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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

冬が来た(後)
今年のクリスマスはこれでいいや!(満足)

エロは入れられませんでしたが、いちゃいちゃする彼らが書けて幸せです!
いやー、今日は悩ましい事態に陥ってしまっていて、心がどんよりしていたんですが、これで晴れましたね!超☆ご機嫌ですよ、今のわたくし!!!

拍手、コメ、有難うございます。感謝しております。
今日は時間の都合でこの作品のみの更新となりますが、明日こそ!頑張りますので宜しくお願いします。では、本文へどうぞ!


<冬が来た>

 玄関をドアを開くなり、我先にと二匹と一羽の使い魔がリビングに飛び込んでゆく。エアコンの効いたリビングは、魔法生物である筈の使い魔たちにとっても過ごし易い環境であるようだ。ソファの上にクロ、テレビ前のラグの上にシロ、そして書棚の上にチカと、彼らがめいめいに好きな位置に陣取るのを見届けたシュウは、コートを脱ぎながら、そろそろ湯が張り終わっているだろう風呂に入るようにとマサキに勧めた。
「お前は入らないのか」
 ダウンジャケット、マフラー、イヤーマフ。残った防寒具をまとめてハンガーに通して、リビングの壁にかけたマサキがシュウを振り返る。一緒に入ってもいいのでしたら。シュウが云えば、マサキは冷え切ったシュウの頬に手を這わせてきながら、「纏めて入った方がいいに決まってる。一緒に温まろうぜ」
 彼からの誘いとあっては断れる筈がない。ええ。と、シュウが頷けば、「その前においらたちのマフラーを外していくんだニャ」とシロが声を上げた。
 温かい室内に入ったことで、首周りが熱くなってきたようだ。マサキと手分けをしながら彼らのマフラーを外してやったシュウは、「お熱いことで! 気長にお戻りをお待ちしてますよ!」と、嫌味とも皮肉とも付かないチカの言葉に送られながらバスルームへと向かった。
 ダウンジャケットの下は軽装であったようだ。さっさと服を脱いで先にバスルームへと入って行ったマサキに物惜しさを感じつつも、この寒さだ。一刻も早く温まりたいのだろうと自身を納得させ、シュウは服を脱ぎ続けた。汗で肌に貼り付いた衣装は、脱ぐのに手間がかかる。そこから遅れること二分ほど。シャツの下に着込んでいた下着類を脱ぎきったシュウは、ようやくバスルームに入った。
「洗わせてはくれないの」
 既に髪を洗い始めているマサキに声を掛ければ、来ない方が悪い。と、笑った彼がシャワーヘッドから噴き出す湯の中へと頭を突っ込んでゆく。そしてシャワーを掴むと、振り向きざまにその湯をシュウに浴びせかけてくる。
 マサキ。声を上げるも、彼の攻撃は止むことがない。シュウはあっという間に濡れ鼠となった身体に、額に貼り付いた髪を払った。
「水も滴るいい男ってな」
 今にも口笛を吹き出しそうなぐらいの機嫌の良さ。余程、珍しい気候に胸を弾ませているのだろう。続けてスポンジにボディソープを含ませたマサキに、「遊び足りないのですか」シュウはマサキが手にしていたスポンジを取り上げて、ほら、と彼の腕に手を伸ばした。
「何でだよ?」
 尋ねられた言葉の意図が掴めなかったようだ。きょとんとした表情でいるマサキに、「楽しそうだからですよ」彼の手を取ったシュウは、シャワーの湯が珠となって浮いている彼の肌にスポンジを滑らせた。彼の楽し気な様子は、それを目にしているシュウの心を穏やかにしてくれる。そう、子どもじみた遊びですらも輝ける思い出と化すほどに。
「そりゃあ、な。こっちに来て初めての雪だ。嬉しくない筈がないだろ」
 腕から肩、肩から首、そして背中と彼の身体を洗ったシュウは、その言葉に微笑み返してから、「前も洗っていい?」マサキに訊ねた。
「別にいいけど、変なことはするなよな」
「嫌なの?」
「落ち着けないだろ。雪遊びの後の風呂ぐらいはゆっくり浸からせろ」
 ともに風呂に入る度に性行為に持ち込まれることに思うところがあるのだろう。胸から腹へとスポンジを這わせてゆくシュウにそう答えたマサキが、シュウの手が腿を伝い始めるのを見下ろしながら、けれども小声でそうっと続けた。
「その後でだったら、考えてやる」
「なら、後でベッドルームに行きましょう」
 こくりと頷いたマサキの臀部と足を洗い上げたシュウは、スポンジをマサキに手渡しながらそのこめかみに口付けた。洗い立ての髪の香りが鼻に心地いい。日本人らしいしっとりとした毛質を頬に感じながら、シュウは何度もマサキのこめかみに口付けた。
「後でって云っただろ」
「このぐらいは許してくれてもいいでしょうに」
「お前の場合、そのついでにってことが多いんだよ」
 肩に胸、腕と彼の手で鼻歌混じりに洗われてゆく身体。どうやら相当に機嫌がいいようだ。不埒な行為に及んだ割には、それをさして気にする様子もないマサキの態度に、シュウは衝動的な欲望を感じずにいられなかった。
 今の彼はこのままベッドに連れ込みたくなるくらいに愛くるしい。
「……それ以上、何かしたら絶交するからな」
 そう思えば反応してしまうのが男の性だ。それにマサキも気付いたようだった。シュウの股間に目を落としたマサキが溜息混じりにそう口にする。
 ちゃんと我慢しますよ。シュウは笑った。こうと決めたら譲らないのはお互い様だ。それに、ラ・ギアスに来て初めての雪に浮かれているマサキの気分を損ねたくはない。機嫌の良さが積極性に比例する彼は、こういった時ほどベッドの中で情熱的になる。
