接近戦。切り結んでは離れる尾繰り返しながら、ひと通り攻撃の手番を済ませると、何事もなかったかのように戦闘を終わりにしてみせる。
だからだろう。警戒態勢に入ったのも一瞬。相手がグランゾンと分かった時点で、どうせ直ぐに終わる戦いと二匹の使い魔は気が抜けたもの。さりとて使い魔のやる気がないから――と、尻尾を巻いて逃げ出したり、諸手を挙げて投降してみせるのも癪に障る。マサキは二匹の尻を叩くように、檄を飛ばした。
「やられっ放しで黙ってろってか? うだうだぬかすんじゃねえよ! 一発はお見舞いしねえと気が済まねえ!」
何を考えているのかわからない男の、最高潮に意味の通らない行動。彼の気紛れに振り回されているだけなのは承知している。それでも抵抗を繰り返してしまうのは、あの男の思い通りにはなりたくないというマサキなりの意地の表れだった。
「サイバスターの機動力を生かして突っ込むぞ!」
マサキはリミット間近まで動力炉の回転数を上げた。唸るエンジンのモーター音。大地を揺るがす轟音とともに、光速でグランゾンの許へと|疾《はし》り込んでゆく。
真っ直ぐに向かってくるマサキとサイバスターを、男は迎え撃つつもりであるようだ。前進を始めたグランゾンに、煙幕代わりとマサキはファミリアを飛ばした。どちらともとはいかなかったが、一体がヒットする。噴き上がった爆炎に、一瞬グランゾンの動きが止まる。マサキは即座に剣を振り上げると、グランゾンへと斬り込んでいった――……。
※ ※ ※
「何なんだよ、てめえは。毎度々々俺の姿を見るなり攻撃してきやがって……」
※ ※ ※
「何なんだよ、てめえは。毎度々々俺の姿を見るなり攻撃してきやがって……」
思ったより長引いた戦闘に、マサキは戦いの舞台となった平原に降り立つと、そのまま草むらに身体を投げ出した。次いで既にグランゾンから降りていたシュウが、その傍らに腰を落とす。涼やかな面差し。先程までの猛攻を微塵も感じさせない柔らかな眼差しがマサキを見下ろしている。
「戦いの勘が鈍らないようにという親心ですよ」
「親心が聞いて呆れるぜ。どんな|千尋《せんじん》の谷だよ。命懸けにも限度があるだろ。てめえとだけは親子になりたくはねえ」
「奇遇ですね。私もですよ、マサキ。あなたのような柄の悪い息子だけは欲しくありませんね」
「ホント、口が達者だよな。お前……」
「あなたこそ減らず口に磨きがかかって」
そしてふと訪れた沈黙。さわさわと撫で付けるように吹く風が心地いい。
シュウの頭の向こう側に広がるラ・ギアスの蒼い空。今日もいい天気だ。そう呟いて、白くたなびく雲の流れゆく先をマサキが眺めていると、シュウの滑らかな手が髪に触れた。
額にかかった前髪が取り払われる。ゆっくりと滑り落ちてきた手がマサキの頬に触れると同時に、シュウが身を屈めた。塞がれた口唇にマサキは静かに目を閉じる。そうして、緩く口内を探ってくる舌を気が済むまで味わった。
「……日本じゃ親しき仲にも礼儀ありって云うんだぜ」
「キスをする時に断りを入れて欲しいとでも?」
「そうじゃねえよ。出会い頭に攻撃するのを止めろって云ってるんだよ」
「それは中々に難しい」
暫くマサキの髪を撫でていたシュウの手が離れる。だからといってマサキの側を離れるつもりはないようだ。そのまま膝の上に本を広げたシュウに、どういう気持ちの表現なんだよ。マサキが攻撃の理由を尋ねれば、
「勿論、愛情表現のつもりですよ」
マサキからすれば不可解にも限度がある思考回路を持つ男の、不条理な愛情表現。一生、理解出来ねえよ。マサキは呟くとそよぐ風に身を任せるようにして目を閉じた。
今日の漢字テーマ【親密[しんみつ]/極めて仲の良いこと】
漢字で創作ったー:https://shindanmaker.com/731136
