私が欲張りすぎました!!(土下座)
あれもこれもと思って書いていたら、「シュウマサ……?」的な話になってしまった気がしなくもしないのですが、白河とマサキがひたすら出ずっぱりな後編なので、それで許していただきたいと申しますか、これはもっときちんとページ数を割くべき舞台設定でしたすみません!!!!出せない設定が残ってしまったのが悔しいびくんびくん!!!!しかもとても長いです!
ぱちぱち有難うございます(*´∀`*)とっても嬉しいです!励みになります!
あれもこれもと思って書いていたら、「シュウマサ……?」的な話になってしまった気がしなくもしないのですが、白河とマサキがひたすら出ずっぱりな後編なので、それで許していただきたいと申しますか、これはもっときちんとページ数を割くべき舞台設定でしたすみません!!!!出せない設定が残ってしまったのが悔しいびくんびくん!!!!しかもとても長いです!
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<楽園>
波に飲まれたマサキは、船外に放り出された衝撃で意識を失ってしまったようだった。ふと取り戻された意識に目を開けると、肌に走る傷跡が見えた。それは紛れもなくシュウの胸だ。「な……」状況を一瞬で把握したマサキは慌てて身体を離そうとするも、自らを抱いている手に阻まれて上手くいかない。
「ああ、意識が戻ったのですね」
いつの間にやら脱がされていた服。下着姿のマサキを、こちらもまた下着姿のシュウが抱き締めている。これで混乱するなという方に無理がある。平然と言葉を紡ぐシュウに、「な、な、何で、こんな」狼狽えながらマサキが訊ねれば、
「濡れた服をいつまでも着ている訳にはいかないでしょう。体温が低下してしまう」
ほら、とシュウの手がマサキの手を握る。温かい。冷え切ってしまっている手に、血が通うような温もりが伝わってくる。「何度かマッサージはしたのですけれどもね」云いながらシュウはマサキの指先を揉んだ。
「上手く海流に乗れたとはいえ、それでも結構な時間、海の中にいましたからね。あなたに至っては意識を失ってしまっていたこともある。早い段階で意識を失ったお陰で、水を飲まずに済んだのは幸いですが、身体が冷え切ってしまった」
「お前、俺より先にボートに乗ってなかったか?」
「あの状況でボートに残っていられますか。船長は上手く転覆したクルーザーに引っ掛かっていましたが、あなたは暫く浮かんで来なかったのですよ」
「そっか……悪いな。迷惑をかけた」
「あなたにしては殊勝な態度ですね。いつもそう素直でいてくれればいいのですが」
「命を助けてもらっちまったらな」マサキは辺りを見回した。「ところでシロとクロは? お前の使い魔も姿が見えないみたいだが……」
場所はどうやら洞窟のようだ。奥に暗く穴が続いている。手前にはぽっかりと口を開いている入口があり、それなりの光が入ってはくるものの、激しく降りしきる雨が、まるでカーテンのように視界を塞いでいた。
岩肌を背に座っているシュウの直ぐ近くには、上手く引っ掛けられている服と雨合羽が垂れ下がっている。地面の上にはライフジャケット。この気候ではどれも乾くのには時間がかかるだろう。
決して低くはない気温だったけれども、濡れた身体で過ごすには肌寒い。しかも結局、二匹と一羽の使い魔の姿も見えないまま。マサキはシュウに身体を預けながら、止む気配のない雨に視線を向けた。
気流が渦巻く嵐の中心点になるからか。ここはは周辺海域と比べて格段に風が少ないようだ。しきりと地面を叩く雨が煩くはあったものの、無音の世界よりは安心できる。
「あなたの二匹の使い魔でしたら、クルーザーが波に飲まれる寸前に救命ボートに乗り込みましたよ。残るように言い付けてはおきましたが、今頃どうしているかまではわかりませんね」
