連休も終わりに近付きました!
と、いうことで、
持ち帰って参りましたSSを無事に完結させてくれるリクエストを募集します。
<リクエストのルール>
・書き出しと終わりの一文を募集します
・両方セットで拍手でお投げください
・どんな文章でもでも可
・但し一文ずつでお願いします
以下、重複する話もありますが、診断メーカーを使って書きました連作です。
この続きを書きます。宜しくお願いいたします。
と、いうことで、
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・どんな文章でもでも可
・但し一文ずつでお願いします
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この続きを書きます。宜しくお願いいたします。
<密やかな愁苦>
言葉が見つからなかった。
これまで当然のものとして受け入れていた筈の事実を、何故今更に自分は認め難く感じているのか。思いがけず感じてしまったいたたまれなさに、次の瞬間。マサキは咄嗟に建物の影へと身を潜ませてしまっていた。
自分は何をしているのだろう。自らの行動に疑問を感じながらも、足を止めて、暫く。マサキは身動きもままならない緊張感に晒されながら、彼らが目の前を通り過ぎ去るのを待っていた。
鼓動はまるで銅鑼のようだ。胸を乱暴に叩いては、ただ立っているだけのことさえ難く感じさせる……顔を合わせるのが嫌なら、このままこの場を立ち去ればいいだけのこと。そう思いもしたものの、だのに鉛のように重い足は、マサキが場所を変えることを許してはくれないのだ。
王都から少し離れた郊外の街。気分転換を求めて足を運んだマサキは、何を目的にするでもなくそぞろ歩いていた大通りで、人いきれの中に見知った顔を認めた。遠目にしても目に入る長躯は、人混みの中にあっても頭一つは抜け出ていた。その表情は長く伸びた前髪に隠れて見えなかったものの、きっと彼のこと。今日も今日とて、鼻持ちならない取り澄ました表情をしているに違いない。
またかよ――。繰り返される偶然の邂逅に、マサキ自身も思うところはあったものの、きっと行動範囲が被ってしまっているだけなのだ。そう思い直して、さてどうするか。このまま真っ直ぐに進めば、そう時間が経たない内に、彼とまともに顔を合わせることになる。かつてのような蟠りはなかったものの、挨拶だけで済むほどの間柄でもない。だからといって、共通の話題がある訳でもないのだから、マサキがそれ以上前に進むべきか悩んでしまったのも無理なきこと。
かといって、ここで踵を返すのも癪に障った。結局、前に足を進めるしかないのだと、マサキは諦めにも似た境地で、一歩、二歩。なるべく彼の顔を視界に収めないようにと、店先に視線を向けつつ歩もうとして、それでも無視しきれない何かに突き動かされるように顔を戻したその瞬間に。
目に飛び込んできた彼の表情に、言葉を失った。
穏やかな笑みだった。彼はその顔立ちもあってか、日頃の表情には険があるように感じられるものが多かったものだが、それを一切感じさせないどころか、別人かと見紛うまでに柔らかい。そんな表情も出来るのだと、初めて目にした彼の表情にマサキの胸は騒ぎ立った。決して短くはない付き合いでありながら、自分には知らない彼の表情がある。その現実は、マサキを衝動的に行動させるのに、充分に効果を発揮した。
どうやら目の前の何かを見守っているらしい。彼の温かな眼差しの先にあるものを見たいと思ってしまったマサキは、僅かに身体を置く位置をずらして、人波の奥へと視線を通した。
そして、それを見た。
寄れば騒ぎ立てるだけだと思っていた二人組。サフィーネとモニカ。決して仲良くとは行きそうにない二人は、こちらもマサキが初めて目にするかのような気安い表情で、恐らくは女同士のこと。そうした共通の話題に花を咲かせながら、店先の商品を覗いて見て回っているようだ。
そう、だからこそマサキは、その瞬間に言葉を失い、冷静さを欠いた行動に出てしまったのだ。
