@kyoさん20周年おめでとう記念祭
今回のリクエスト内容は「シュウマサ前提のテリウス×マサキ」となっております。
なんとなく皆様の中のテリウス×マサキと解釈違いを起こしているような気がしなくもないんですけど、これが今の私に出来る精一杯のふたりということでご納得いただけますと幸いです。と、いってもまだエロには程遠いんですけどね!
ほら、このふたりの場合、エロの前に先ずデートじゃない?
その為にやたらと前置きを長くしている@kyoさん。案外テリウスとマサキのコンビもいいものだなあと思い始めている今日この頃です。
ところで魔装で活動を始めてから20年ほどが経過しました@kyoさん。お祝いのコメントは常時受け付けております。笑 いや、なんかちょっと、このシリーズの私、テンション上がり過ぎじゃないですか? 自分で自分を祝い過ぎている感の強さに恥ずかしくなってきたもので……
では、本文へどうぞ!
今回のリクエスト内容は「シュウマサ前提のテリウス×マサキ」となっております。
なんとなく皆様の中のテリウス×マサキと解釈違いを起こしているような気がしなくもないんですけど、これが今の私に出来る精一杯のふたりということでご納得いただけますと幸いです。と、いってもまだエロには程遠いんですけどね!
ほら、このふたりの場合、エロの前に先ずデートじゃない?
その為にやたらと前置きを長くしている@kyoさん。案外テリウスとマサキのコンビもいいものだなあと思い始めている今日この頃です。
ところで魔装で活動を始めてから20年ほどが経過しました@kyoさん。お祝いのコメントは常時受け付けております。笑 いや、なんかちょっと、このシリーズの私、テンション上がり過ぎじゃないですか? 自分で自分を祝い過ぎている感の強さに恥ずかしくなってきたもので……
では、本文へどうぞ!
<アカイイト(3)>
果たして、それはマサキもシュウとともに訪れたことのある店だった。
通りに面した壁一面がガラス張りになっている広いホールのある酒場。ホールの中央にはステージがあり、ピアノが一台。マサキは見たことがなかったが、夜になると楽団が演奏を行ったり、踊り子が踊りを披露したりすることもあるそうだ。
ステージの周りには丸テーブルがゆったりとした間隔で並び、吹き抜けとなっているホールを囲うように二階にもテーブル席が並んでいる。その二階席に身を収めて、眼下に賑わうホールを眺めながら、マサキはメニューを開いた。
かなりの規模を誇る酒場は、かつて近衛騎士団で大隊長まで務め上げた男がオーナーなのだという。元々飲むのが好きで食好みでもあった彼は、戦争で神経に障る怪我を負い、それを切欠に飲食業に転身。舌の確かな男が開いた店の料理の質は高く、瞬く間に客を集めるようになった。
その関係上、客には軍の関係者も多いらしく、テリウスたちのように後ろ暗い連中にとっては近づき難い店でもあるらしい。但し、他の店と比べると格段に治安はいい。「流石にこういった店にまでは|教団の連中《あいつら》も足を踏み入れて来ないからね。ここでなら安心して食事が出来るよ、マサキ」とはテリウスの弁だ。
テリウスの話を聞きながら、それは知らなかった、とマサキは云った。
軍関係者の前で羽目を外す客はそういないということか。マサキは以前シュウとともにここを訪れた時のことを思い出して、確かにあの時も軍の人間が多かったと、静かに料理や酒を嗜めた理由を納得した。
「しかしお前ら、こういう店でも平気で出入りすんのな」
注文を終えて料理が出るまでの間。マサキは先に頼んだビールを空けながら、テーブルに備え付けになっているつまみを齧《かじ》った。各種、様々なナッツの入ったガラス瓶は調味料とセットで各テーブルに置かれている。この店ならではのサービスだ。
「気付いていても見て見ぬ振りをしてくれる兵士も多いもんだよ。とはいえ、シュウは流石に術を使って変装しないと、こういった店には入れないようだけど」
「あいつはやったことが派手過ぎるんだよ」
「昔はシュウも兄さんや姉さんたちみたいに、王族としての公的な活動をしていたらしいよ。僕は公の場には全く出なかったから、近衛騎士団にすらそんなに顔を知られてないけど。だから、ってこともあるんじゃないかな」
「公的活動? あいつが慈善活動なんかに勤しんでる姿なんて、想像もつかねえけどな」
「昔は僕も似たように思ってたけど、今はその考えを改めたよ。彼は結構、ストイックに奉仕活動をするタイプだね。そうそう、シュウの人脈が豊かなのは、その頃の活動のお陰なんだって」
そうして、テリウスもグラスを空ける頃にもなると、ぽつりぽつりと運ばれてきていた料理がテーブルに所狭しと並ぶまでになった。
賑やかな食卓。魚介類のオイル漬けに生ハムとチーズのアラカルト、野菜の種類も豊富なパスタサラダ。スコッチエッグにフィッシュ&チップスだってある。テーブルに並んだそれらの料理に少しずつ箸を付けながら、マサキはどうせ奢りだとばかりにビールを止め、ワインをボトルで注文することにした。
もう、今日中に買い物を済ませるのは無理だろう。ベッドとバスが使える状態に整えてから出てきた我が家をマサキは思った。酷い有様の他の部屋の掃除は明日でもどうにかなる――……冷蔵庫の中身が壊滅状態だっただけあって、昨日から碌な物を食べていなかったマサキは、目の前の賑やかな料理の数々の誘惑に抗えなくなっていた。
ついでとばかりにテリウスにグラスを勧めれば、彼もワインを飲むのはやぶさかではないようだ。幾度《いくたび》か杯を重ねてみせる。そんなテリウスはグラスを片手に、酒も回ってきたのだろう。
「初めてだよね、こうしてマサキと飲むのって」気だるげにそう云った。
「そうだな……あんまりお前とは顔を合わせる機会、なかったしな」
「セニア姉さんとは飲んだりするの?」
「あんまり機会はねえな。あいつはあいつで情報局の仕事が忙しそうだし、それ以外だと趣味に没頭してるだろ。しかし仕事か機械弄ってるかのどっちかしかないって、あいつ将来大丈夫かね」
「姉さんらしいね」テリウスは声を上げて笑った。
随分と快活な反応をするようになったものだ。マサキは思った。以前のテリウスはだるそうな態度が目立ったものだった。王宮時代の生活がそうした態度を彼の日常にしてしまったのかも知れなかったが、それにしても意欲の感じられない態度。覇気がない、という言葉はテリウスの為にあるような言葉だった。
それがどうだ。
声を上げてころころと、年齢相応に無邪気に笑ってみせるテリウスの顔の、なんと精彩に満ちたことか!
