一生悩んでて欲しい!
この葛藤よ!BLの醍醐味なのよ!一生悩め!そして赦せ!そして溺れろ!!!!
いかがわしさの本懐はここにこそありなのよ!
そんな回になり申した。全然甘くない展開ですが、この後甘くなりますのでシクヨロ!!!!
この葛藤よ!BLの醍醐味なのよ!一生悩め!そして赦せ!そして溺れろ!!!!
いかがわしさの本懐はここにこそありなのよ!
そんな回になり申した。全然甘くない展開ですが、この後甘くなりますのでシクヨロ!!!!
<チョコレイトキス>
「バレンタインのプレゼントにあなた自身とは、随分と贅沢な贈り物ですね」
「そういうつもりじゃ、ねえよ……」
「私にとってはそういう意味だということですよ」マサキの耳に口を寄せたシュウが囁きかけてくる。「聖人バレンチヌスには感謝をしなければ。彼のお陰で今日という日は特別な意味を持つ日となったのですから」
マサキは目を細めた。腰に響くテノールボイスが、ぞわぞわとした感触とともに肌の裏側を震わせる。
マサキは腰を浮かせた。
平時にはさして意識もしない声が、こういった時には――いや、こういった時だからこそ、とかく淫猥に感じられる。マサキはシュウの丹念な舌先での愛撫に、自分の理性が次第に追い詰められてゆくのを感じていた。耳朶を食まれれば、次は耳孔。耳孔に舌を挿し込まれれれば、次は耳介。耳介を舐られれば、盆の窪。次いでうなじから首筋へと滑ってきたシュウの舌に、ああ……、と、マサキは溜息混じりの甘ったるい声を放っていた。
普段の自分が発する声とは別人の様相を呈している喘ぎ声。気恥ずかしい。耳に飛び込んできた自身の喘ぎ声に、マサキは照れを覚えもしたが、堪えようと思って堪えられる衝動でもない。
時間の経過とともに薄らいでゆく理性に、いずれマサキの正気は完全に奪わてしまうのだろう。そうなれば見栄だの自尊心だのといったつまらない意地に囚われることもなくなる。自身の立場や誇りといった言葉で誤魔化してはいるものの、マサキは本音の部分では、シュウに与えられる快感に溺れ尽くしたいとも思っているのだ。
泣き叫ぶようにして彼にしがみついて快感を貪った記憶が積み重なった分だけ強まってゆく思い。シュウに自分を曝け出すことを知ってしまったマサキは、日頃、魔装機神の操縦者として肩肘張って生きることを余儀なくされているからこそ、彼に心が惹かれていくのを止められなくなってしまっていた。
――ああ、あ。シュウ、や……。
ややあって脱がされ始める服。そろそろと腹に溜まり始めた欲望が、次なる快楽を求めている。腕を上げて。彼の言葉に腕を上げたマサキは、もしかすると今日こそ自分はシュウに奪われてしまうのではないかと、混濁し始めた思考の向こう側で思った。
何かに急かされているかのようにマサキの口唇を奪ってきた男は、それにマサキが慣れを見せ始めるや否や、それがさも当然の権利であるかのようにマサキの身体に触れてくるようになった。
胸を弄られ、双丘を撫でられ、性器を扱かれる。
そういった風に自身の身体が扱われる日が来るとマサキは思っていなかったが、けれどもそれも当然の成り行きだと納得出来る程度には、彼の気持ちを汲み取ってきたつもりだった。むしろ、そうむしろ、マサキとしては想像だにしていなかったそれらの行為に反応をみせた自身の身体にこそ途惑いを覚えたものだった。
シュウの愛撫で呆気なく射精に至ってしまった事実。それはシュウに自信を与えてしまったのやも知れない。
実際、シュウはマサキの身体を丁寧に扱った。自身の欲望を果たすよりもマサキの満足が先と、気恥ずかしさに顔を背けるマサキの表情を伺いながら全身にくまなく愛撫を施してくる。今彼が辿っているマサキの肌はその中でも特にマサキが強い反応をみせたところばかりだ。
だからマサキは、先々に待ち受けているものが何かをわかっていながらもシュウに身体を任せてしまった。
乳首を抓まれれば背中が反れ、双丘を撫でられては腰が震える。性器に至っては何を況《いわん》や。身体の芯から蕩けるような快楽が滲み出してくる。それはマサキの常識を書き換えた。必ずしも自分が誰かに与える立場でなくともいいのだと。