<迷子>
今日の漢字テーマ【親密[しんみつ]/極めて仲の良いこと】
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<迷子>
「何だ、それは」
街中ではぐれてしまった二匹の使い魔と奇跡的に再会を果たしたマサキは、その後ろで小さい毛むくじゃらの物体がふにゃふにゃと鳴き声を上げているのを見て、先ずどういった事情があるのかを尋ねることにした。
「やだ! まだ付いて来てたの!?」
「ニャんか知らニャいけど、ずうっとニャんだニャ!」
よくよく見て見れば毛むくじゃらの物体に見えたそれは、白地に黒の斑模様の子猫であるようだ。
まるで二匹の使い魔を掛け合わせたような外見の子猫は、足を止めた二匹の間にすいと割り込んでくると、ふにゃふにゃと続けて鳴き声を上げながら身体を擦り付け始めた。どう贔屓目に見ても親子にしか見えない三匹。お前ら、いつの間に……マサキは溜息を吐きながら言葉を継いだ。
「俺に内緒にするなんて、つれないじゃねえか。別にいいんだぜ、少しぐらい家族が増えても」
「ニャに云ってるのよ、マサキ! あたしたちは使い魔ニャのよ!」
「そうだそうだ! ニャにを想像したんだニャ!」
「何って……」マサキは鼻の頭を掻いた。「そういうことなんだろ、つまり……」
「そんなことは絶っっっっっ対にニャいのニャ!」
「何だよ。じゃあ何でこいつはお前らにこんなに懐いてるんだよ」
マサキは変わらず二匹の使い魔に擦り寄っている子猫を抓み上げた。
ふにゃあ。子猫が鳴き声を上げる。
マサキに触られても抵抗する様子がない辺り、警戒心の薄い子猫らしい。マサキはそっと子猫の腹を撫でた。膨れていないところを見ると、腹を空かせて二匹に付いて来たのかも知れない。仕方ねえなあ。マサキはジャケットの襟元に子猫を押し込んだ。
「どうするの、マサキ?」
「どうするも何も、こいつの家族を探してやらないといけないだろ。これだけ警戒心が薄いってなると、人間に飼われてるペットかも知れねえ。向こうも今頃探してるんじゃないか?」
ふにゃあ、にゃあ。忙しなく鳴き声を上げる子猫を撫でてやりながらマサキが云えば、流石は主人に似て口の減らない使い魔だけはある。二匹の使い魔は目を瞠りながら、声を揃えて先ずはひとこと。
「マサキ、思ってたより頭がいいんだニャ!」
「お前、俺のことをどういう主人だと思ってたんだ?」
「直感で生きてるだけかと思ってたのね!」
「推理が出来るとは思ってニャかったんだニャ!」
足にじゃれついてきながら失礼な言葉を次々に浴びせかけてくる二匹の使い魔を爪先で蹴散らして、その前にメシだな。マサキは懐でにゃあにゃあと鳴き声を放ち続けている子猫を撫でると、ペットフードを求めて歩き始めた。
手近な店でペットフードを買い与えると、腹がくちて満足したようだ。鳴き声のおさまった子猫を再びジャケットに収めたマサキは、ペットショップでついでに購入した猫用の玩具を片手に近くの公園に向かった。
手近な店でペットフードを買い与えると、腹がくちて満足したようだ。鳴き声のおさまった子猫を再びジャケットに収めたマサキは、ペットショップでついでに購入した猫用の玩具を片手に近くの公園に向かった。
「マサキ、その子の家族探す気あるの?」
「ニャんだかすっかり飼う気満々みたいニャんだニャ」
食事の後は運動だ――そんなことを云いながら先を往く主人が心配になったようだ。不安げな声を上げる二匹の使い魔に、そりゃいざとなれば飼うだろ。マサキは当然と云い放った。
「これだけ小さいとまだひとりじゃ生きていけねえ。子猫には外敵も多いからな」
「それはそうニャんだけど、公園で遊んでどうやって家族を見付けるの?」