「まあ、水が得意じゃねえしな。大人しくしてるだろ」
「そうだといいのですけれど」
そこでシュウは何かを憂いたような表情をしてみせた。主人の手足たる使い魔が、主人の危機に大人しく過ごしてくれたものか。きっとそういった状況を案じているに違いなかった。
けれどもそれも少しの間。余計なことを云って、マサキの心を乱したくないとでも考えたのだろうか。シュウは表情を戻すと、マサキと同じく降りしきる雨に視線を向けながら、
「チカはあれでも|青い鳥《ローシェン》を模した使い魔ですから、ここまで空を飛びながらついて来たのですよ。ただ、救命ボートや転覆したクルーザーの方は次の観光クルーザーが発見してくれるとしても、私たちまで一緒に発見してもらえるとは限らない。救助隊が出るにしても、見当違いの方向を捜索されてはね。それに……」
どうやらふたりが流れ着いたのは、嵐の中心地にある島――別名、人食い島らしかった。
この島が人食い島と呼ばれるのには呼ばれるだけの理由がある。嵐に荒れる海の流れが、ある地点からこの島に向かって流れ込む形になっているのだ。シュウが荒れた海をマサキを連れてここまで辿り着けたのも、その海流のお陰だ。
しかし人の場合はそれで良くとも、船はそうは行かない。島そのものが浅瀬に囲まれている上に、周辺海域は暗礁だらけだ。しかも嵐に揉まれる島。海路からの救出活動が難しい上に、上空からの救助活動もままならないとあっては、人がこの島に流れ着いたが最後。
故に人を食らう島、転じて人食い島。
そういった来歴のある島に、救助隊が辿り着くのには時間がかかるだろうというのがシュウの見解らしかった。チカを島から飛ばしたのも、万が一のことを考えてのことのようだ。
「街にも一応報せるように伝えてはありますが、サフィーネを呼んだ方が早い気もするのでね。チカがこの嵐を無事に抜けられるかはわかりませんが、無事に抜けられれば、一両日中には助けが来るでしょう」
「それまでこうして過ごせって?」
「雨合羽ぐらいなら乾きそうですが、服はどうでしょうね。火を起こせればいいのですが、何せこの雨だ。薪になりそうな木々を集めるのには無理がある。食料は……まあ、二日、三日食べなくとも人は死にませんよ。水さえあればなんとかなります。その水には、この雨のお陰で不自由しなさそうですし」
そこで言葉を切ったシュウは、マサキの髪に手を這わせてきた。なんだよ、とマサキが云えば、まだ随分濡れてますね、との返事。その指先がマサキの髪の毛をこよりを作るように捻る。
髪の毛を濡らしている水分が、雫となって垂れた。
「身体はともかく、髪が乾くのにも時間がかかりそうですね。寒くはありませんか、マサキ」
「そこまで寒くはないけどよ。お前は大丈夫なのか。俺を引っ張ってここまで来たんだろ」
「大丈夫ですよ。泳いでこの島に来たのではありませんし。海の流れに身を任せていただけですから。ここにあなたを運び込むぐらいですよ、体力を使ったのは」
「そっか。それならよかった」
今頃は後続のクルーザーが事故を把握していることだろう。救命ボートがどこにどんな風に流されてしまうか、あの辺りの海流に詳しくないマサキには想像も付かなかったが、早い段階で事故が確認出来る状況だったのは幸いだった。あとはシロとクロが大人しくボートに乗ってくれていることを祈るだけだ。
チカに万が一があったとしても、マサキの二匹の使い魔が救助されれば、王都に連絡が行く。そこまで話が進めば、あとは早い。船やヘリからの救助が難しいのであれば、魔装機を使えばいい。セニアも誰かしらは派遣してくれるだろう。それまで体力を消耗しないようにしなければ。マサキは振り続ける雨の向こう側の世界を思った。
「あなたにとってこの状況は面白くないでしょうが、雨合羽が乾くまでの辛抱ですよ。あれが乾けば寒さを凌げるようになるでしょう」
「そうだな。背中がちょっと寒いしな……」
