突然なのですが、ここで業務連絡をしたいと思います。
バレンタインに贈り物を有難うございます。いただいていいものか悩みましたが、あまり強くお気持ちを固辞するのも失礼にあたると思い、謹んで受け取らせていたこうと考えた次第です。
本当に有難うございます!
今の世の中はこういった方法もあるのですね。ちょっとびっくりしました。笑
レス不要になっていたのですが、流石にこれにリアクションをせずに済ませる訳にはいかないと思いまして、この場を借りてお礼を申し上げた次第です。では、本文へどうぞ!
バレンタインに贈り物を有難うございます。いただいていいものか悩みましたが、あまり強くお気持ちを固辞するのも失礼にあたると思い、謹んで受け取らせていたこうと考えた次第です。
本当に有難うございます!
今の世の中はこういった方法もあるのですね。ちょっとびっくりしました。笑
レス不要になっていたのですが、流石にこれにリアクションをせずに済ませる訳にはいかないと思いまして、この場を借りてお礼を申し上げた次第です。では、本文へどうぞ!
<LastX'mas>
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―――O come, all ye faithful joyful and triumphant!
(おお、来たれ。すべての敬虔な者たちよ。喜びに満ち、意気揚々と!)
―――O come ye, O come ye to Bethlehem. Come and behold him. Born the King of Angels!
―――O come ye, O come ye to Bethlehem. Come and behold him. Born the King of Angels!
(おお、来たれ。ベツレヘムに来たれ。そして彼を拝見せよ。天使達の王が降誕せり!)
――O come, let us adore Him,O come, let us adore Him,O come, let us adore Him!
――O come, let us adore Him,O come, let us adore Him,O come, let us adore Him!
(おお、来たれ。彼を崇拝せよ。おお、来たれ。彼を崇拝せよ。おお、来たれ。彼を崇拝せよ!)
―――Christ the Lord.
―――Christ the Lord.
(キリストは主なり。)
イベント用のステージからは、あの日の感動と興奮を伝えるように、聖歌隊が歌う讃美歌が聴こえてくる。その歌声をバックグランドミュージックに、シュウは観覧車のチケット売り場へと向かった。
イベント用のステージからは、あの日の感動と興奮を伝えるように、聖歌隊が歌う讃美歌が聴こえてくる。その歌声をバックグランドミュージックに、シュウは観覧車のチケット売り場へと向かった。
幸い、観覧車も当日券が出ているようだ。
人波の隙間を縫って吹き付ける冬の風。やけに手足を凍えさせる冷え冷えとした空気に、ひとりでいることを痛感させられながら、観覧車のチケットを入手したシュウは、数十メートルに及ぶ順番待ちの人の列に並んでゴンドラの訪れを待った。
流石に今度は入園とは訳が違う。時間をかけてゆっくりと回るゴンドラ。流石は世界最大級のサイズを誇る観覧車だけはある。のろりのろりと進む列。ようやくシュウに順番が巡ってくる頃には、一時間が経過してしまっていた。
係員の指示に従って、滑り込んでくるゴンドラに乗り込む。
ぱたん、と閉じられるドア。次いでカチャリと鍵が掛けられる。外の喧騒とは裏腹な静けさのゴンドラ。シュウは長躯を収めるには少々狭い座席に腰を落ち着けた。
静かに空へと滑り出してゆく小さなゴンドラ。緩やかに、少しずつ。賑やかな園内の光景が、郷愁を感じさせるロンドンの景色へと変わってゆく。古びた建物の数々。黒煙が立ち上る工場。まるで産業革命の時代にタイムスリップしたような気分になりながら、シュウは四方へと視線を滑らせていった。
その瞳がとある一点を捉えて止まる。
直ぐ近くに望めるヴィクトリア調の建物は、マサキとふたりで泊まったホテルだった。豪奢な客室に気後れしながらも、アンティークな家具の数々が気になった様子で、あれこれと眺めてはシュウに来歴を尋ねてきたマサキ。懐かしい。シュウは建物から視線をそっと外すと、空を仰いだ。
天には雲。厚い雲の合間にぽっかりと、切り抜かれたような青空が覗いている。
夕暮れ時に乗るべきだったか……九歳のクリスマス。初めてマサキと出会ったあの日に、一日の締め括りのようにしてふたりで乗った移動遊園地の観覧車。城下町を一望出来そうなまでに空高く上ったゴンドラに、シュウはいつか必ずこの広い地底世界《ラ・ギアス》を、自らの足で回ってみせると誓ってみせたものだった。
