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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

クリスマスの後に(中)
年内にこれは終わらせなければと思いました。
幾ら好きだからって、年明けまでクリスマス云うのはアレなので……笑

部屋の片づけや買い出しもあって、今日の更新量は少なめですが、明日はその分ボリュームアップしてお届けしようと思います。
話は逸れますが、全然図書館で借りた本が読めてないんですよ。明日は本当に頑張らねば!うかうかしてるとあっという間に休み終わっちゃいますものね!


<クリスマスの後に>

 食事のついでに街で彼が欲しいと云ったジャケットをプレゼントと買い与えたシュウは、同じく街で買い集めたオーナメントを部屋の観葉植物に飾り付けた。本家のクリスマスには叶うべくもなかったが、たったひとつの観葉植物でも、それらしい雰囲気が味わえる部屋にはなったものだ。
「やっぱり、クリスマスっていうのはこういうもんだよな」
 空調の効いた室内だったが、貰ったプレゼントが嬉しかったらしい。シュウの膝の上、脚にジャケットを掛けたマサキがシャンパンを飲みながら上機嫌に言葉を吐く。既にディナーを済ませた後だけあってつまみは少量のチーズだけだったが、鉄の肝臓を持つ仲間たちに鍛えられているからだろう。するすると水を飲むようにグラスを空けてゆく。
「あまりペースが早いと、後が大変なことになりますよ」
「わかってるんだがな。あいつらに付き合ってると、ついな」
 二匹と一羽の使い魔たちは仲良く並んでテレビを見ている。最近王都で行われた剣術大会の模様をダイジェストで流している動画は、主人たちに似て好戦的な彼らの気持ちを高めているようだ。時折、惜しい! だの、そこ! だのと声が上がる。
 シュウはグラスを傾けながら、マサキの髪を撫でた。瑞々しさを指先に伝えてくるマサキの髪がシュウは好きだった。指を通せば絡むことなくするりと抜ける。日本人らしい艶やかな毛質はクセの強い髪を持つシュウにはないものだ。
 シュウは続けてその手をマサキの頬へと滑らせていった。瞬間、彼の身体がぴくりと揺れる。
「今は私と飲んでいるのでしょう。ねえ、マサキ」
「わかってるって。ゆっくり呑むさ」
 酔いが回ると人恋しくなる性質らしい。シュウのスキンシップに心地よさそうに身体を預けているマサキの目は、明瞭《はっき》とわかるくらいに潤んでいる。剣を握り締めて硬くなった手のひらからは考えられないくらいに柔い肌。滑らかな温もりをゆっくりと味わいながら、シュウはマサキの耳元に静かに囁きかけた。
「そういった表情を彼らにも見せているの」
「どういう顔だよ」自覚はないらしい。
 そうしたマサキの無防備さに不安を感じることもあったが、それも今は昔。こうしてここに足を運んでくる回数が増えたマサキに、シュウの嫉妬心は次第に落ち着きをみせていくようになった。何よりこの寛ぎきったマサキの様子! こういった姿を見せられて、彼を信用しないなどといった不義理が出来たものか。
「人の温もりに酔っているような表情ですよ」
 それでも時には意地悪をしてみたくもなる。シュウはマサキの頬を撫でてやりながら、同時に赤く染まり始めている彼の耳朶を食んだ。お、前。慌てて声を上げたマサキに使い魔たちが揃って顔を向けてくる。
「またですかあ、ご主人様ぁ。いちゃつくのは結構ですけど、続きは寝室でにしてくださいね」
 けれどもそれも一瞬のこと。そう云ったチカに続いて、マサキの二匹の使い魔も直ぐにテレビに顔を戻す。随分慣れたようですね。彼らにそう言葉を放ったシュウは、クックと嗤いながら更にマサキに囁きかけた。
「そういった顔をあなたが彼らに見せているのではないかと思うと、ただで済ませたくなくなりますね」
 マサキの耳朶から口唇を離したシュウは、今度はこめかみへとその口唇を押し当てた。「お前、チカの言葉を聞いてただろ」変わらずに自身に触れてくるシュウに、マサキが抗議の言葉を吐く。聞いていましたよ。シュウはグラスをテーブルに置いて、マサキの腰を両手で抱えた。
「ですから続きは寝室でにしましょう。それならあなたも文句はないでしょう。ねえ、マサキ。それとももう少し飲んでいたい?」
「行くよ。行けばいいんだろ」
 こめかみに繰り返し口付けながら言葉を吐いてくるシュウに、流石に羞恥が限界を超えたようだ。自身もまたグラスをテーブルに置いたマサキが、諦めた様子で言葉を継いだ。
「でも、その前にシャワーを浴びさせろよ。嫌だからな、俺。こんなに動き回った後に直ぐベッドに入るの」
 続けてシュウの手をやんわりとほどいてソファから立ち上がったマサキだったが、どうやら立て続けに煽ったシャンパンがいつの間にか足にまで回ってしまっていたようだ。ふらりと彼の身体が傾ぐ。シャワーどころではないようですね。笑いながらマサキの身体を受け止めたシュウは、そのまま彼を両手で抱き抱えた。
 すっぽりと腕に収まる身体に愛おしさが増す。
 日頃、好んで着用しているジャケットの厚みの所為で中肉に見えるマサキだったが、実際はふた回りは細い体躯をしている。見た目よりも軽い身体は、だからこそシュウでも抱え上げるのが容易なのだ。シュウは首の後ろにしっかと腕を回してくるマサキを落とさぬように歩き始めた。
「ちゃんと寝室のドアは閉めてくださいね、ご主人様!」
 テレビを向いたままそう最後に声を張り上げたチカに、わかっていますよ。シュウは確りと言葉を返してから、マサキとともに。薄く開いたドアの隙間から寝室へと身体を滑り込ませた。




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