「逆を向きますか。内臓を冷やさないようにと思ってこちらを温めていたのですが」
マサキは身体を返した。背中をシュウに預けて、代わり映えのしない景色を眺める。目の前に岩肌が広がるだけの光景。身動きがままならないだけに味気なく感じられて仕方がない。かといって洞窟の外に視線を向けたところで、雨のカーテンが景色を遮っているだけ。
退屈なのだ。
本当だったら今頃は歴史博物館にいた。その後は雑踏に紛れながら名所観光。夜にはダンスショーも控えていた。折角、誰にも邪魔されずに過ごせる休暇を得たというのについていない。はあ、とマサキが溜息を漏らすと、シュウはその意味をどう受け止めたのだろう。おもむろに口を開く。
「無人島に三つ持っていくとしたら何を選びますか」
「何だ、それ。心理テストか何かか?」
「生き残ることを前提としてですよ。簡単なクイズです」
「それだったら、ナイフが一本あれば事足りる気がするんだけどな」
マサキは云った。ナイフがあれば道具を作れる。道具が作れれば水を汲むことも雨水を貯めることも出来るようになる。火起こしの道具も作れるだろう。狩猟用の槍や魚を釣る為の釣竿だって作ることが可能だ。
しかしナイフを作り出すのは容易ではない。石器時代の人間が、石斧や石槍を作り出すのにどれだけの時間をかけたものか……マサキの話に耳を傾けていたシュウは、その通りですよ、と微笑んだ。
「人間を人間たらしめているのは道具の存在です。力では数多の生物に叶わない人間が、世界の覇者となったのは道具を生み出し、使いこなせるようになったからだ。では、残りふたつは何でしょうね。人間にこの世界で生き抜ける力を与えてくれたものは」
「うーん、そう聞かれると悩むな。食料と水か……いや、でもな。どのみち消費するものだしな。それだったらナイフの換えを持っていった方がいいような気が……ああ、でも、違うものを三つ選ばないといけないのか」
「ゆっくり考えてみてください。時間はたっぷりありますしね。答えが決まったら教えてください、マサキ」
恐らくシュウは、マサキが退屈し始めていることに気付いたのだ。何かを考えている間は、過ぎる時間の遅さを気にしないで済む。だから無駄に悩ませるような問題を出してみせたのだろう。ひとしきり考えたのちに、それでも決まらない答えにマサキはそう思った。
また後で考えるとしよう。マサキは壁にかかっている服を見た。きつく絞ったと見えて、雫は垂れていないものの、濡れているのがありありと窺える有様。雨合羽に至っては、絞れないからだろう。時々、水滴が滴り落ちている。
表も裏もびしょ濡れの雨合羽が乾くのには、まだ時間がかかりそうだ。
「ところで、マサキ。あなたは何をしにこの地方に来たのですか。任務といった様子ではなさそうでしたが」
「テュッティが旅行に行く予定を立ててたんだとよ。その相手が急用で行けなくなっちまったもんだから、気が削がれちまったんだろ。ホテル代を五割の値段でいいから、代わりに行かないかって言われてさ」
「あなたにしては珍しい。純粋な休暇だったのですね」
「二泊三日、のんびり過ごすつもりだったんだけどな。魔装機も置いて来たし。それなのに、二日目にしてこんなとんでもない体験をすることになるとはな。まあ、これはこれで話の種にはなると思うけどさ。助からないことにはな……」
ぽつりぽつりと会話を交わしながら、時間が過ぎるのを待つ。これが普通の無人島だったら、島の探索をし、道具や寝床を作り、釣りや狩り、食物採取と、サバイバル生活も気が紛れただろうものを、年に十日も晴れない島が相手では。気分転換をしようにもやれることが何もない。
精々シュウを話し相手にするぐらいだ。
精々シュウを話し相手にするぐらいだ。
そのシュウはどうもマサキの様子を過剰に気にかけているようだった。会話のアクションはシュウから、それも決まってマサキが退屈を覚え始めたタイミングで行われたものだから、マサキとしては自分の心を読まれているようで面白くない。
