普段なら絶対に読まないものを読んでみたいという衝動に駆られたので。
なんと驚け!な、恋愛小説です。
1)真夜中にそっと
過去の恋愛を思い返すことは誰にしもあることだと思います。ただ残念なことに、記憶に障害があるワタクシは、中々自分の正しい恋愛の記憶を思い返す機会に恵まれてきませんでした。今現在、ある程度正しい記憶を認識できているので、主人公のただとりとめのない思い返しが妙に自分にオーバーラップして感じられたのもあり、ほんの少しばかりほろ苦い涙を流させて頂きました。
行くと言った約束を守ってくれる彼氏というのはいいものですね。小さなエピソードの積み重ねが優しくて切ない時間を過ごさせてくれる良作です。
2)余韻
許せれば楽なのが恋愛だと思う作品。愛情だけでは向き合えないのもまた恋愛ですよね。
3)さざなみ
恋愛関係にある男女の男性側と知己である女性というのは、彼女側が思っている以上に、同性である彼女側を慮っているものです。自分にも覚えがあるので、こちらもほろ苦い涙を流させて頂きました。そうなんですよ。女性側と仲良くなりたいんですよ。
4)このベットのうえ
奔放な友人というのは(この作品では従姉妹ですが)、あっけらかんとしていればしているだけ、憎めそうで憎めないものです。名前を呼び間違えないように、同じ名前の彼氏を三人作った過去の友人を思い出しました。そこまで突き抜けられると、憎めないんですよね、何故か。
5)マリーゴールド
粋でいなせなおばあちゃんの思いがけない昔語りに、不意打ちを食らって涙してしまいました。歳を取れば取るほど(嫌ではありますが)、若者に言い聞かせなければならない事態というのは増えていくものでもあります。年季のいったおばあちゃんの年季の入った思い遣りは、だからこそ主人公の心を溶かしてくれたのでしょうね。
6)七面鳥を焼いて
なんでそこで告白しないかなー!!!!!!!!!!!!
な、作品。気持ちの上で、友達以上恋人未満というのはこういう関係を言うのでしょうかね。
告白してみればまた違った展開もありえるのに……とやきもきした気分で読み終えました。
7)なんでもない感情
好きな人へのプレゼントを選んでいる時間ってなんであんなに楽しいんでしょうね。
そんな過去もあったな。と思い返した作品。
8)春の嵐
いやまあ、ハッピーエンドでよかったね?なのかなー。
男と女の友情は成立しないな作品ですが、もやっとするのは彼女はどうするのよ……という問題があるからなのです。
全体的にバブリーな雰囲気が漂っていたので、作者の年代を確認したらまさしくドンピシャな1964年生まれでした。ひと昔前の月9を見ているような?(この表現で通じるかわかりませんが)錯覚に陥る作品集です。それはそれで、バブルの残り香をほんのちょびっと嗅いだ世代であるワタクシには通じるのですが、やっぱりイマドキの恋愛小説とは、毛色が違うんじゃないかと思ったり思わなかったりしなくもなく……。
女性らしい優しく柔らかい表現と文体でしたので、こうした文章も書けるようなりたいあ、と思わされた(思い上がりですけれども)作品集でもありました。
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