「人が集まる場所だったら知ってる奴がいるかも知れないだろ」
云いながら公園に足を踏み入れると、昼下がりだからか。それなりに人が集まっているようだ。
今日もいい陽気だからだろう。芝生の上に広がるピクニックシート。カップルや家族連れが日向ぼっこと洒落込んでいるようだ。申し分のない広さ。ここなら子猫を遊ばせるのに丁度良さそうだ。マサキは早速子猫を芝生の上に下ろした。
瞬間、子猫はそれまでの懐き具合は何処へやら。マサキたちを振り返ることなく駆けだしていった。
「あ、おい――何処に」
もしかすると家族を見付けたのかも知れなかったが、警戒心の薄い子猫のすることだ。マサキは慌てて子猫を追いかけた。
先程までの頼りなさはどこにやら。猛然と芝の上を駆け抜けた子猫は、幸いにしてそう遠くないところでスピードを緩めた。そこには読書に励んでいる見知った男の顔。おや、マサキ。彼がそう口にする頃には、子猫はその膝の上に乗り上がっていた。
「お前の猫とか云わねえよな」
「まさか。この公園を縄張りにしている猫の子どもですよ」
子猫がいようとも習慣を慎むつもりはないようだ。本を閉じることなくマサキに問いに答えたシュウに、本当かよ。マサキは疑わし気な視線を向ける。
「その割には随分懐いてるじゃねえか」
「出産直後に母猫が痩せてしまったので、少しばかり餌を与えて様子を見ていたのですよ。それで顔を覚えてしまったようですね」
「恩義を感じてるってか」
「餌をくれる人だと思っているだけでしょう」
「案外、覚えてるもんだぜ。猫ってヤツは」マサキは手にしていた猫用の玩具をシュウに投げて渡した。「ちゃんと遊んでやれよ」
腹がいっぱいになったことで眠気に襲われたようだ。シュウの膝の上で気持ちよさそうに目を閉じている子猫に、マサキはそうっと手を伸ばして最後に一度だけ撫でてやると、「シロ、クロ。行くぞ」名残惜しさを感じながらも振り返らず、その場を後にした。
今日のワンドロ/ワンライお題は【出会い】です。
ワンワンお題ったー:https://shindanmaker.com/1068015
<奇跡>
今日のワンドロ/ワンライお題は【出会い】です。
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<奇跡>
「白河、行くわよ」
白いAラインのノースリーブのワンピースに肩から下がった革製のサコッシュ。赤茶けたセミロングの巻き髪が風に揺れる。くるりと開いた瞳が、|入場門《ゲート》を潜った先に現れたアミューズメントパークの景色を映し出している。
「最初は何処に行く?」
「私は付き添いのようなものですからね。あなたのお好きな所にどうぞ」
いかにここが地上世界であろうとも、自分よりも年下の少女に呼び捨てにされながら、全く興味も関心もない遊園地に随伴を強いられるなど、大公家の嫡男であるシュウからすれば受け入れ難い扱いだった。
とはいえ、少女はシュウが師事している教授の娘である。一流の研究者である彼の泣きどころである彼女の機嫌を損ねてしまっては、折角の|計画《プラン》も台無しだ。彼はとてつもなく娘を溺愛している。彼女の自身への執着心は、名声を欲しているシュウにとって利用に値するものだ。そう、ひとかどの研究者として成功する為には、プライベートを犠牲にする覚悟も必要なのだ。
「ホント、あなたって面白くない」
「その面白くない男を御指名されたのはあなたですよ」
膨れっ面の少女に袖を引かれながら、シュウは家族連れとカップルの姿が目立つ園内を往った。メリーゴーランド、観覧車、ジェットコースター……どれも子供騙しなアトラクションではあったが、今日の主役は彼女である。その全てにシュウは従順に付き合った。