さりとて、自分からシュウに話しかけるにしても、マサキには何を話題にすればいいかわからなかった。
サフィーネやモニカ、テリウスの話でも振ってみるべきだろうか。そう思いもしたものの、そういった話題に易々と乗ってくるような男ではないような気もする。元々、|私的なこと《プライベート》に絡む話には口が重くなる男だ。ふたりだけの島で、唯一の話し相手であるシュウと気不味くなるのは避けたい。
騒々しい使い魔たちがいれば、こんな物思いをせずとも済んだものを。
沈黙が落ち着かない。それでも眠くなるときには眠くなるようだ。マサキは欠伸を洩らした。そこまで絶望する状況でもないことがわかったからだろう。旅の疲れを身体が訴え始めていた。
「眠いですか」
「今日の午前中、海で泳いでたからだな。疲れが出てきやがった」
濡れた身体はとうに乾いてはいたものの、暖気を取るのに人肌を頼るしかない状況だ。そうでなくとも奪われる体温は体力をも奪う。マサキは頭を垂れた。「――少しだけ寝てもいいか」落ちつつある瞼をどうにか押し留めて、シュウの返事を聞く。
「眠いのでしたら寝た方がいいでしょう。私は未だ眠くありませんしね。島の特性上、天敵となる生き物はいないと思いますが、救助が来ないとも限らない。念の為に番をしていますよ」
「何だろな。今日はお前、随分と優しいじゃないか。いつもだったら嫌味のひとつも聞けたもんだろうに。何か企んでることでもありやがるのか? 後で熨斗付けて返せってのはナシだからな」
マサキの身体が冷えないように温め、退屈しないように話題を振り、眠くなったら自ら寝ずの番を申し出る。それはさしもの鈍感なマサキにも献身的に映ろうというものだ。
だからこそ、不信を感じずにいられないマサキが思わず口にしてみれば、腰を抱えているシュウの手に僅かに力が篭《こも》った。シュウ、とマサキはその名を呼ぶ。彼はマサキの濡れたままの髪に顔を埋めると、「……生きた心地がしなかった」消え入りそうな声で、けれども確かにそう呟いた。
「人の死は誰にでも平等に訪れる。それは運命だ。だからその死を悲しむ必要はないのだと、私はわかっているつもりでいたのですよ。けれども、マサキ。あなたの姿が波に消えた時、私はどうしようもなく動揺してしまった。浮かんできた身体が意識を失っているだけだとわかっても、尚」
いつでも自分を見失うことのない男の思いがけない告白に、マサキは言葉を失った。そのぐらいに自分の存在は、この男にとって意味のあるものなのだろうか? マサキは悩んだ。上手い返しが思い浮かばない。
何をどう返せばいいのかわからずに、暫く。身動《みじろ》ぎせずにマサキを抱き締めているシュウの手に、マサキはそっと自らの手を重ねた。
「あんまり、俺をからかうんじゃねえよ」
「日頃の行いでしょうかね。私も信用がない」
「当たり前だろ。いきなりそんなことを云われて信じられるかって」
「なら、こちらを向いて。マサキ」
シュウに言われた通りに、マサキは上半身を捻って顔を向けた。間髪入れずに重なるシュウの顔。「な……、シュウ」逃げ場を持たない身体は、されるがままになるしかない。マサキは自らの口唇でその口付けを受け止めた。
それから、何度も。
繰り返し口付けられては口唇を啄《ついば》まれる。不思議と嫌気は感じない。むしろ、そうむしろ……マサキはその行為を肯定するように瞼を伏せた。
眠気はとうに吹き飛んでしまっていた。
心の底から沸き上がってくる何と呼べばいいかわからない感情に突き動かされるように、マサキはシュウと口唇を重ね続けた。冷ややかさが目立つ男にしては、柔らかく温かい口唇。その感触が心地よく、マサキの心を満たしてくれる。
「信じてくれましたか」
マサキは小さく頷いた。
