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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Night End(4)
よく考えなくとも、こういったネタをさっくり終わらせようなんて無理な話なんですよ。笑
早くも四回目になりました、このシリーズ。あと三回くらいで終わるといいのですが。

昨日更新した拍手の緑に加筆したくて仕方がないんですけど、ほら、拍手お礼画面ってひとつのお礼につき10000字までの字数制限があるじゃないですか。拍手で前後編とかどうなのよ、と思うので、サイトに移すときに直そうかな、と思っているところです。

そうだ! 拍手といえば、DARKNESSMINDの番外編が途中になってるんですけど、あれもちゃんと完結させますので、もう暫くお待ちください(๑╹ω╹๑ )では本文へどうぞ!
<Night End>

 明けて翌日。
 見た夢も覚えていないほどの深い眠りから目を覚ましたマサキは、パンとスープだけの質素な朝食を摂り、時間をかけてストレッチを済ませた後に地下へと向かった。
 娯楽を与えられてはいるものの、最小限。堪えきれない感情が爆発することもあるのだろう。相変わらず泣き声や喚き声が響いてくる房の前を通り、地下の最奥部へ向かう。そして、与えられた仕事をこなすべく、マサキは例の頑丈な扉の前に立った。
 例の男から伝えられたところに依《よ》ると、早くも今日、追加の”商品“が届く予定らしい。
 内訳は男がひとり、女がふたりの計三人。
 手際の良さは中堅組織ならではか……昨日来たばかりの新人でもあるマサキは、要らぬ疑惑を招かない為にも詳しく聞くことを控えたものだったが、予想を立てるに、恐らくは仕入れのルートが確立されているのだろう。でなければ、こんなに纏まった数の人間が直ぐに調達される筈がない。
 セニアからは余計なことに首を突っ込まず、情報局員の救出に専念するようにと云われてはいるものの、いざこの光景を目の当たりにしてしまうと、何もせずには終われないという気持ちになる――、良くないな、とマサキは物思いに沈みがちになる自分の気持ちを切り替えるべく、一番の目標であるテュッティの知り合いである情報局員の消息調査を、どう行うかについて考えることにした。
 彼女がここに来たのは間違いない。
 これまでにの報告書からすると、件の情報局員は、商品の置き場が地下室であるということや、男女の内訳についてまでは知れる立場に居たらしい。ただ房の位置関係や、どの房にどの商品が置かれているかまでは、把握出来ていなかったようだ。きっと、その調査中に怪しまれたに違いない。その報告書を最後に彼女は消息を絶ってしまった。
 ――と、云うことは、上で働いている連中の中に紛れたってことか……。
 今のところ、それ以上の仮説は立てられそうにない。それを確かめる為にも、時間を掛けてでも館の人間全員と打ち解ける必要があるだろう。そうすれば、ひとりひとりの持っている情報が限られたものであったとしても、全部を合わせることで見えてくるものがある筈だ……気の要る作業ではあるが、それが潜入捜査の鉄則だ。
 上手く行けば、顧客情報にだって辿り着ける。
 暇な時間は、許される範囲で外に出ることにしよう。そうして、ひとりでも多くの館の人間に顔を覚えて貰わねば。マサキがそうして方針を固めた時だった。
 退屈なのですけど、と鉄の扉の内側から声が聞こえてきた。
 モニカがご機嫌取りの必要な商品であることを聞かされてはいるものの、こういった時に返事をしていいものなのか否か、新入りのマサキでは判断が付けられない。取り敢えずと通路の端に立っている男にジェスチャーで状況が伝わらないかと試してみると、こういった状況には慣れているのだろうか。彼は即座にマサキの元にやって来た。
「王女様が退屈だと云ってるようなんだが」
「まあ、昨日大人しく過ごしてたようだしな。今日は相手をしてやってもいいが、その前に着替えの配給だ。それが終わるまで待つように伝えておけ」
「俺が?」それが男には不服を訴えているように聞こえたようだ。
「これがお前の仕事になるんだ。少しずつでいいから慣れておくんだな」
 それだけ言い置くと、男は通路の端へと戻って行ってしまった。慣れろと云われても、通常、房に囚われている相手と番人が話すことはない。マサキとて捕虜の番ぐらいはしたことがある。余程の大物でない限り、彼らの話をマサキが聞いたことはなかった。
 どうしたものかとマサキが思案していると、それを待ってか待たずか。退屈なんですけどと再びモニカの声。「少し待てよ」マサキは云った。「もう直ぐ着替えの配給があるらしい。それが終わってからだ」
「新人さんは大変ですこと」くすくすと笑う声。「わかりました。それまで待ちますわ」
 面白がっている節さえあるモニカの口ぶりに、揶揄《からか》われているような気がしたマサキは思わず顔を顰めた。
 どういった目的でモニカがここに居るのか、マサキにはわからなかったけれども、随分と神経の図太い囚われの身もあったものだ。その態度からして、もしや――とマサキは思った。モニカは不意のアクシデントで囚われたのではなく、自らここに囚われに来たのではないだろうか。
 ――仲間を手足のように使うあの男のことだ。従姉妹の危険など顧みないことだろう……。
 そこまで考えてマサキは微妙な表情になった。王宮に居た時分から、王位継承権第二位の王族として、狙われる立場に立たされていた王女モニカ。彼女にとってこういったことは、今でも日常茶飯事なのかも知れない――と。


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