「お前、変わったな。いい方に」
マサキは感嘆を隠せない。彼はシュウとともに行動するようになって、何を見て、何を感じて、そしてどういった経験を重ねたのか。ここまで己を変えるまでに、その世界はテリウスにとって、豊かで広いものだったのだろう。
「そうかな。自分ではそんなに変わったようには思わないんだけど」
「変わったよ。そんな風に声を上げて笑うなんてこと、前のお前はしなさそうだったぜ」
「そうかな……」少し考え込んで、「そうかも知れないね。昔の僕は何に対しても諦めの気持ちが強かった。庶子と云われては、兄さんや姉さんたちより一段低く見られるのに、敷かれたレールの上を歩いて行かなきゃならない。きっと僕はそれが嫌だったんだよ、マサキ。自分の未来が既に定められていることが」
「今のお前、楽しそうだもんなあ。教団に追い掛けられて、命の危険だってあるのに」
「まだ将来にどうしたいかはわからないままだけれど、とても充実した毎日だしね。王宮に居た頃は武術なんて、と思っていたけど、今は単純に強くなりたいと思えるようになったよ。勉強だって楽しい。何でだろうね、マサキ。やっていることはそんなに変わらないのに、受け止め方が変わったんだ」
「必要に応じて物事を学ぶのと、必要になるかわからない状態で物事を学ぶのは、気持ちの持ちようが違うってことだろ。どうせ学ぶんだったら使いたくなるのが人間だ」
広い世界というものは、これだけ人を変えるものであるのだ。
やる気がないと云われた少年テリウスは変わった。限られた狭い世界から飛び出して、己の力だけが頼りになる世界に身を置いて、そしてその中で学びの重要性に気付き、自ら成長を望むようになった。
それは誰にでも等しく訪れる成長のチャンスであったかも知れない。けれども、他の誰よりも籠の中の鳥であったテリウスにとっては大きな一歩だ。そう、彼は己の幸福を己の手で掴み取る喜びを、世界に出たことで知ったのだ。
「君、僕とそんなに変わらない筈なのに、結構含蓄に富む話し方をするよね」
「俺だって魔装機の操者だぜ。一生戦えって云われてそれを受け入れちまうような人間だ。そりゃこんな性格にもなるって……」
「いや、悪い意味じゃないよ。いい意味で達観してるって話」
「そうかねえ。何だか爺臭いって、セニアやプレシアには云われるんだがな」
グラスを傾けてぽつりぽつりと。マサキは食事と酒を進めながら、テリウスと。他愛なくも意義のある話に花を咲かせた。
広い世界を知ったと云っても、それはまだシュウの庇護下にあるテリウスだ。まだまだ限られた世界で生きている彼の話題の中心は、専ら己の仲間のことばかりだったけれども、新たなテリウスの一面を垣間見たばかりのマサキには、そうした話題を彼が生き生きと話して見せることすら新鮮に映ったものだった。
特にシュウのこととなると、途端に饒舌になったものだ。
それは窮屈だった王宮での生活から連れ出してくれた恩人であるからだろう。憧れや尊敬、或いはともに肩を並べて歩く仲間として以上の何かを、彼はシュウに対して感じているようにマサキには思えてならなかった。
それがマサキには少しばかり妬ましい。
魔装機神の操者であるマサキがシュウと肩を並べて歩くことはない。マサキに出来ることは共闘だけだ。ひととき手を結んでは、目的を果たすと同時に別れの時を迎える。繰り返されてきたこれまでの付き合い方に、マサキ自身思うところはあったけども、互いがこの立場を選んでしまった以上、他の付き合い方など出来る筈がない。
マサキは操者であることを捨てられないのだ。
――目の前に限りない世界が広がっていて、そこには可能性が無限にあるって、それだけでワクワクしてくるね……。
そう云ったテリウスの輝ける瞳が、ひときわマサキの印象に残った食事の席。二時間ばかり、そうやってマサキとテリウスは食事と酒をゆっくり楽しんだ。とはいえ、早くに城下に出たからか、過ぎた時間の充実ぶりに比べて、経った時間はさしたるものでもなかったようだ。
時刻はまだ昼下がりをようやく過ぎた頃。店を出たテリウスはついでとばかりに、買い物の同行にマサキを誘ってくる。
酒に酔っていて気分がいいこともあった。それに教団の暗殺者も気になる。まあいいか、とマサキは頷いた。
.
.
PR
コメント