いや。やはりブランク後の連勤は身体に堪えるものですね。帰ってきて家事をして少し寝て、少しだけ起きて、普通に寝る。そんな感じです。
明日さえ乗り切れば、連休です。長く続いてしまったエロ話も片付けられるし、レビューもやれます。それを心の支えに頑張るのよ、私!(*●⁰♊⁰●)ノ
ぱちぱち有難うございます。メッセージも楽しく読ませていただいております。(〃ω〃)
そしてお詫びを。白と黒が正しいタイトルでしたので、そちらを先に。
そして逆バージョンを黒と白にさせていただきたく思います。
明日さえ乗り切れば、連休です。長く続いてしまったエロ話も片付けられるし、レビューもやれます。それを心の支えに頑張るのよ、私!(*●⁰♊⁰●)ノ
ぱちぱち有難うございます。メッセージも楽しく読ませていただいております。(〃ω〃)
そしてお詫びを。白と黒が正しいタイトルでしたので、そちらを先に。
そして逆バージョンを黒と白にさせていただきたく思います。
<白と黒>
何もすべきことがなければ、ひたすらに読書に耽溺し続ける。そんないつも通りの日常を送っているように見えたシュウの様子がおかしいとマサキが感じたのは、三日前の昼のことだった。
料理の腕は怪しかったものの、基本的にひとりで何でもそつなくこなしてみせる男は、生まれた家柄の良さも手伝ってか、読書の為にソファに座るときの姿勢ですらきちんとしたもの。背もたれに凭れている様に見えて、腰から背筋までしゃんと伸ばして座っている。
腰を落として身体をソファに預けきってしまうマサキとは、根本的に人種が異なるのだ。
そのシュウが、である。だらしなくソファに仰向けに身体を伸ばして、読書に耽っている姿をよく見せるようになった。偶に見せるぐらいのその格好で、日長、本を読み続けていることが珍しくなくなったのだ。
決して長逗留している自分に合わせてのことではないだろう。そう思ったマサキが、三日前の昼にシュウに訊ねてみたところ、倦怠感があるのだという。風邪なんじゃないか、とマサキが云えば、シュウ曰く、咳や発熱といった症状はないらしい。ただ、ほんの少し血圧が低下しているのだとか。
「免疫力が低下しているからだとは思うのですが」
「気を付けろよ。大人になってからの風邪は、性質《たち》が悪いからな」
思えばそのときに、何かしらの対策をしておいてやるべきだったのだ。何せこの本の虫は、一端、その虜になったが最後。日常生活をまとも送ることの一切を放棄するようになるのだから。
掃除も洗濯も煩くせっつかれなければしなくなったかと思えば、本人曰く、「生きる為に必要な栄養を最低限摂取すればいい」らしい食事など、マサキが用意してやらなければ三食全部抜いてしまうのが当たり前。風呂に入るのも億劫と清拭で済ませようとする。仕舞いには、着替えをせずにソファからベッドへ直行だ。
「お前はもう少し、俺に感謝すべきなんじゃないかね」
「衣食住足りなくとも、人間は生きていけるのですよ、マサキ」
思わずその頭を叩《はた》こうとしたところで、その手を引っ込めたマサキの忍耐力は、もっと評価されてもいいと、マサキは自分で思ったものだ。
そんな状態を放置し続けたからだろう。ついに今朝、シュウは風邪の症状を本格的なものとしてしまったのだ。
マサキがベッドの中で目を覚ますより先に、体調不良を感じ取ったらしいシュウは、マサキを揺り起こすと寝室から出て行くように云った。その熱っぽい瞳に、マサキが額を触ってみれば、猛烈に熱い。これはちょっとやそっとの熱ではなさそうだと、マサキが焦って訊ねてみれば、シュウ曰く、体温を計ったところ、三十九度を超えていたとのこと。
「だからあなたにうつさない為にも、寝室に立ち入らないで欲しいのですよ。今日中に下がるかはわかりませんが、もし、今日も泊まって行くというのなら、申し訳ありませんが、書斎かリビングのソファで寝てください」
「全く寝室に立ち入るなって話じゃないよな。看病だって必要だろう」
「食事と薬はドアの前に置いてください。解熱剤の買い置きが食器棚の中にある筈です」
そこでシュウは盛大に咽せた。いつもより更に低く聞こえる声。どうやら喉にまで症状が及んでいるようだ。「こういった状態ですから、あなたにうつすわけにはいかないのですよ。納得してください、マサキ」
仕方なく寝室を出て、キッチンの食器棚を覗いたマサキは、そこにあった総合感冒薬と解熱剤の消費期限を見て眉を顰めた。どちらも数年前に期限が切れている。
