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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

エルドラド:序章
※打ち直しです※
エルドラド 序章

 新世紀に入り、生殖能力の衰えた人類の人口は、減少の一途を辿っていた。
 世界統一を果たした地球は連合国家ラ・ギアスと名を変え、世界のトップたる頭脳集団を集めたシンクタンク、”国際科学連盟”を発足。彼らは“人類の黄昏”という最悪の事態を避けるべく、成人した全ての人類に精子と卵子を提供させ、試験管ベビーを作り出し、それを空中都市において育成する”人口統制プログラム”を発動した。
 ”エルドラド”と呼ばれる空中都市には、試験管ベビーだけではなく、様々な事情で親元を離れなければならなくなった子供たちも収監された。彼らはそこで、就学から職業選択に至るまでの期間、徹底した教育プログラムを受け、地上に降りてくる。
 自然に反する生殖プログラムに異論を挟んだ者もいたものの、下がり続ける人口を一気に右肩上がり転じさせたプログラムは、多くの人類には概ね好意的に受け入れられているようだった。
 しかし時として、親元を離れた子供たちは、就学や職業選択の自由までもを管理されるのを嫌がってだろう。行政の目を盗んでは非合法な職に就き、大人になるまで隠れては、行政から派遣される”追手”から、自身を遣り過ごすこともあった。
 マサキもそのひとりだった。
 大規模に行われる”狩り”と呼ばれる行政の児童捕獲は、人口管理プログラムを支持する人類からしても、決して快くは受け入れられないものであったようだ。エルドラドで生まれ育った大人たちが、総じて、牙を抜かれた獣のように大人しくも聡明で、しかし控えめながらも闊達だったこともあったからだろう。そこには陰謀を感じさせる”何か”があると、行政を恐れない地上育ちの大人たちは口はばったく言ったものだ。
 マサキの失われた両親もそうだった。
 だからこそ、その両親を失ったマサキは逃げた。逃げて、非合法と呼ばれるそうした職に就いて、大手を振って往来を歩ける成人となれる二十歳のときを静かに待っていた。だというのに――。

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