―――本当に、ひと目惚れだった。
風と草と太陽の匂いがする青年は、姿を現わすなりシュウを魅了してみせた。ころころと変わる表情。先程まで必死の形相で盗人を追いかけていたかと思えば、次の瞬間には正義を行使すべく凛々しさを露わにしてみせる。レストランでシュウにグリューワインを勧めてきた時の密やかながらも茶目っ気たっぷりの笑顔! かと思えば取り澄ました表情で神に祈りを捧げる聖句を口にしてみせる。これで心を動かされない方がどうかしている。
彼はそこにいるだけで、周りの人間の気持ちを動かす人間であるのだ。
シュウ。と彼が呼ぶ自分の真名《まな》の旋律《しらべ》! 無垢な白さに彩られた自らの名前は、地上世界の響きに満ちている筈だのに、とてつもなく尊いものに聞こえたものだ。後に教団の手に堕ちたシュウにとって、自らの真名《まな》は忌まわしき繋がりを想起させるものとなってしまったが、それでもその名を捨てることなく使い続けるに至ったのは、マサキが繰り返しその名を口にしてくれたからでもあるのだろう。
―――あなたを好きにならなければ良かったのだろうか。
無邪気に城下を眺めていたシュウを、穏やかな眼差しで見守ってくれていたマサキ。彼はどんな気持ちで九歳のシュウの許を訪れ、どんな気持ちでシュウの願いを聞いていたのか。細く柔く緩やかに波を描くシュウの髪を撫でたマサキの無骨な手。華奢な身体に見合わない厚みのある手は、彼が剣技に費やした時間を余すところなく表していた。
―――この幸福な未来の為に、運命を決して諦めるな。
今こうして思い出を辿りながら乗るゴンドラの向かいの席に、彼の姿はない。
―――マサキ。
震える口唇でシュウはその名を呼んだ。何だよ。あるべき返事にしたところでもう聞こえることはない筈だのに、耳に降ってくるマサキの声。それをシュウが新しい響きで聞くことは、もうないのだ。それでも認められないリアル。どれだけ世界がその事実を思い知らせてこようとも、シュウがその悲哀を色濃くすることはない。
マサキ=アンドー、またの名を安藤正樹。彼は死んだのだ。繰り返し自らに云い聞かせてきた言葉を、シュウは今また心に刻み付けた。
泣き出してしまいたいのに、涙はこれっぽっちも零れてはこなかった。
もしかすると、彼は少しばかり任務で家を空けているだけなのかも知れない……その狂気めいた考えはシュウの心を軽くした。ああ、そうだ。そうに違いない。シュウは楽になりたかったのだ。現実に溺れることが出来ないのであれば、いっそ過日の幻に囚われてしまいたい。そう望んでしまうほどに、シュウの心はこのロンドンの空のように、厚い何かに重苦しく覆われていた。
―――家に戻ればマサキがいる。
書き置きもなく不在にしたシュウを、そうして彼は責めるのだろう。お前、どこかに行く時は連絡をするか、書き置きを残せって云っただろ。シュウの耳に再びマサキの言葉が蘇る。
帰りたい。猛烈にシュウは思った。帰りたい。かえりたい。還りたい。これから約束された幸福を手に入れるところだったあの日、まだマサキの心を手に入れる前だったあの日々に還りたい――ようやく一緒に住める環境が整って、僅か一年。突然に巻き起こった嵐は、シュウの日常を完膚なきまでに破壊した。輝ける日々の到達点に辿り着いたシュウは、これから更にマサキとともに、様々な経験を積んでゆくのだと意気込んでいたというのに。
思い描いていた人生設計が、叶うことなく崩れてゆく。
シュウは真向かいの席を凝《じ》っと見詰めた。
狂気に飲み込まれてしまえれば、どれだけ楽だろう。シュウは誰もいない座席を目の前に、深い溜息を吐いた。もう、マサキはこの世にいないのだ。何度目の覚醒。シュウはこうして現実を直視しては、夢に溺れかかる精神を蘇らせてきた。
恐らく今頃マサキの魂は、ラ・ギアスから分離《わか》たれた異次元、万物が還る場所たる精霊界にあることだろう。頂点を過ぎて下りてゆくばかりとなったゴンドラの中。シュウは窓の外を眺めるでもなく、誰もいない座席を見詰め続けた。人の身で訪れることの叶わなくなった神秘の世界で、マサキはどう過ごしているのか。いや、そもそも彼は精霊界にいるのか……。
万物は流転する。それは輪廻転生を意味する言葉でもある。
きっとシュウがその世界に足を踏み入れる頃には、マサキの魂は新たな生を授かっているに違いない。何せ彼は精霊の恵みを受けている。風の精霊サイフィス。四大精霊の頂点に君臨する女王は、だからこそ、マサキの魂を精霊界に縛り付けるような真似はしまい。シュウは残り僅かとなった観覧車の時間を、そういった物思いに費やしていった。
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