真面目にやったら、四万字でも終わらない気がしたので……
いきなり言い訳から始まりましたけど、別にだからといって不真面目にやっている訳ではないんですよ!四万字を三万字くらいで終わらせる為にはどうすればいいかと考えた結果、話の展開を早くしようと決意した@kyoさん。今回はちょっと頑張りました!
では、本文へどうぞ!
いきなり言い訳から始まりましたけど、別にだからといって不真面目にやっている訳ではないんですよ!四万字を三万字くらいで終わらせる為にはどうすればいいかと考えた結果、話の展開を早くしようと決意した@kyoさん。今回はちょっと頑張りました!
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<秘密>
ローリングタワーが外れるのを待ってから、プログラムを展開する。起動準備《セットアップ》。まだコードが洗練されていないのか。計器類が立ち上がるのに、少しばかりもたつきがあるように感じられる。一秒……二秒……計器類が立ち上がってから約二秒後、補助動力《サブエンジン》が動き始める。
マサキはコマンドを打ち込んで、補助動力《サブエンジン》の出力を確認した。多少の振れ幅はあれど、一番から六番までの補助動力《サブエンジン》は問題なく動いているようだ。次いで動き始めた主動力《メインエンジン》にも問題はない。
「おい、セニア。こいつは動かしていいのか」
『その辺を回って来るぐらいなら問題ないわよ』
ならばとマサキはコントロールパネルを叩いた。まだ赤子に等しい新型魔装機。慣らしが必要だ。なるべくスローペースを意識しながら、格納庫《バンカー》を出る。計器類の数値を確認しながら演習場の中央に出たところで、試しに関節部を動かしてみるが、引っ掛かりは感じられない。滑らかに動く手足に、流石は正魔装機の調整を一手に引き受けているファングの調整だけはある――と、マサキは感心した。
そのままスピードを上げて、演習場をひと回りしてみる。
減速、加速、徐行……移動機能にも問題はなし。強いて云うなら、アイドリング状態から最高速度までの加速にスピードが欲しいところだが、この巨大サイズだ。
デュラクシールよりも一回り以上は大きな機体。正魔装機の中でも群を抜いた加速度を誇るサイバスターと比べてしまうのは酷な気がする。
『どうだ、マサキ。俺が時間を掛けて調整した成果は』
休むと云ったファングは休むことの意味をどう捉えているのか。どうやら格納庫《バンカー》から開発室に向かったらしく、通信機から声が響いてきた。マサキは脱力感を感じながらも、「個人的にはもうちょっと速度上昇にスピードが欲しいところだが、このサイズじゃ仕方がないんだろうな」
『サイバスター並みの反応速度《レスポンス》を、そのサイズの魔装機に期待しないで頂戴』
「だろうな。それと……」セットアッププログラムのもたつきを指摘する。
セニアの弁では、そこにまだ改良の余地があることは把握済みなようだ。それなら問題はない。マサキは格納庫へと新型魔装機ともども戻ることにした。
ついでと蛇行やフルブレーキングなども試してみるが、思った以上にこちらのコントロールに応えてくれたものだ。格納庫に新型魔装機を収めたマサキは、「これのどこに調整が必要だって?」操縦席を開くなりそう云った。
『動力の割に出力がね……』セニアとしては不満の残るテストだったようだ。
どこにセニアが着地点を求めているのかマサキには不明ではあったが、今のテストでの動きは彼女の理想には程遠い状態であるらしい。きっと細かい調整を繰り返しているのだろう。それでは毎日のようにファングが駆り出される筈でもある。
「リミッターをかけてるんじゃねえのかよ」
『そんなことをあたしがすると思う? 何の為の六基の補助動力《サブエンジン》なのよ。でも、マサキでもファングの操縦とそんなに変化がないってことは、あたしの設計や組み方に問題があるってことよね……』
「なら遣り直すんだな。とにかく、暫くファングは休ませろよ。俺に付き合えっていうなら付き合ってやる。その間にお前は体重を戻すんだな、ファング」
一から機体の設計を見直すと云ったセニアに、マサキはファングを連れて開発室を辞することにした。これで暫くの間、ファングはテストパイロットの業務から解放される。近衛騎士団の業務や魔装機操者としての任務はあるだろうが、毎日テストパイロットを務めている今の生活と比べれば、かなり余裕のある生活になるだろう。だというのに、どうもこの男は休みの意味を根本的に履き違えているようだ。開発室を出た数歩も歩かない内に、早速とばかりにマサキを剣の稽古に誘ってきた。