その甲斐あってか、空中サイクリングを終える頃には彼女の機嫌も直ったようだ。満面の笑みを浮かべながら、シュウに買わせたアイスクリームを頬張る彼女に、これからの予定をシュウが尋ねた矢先だった。
きょろきょろと辺りを窺う少年の姿が目に入った。歳の頃、十といったところだろうか。すっかり育ちきった感のあるシュウと比べればまだまだ小柄な身体。アイスクリームショップの前の通りを誰かを探すようにして歩いて来た少年は、周囲を気にしていたからだろう。正面への注意が疎かになっていたようだ。そのままシュウの脚にぶつかると、地面に尻餅をついた。
「これは失礼しましたね。私が避けるべきでした」
「あ、うん……いや、俺が悪かったんだ。余所見してた。ごめん」
不揃いな前髪の合間から覗く団栗のような丸い瞳。大抵の人間の後頭部を眺めて歩くことになるシュウの長躯を見上げるのは、小柄な少年にとっては難しいようだ。視線の届かぬ少年に、シュウは腰を落として視線を合わせた。
「連れとはぐれましたか?」シュウの問いに頷いた少年は、いつものことだからと言葉を継いだ。
「いつものこと?」
「方向音痴なんだ。何でだろう。気付くといつも迷ってて」
「総合案内所まで案内しましょう。あなた一人ではそこまで辿り着けるかも怪しそうですし」
シュウがそう云って、少年に手を差し伸べた瞬間だった。
「そんな子ども構わなくてもいいじゃない」
どうやら彼女は現状を好ましいものとしては捉えていないようだ。
不貞腐れた顔。機嫌を損ねているのは明らかだ。高く通る声でぴしゃりと云ってのけた彼女は、シュウの返事を待たずにさっさとその場を立ち去ろうとする。それを呼び止めてシュウは続けた。
「そういう訳にも行かないでしょう。迷子ですよ」
「デートと迷子どっちが大事なのよ」
「少しだけ時間を割けば済む」
「あたしが嫌なの! 子どもなんて大嫌い!」
理性的な教授の愛娘とは思えぬほどに感情的に声を荒らげた少女は、サコッシュを振り上げると、あろうことなかれ。少年に向かってそれを振り下ろした。
シュウはそれを自らの手で払った。
自分に対する我儘は許容出来ても、見ず知らずの他人に危害を加えるとなっては看過出来ない。少年の様子を窺えば、彼女の剣幕に呑まれてしまったのだろう。目を丸く見開いて、身動き一つせずにいる。
「行きましょう」シュウは少年の背中に手を置いた。
「でも、デート中なんだろ」
「気になさらなくて結構。子どもは大人の云うことを素直に聞くものですよ」
そうして少年の手を取って歩き出したシュウに、よもやここに来て逆らうとは思っていなかったのだろう。お父様に云い付けてやるわよ! 少女の悲鳴が響き渡るが、それでも娘の肩を持つような男に興味はない。シュウは振り返ることなく、通りを抜けて行った。
「そんなこと、あったか?」
「そんなこと、あったか?」
恐らくこれまでの態度からしてマサキはそのことを覚えてはいないとシュウは思ってはいたものの、触れずに済ませるのも収まりが悪い。だからこそ、ふたりの関係が変わった頃合いを見計らって、いつかは――と、思っていたマサキとの出会いの記憶を語って聞かせることにした。
案の定、マサキは覚えていなかったようだ。狐に抓まれたような表情で自分を見上げてくるマサキに、無理もない。シュウは苦笑した。
方々で方向音痴の能力を如何なく発揮するマサキのことだ。ああいった出来事は珍しいことではなかっただろう。救いの手を差し伸べた大人は他にも沢山いただろうし、そうである以上、その中のひとりにしか過ぎないシュウのことを覚え続けていろというのも酷だ。
「あなたが覚えていないのも無理はない。私はあなたからすればつまらない人間でしょうからね」
「そういうつもりで云ったんじゃねえよ」
