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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

残してゆくのなら
タイトルからは想像も付かないと思いますが、エロです。重苦しいエロです。
注意書きはそれだけです。



<残してゆくのなら>

 ベッドで長く交わった果て。膝に向かい合わせに腰を落としていたマサキが、射精後の虚脱感も覚めやらぬ内に、なあ――と、それまでシュウの肩に伏せていた面を上げてくる。
「もし、俺が死んだら」
 散々、欲に溺れた直後にしては不穏な前置き。けれども彼の眼差しは真っ直ぐで、逸らすことを許さない力強さに満ちている。
「お前、他の奴と絶対にするなよ」
「情の怖いことを云う」
 彼が何を思って突然に死後のことを口にし出したのか、シュウには予想も付かなかったが、激情家の一面を併せ持つ彼のことだ。生半可な気持ちで口にした言葉ではないのは明らかだった。
「また、そうやってお前は誤魔化そうとする」
「これは異なことを。あなた以外に欲しいと思った人などいないのに」
 シュウはクックと声を潜ませて嗤った。どうだか。顔を背けてみせたマサキの不貞腐れたような横顔。そういった表情でさえも愛おしくて仕方がないのに、彼を喪った程度のことでどうして心変わりをしたものか。
「私はあなたが相手だと、心を開いて見せたくなりますよ。そうすれば私の言葉に嘘偽りがないことが理解してもらえることでしょう」
「そういうとこなんだよな。お前が信用ならねえの」
 腰を上げたマサキの内部《なか》から、ずるりと収めたままだったシュウの男性器が滑り出てくる。物寂しいと思ったのも束の間。シュウの膝から降りたマサキが、顔を下げた。硬い彼の手のひらがシュウの男性器を掴む。
 まだ、するの。シュウが尋ねれば、舌を陰茎に這わせ始めたマサキが「噛み切ってやる」と、不敵な笑みを浮かべながらシュウを見上げてきた。
「あなたを喪うぐらいでしたら、その方が余程幸福ですよ」
「どうだか」
 他人の恋心に鈍感だった少年は、シュウとの付き合いの中で何を学んだのだろう。いつしか手慣れた様子でシュウの男性器を舐め取るようになったマサキは、先程までの行為の最中、珍しくもシュウに向かって好きだと繰り返していた。
「俺を忘れて、他の奴に手を出すんじゃねえの」
「信用のない」
 自らの恋心を理解《わか》らせる為に言葉を尽くした分だけ、マサキはシュウの本心を疑ってしまうようだった。そんな歯の浮くような台詞、良く云えたよな。そう口にする彼は驚くほどの無表情を晒してみせたものだ。
 きっと、このくどい云い回しが彼を疑心暗鬼に陥らせてしまうのだろう。そう考えたシュウはシンプルに愛を囁くことにした。愛している。愛している。愛している。マサキの代わりになれる人間などこの世に存在していなかったからこそ。
「愛していますよ、マサキ」
「わかってるよ」
 顔を埋めてシュウの男性器を貪っている彼の髪を梳きながらそう伝えれば、どこか怒ったような調子で返事をする。何が彼を不機嫌にさせているのやら。シュウは小さく溜息を吐いた。
 時にシュウが理解出来ないような理由で怒り出すマサキ。彼の世界は常に己を中心として回っているようでもあったし、まだ見ぬ他人さえも懐に収めて回っているようでもあった。だから、今の彼の機嫌が悪い理由も、きっとシュウの与り知らぬ出来事が原因であるに違いない。そう思ったシュウは、マサキの機嫌を脇に置いて、話の続きを口にした。
「信じてはくれないの」
「それとこれとは話が別だ」
「私はあなたに自分の行いを疑わせるようなことをしてしまったようですね」
「そうじゃねえよ」
 幾度も舌を這わせ、そして口付けを繰り返してくるマサキからの刺激で熱くなった男性器。こうなれば彼の中に収めたくなるのはシュウの性だ。ねえ、マサキ。シュウはマサキを促した。そこに伏せて。思ったよりはすんなりとベッドの上に身体を伏せたマサキに、意外と思いながらもシュウは折り重なった。
 膝を立たせて、双丘を割る。
 体内に注いだ精液が溢れ出ている。濡れて口を小さくを開いている蕾に、シュウは再び男性器を収めてゆく。
 はあ……と、熱の篭った溜息を洩らしたマサキが、「見てるからな」と云った。どうやら先程までの会話を忘れてはいなかったようだ。どうぞ、お好きに。シュウがそう言葉を返すと、お前の枕元に立ってやる。本気とも冗談とも取れない台詞が飛び出してくる。
「そういった形でもあなたと会えるのでしたら、本望ですよ」
「なら、会いに行く。絶対にだ」
「むしろ、そのまま連れていって欲しいですね」
 瞬間、ぴくりとその肩が震える。それは駄目だ。直後に吐き出された言葉は、残酷な束縛となってシュウの心を縛った。
 世界に愛され、世界を愛するマサキは、そこに生きる人間をも慈しんでいる。彼からすれば、自らに与えられた生を全うしないなどという不義理は、世界に対する反逆でもある。お前は、生きろ。確かにそう云い切ったマサキの腰がゆっくりと動き始める。
 はあ、ああ、ああ……。先程、達したばかりとは思えぬほどのよがり声。汗に濡れた身体がベッドの上、淫猥に蠢ている。シュウは彼の細い腰を抱え込んだ。一晩程度では足りない。彼と過ごす時間の短さをもどかしく感じたシュウは、いつか来る別離《わか》れを忘却するかの如く、一心不乱にその身体を突き上げた。




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