一から機体の設計を見直すと云ったセニアに、マサキはファングを連れて開発室を辞することにした。これで暫くの間、ファングはテストパイロットの業務から解放される。近衛騎士団の業務や魔装機操者としての任務はあるだろうが、毎日テストパイロットを務めている今の生活と比べれば、かなり余裕のある生活になるだろう。だというのに、どうもこの男は休みの意味を根本的に履き違えているようだ。開発室を出た数歩も歩かない内に、早速とばかりにマサキを剣の稽古に誘ってきた。
「いい加減にしろよ、お前。体重を戻せってさっき云ったばかりだろ。なんでそれが剣の稽古になるんだよ」
「そこまで痩せたとは思わんのだがな」
「痩せたって。一度、体重計に乗ってみろよ」
「この間計った時は、三キロぐらい減ってはいたが」
「何ならこの後、市場に行くか? 三キロの肉がどのくらいか見せてやるよ」
それにファングは肩を竦めてみせただけだった。
面白くない。心配をしてみせたところで、本人がそれを受け入れない状況。マサキは不満を感じながらも、それを露わにすることは避けた。あまりしつこくし過ぎると、この頑固な男はマサキを拒否しかねない。
「とにかく、今日ぐらいは寝て過ごせよ。明日以降だったら剣の稽古も付き合ってやるから……」
本当か、と気色ばむファングに、長生き出来そうにない性格だとマサキは呆れ半分。人気のない通路を往き、互いの魔装機を格納してある先程とは別の格納庫《バンカー》へ。それぞれの魔装機に乗り込む直前に、ところでと、マサキは気になっていたことを口にした。
「お前、付き合ってる奴とかいるのか」
「何だ、突然」
「この間、寝惚けて舌を動かしてやがったからさ」
自分はファングとどうなりたいのだろう。マサキは訊ねながら思った。これじゃあまるでその女に嫉妬しているようにしか聞こえない、と。
衝動的にプラーナの補給をしてしまったものの、マサキは自分の気持ちを掴みかねていた。もう少しファングの側に寄りたくはあったが、それだけ。積極的に他人を寄せ付けるような真似をしない男は、けれども頼れば応えてくれそうな気はしている。とはいえ、これまでの付き合いが付き合いだ。付かず離れず……独立した人間同士として、或いは仲間として以上の付き合いのないファング。彼と友人関係を結びたいのかと聞かれると、それも違う。
「まあ、それはこの年齢だしな……過去にはそういう相手もいるにはいたが」
「ふーん……」
無骨で気の回らないファングが、女性との付き合いでどういった顔を見せるのか。想像の付かないその顔を知っている相手がいたという現実。マサキは僅かばかり胸が痛むのを感じた。
やっぱり、面白くない。
自分では及ばない立場の違い。それがマサキには恨めしく感じられて仕方がない。そう、もう少しだけでいいのだ。自分の意見をファングが受け入れてくれるようになれば、マサキはそれだけで満足出来るだろう。
人はひとりでは生きられない。それだのにファングは独りで全てをこなそうとしてしまう。誰かに頼ることもせず、全てを背負い込んでその全てを自分だけで消化しようとしてしまう。その結果が、今回の不調であるのは明白だ。
だのにファングは無理を重ねることを止めようとしない。
それが自分の責務であると信じているのだろう。自分の立場を謗られない為か。彼は変わらずに自分の職務に忠実たろうとしている。どうすればその歩みを一時的に止めてやることが出来るのか。マサキにはその答えはわからない。
「お前には失礼なことをしてしまったな。それについては謝罪する」
「ああ、まあ、それはいいさ……」
聞くだけ聞いて感想のないマサキに、話は終わったのだと思ったのか。ファングはマサキに背中を向けるとジェイファーに乗り込むべく、その一歩を踏み出した。ファング、とマサキはその名を呼ぶ。「何だ?」と、足を止めて振り返ったファングに近付く。そしてその服の襟元を掴むと、身を乗り出して顔を重ねた。
触れた口唇に、ファングの身体が微かに硬直した気がする。
マサキは構わずにファングの口唇を貪った。舌先で口唇を開かせ、舌を差し入れる。それをファングはどう捉えたのだろう。振り払うことは容易である筈なのに、そうはせず。マサキが舌を絡めて少しもすると、躊躇いがちにだが応じる素振りをみせた。
それだったら、とマサキは何度も、その罅割れた口唇を啄んだ。
口唇を啄んでは舌を絡め、そしてまた舌を抜いては口唇を啄む。心を側に置いて貰えないのであれば、せめて身体だけでも側に置いて欲しい。突然に胸の中に湧き上がった感情に従って、マサキはひたすらファングに口付けを繰り返した。
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