そういう男だ、シュウは。時にマサキが驚くほどのずぼらさ加減を露わにしてみせる。
薬を買いに行くべきか、それとも、医者を呼んでくるべきか。あの性格だ。大人しく医者に頼るような姿は見せないだろう。しかし――。マサキは少しばかり悩んで、不健康な生活を送っている割には健康を保っていたシュウのまさかの変事に、医者を頼らずに何を頼るのかと決心を付けた。
そうと決まれば支度だ。
起きてきたらしい。寝床としているリビングの梁の上から舞い降りてきたチカが、マサキの後をついて回っては、何があったのかと詮索すること姦しい。服を着替えながら、「お前のご主人様の一大事だ」とマサキが云えば、「鬼の霍乱じゃないですかねえ」とあっさり。とことん、周囲の人間だの使い魔だのに恵まれない男である。
「だってマサキさん。そりゃあご主人様だって人間ですよ。風邪のひとつやふたつひくこともあるでしょうよ。その都度、生きるか死ぬかの大騒ぎをしていたら、本当の大事にもちませんて。まあ、様子ぐらいは見に行きますよ。あたくし使い魔ですからね。風邪をひくなんてそんな馬鹿げた事態には陥りませんよ」
おほほ。と翼で嘴を覆って余裕綽々な態度のチカ。それでもそんなチカに後を任せるしかないのだ。マサキは使い魔たちとシュウを残したまま家を出て、一番近い街へ医者を呼びに向かった。
街から離れた郊外までの往診を受け付けてくれる医者を探すのに、マサキはかなり苦労したものの、昼になる前にはその医者を連れての帰宅を果たした。
チカから話だけは聞いていたらしい。思ったよりは素直に医者の往診を受け入れたシュウは、だからといってマサキを寝室に立ち入らせるような真似はしなかった。扉の間からちらと窺えた様子からするに、容体が良くないのは明らか。咳も酷くなっていれば、目の焦点も合っていない。後から医者に話を聞いたところ、熱は四十度に迫る勢いらしい。
薬と栄養剤を処方してもらったマサキは、医者を街に送り届けて、また家に戻る。とにかく何かを食べさせて、薬を飲ませなければ。だというのに。
「まあ、何て云うんですかね。妻の出産に狼狽える夫のような塩梅ですよね、ありゃあ。風邪ですよ、風邪。ただの風邪に大袈裟な」
二匹の使い魔《シロとクロ》を相手に、口の悪さを存分に発揮しているチカを、撃ち殺してやりてえ。そんな風に思いながら、食事の支度を済ませ、シュウに云われた通りに扉の前に薬や栄養剤と一緒に置いておく。
「シュウ、食事置いておくからな」
寝ているのだろうか? 返事がない。だったら少しぐらい覗いても罰は当たらないだろう。マサキは扉を開いた。
シュウはこちらに背中を向けるようにして、ベッドの中。窓際に顔を向けるようにして、僅かに身体を丸めて眠っている。マサキは食事を載せたトレーを運び込むと、ベッドの脇に置いた。医者の処方で落ち着いたのだろう。顔色が少し良くなったように見える。
汗に濡れて額に張り付く前髪を払い、ずり落ちている濡れタオルで顔を拭う。不意に、その手が伸びて、マサキの手を掴んだ。――か……あさま……。そう呟いたように、マサキには聞こえた。
マサキはその手を握り返して、暫くその場に立ち尽くしていた。
あれだけの目に合って尚、こういった時には母親を求めてしまうものなのだ。その現実が酷く寂しい。マサキはそうっとシュウの手を離すと、ベッドの中に収め、何も見なかったことにして寝室を後にした。
結局、その熱が下がるのには、三日三晩を要した。
寝室の中の様子を窺うのをチカに任せ、マサキはシュウに求められた通りに、食事と薬と栄養剤を扉の前に置き続けることにした。見てはならないものを見てしまった気持ちと、シュウの肉親に対する嫉妬心がマサキを寝室から遠ざけたのだ。
恐らく、一度、マサキが寝室に足を踏み入れたのにシュウは気付いていただろう。けれども、体調が戻ったシュウがそれに言及することはなかった。敢えて云わないようにしているのか、それとも、マサキが寝室に立ち入っても気にしないつもりでいたのか。どちらでもいい。マサキはそう思った。
次こそ自分の名前を呼ばせてやる。
そんなマサキの決意を知ってか知らずか、今日もソファの上。読書に勤しむシュウの姿がある。今はそれで充分だ。マサキはその隣に座って、何をするでもなく、シュウにただ寄り添いながら、窓の外。今日も澄みやかに晴れ渡る空を眺めた。
.
.
PR
コメント