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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

夢の頂(2-前)
エロだ!

今度こそ即エロだ!

と意気込む@kyoさん。やっぱり上手くエロに持ち込めず。

今回はリクエストの「おぼっちゃんマサキと執事白河」です!書き始めたら舞台が全然違っちゃったんですけど、おぼっちゃんと執事であることに違いはないのでご容赦願いたく……

今回こそエロを頑張りますので宜しくお願いします!
では、本文へどうぞ!
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<夢の頂>

(二)とある資産家の館にて

 行きたくもない大学での講義を終えたマサキは、迎えに来た年若き執事とともに、お抱えの運転手が運転する車で帰路に就いた。とくに寄りたい場所もなければ、寄るべき場所もない。ありきたりな家庭に生まれ付いた同級生たちと桁違いの資産を誇る富豪のひとり息子では日常会話にすら齟齬が出る。友人らしい友人を持たないマサキは、心安らげる場所である自宅へと一刻も早く戻りたかった。
 お帰りなさいませ、マサキ様。
 なだらかな坂道が続く先。小高い丘の上にある巨大な洋館に帰り着くと、使用人たちが玄関ホールにてマサキの帰りを待ち構えていた。職務に忠実な彼らは気安い表情をマサキに見せることがない。揃って並ぶ能面のような無表情に吐き気を催しそうになりながらも、彼らに持ち場に戻るように伝えたマサキは、執事を従えたまま二階にある自室に上がって行った。
 投資家として名高いマサキの父親は、ひとところにじっとしていることがない。日々何某かの集まりに参加している彼は、今朝方、二泊三日のスケジュールで行われる会合に参加すべく家を出て行ったばかりだ。母親はとうにない。彼女はマサキが小学校に上がる頃に車の事故で呆気なく死んでしまった。
 マサキにとってのたったひとりの肉親は、成長したマサキには興味がないようだ。今となっては頻繁に家を空けては、マサキをこの広大な館に置いてゆく。使用人がいるとはいえ、広々とした洋館にひとりきり――マサキは使用人のひとりが扉を開いてくれるのを待って、豪奢に飾り立てられた自らの私室へと足を踏み入れた。黒檀のデスク、天蓋付きのベッド、レンガ造りの暖炉、眺めたところで理解出来ない絵画……幾度目にしても良さが見出せない家具や装飾品に、何度目とも知れない溜息が洩れる。
「本当に面白味のない部屋だ」マサキは背後を振り返った。
 独り言かと思ったのだろうか。執事からの返事はない。
 マサキは彼より持たせていた荷物を受け取った。大学の講義で使ったテキストにノート。ブックバンドでひとまとめにしたそれを、そのままデスクの上に放る。
「大事なテキストをそのように扱うのは如何なものかと」
 その言葉を無視してベッドに向かう。
 マサキの母親が亡くなった後に洋館に住まうようになった青年。どうやってマサキの父親と知り合ったのかも定かではない彼は、有名大学を首席で卒業すると、何を思ったか。続けて執事の養成学校に進んだ。どうやら彼はマサキの父親の援助を受けて大学に通っていたようだ。この家に恩返しをするのですよ。養成学校に進んだ理由をそうマサキに語って聞かせた彼は、養成学校を卒業すると、そのままこの家付きの住み込みの執事となった。
「脱がせろ」
 ベッド脇に腰掛けて、足を差し出す。マサキが小学生の頃からの付き合いである彼は、他の使用人たちが唯々諾々とマサキに従う中でもマサキに意見をするのを厭わない。先に勉強を済ませては如何です。彼は絨毯に跪いてマサキの足からゆっくりと革靴を脱がせつつ、あまり勉学に意欲的ではないマサキに釘を刺すように言葉を吐いた。
「後でな」
 脱がせた靴を揃えて立ち上がった彼が、ベッドに仰臥したマサキを見下ろして、眠るのですか。と尋ねてくる。まさか。マサキは自分でもつまらない顔をしていると思いながら、彼に向けて両手を開いた。
「まだ陽も高いというのに」整い過ぎた顔がマサキを見下ろしている。「夜になるのを待てませんか」
「お前が俺にそれを云える立場だと思ってるのか」
 切れ長の眦に、高く筋の通った鼻梁。薄く形の良い口唇がいいえと言葉を吐く。
 キィ、と年代物のベッドが、彼の重みに小さく音を立てた。
 彼はマサキの身体を横臥させると、その背に身体を寄り添わせ、拙速にもマサキのズボンを開いてきた。もうこんなにして。既に硬く反り返っている男性器に彼の手が触れる。マサキの股間を撫でながら囁きかけてきた彼は、そのままマサキの耳介を舐り始めた。
 18歳となった日の夜だった。
 成人したからといって何が変わるでもないと思っていたマサキに、マサキに興味が薄い筈の父親も流石に何かをしなければと思ったようだ。父親の投資仲間や家族が集められたパーティ。友人を呼べとも云われたが、呼べるだけの友人がいないマサキは拒否せざるを得なかった。
 方々で投資話に花が咲くパーティに、何の為のパーティなのかと思いながら壁の花となること暫く。
 投資仲間の家族たちの中にはマサキに興味をみせている者もあったが、それはマサキ自身に興味があるというよりは、巨額の富を有している投資家のひとり息子に対する興味でしかなかった。幼い頃から自身へのそうした扱いに慣れてしまっていたマサキは、積極的に人間関係を構築することを諦めてしまっていたこともあって、ただただ窮屈なその場から逃げ出すようにパーティ会場を後にした。
 ――この日を待っていたのですよ。
 既に使用人の大半が掃けていた館で、残酷にもそう口にして、書生から執事へと立場を変えた青年はマサキを犯した。
 犯されているのにも関わらず、覚えてしまった高揚感。小学生の時からマサキの側にいた青年に、マサキが心を許していなかったと云えば嘘になる。その彼に自分はここまで必要とされているのだ。彼の温もりに包まれながら、痛みにも似た快感を嫌という程味わったマサキは、それから度々寝所に忍んで来るようになった彼との行為に応じ続けた。
 それから一年半が過ぎた。
 今ではマサキ自ら誘いかけなければ行為に及ぶことのなくなった彼だったが、だからといってマサキが彼を手放せる筈がない。マサキは彼の手の動きに小さく声を上げながら、迫り来るその瞬間を待った。マサキの孤独な日常を癒してくれるたったひとりの人間である彼の肌の温もりは、夜の冷えた空気に良く似ている。それが次第にマサキの熱と混じり合って、確かな温もりと化してゆく。
「あ、もう、もう……っ」
 マサキは腰を跳ねさせた。どろりと吐き出された精液が、彼の手を滴ってゆく。
 けれども冷めやらぬ熱。行為の続きを求めるマサキに、彼は謹厳実直な執事としての表情を露わにしながら、続きは夜に――と、マサキの乱れた衣装を整えて立ち上がった。立場が強いのはマサキの方である筈なのに、一介の執事でしかない彼に翻弄されてしまっている。彼に心を乱されている自分が口惜しくて仕方がない。マサキは彼が去った後の自室で、ひとり眠りに就いた。


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