当たり前だ。
彼らが行動を共にするようになってから、どれだけの年月が過ぎただろう。そう自分に云い聞かせてみても、失われた落ち着きは取り戻せそうにない。マサキは建物の影に身を潜めたまま、何故自分がこんなに苦しいのか、その理由に思い至れずに。尤もらしい言葉が浮かんでこない自分の感情にもどかしさを感じながらも、それでもその場に留まり続けるしかない。
やがて、数メートル先の大通りを通り過ぎてゆく三人を横目に大きく息を吐いたマサキは、それでも動かない自らの足に――、ただ、途方に暮れるしかなかった。
※ ※ ※
<止まない雨>
※ ※ ※
<止まない雨>
心の中では泣いていた。
多分、そう、恐らく。泣きたかったのだ。けれども、吐息は熱くなれど、瞳には一滴の涙さえも浮かぶことはなく。何故、こんな気持ちに自分がならなければならないのかと思いながら、突然に振り出した雨の中でマサキはひとり、往来を駆けてゆく人の波に逆らうように、重い足を引き摺って歩いていた。
髪を、服を、頬を濡らす雨。泣いてしまうのに、こんなに都合のいい天候もない。わかっているのに、滲むことのない瞳。もしかしたら、瞼を閉じてみれば涙が零れ落ちるかも知れない。いたたまれないほどの空虚さを感じながら、目を閉じる。けれども涙は出なかった。
仕方なしに顔を上げて、傘を差す人が人まばらに残るまでになった通りに目を遣る。どこに行こう。ほんの少し前まで、暇を潰す足しになればとそぞろ歩いていた大通り。とはいえ、ここまで雨に濡れてしまっては、何処かの店で雨宿りという訳にも行かず。
さりとて、使い魔二匹に番を任せている自らの足、風の魔装機神《サイバスター》に戻れるような気分ではなく。
感じている空虚さの意味を、そして、涙を流したいと望んでしまうほどの悲しみの意味を、当てもなく歩きながらマサキは考える。たった数分前に目にしたばかりの光景の何に、自分はここまでのショックを受けているのだろう。シュウにはシュウの、マサキにはマサキの日常がある。そのぐらいのことに思い至れないほど、自分は幼くない筈だ。現にこれまで、その事実に何かを思うことなどなかった。
ただただ、虚しい。そして、悲しい。
彼女らとシュウと、自分とシュウと、付き合いの長さで云えば、自分の方が短いのだ。ましてや命の遣り取りを経た仲。友人、或いは仲間として肩を並べるには、抱えてしまった過去が重過ぎる。けれども、ただの知り合いと、切って捨てることも出来ない仲。
――馬鹿馬鹿しい。
そう強がってみせたところで、胸に空いた穴が埋まることもなく。
時間の長短で付き合いの深さが決まる訳でもなければ、経験した過去の重みで決まる訳でもない。そんなことはマサキにとてわかっているのだ。人と人との結び付きは、結局のところ縁と相性でしかない。彼女らにはそれがあり、自分にはそれがなかった。それだけのこと。
だのに自分は何故、こんなにも苦しい思いをしているのだろう。
降り注ぐ雨は服を通して肌に届くまでになっている。早く濡れた服をなんとかしなければ、身体が冷えてしまうことだろう。マサキは取り敢えず街路樹の下に身を寄せることにした。
心の穴は埋まりそうにはなかったけれども、この程度のこと矢折れ力尽き果てては笑い種だ。自らを叱咤しながら、辿り着いた街路樹の幹。大きく息を吐いて凭れかかったマサキは、そして髪から頬に伝う冷たい雨の雫の感触に、泣ければよかったのに。そう小さく呟いた。
※ ※ ※
<その手を掴めない>
※ ※ ※
<その手を掴めない>
あの日もこんな風に、突然の雨に晒された。
具体的にいつとは思い出せなくなってしまったぐらいに過去の話だ。うららかな陽気に誘われて、マサキが公園のベンチで眠ってしまったあの日。激しく頬を叩く水滴に驚いて目を開くと、いつの間にか空に流れ込んだ厚い雲の群れが、ざあざあと音を立てながら強く雨を降らせているところだった。
急いで公園を出て、手近な建物の軒下に身体を収めた。