それならいい。シュウはそう呟いて、マサキに眠るように促してきた。興奮が眠気を奪ってしまったのだとマサキが云えば、「なら、先程の答えを聞きますか」シュウが再び話題を振ってきた。
ナイフにマッチやライターといった火を起こせる道具と水。それが正解なのだそうだ。
まさしくマサキがナイフの用途で口にした通り。先ず人間が必要とするものが火と水だ。暖を取るのにも使えれば調理にも使え、明かりにもなれば獣避けにもなる火に、人間の身体を作っている云っても過言ではない水。
人は絶食してもかなりの日数を生きながらえることが出来るが、水が絶えてしまってはそうは行かない。身を守る為に必要な火と安心して飲める新鮮な水は、無人島だからこそ、最初に揃えておきたいアイテムであるのだ。
「成程な。でも俺としてはナイフ三本が正解だと思えるんだけどな」
「しかし、この島ではナイフの出番はありませんよ」
「飲み水ぐらいか、使えるアイテムは」
そういった他愛ない会話をつらつらと重ねている内に、マサキは眠ってしまったのだろう。次に目が覚めた時には、嘘のような晴天。抜けるような青空が島の上空に広がっていた。
年に十日に満たない奇跡が起こったのだ。
チカは役目を果たしたようだった。昼過ぎには救助隊が島に到着。マサキとシュウは人食い島から救出された。船の中で食事を与えられながら救助隊の人間に聞かされた話によると、例の無人の中型のクルーザーは個人所有のものであったらしい。沖合に出たところで、整備不良からか、舵が一切効かなくなったのだそうだ。
荒れた海域に近付きつつあったことから、嵐の中に突入する前にと船長は船を捨て、救命ボートで海へ。別の島付近を漂流しているところを、今朝方、無事に保護されたという。
観光クルーザーの乗客も昨日の内に全員が保護されていたようだ。その中には水が苦手なマサキの二匹の使い魔も、きちんと含まれていだそうだ。
「マサキ、お帰りニャさい!」
「無事でよかったんだニャ!」
救助艇から港に降り立つと、浜辺でその帰還を待ち構えていたらしい。シロとクロ、二匹の使い魔がマサキの元に駆け寄って来た。
ついでとチカについて訊ねてみれば、どうやまだサフィーネのところに向かっている最中なのか、こちらには戻って来ていないとのこと。昨日の内に港には姿を見せていたそうなので、あの嵐の中を無事に抜けてはいるようだ。
「なら、私はサフィーネが迎えに来るのを待つことにしましょう。先に私がここを立ってしまっては、彼女らも立つ瀬がないでしょうしね」
「いいよなあ、お前は。俺はこれから公共交通機関を乗り継いで帰宅だ」
「何でしたら一緒に帰りますか」
「いつ来るかわからないんだろ。今日中には帰り着かないといけないしな」
水が怖かっただの死んだかと思っただのなんだのと足にじゃれつきながら喧《やかま》しい二匹の使い魔を、マサキは足先で払い除けた。シュウと異なり魔装機操者としての役目もあるマサキは、決められたスケジュール通りに動かなければ、様々な方面に迷惑がかかる。
遭難したからもう一日という訳にもいかない。今日中にホテルをチェックアウトして帰路に付かなければ。「ほら、お前ら。ホテルに戻るぞ」二匹の使い魔を促して、マサキがホテルに向けて足を踏み出しかけたその時だった。
「なあ、シュウ」
ふと気になったこと。マサキは振り返ってシュウに訊ねる。
「この場合、人生の成功が約束されるのは、やっぱり」
助けに来た救助隊は当然のこととしても、晴れる前から島にいた自分たちがその恩恵を受けられないのは、何だか不公平に感じられる。マサキがそう付け加えると、「それについては、今度ゆっくりと時間を取って話し合うことにしましょう、マサキ」シュウは以前より気安く感じられる微笑みを浮かべて、「そう、ゆっくりとね」重ねて云った。
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