今回はなろう系。
1.悪役令嬢エリザベスの幸せ / 香練 / SBクリエイティブ
私は駄目でしたね。
悪役令嬢が王太子との婚約破棄後、母親(個人)の祖国に渡って、そこでスローライフを目論むも……という粗筋なのですが、作家さんに台詞で説明しようとする癖があるようで、地の文がぺらっぺらなんですよ。
人間関係の設定は割合きちんとしているので、地の文でも補足なり描写なりなんなりすればいいだけなのに、恐らく基本的な筆力が足りてないんじゃないでしょうか。アクセサリーとか、衣装の描写は詳細なのに、それ以外の情景描写などがなんか浅い……
あと、いくらナーロッパでも転生者じゃない人間がAラインドレスとか云っちゃうのはどうなの?
この作品、WEB小説からの書籍化なんですが、とはいえ、一行で改行ってのはWEB小説のお作法で、紙の本はそうじゃないですか。だのに、編集部は何をしていたのか。乱れ飛ぶ一行改行。途中で地の文一行改行が十行ぐらい続いたときには流石に「ページの水増し鬱陶しい」となりました。
肝心の新しい恋愛についても、なんか、こう、もっとさあ……
最初の出会いが最悪→なんやかやあって両想いハッピーエンドはいいんですよ。少女漫画の王道ですしね。でもいかんせんそこに至るまでの過程が薄い。どうせテンプレだからこの程度でいいでしょ。みたいなエピソードの弱さ。この回数で最悪の出会いをフォローできちゃうんだ!貴族ってチョロい!としか思えず……ここを上手く書けているなろう系、私見たことないんですけど、どこかにはあるんですかね。(「悪役令嬢の中の人」も恋愛描写は駄目駄目でしたし)
あと話の組み立て方があんまり上手くないですね。ざまぁ感を出す為とはいえ、王子視点いらんかったでしょ……そこは父親から伝え聞く形にして、もっと両想いになる過程に筆を割いてくれた方が、作品として綺麗にまとまったと思いました。
2.追放令嬢と残された者の破滅について / 火野村志紀 / スターツ出版株式会社
ここのレーベルは二度と買わねえ。
前にここの「捨てられ側妃なので遠慮なく自由にさせていただきます」を、イラストレーターさん目当てで買ったことがあるんですが、内容をすっかり忘れるほどに中身のない作品だったんですよ。それで私が自戒していれば……
登場人物の台詞回しが軽いんですよねえ。全員同じ知能レベルに見えてくるんですけど、貴族は貴族、平民は平民、王族は王族できちんと書き分けないと。作者さんは群像劇を書きたかったらしいんですけど、単純に能力が足りてない。出てくる登場人物どいつもこいつもクズでゲスらしいんですが、全員三下にしか見えないんですよ。クズにだって種類があるのに。その書き分けが出来ていないのが致命的。
あと、地の文少なすぎ。(これはなろう系全般に云えることですが)
なのにアマゾンでは異様な量の高評価なんですよ。仕込みか?って疑いたくなるくらい。少なくとも私は正当な評価をされている作品だとは思えませんでした。もっと云うと、ぶっちゃけ金返せって思ってます。編集部に見る目なさ過ぎだろ。とまで思っている作品です。
この系統だったら筆力的や展開的に「政略より愛を選んだ結婚(つくも茄子 / 星雲社)」の方が面白かったです。(この作品は作品で、悪役令嬢(と呼ばれる側)が舞台装置になっちゃってるのが勿体ないんですが……)
3.悪役令嬢たちは揺るがない(コミカライズ:赤羽にな・原作:八月八 / KADOKAWA)
これはコミカライズ大成功ですね。原作も(筆力はさておき)だらだら引き延ばしていないのが凄くいい。仕事で読んでこれはバズると思っていたんですが、きちんと評価を伸ばしていて嬉しい限り。
この視点で書ききれたのが先ず素晴らしい。これはもう他の人には真似出来ないでしょう。これだけさっくりとしかもきちんと登場人物たちの芯をぶれさせずに書ききった。筆力はさておき、これは紛れもない才能です。
話をだらだら延ばすのって簡単じゃないですか。短くコンパクトに書きたいこときちんと全て纏める方が難しいのは、他人に意見を正しく伝えることの難しさからも窺える通り。そういった意味で、この原作者さんは他のなろう系作家にない稀有なる才能を持っていらっしゃる。難があるとしたら筆力なんですが、そこは書き続ければなんとかなりますからね。こういった他の人にない才能を持っていらっしゃる方こそ伸ばしていって欲しいものです。
4.私が死んで満足ですか? / マチバリ / 星雲社
これは良かったですね。ざまぁ好きからすると物足りない展開だとは思うのですが、幸せになるべき人々が幸せになるだけでなく、悪役側だった人たちが改心する(勿論しない人もいます)展開が、もの凄く小説らしい!
こんなことを云うのはなろう系の作家さんたちに失礼なのですが、どこかで見たテンプレじゃない安心感……!そしてきちんと紙の本らしい体裁を保った文章。一行改行が続かないことからしか得られない栄養素があるんですよ!
タイトルは少々こじつけが過ぎるなー。と、思うところはあれど、素晴らしい展開でした。
最後のまとめ方も綺麗でしたね。面白かったです!
5.悪役令嬢ってのはこうやるのよ / 藍田ひびき / SBクリエイティブ
なんと驚きのダークヒロインもの!
あくどい悪役令嬢の代名詞といえば「中の人」なのですが、あれは「推しを全力で推したら推しが推し返してくれた話」なので、ちゃんと心の拠り所になる存在がいたって話なんですよね。
ところがこちらはいない訳ですよ。いないどころか、「こういう人間が苦痛に表情を歪ませる表情が見たい」系と、既に闇落ちしていらっしゃる。いいですね!凄くいい!!!!
物語転生系主人公なんですけど、中の人の年齢はなんと50歳超え!その所為で、王子様なんていう若造に心が動くこともない。彼女の野望はただひとつ。国の実権を握ること。その為にも担ぐ神輿は軽い方がいい。なんて考えちゃうヒロインですよ。これが面白くならない筈がないですよね。
地の文も情報量が多くて、読みごたえがあり、非常に面白く且つ楽しく読めました。
まあ、後半の展開は主人公に都合よく(特に国王と王妃の主人公の評価)思えましたし、もっと黒いところを存分に見せて欲しくもあったのですが、なろう系でこういった話を書いてきたということを私は大きく評価したいと思います。(この系統の話は他にまだ読んだことがないので、そこも加点ポイントです)
以上。お前何様だよ系感想の嵐でした。どっとはらい。
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