やっと昼食に辿り着けました。
50000字で終わるか先行き怪しくなってきたんですけど、私は実行してみせますからね!!!
バカンスで200000字を超えることだけは避けたいんですよ!だって最長不倒記録に到達ですよ!!笑えないじゃないですか!!!笑
次回は食事シーンですね。なんだかインドネシア料理が恋しくなりました。近くインドネシア料理を食べに行こうかな、などと思ったり。では、本文へどうぞ!
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50000字で終わるか先行き怪しくなってきたんですけど、私は実行してみせますからね!!!
バカンスで200000字を超えることだけは避けたいんですよ!だって最長不倒記録に到達ですよ!!笑えないじゃないですか!!!笑
次回は食事シーンですね。なんだかインドネシア料理が恋しくなりました。近くインドネシア料理を食べに行こうかな、などと思ったり。では、本文へどうぞ!
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<Lotta Love>
今日も調子に乗って胃袋に食事を詰め込み過ぎた結果、デザートが腹に入らないでは笑い話にもならない。旅の失敗は一度きり。マサキは昨日シュウにスマホ画面を通して見せてもらったジャジャナンパサールの画像を思い返した。日持ちさえするのであれば、土産に持ち帰りたいぐらい種類豊富な菓子の数々。手のひらにちょこんと乗りそうなサイズといい、美味しそうな色合いといい、女性受けも良さそうだ。
「ああいうのでいいんだよな」
「何が、です?」
「プレシアたちへの土産だよ。ティータイムの菓子にさ、丁度良さそうな大きさをしてるだろ」
「ジャジャナンパサールですね」
シュウが運転手から聞いた話によると、パサール・クンバサリの前の通りに市が立っているらしく、そこにジャジャナンパサールも売られているのだそうだ。食べ歩きも悪くないですよ。彼の言葉にマサキは深く頷いた。
程なくして目的地に着いたのか。タクシーが一軒のワランの前で停まる。早いな。昨日より格段に短い道程に、マサキが時刻を確認してみれば、タクシーに乗ってまだ30分ばかり。サヌールビーチまでの道のりは一時間近くかかっているのだから、途惑いを覚えるのも仕方のないこと。本当に着いたのかよ。マサキが尋ねれば、ここはデンパサルの中心に近い場所なのだそうだ。
「サヌールビーチはデンパサルの東端ですからね」
シュウに続いてタクシーを降りたマサキは、目の前に建っている建物を見上げた。幾つもの店の入り口が並ぶ、ビルと思しき建造物。無駄を排した先進国のビルは軒並み無機質さが際立つものだが、バリのビルには目立った装飾も多い。このビルも例に洩れず、意図が不明な装飾がそこかしこに施されている。その中に目立つ看板。MieKritingJakarta.白地に店名が書かれただけのシンプルな看板だが、かなりの大きさがあるからか。やたらと目を引く。
どうやらそこが目的のワランであるようだ。
広さがかなりある店内には木製のテーブルが程良い距離感で並んでいる。赤と黒のプラスチック製のスツール。店の手前側が赤スツールのエリア、奥が黒スツールのエリアになっているようだ。タイル製の白壁に、白色蛍光灯。奥の壁にはテレビがかかり、バリの番組を小さな音量で流していた。
まるでどこぞの社員食堂といった趣きの店内は、清潔感はあるが、統一感には欠ける。マサキとしては、昨日のワランが雰囲気のある店だっただけに少し物足りなく感じるも、店内に充満するインドネシア料理のかぐわしい香りに、即座にそういった気持ちも吹き飛ぶ。
昼時だけあって店内はそれなりの客がいたが、席を選ぶだけの余裕はあった。窓際近くの席に陣取ったマサキは、メニューを手に取った。店の名前に麺《ミー》と付いているからこそ、麺の専門店かと思いきや、それだけで完結するような店ではなかったようだ。鶏、豚、牛……見開きのページを開くと、素材別に様々な料理が並ぶ。勿論米《ナシ》料理の種類も豊富だ。それでもメインは麺料理であるのだろう。目的のミーアヤムはメニューのトップに記されていて、店の看板メニューであることが窺い知れた。
「他に目を引くメニューはありましたか」
「それを食ったらジャジャナンパサールが食えなくなるだろ。決めたらそれだけにしておいた方がいいのは、昨日で思い知ったさ。食おうぜ、ミーアヤム」
「飲み物は何にします」