それまでの人生で経験したことの刺激――未知なる愛撫を、まるで待ち受けていたかのように反応する己の身体。それは回数を経るにつれてより顕著となり、やがてはマサキの口唇から喘ぎ声を洩らさせるまでとなった。
当然マサキは困惑した。自分の身体はどうなってしまうのか。
不安に押し潰されそうになりながらも、マサキはそれをシュウに訴えることは出来なかった。それはつまらない自尊心がマサキに牙を剥いたからだった。魔装機神操者としての自分、剣聖としての自分。仲間とともに歩んできた道を、最初に派手に塞いでみせたのはマサキが身体を委ねているこの男であるのだ。
その感情に素直に、シュウに怖いと縋れていられればどれだけ楽だっただろう。
先に進むのが怖いのだと云えればどれだけ。
そもそもマサキはシュウとの行為に不快感を感じている訳ではなかったのだ。彼の指や舌が肌に触れる度に、視界が桜色に染まる。眩暈を覚えるほどの高揚感。浮遊感に包まれる身体は、果てのない宇宙を彷徨っているようだ。
身体が満たされると、人はこういった精神状態に陥るのだ……自慰では決して覚えることのない充足感。だからこそ他人の温もりを覚えてしまったマサキは、後戻りの出来ない道に足を踏み入れてしまったことに恐れを感じてしまった。
これ以上、シュウに溺れてしまいたくない。
一線を超えてしまいながらも、馴れ合うことはしない。彼と距離を保った付き合いを続けているのは、マサキの精一杯な――そして最後の抵抗でもあるのだ。
「足を抜いて、マサキ」
シャツを脱がされて暫く。上半身を余すところなく舐られたマサキの腰にシュウの手がかかった。
ゆったりとした手付きでジーンズを摺り下ろし始めたシュウが、マサキに自らそこから足を抜くように求めてくる。今日こそ彼は自分を奪うつもりではないだろうか。次第に強まってゆく予感に躊躇いながらも、与えられる快感に対する期待が勝った。
マサキは膝に溜まったジーンズから足を抜いた。
次いで下着。これもまたジーンズ同様に足を抜いたマサキに、同意を得た気分であるのだろう。シュウの口唇が腿へと寄せられた。ひくりと再び震える身体。マサキの股間では濡れそぼった男性器が、皮を突っ張らせてそそり立っている。
苦しくて苦しくて堪らない。
楽になりたい。そう思うも、それを口に出すのはちっぽけな自尊心が許してくれそうにない。マサキは赤く染まった顔を両腕で覆い隠した。とうに滲んでしまっている視界の向こう側に、薄明りを放っている天井が広がっている。
――これ以上、自分の身体に対するシュウの執着心を強めたくない。
彼はマサキの全てが欲しいのだ。心も身体も、地位も立場も。全てをひっくるめたマサキ=アンドー、或いは安藤正樹という人間を手に入れたがっている。だからこそ、マサキとしては決定的に彼に奪われるのを避ける為にも、今の関係に留まっていたかった。
だのに裏腹な心。後ろ髪を引かれるような思いに駆られるがまま、マサキは幾度シュウに身を任せてしまったことだろう。欲望に溺れては、自己嫌悪に沈む。その繰り返し。いつしかマサキは、シュウの一線を超えたスキンシップに慣れを感じるようになってしまっていた……。
「ほら、脚を開いて。大丈夫ですよ、マサキ」
口付けを幾度も繰り返しながら、シュウがマサキの足を開かせてゆく。何が大丈夫なもんか。双丘の奥に吹きかかる吐息にマサキは喘いだ。ちろり――と、蕾に触れてくる舌先。それがゆるりとひだを割って、マサキの後孔の中へと潜り込んでくる。
「や……馬、鹿。舐めるな……っ」
一瞬にして力が抜けきった両脚に、マサキは最後の抵抗を試みる。シュウの舌に舐め回される度に、熱を帯びてゆく後孔。どうして。緩く滲み出てくる快感は、彼の忍耐力の表れでもあったけれども、マサキにとっては自身の男性性に疑問を突き付けられている状態でもある。
どうして、こんなに。
首を振って口唇を強く結ぶ。声を洩らしたくないのに、ふと気付けば口唇が開いてしまっている。あ、ああ。シュウ。マサキはベッドに爪先を立てた。やだ、やだ。よりいっそう膨張したように感じられる自身の男性器が、視界の端で頭を揺らしている。
PR
コメント