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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

崖の下(後)
ということで、先ずはこちらから更新再開です。

エロはundergroundで遣り尽くしたので、こちらはなるべくエロなしで進行したいなと思ったりもしているのですが、うちの白河隙さえあればマサキに触っている気がするので、難しいところ。
<崖の下>

 ゼオルートの館に着く頃になって二匹の使い魔に起こされたマサキは、停止したサイバスターに乗り込んできたシュウに担がれるようにして、館内に足を踏み入れた。
 マサキを部屋に運び込み、ベッドに寝かせたシュウは、長居をするつもりはないようだ。念の為に診察を受けるようにとマサキに云い付け、医師の往診の手配を済ませると、その到着を待たずに館を後にした。
 残されたマサキは、シュウから事情を聞いたらしいテュッティの愚痴混じりの説教を聞きながら医師の到着を待った。
「行き先を告げずに姿を消すあなたが悪いんじゃないの。大体、あなたはいつもそう。勝手にどこかに行っては、そこでトラブルに巻き込まれて帰ってくる。せめて行き先を告げてくれれば、帰りが遅いとわかった時点で私たちが探しに出られるのに」
「どこに行くかなんていちいち決めて散歩に出るかよ。そもそも直ぐに帰るつもりでいるのに、何でその程度のことで行き先を告げなきゃいけないんだ。これが二日とかかる任務だったら、そりゃ俺だってひとことぐらいは残して行くけどな」
「その油断がこの結果なのよ。とにかく、今回のことは、後できちんとシュウにお礼をしなさい。命を助けてもらったのだから」
 医師の診断では捻挫と風邪とのことだった。そこから十日ほど。熱は三日と経たずに引いたものの、足はそうもいかず。魔装機の運転を控えるように云われたマサキは、殆どの時間をゼオルートの館で過ごした。
 足に故障を抱えていてはこき使うことも叶わないからか。まるで余計な荷物とばかりにテュッティにベッドに追い立てられ続けた日々の終わり。ようやく包帯が外れて自由に動かせるようになった足に、ゼオルートの館に留まる理由を持たなかったマサキは、早速とばかりにサイバスターに乗り込んだ。
 窮屈な生活を送った後の久しぶりの操縦席。解放感は限りなく、高揚する気持ちを抑えきれそうにない。マサキは行く先に悩んだものの、結局シュウの元に向かうことに決めた。あれだけの迷惑をかけしまったのだ。何もせずに済ませるのも納まりが悪い。
「そんなに気を遣ってくださらなくとも良かったものの」
 午前の早い時間だからか。それとも今日は家ですべきことがあったのか。家にいたシュウはマサキを部屋に上げると、マサキが城下で買い求めた菓子の詰め合わせを受け取りながら云った。
「あれもこれもやってもらっちまったしな。礼ぐらいはしておかないと」
「お礼など、私が困った時に少しばかり力を貸して下されば、それだけでよかったのですがね」
「巫座戯ろよ。お前の頼みなんて厄介事の持ち込み以外の何者でもないだろ。悪事を見逃せとか、情報を横流ししろとか、セニアに渡りを付けろとか……そういった碌でもないことを頼まれない内に、借りは返しておくさ」
 特に他に用事があった訳ではなかったが、菓子折りだけを渡して立ち去るのも気が引ける。勧められるがままリビングのソファに身体を収めたマサキは、「お堅いことで」と云い残して、リビングと続きになっているキッチンに姿を消したシュウを見送った。
 暫くの間。
 どうやら紅茶の準備をしていたらしい。リビングに戻ってきたシュウが、ローテーブルにティーセットを広げる。ティーカップに注がれる紅茶。シュウがソファに腰を落ち着けるのを待ってから、マサキはカップに手を伸ばした。
「足の具合はいかがですか」
「テュッティが寝てろ寝てろ煩かった所為か、医師が太鼓判を押すぐらいには良くなったぜ」
「本当に?」
 斜向かいに座っているシュウの手が、マサキの手に伸びてくる。
 シュウに掴まれた手首に身体を引こうとして、おかしい――ぎこちなさの残る足に、マサキは焦った。捻挫前のようにスムーズには動かない足。どうやら、きちんと床を捉えている筈のマサキの足は、マサキの意に反して上手く力が伝わっていないようだ。踏ん張り切れずによろけた身体を、シュウの手が支えている。
「捻挫は正しく治さないと癖になりますよ、マサキ。庇う癖が付いてますね。動きが不自然だ。暫くはちゃんと歩く訓練をしなさい。そうでないと魔装機の操縦にも影響が出る」
「それだけだったら、手を離せよ」
 そうだ。もう大丈夫なのだ、この足は――。これまで何度か捻りかけては感じてしまっていた痛み。咄嗟に構えてしまった足に力を入れ直して姿勢を直したマサキは、シュウの手を払い除けようとした。
 強く掴まれた腕はびくともしない。「お前、またそうやって……」腰を上げたシュウが、空いた手でマサキの頬を撫でてくる。彼はそのまま、マサキをソファへと押し倒すと、
「アドバイス料ですよ、マサキ」云って、その口唇に自らの口唇を重ねてきた。


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