メニューを裏にして差し出してきたシュウの手元を覗けば、これでもかと書かれたドリンクの数々。インドネシア語で書かれている為、読むのは難しくもあったが、英語と同じ表記のものもそこそこある。コーラがあるじゃねえか。マサキはメニューの下段に目を留めた。炭酸飲料をひとまとめにしているのだろうか。ファンタ、スプライト、コカ・コーラと並んで書かれている。
「決めた。コーラを飲む。こう暑いとやっぱり炭酸飲料が欲しくなる」
「確かに。喉をさっぱりと潤したくなりますね」
そう云いつつも、シュウはアイスティーにするつもりらしかった。注文を聞きにきた店員に、ミーアヤムをふたつとコーラ、そして砂糖抜きのテ・マニスをオーダーする。昨日の店は当たりでしたが、ここはどうでしょうね。僅かに憂いた表情になった彼に尋ねてみれば、バリのアイスティーは甘いのが当たり前なのだそうだ。
「テュッティが飲めば喜ぶような甘さがバリの紅茶の特徴なのですよ」
「でも昨日の店はガムシロ別添えだったぜ」
「だから当たり、なのですよ」首を傾げるマサキに苦笑しながらも、シュウは説明を続けた。「インドネシアは糖尿病患者が多い国でしてね、世界でも五指に入るほどの罹患率を誇っています。その原因が砂糖文化にあるのは間違いありません。インドネシアで最もポピュラーな飲み物がテ・マニス《甘い紅茶》なのですが、諸外国の紅茶と比べて砂糖含有率が高く、一杯の紅茶に大体大匙五杯ぐらいの砂糖が含まれているのが一般的なのだそうです。こうしたワランで出されるテ・マニスは砂糖を抜くことも出来ますが、ただ、甘いのが一般的な飲み物だからなのでしょうね。抜き忘れも多いらしく」
「ロシアンルーレットじゃねえか。しかし、糖尿病患者の数が世界で五指に入るって穏やかじゃないな」
「そういった背景もあって、最近はシュガーレスなテ・マニスも一般に流通するようになったらしいのですが、何故かそれも普通に甘いと感じる程度には砂糖を含んでいるようでして……」
「シュガーレス、なんだよな」
「シュガーレス、なのですよ」シュウは心底理解が及ばないといった表情をしてみせると、「猛烈に甘いのが一般的だからなのでしょうか。少し甘いくらいの味ならば、シュガーレスと一緒なのでしょう」
「ダイエット志向の女性が聞いたら卒倒もんだな」マサキは店員がテーブルに置いていった水を飲んだ。
流石に水にまで砂糖を入れる国民性ではないようだ。適度な硬さのある水。日本と違って水道水が飲料に適さないからだろう。どこのメーカーかは不明だが、市場に流通している水が使われているのは間違いない。マサキはグラスの中を覗き込んだ。
「その話を聞いた後だと、水が普通の味だってことに安心するな」
「最初は知らずに飲んでしまいましたからね」シュウは珍しくも途方に暮れた表情をしてみせた。「茶葉の風味も味もない。勿体ないことですよ。バリの茶葉にもそれなりに有名なものがあるというのに」
「お前でもそういったこと、あるんだな」
マサキは意外と目を剥いた。
作業に対しては几帳面で神経質。何事に対しても正確さを求める男は、バカンスに対しても事前の下調べをしてから臨んでいるかと思いきや、どうやらそこまで厳密に考えて行動していた訳ではなかったようだ。「文化や習慣の違いは全てヴィラを決めてから調べましたよ」それだけ発作的な行動だったのだろうか。涼しい顔でそう言葉を返してきた彼は、先に届けられたドリンクに口を付けて、当たりだったようです。と、安堵の息を吐いた。
「観光客も多い店だからでしょうかね。その辺りの屋台で買うテ・マニスではこうはいかない」
プレーンな味を好む彼からすれば、砂糖が大量に投入された紅茶は耐え難い味だったに違いない。大仰にも胸を撫で下ろしてみせた彼に、だったらそれこそ、スタバやマックの出番じゃないかね。マサキは笑ったが、彼としてはあくまでその土地の味を愉しむのが観光であるようだ。
「その台詞はそのままそっくりあなたにお返ししますよ、マサキ」
「まあ、バリくんだりまで来てスタバもマックもないよな」マサキはコーラに口を付けた。
何処で飲んでも変わらない味だが、だからといって、観光地を訪れた先の世界的なフランチャイズの店で飲みたい味かと訊かれると、そうじゃないよな。としか、答えられない。そう、何処で飲んでも変わらない味。だからこそ、その土地ならではの土着的な店でも飲める。普遍的な味が持つ意味はそこにこそあるのだろう。
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