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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

2022X'mas「X’masMarket(1)」
メリークリストフ!

二年ぶりの開催となりました。
前回の続きから始まる「シュウマサでラストクリスマス」。

果たして、前回残った謎は消化出来るのか?

とはいえ、そんなことは気にせずお楽しみいただければ幸いです。

https://bluemoon.pazru.com/hoge/EditEntry/1141/
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では2022X'masをスタートします。
<X'masMarket>

 クリスマスも二日前のことだった。来年は全部俺がやるよ、と云ったクリスマスの準備にいよいよ取りかかろうと思ったマサキは、先ずは飾り物とその買い物に地上に出ることにした。
 二年連続で同じ時期に休暇を願い出たマサキにセニアは思い含む所がある様子だったが、それに気を回していられるほどの余裕はマサキにはなかった。シュウと過ごしたいクリスマスの一日を脳裏に思い描いて、昨年同様にひたすら任務に明け暮れた一年間。クリスマスも一ヶ月前となれば、もう気が急いて仕方がない。ましてや今年のクリスマスはマサキが支度をすると啖呵を切ってしまっている。任務だの突発的な事態だので稼いだ武勲を盾にセニアに詰め寄ったマサキはそうして無事に勝ち取ったクリスマス休暇に、早速とばかりにゼオルートの館に凱旋すると、自室に篭ってクリスマス用の買い出しリストの作成に取りかかった。
 その欲張りにも限度のあるリストを目にしたシロとクロは、マサキに出来た新たな秘密と、それにかける情熱に呆れている様子だったが、結局は主人の無意識の産物たる|使い魔《ファミリア》。お祭り好きな日本人の血が彼らに流れているかどうかはさておき、パッションは受け継いでいるらしい。いざクリスマスが近付くに連れ、いつ買い出しに出るのかと落ち着かない様子でせっついてくるようになった。
 地上と地底は表裏一対。地上世界の文化や伝統、知識を共有している部分もあるラ・ギアスだからこそ、地上世界の名産品で構成されているクリスマスディナー用のメニューはラングランでも揃えられたものだったが、精霊信仰が国民の主要な信仰を占める大陸には、キリスト教圏のイベントたるクリスマスというイベントは入り込む隙がなかったのだろう。流石に飾り物までもを入手するのは無理だと悟ったマサキは、そうして日本へと。行き先を定めたサイバスターを転移させた。
 三次元と四次元の狭間に存在する極彩色の世界。まるで油に絵の具を垂らしたような色が揺らめく世界が開けると、懐かしい景色が眼下に広がった。建ち並ぶビルの群れ。郊外に広がる緑。そこにはせせこましくも今日を生きる人々がひしめいている。
 それがマサキの故郷たる日本、地上世界にある島国の日常的な姿だった。
 記憶の中の風景を脳裏に蘇らせたマサキは、久しく訪れていなかった地上世界になんとも表現し難い懐かしさを感じていた。ちょくちょく訪れてはいたものの、それは戦いの為。古い記憶を浚うに、日常生活の延長線上で地上を訪れるのは、もしかすると初めてのことかも知れなかった。
 あいつらは元気でやってるだろうか……子供時代の親しかった友人を思い出してみるも、その輪郭はもうかなりぼやけてしまっている。それだけ昔のこととなってしまった自らの故郷のへの帰還。それを自分はシュウとのクリスマスの為に行ったのだと思うと、何だか可笑しくて堪らない。
 彼がいて、仲間がいるからこそ、地底世界はマサキの新たな故郷となったのだ。そこには地上世界への郷愁めいた感情はもうない。地底世界に自らの居場所を認めたマサキは、だからこそ、平和を謳歌するかつての故郷を、一歩引いた視点で眺められるようになった。
「あたしたちは留守番ニャの?」
「そんニャ殺生ニャ!」
 ナビゲートを任せてきた二匹の|使い魔《ファミリア》は、マサキ不在のサイバスターを任せられるのが不満なようだった。無理もない。昨年のクリスマスの光景を覚えている彼らは、その賑やかな飾り付けに大層心を躍らせたようだった。ゼオルートの館で行われるクリスマスパーティは、ありあわせの物で行われるのが常だ。メインディッシュにチキンを据えただけの料理群、それっぽいアイテムを揃えてみただけの似非飾り。多忙な魔装機の操者たちは、イベントごとにかける情熱のほどには準備に時間を割けないことの方が多い。
 シュウとふたりで準備をしたクリスマスディナーの場には、ツリーにキャンドルは元より、ケーキ、グリューワイン、クグロフやバニレキプルファンと様々なクリスマスメニューが揃っていた。それが二匹の使い魔には目新しく映ったのだろう。絵本の中の世界のような完璧なクリスマス。クリスマスツリーの下に居場所を決めたシロとクロの姿を、まるで昨日のことのように思い出せるマサキは、今年も迫り来る三匹とふたりのクリスマスに、気分が高揚していくのを感じずにいられなかった。
 だからこそのプレッシャー。昨年のクリスマスに負けないディナーにしなければ。自らがセッティングするクリスマスに気持ちを引き締めたマサキは、のんびりしている暇はないとばかりに、二匹の使い魔にサイバスターを上空に待機させておくように告げると、そうして今頃クリスマスと騒々しい街中へと降下して行った。


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