「この後で付き合ってくれるのでしょう」
「お前がちゃんと我慢したらな」
 腰から臀部、股間に脚。そして背中とシュウの身体を洗い切ったマサキが再びシャワーを手に取った。「ほら、流すぞ」身体に残った泡をマサキに流してもらったシュウは、今度はマサキの身体に残っている泡を自身の手で洗い流してやると、彼を先にバスへと沈めた。
 ――ゆーきやこんこ、あられやこんこ……
 落ち着いて湯船に浸かれているからか。滅多に聞けない歌が彼の口から零れ出る。
 ――ふってもふってもまだふりやまぬ……
 それを聴きながら髪を洗い流したシュウは、気持ち良さそうに手足を伸ばしているマサキを抱えるようにして、自分の身体をバスの中へと沈めた。ざぱあ、と溢れ出る湯が男ふたりの重みを表している。それが自身の幸福の総量を表しているような気がして、シュウはひとり静かに微笑んだ。
 ――はしれそりよー、おかのうえはー、ゆきもしろくー、かぜもしろくー……
 マサキの歌を聴きながらゆったりと湯に浸かり続けること暫く。シュウの胸に頭を預けて心地良さげに歌い続けていたマサキがついに歌うのを止めた。
「もう終わりですか」
「ネタ切れだ」
 そう云って笑ったマサキが、ふと視線をバスの斜め上に設置されている小窓に向けた。曇り硝子を半分ほど埋め尽くす雪。まだまだ外は雪が降り積もり続けているようだ。シュウにはグランゾンが、マサキにはサイバスターがあるからこそ、移動手段に困りはしないが、市井の民たちはさぞや困り果てているに違いない。
「これだけ降っても、直ぐにまたいい天気に戻っちまうんだろうな」
「そうでないと民衆が困りますよ。私たちにはこのぐらいの気候をものともしない足がありますが、彼らにはそれがない」
「そっか……そうだよな」
 今はこれだけ猛威を振るう雪も、温かいラングランの陽気が戻ってくれば呆気なく溶け去ってしまうのだ。シュウは窓の外に広がっているだろう雪景色を思った。マサキが作った猫だるま。この積雪では、明日には腰辺りまで埋まってしまいかねない。
「後でニット帽とミトンを回収しましょう。あのままにしておいたら雪に埋もれてしまいそうだ」
「いいよ。別に。そのうち溶ければ出てくる」
「雪が溶けるまでここにいるつもりですか」
「俺が帰ってたら、お前が回収しておいてくれよ。次にまた雪が降ったら使うからさ」
 湯を掬ったマサキが、それで顔を洗い流す。あったけえ。云って、顔を上げる。シュウとマサキの冷え切った身体はすっかり温まっていたけれども、だからといってベッドに急ぐでもない。シュウは幸福そうに雪の日の風呂を味わっているマサキを両の目にしっかと収めた。こんな風にリラックスしきっている彼が見られる機会はそうはない。そう思いながら、彼の身体を抱き寄せる。
 そのマサキの顔がふと何かを思い付いたような表情になった。
 あのさ、と口を開いた彼は、ラングランに来て初めての降雪で、今がそういったシーズンであることを思い出したのだろう。
「クリスマス、しようぜ。地上の暦に合わせてさ」
 まるで夢物語を語るかのような眼差し。どこか遠くを眺めている彼の心は、既に雪景色のクリスマスに有るようだ。
「その頃には雪もすっかり溶け切ってしまっていますよ」
「わからないだろ」マサキを抱えているシュウの手に、彼の手が重なった。「何が起こるかわからないのが自然だってな。もしかしたらこの雪が延々降り積もるなんてこともあるかも知れない」
 わかりました。シュウは頷いた。「ツリーの用意をしておきますよ」
 そのシュウの言葉が余程嬉しかったのではないだろうか。よし、上がるぞ。クリスマスの約束を得たマサキはシュウを振り返ると、彼にしては情熱的に口唇を合わせてきた。
 シュウはマサキのしたいようにさせることにした。
 口唇を吸い、舌を絡め、口腔内を余すところなく舐め、そしてまた深く口唇をあわせる。日頃はシュウのリードに任せがちなマサキではあったが、決して自ら求めるということをしない訳ではない。そう、この点に関しては、シュウの方が我慢弱かったからこそ、彼が消極的に映ってしまうだけで、マサキ自身にもシュウとの性行為に対する欲は存在しているのだ。
 それを感じられただけでも、雪の中、彼と雪合戦をした甲斐はあった。雪に浮かれるマサキ=アンドー。鼻歌混じりにシュウの身体を洗い、湯船に浸かって歌を歌い、そしてこうして積極的に口付けを仕掛けてくる。シュウは滅多に見られないマサキの姿を幾つも見られたことに歓びを感じながら、彼の口付けを受けた。
「……続きはベッドでな」
 最後に一度、シュウの口唇を啄んだマサキが、顔を上げるとシュウの耳元に囁きかけてきた。心なしか腹に当たっている彼の男性器が熱を帯びているように感じられる。ここでは駄目なの? シュウが揶揄い混じりに声をかければ、それは嫌らしい。素っ気なくバスから出て行ったマサキが、「ほら、行くぞ。これ以上浸かってたら身体がふやけちまう」待ちきれないといった様子で振り返る。
 シュウはマサキに手を伸ばした。
 手を掴んだマサキがシュウの腕を引く。マサキにバスから身体を引き上げてもらったシュウは、彼の後を追うようにしてバスルームを出ながら、これから長く続く冬がどういった季節になるのか。想像を巡らさずにいられなかった。




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