中々弱まらない雨足に、そろそろ濡れるのを覚悟で軒下を出るべきかとマサキが焦れ始めた頃、少し離れた通りを見知った長躯が通り過ぎたように見えた。
傘に隠れて見えない顔。けれども彼らしさが窺える衣装。何処かで買い求めたと思しき真新しい傘を差して、ゆったりと雨の街を往く彼は、直ぐそこで濡れた身体を休めているマサキの存在には気付かなかったようだった。やがて建物の合間に消えて行った後姿に、マサキは何故か物足りなさを感じたものだった。
そこまで思い出したマサキは目を開いた。
大きく葉を繫らせている街路樹は、その隙間から雨の雫を滴らせたものだ。それでも動かそうと思えない足。決して居心地のいい場所とは云えない場所に、雨避けの役割を求めてしまったマサキは、直ぐそこに幾らでも軒下のある通りにいることはわかっていた。けれども、濡れ鼠と呼ぶに相応しいまでに雨を含んでしまった衣装。幾人もの人々が雨から逃れて身体を休めているその場所に、だからこそマサキは足を踏み入れるのを躊躇ってしまった。
どうしようもなく混乱している自分の姿が、濡れた衣装に現れている気がした。
そのみっともない姿を、間近で他人の目に映したくない……そろそろ冷え始めた手足。替えの服は積んである。諦めてサイバスターの許に戻るべきだろうか。ようやくそこまで考えが及ぶようになったマサキは、騒々しい二匹の使い魔と顔を合わせる気まずさやいたたまれなさを思って、中々一歩を踏み出せなかった足。それをそろりと街路樹の外に出してみた。
「もう少し、雨足が弱らないもんかな……」
あっという間に靴の中にまで染み込んで来る雨。どうせここまで濡れてしまったのだ。長い距離をサイバスターまで、降りしきる雨に打たれながら戻るのも一緒だろうに。わかっていても、マサキは雨の中に出られない。ただ、空を流れゆく重苦しい雲の群れが、まるで自分の心のようだと感じるぐらいには、心に抱えてしまった空虚さが薄れつつあるようだ。ゆっくりと動き始めた己の思考に、マサキはほうっと大きく息を吐く。
そうして、顔を上げて雨の街と向き合う。
心なしか、傘を差して行き交う人の数が増したように思える。きっと、街に溢れるいずれかの店で傘を手に入れたのだろう。ビニール傘が数多く見られる中、いかにも女性らしい色合いの傘がひとつ。人の流れに逆らうように、マサキの許に近付いてくる。
マサキ、と名前を呼ばれるより先に、それが誰であるかマサキは気付いていた。
「風邪を引きますわ。取り敢えずはこの傘を使ってくださいませ」
差し出された傘を躊躇いがちに受け取って、すまないなと口にしながら、マサキは辺りを窺った。いつ自分の存在が彼らに知られてしまったのだろう。焦る気持ちを覚られないように、開いた傘の下。視線をそうっと滑らせて。
少し離れた道の上に、頭ひとつ抜け出た彼の姿。
先程見せていた穏やかな笑顔を微塵も感じさせない巌のような表情。眉を顰めているようにも映る。あんな風に笑えとは思わなかったものの、もう少しばかり穏やかな表情を向けてくれてもいいものを。彼のその表情に自分と彼の距離が現れているような気がしたマサキは、いたたまれなさに咄嗟に傘で顔を隠してしまっていた。
「サイバスターで来ているのでしょう? 身体が冷え切らない内に戻ってくださいね、マサキ」
耳に届く彼女の言葉に、マサキは頷くのが精一杯だった。
そのまま彼の許に小走りに駆けて戻って行く彼女の背中を見送る。そして、マサキもまたその場を立ち去ろうとして、はあ、と重苦しく息を吐いた。
帰り道はもう思い出せなかった。
※ ※ ※
以上になります。
重ねてお願い申し上げますが、リクエストのほど宜しくお願いします。
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以上になります。
重ねてお願い申し上げますが、リクエストのほど宜しくお願いします。
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