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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

クリスマスの葛藤
メリークリストフ!
よいクリスマスを!



<クリスマスの葛藤>

 いつも自分から誘っている気がするのだ。
 何の話かというとクリスマスである。
 因縁深き義妹が睨みをきかせてしまっている以上、シュウがマサキの家を訪れるのは難しいことではあったし、そもそも宗教観が地上と異なるラ・ギアス世界には、クリスマスの習慣自体がないのだが、だからといって毎年マサキが誘わなければ成立しないイベントというのもおかしな気がする。
 故に、今年は誘わないというのもありではないか。ベッドに寝そべっているマサキの足元で丸くなっている二匹の使い魔に、マサキがそう相談を持ち掛けてみれば「やめておいた方がいいんだニャ」と、声を揃えて答えてきた。
「駄目かね」
「駄目に決まってるのね」
「何でだよ。いつも俺ばっかりあいつを誘ってる気がするぞ。偶にはあいつからイベントに誘ってくれてもいいじゃねえか」
「それで本人が忘れてた場合、どうするんだニャ? 後で嫌味を云われるのはマサキニャんだニャ」
「面倒臭えな、あいつ」
 マサキは天井に向けて盛大な溜息を吐いた。
 シロの云う通りだ。趣味の研究にかまけている内にイベントそのものを失念してしまうシュウは、マサキが誘いにいかなければイベントに参加すらしないくせに、その後にイベントがあったことを思い出そうものなら、延々とそのことを云い続けてくるぐらいには執念深い。しかも、ただ執念深いのではない。マサキが取りなして機嫌を直した筈なのにも関わらず、その後も折に触れては話を蒸し返してくるぐらいである。
 こうなってくると、むしろ何故シュウが自分から誘いにこないのかが不思議なぐらいであるが、シュウとしては「マサキが誘いに来てくれた」事実こそが大事であるらしい。誘いに行けば必ず付き合ってくれるばかりか、待っている気配すらあったりするのだから不思議なものだ。
 クリスマスなどはその筆頭だ。プレゼントにケータリングは元より、マサキが普段口にすることのない酒なども用意していたりするのであるから、シュウがマサキと過ごすイベントを楽しみにしているのは間違いない。なのに、シュウは自分からは絶対に誘ってこない。いや、誘ってくることも稀にはあるのだが、マサキが十回誘ってようやく一回という案配である。
「楽しみにしてるのは自分も一緒なんだから、偶には自分から誘いに来いよな。面倒臭ぇ」
「その面倒臭いシュウと付き合ってるのはマサキニャのよ」
「そうなんだよな。おかしなことに」
 マサキは再び天井に向かって溜息を吐いた。
 超絶的なインドア気質。のみならず、生真面目ときたものだ。
 そもそもがひとりでイベントを愉しむ性質でもない。何故そういった性格であるシュウと、風来坊気質な自分が付き合うのに至ったのか。マサキは未だに自分の気持ちが良くわからなかったりするのだが、イベントがあると訊けば直ぐにシュウの顔が思い浮かぶぐらいの情はあったりする。
「いーや。だが、今年は誘わねえ」
 だからこそ、気付いてしまった事実が面白くないのだ。
 大体、マサキがシュウと付き合っているのは、彼の強引なアプローチに押し切られる形であったからだ。だというのに、誘うのはマサキばかり。これではまるでマサキの方がよりシュウのことを好きなようではないか。そんなことは絶対にない筈なのに。
「それでシュウが気付かなかったらどうするの?」
「そんときはお前たちと地上にでも行くさ」
「寂しがるくせして良く云うんだニャ」
「そうニャのよ。絶対にマサキ、後でシュウのところに行くって云い出すのね」
「お酒ニャんか飲んだらもう間違いニャいんだニャ」
「ねー。寂しい寂しい云って、シュウのところに乗り込むのよ」
 ううう。痛いところを突かれたマサキは呻いた。どれもこれもこれまでマサキがやってしまった失態ばかりだ。
「で、おいらたちが入り込む隙もニャいほどらぶらぶするんだニャ!」
「そうそう。あたしたち、いつも居場所と目のやり場に困ってるニャのよ!」
「お前たち……好き放題云いやがって……」
 主人を主人とも思わぬ二匹の使い魔の放言にマサキは頭を掻き毟った。そして考えた。矢張り今年も自分がシュウを誘うべきであるのだろうか?
「いーや。今度という今度は絶対に誘わねえ。あいつが来るまで待つ」
 張ってしまった意地がある。それを撤回するのは、なけなしのプライドが良しとしない。
 マサキは天井を睨み付けた。そうだ。偶にはきっちりシュウに誘わせるのだ。そうでなければバランスが取れないではないか!
 そう自分に云い聞かせて、決意を固める。
 けれども、そんな決意もイベントの空気感の前では、あっけなく崩れ去るものであるのだ。何より身体が騒いで仕方がない。結局、夕方には前言を翻すこととなったマサキは、例年通りにクリスマスを恋人の元で過ごすべくシュウの許に向かうことにした。




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