シュウのこの手の発言が彼には耐え難いものに感じられるらしい。拗ねた表情を浮かべたマサキに、シュウはただ肩を竦めてみせた。まあ、いい。それを改めろと云っても無駄だとわかっているのだろう。少しして諦めた様子で言葉を継いだマサキが、「俺、何か云ってたか?」
どうやらその時の自分が妙なことを口走ったりしていないかが気にかかるようだ。シュウは記憶を掘り返した。流石にかなりの歳月が経過してしまっている。博覧強記の記憶力を誇るシュウであっても、そうそう振り返る機会のなかった記憶を蘇らせるのにはそれなりに時間が要る。それでも幾つかは直ぐに思い出せた。
――やっぱ、いい。
結局、総合案内所の前まで来たところで、恥ずかしさが勝ってしまったようだ。恐らく連れ合いが来るまで迷子扱いされながら待たなければならないのが耐えられなかったのだろう。嫌だとごね始めたマサキに、それだったら――と、シュウは総合案内所の前で待つことを提案した。
もしかしたらマサキの連れ合いが迎えに来るかも知れない。その可能性に賭けたのだ。
「その間に色々あなたと話をしたのですよ。名前と年齢を聞いて、そうそう。将来の夢はF14のパイロットだと云っていましたね。戦闘機に乗って世界中の空を飛びたいと」
「あー、あった。そんな時期があった。ひとりで飛ぶのが格好良く思えてさ。マッハで空を駆け抜けるんだ、なんてあの頃は色んな奴に云って歩いてたよ、俺」
「今もあまり変わっていないように思えますが」
とてつもない負荷に耐えながらサイバスターの巡航形態で空を舞うこともあるマサキは、ある意味、子どもの頃の夢を叶えたとも云える。シュウがそれを遠回しに指摘してみせれば、マサキ自身も自覚はあるようだ。
「まあ、夢が叶ったっていやあ、叶ったんだけどさ……」
「現実はそんなに甘くなかった?」
「当たり前だろ。流石に現実に戦争に参加して、子どもの頃みたいな甘ったれた気分じゃいられねえよ」
あれから長い歳月が過ぎた。ふたりの間に起こった出来事は、ありきたりな言葉では語り尽くせぬほどに、ふたりの立場や意識を変えていった。けれども常に変わらないことがひとつだけある。
シュウはいつだってマサキに救われているのだ。
自らの自尊心を捨ててでも名声を、名誉を欲していたあの頃の自分。教授の娘に取り入ることでそれを成そうとしていたシュウは、マサキと出会ったことでその過ちに気付くことが出来た。目的の為に何もかもを捨ててはならない――と。
ヴォルクルスの意識にどれだけ浸食されても、シュウが誇りを失わずにいられたのは、決して捨ててはならないものが何であるかを知っていたからに他ならない。そして恐らくは、その誇りと自尊心が、死して蘇ったシュウを救ってくれたのだ……。
暫く、シュウはぼんやりと物思いに耽りながら、成長しきった感のあるマサキを眺めていた。
「でも、お陰で謎がひとつ解けた」
不意にマサキが口にした。謎とは? シュウはマサキに問い返した。
「俺、お前のことを知ってるってずっと思ってたんだよ。どこかで見たことあるなって。何でだろうなって思ってたんだけどさ、そういった出来事があったんだな……」
嗚呼。シュウは感嘆した。
数多の出会いを繰り返してきたに違いない少年は、記憶そのものを忘却しきってしまっても、自分の存在は覚えていてくれたのだ。その事実はささやかな幸福となってシュウの心に降り積もった。そうっと手を伸ばす。マサキ。その名を呼んだシュウは、次には自分よりもひと回りは小さなその身体を抱き締めていた。
今日の漢字テーマ【過去[かこ]/過ぎ去った時】
漢字で創作ったー:https://shindanmaker.com/731136
以上です。
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