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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

トロフィーワイフ(四):シュウマサ
今回は短いです。そして恐らく次回で終わります。

風邪を引いていて頭が上手く回っていないので、アレな部分は多いと思いますが、それは後々手直しするとして、ぐるぐる回っている白河をお楽しみいただければと思います……ってこれただのR作品だった筈なんですが!!!!



<トロフィーワイフ>

 丘に上がった魚のように息も絶え絶えな姿。愛撫ひとつで堕ちてゆくマサキの姿は、シュウに例えようもない恍惚を感じさせる。けれどもそれはひとときのことだ。シュウの胸に空いた空虚な穴を埋めるには至らない。
 ――私は何をマサキに求めているのだろう?
 自らの内側に稀に生じる暴力的な衝動。それがマサキに向くことに、シュウは本当は納得していないのだ。
 精神の牢獄に繋がれた自らを救ってくれた少年を、暴力的な欲望に晒すことしか出来ない己。シュウの中にはマサキに対する二律背反的な感情が渦巻いている。需要と反発。それはシュウに対するマサキの態度にも似たちぐはぐさだ。
 わかっている。誰かを手放しで評価するようなことなどあってはならないことだ。
 人間、誰しも長所と短所を備えている。全てに於いて|完璧《パーフェクト》な人間など存在しやしない。歴史上の偉人にしてもそうだ。のちの世に影響を及ぼすような業績を残した彼らとて、人間を人間たらしめている『らしさ』から逃れることは出来なかった。例えばビアン=ゾルダークがそうだ。彼は優れた科学者であったし、優れた指導者でもあった。だが私生活に於いてはどうだ。リューネのビアンに対する悪感情は拭い去られてはいない。それは、ビアンが死して尚、父娘の断絶が続いているということでもある。
 そこにビアンの人間らしさを見出すのはシュウだけではないだろう。
 では、マサキ=アンドーは?
 シュウはそこで考えることを止めた。そこにこそ、この不条理な怒りの理由がある。本能的な忌避感は自覚の表れだ。シュウは己の愚かさを知っているからこそ、己の心を理不尽に暴れさせる原因を直視するのを避けた。
「も、そこ……舐めるの、止めろよ……」
 延々と同じ箇所に続く愛撫が耐え難くなったようだ。声を発したマサキに、シュウはその足の指から口を離した。
「なら、後ろを向いて」
 ドアに手を突く形で身体をドア伝いに返したマサキの足を取る。シュウはくるぶしから順繰りに、今度は逆方向へと彼の身体に愛撫を加えていった。
 ふくらはぎ、ひかがみ、腿の裏側から臀部。腰骨の底、臀部との継ぎ目にある窪みを吸うと、性感帯であったようだ。ぶるぶるとマサキの身体が震え出した。
 面白い。シュウはじっくりと時間をかけて窪みを愛撫した。そのついでに、紅斑を散らす。
 腰部に咲いた薔薇の花のそぐわなさ。引き絞られた肉体とのミスマッチ感が、エロティシズムを際立たせている。シュウは薔薇を撫でながら、口唇を上に滑らせていった。
 じっとりと舌を這わせ、啄むように吸う。あっ、ああ。背をしならせたマサキが、ひときわ高く声を上げた。
 ドアの向こう側の喧騒など打ち忘れてしまったかのように喘ぐマサキに、けれどもシュウは一抹の寂しさを感じずにいられなかった。鳴かせたいと思ったのはシュウであった筈なのに、いざそうなると不満が募る。シュウはマサキと堕ちてゆきたいと願ってはいたが、彼に容易に堕ちては欲しくないのだ。
 ラングランの戦神に相応しくあって欲しい。
 |象徴《シンボル》とは気高く、侵さざるものだ。その過分に表層的なイメージを、マサキ=アンドーという少年は悉く裏切った。直情的で直感的。そのくせ、時にドライなまでの割り切りをみせる……肉体関係を持っても変わることのない彼の輝きに、シュウはだからこそ打ちのめされてきた。
 彼はシュウに身体を開くことはあっても、心を開くことはないのだ。
 シュウは湧き上がってくる虚しさをぶつけるようにプラーナを揺らした。あ。短く悲鳴のような声を上げたマサキの身体を舐ってゆく。背筋を伝い上がって、盆の窪み。後ろ髪を掻き分けて口付ければ、気分が高まり切ったようだ。は、やく。と、喘ぐようにマサキが口にした。
 シュウは手をマサキの胸に回した。乳首を撫で回してやりながら、ここはいいのですか。と、尋ねる。それでまだ愛撫を受けていない箇所があることを思い出したようだ。言葉を詰まらせたマサキが、恨みがましさに満ちた視線をシュウに向けてくる。
 ああ、この目だ――。
 妬ましさで狂いそうになるボトルグリーンの瞳。自らの感情を誤魔化さない力の満ちた眼差しに、シュウの心は掻き乱された。
 感情的で向こう見ず。欠点を上げれば際限のないマサキは、けれども同時に隙がないくらいに完成された精神性の持ち主なのだ。机上の空論に過ぎない世界平和。幼子でも無理難題であることに気付ける理想を、彼は愚直にも叶えられると信じている。
 それは曇りのないガラス玉のように透明な信念だ。
 純粋で無垢なマサキは、性行為の間であろうと己の感情に正直だ。ただ欲望の向くがまま、刹那的に快楽を貪ってみせる。従属的に映るが、主体的。シュウが快楽に堕ちたマサキの姿を見ても満足しきれないのは、だからだ。
 シュウの肉欲に支えられた関係は、いつでも終わりと背中合わせだ。シュウが飽きれば終わる。だのに彼はそこに執着しない。
 求められれば応じてもみせるが、それはあくまでマサキ自身の意思だ。先刻のように、意に沿わない快感には臆さず抵抗してみせる。だから叩き潰したくなるのだ。シュウは暴力的な衝動が膨れ上がっているのを感じ取った。幾度、誇りや自尊心を踏み躙られようとも、水辺に繁る葦のように立ち上がり続けるマサキ。彼の逞しさは、シュウの自尊心を傷付ける。
「どうしたいのです、マサキ。私はどちらでも構いませんが」
 指先で乳首を摩ってやりながら問えば、我慢に限界がきたようだ。|挿入《いれ》ろよ。微かに脚を開いて、マサキが云う。
 わかりました。シュウはマサキの臀部を割った。そうして、躊躇わずにその後孔へと自らの男性器を埋めていった。






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