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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

DARKNESS MIND(4)
変な設定を作ってしまった所為で、ただエロでは終わらなく……
比較的真面目回。次回はちゃんとエロの予定。まだまだ続きます。
 
だってあれもこれもまだやってない!
それが終わってからですよ、この話が終わるのは!
<DARKNESS MIND>
 
 部屋にひとり残されたマサキは、床に脱ぎ捨てたままの服を着る気も起きず、濡れたシーツの上でブランケットに包《くる》まるようにして、横になっていた。
 頭は相変わらずぼんやりとしている。当たり前だ。狂気の沙汰だ。他人に自らの痴態を見られることを想像して達してしまっただけでなく、人前で我を忘れて好《よ》がってしまった。しかも、マサキはそういった自分に、後悔や屈辱といった負の感情を抱けない。それどころか、こうしてそれらの行為を振り返るだけで、体中のそこかしこが、シュウの愛撫を求めて騒ぎ出す。
 首まわり、腰まわり、足首だって、手首だってそうだ。疼いて堪らない。
 何でもない場所すら性感帯に変えてしまうあの愛撫。もっと、もっと欲しい。自分の中に確かに息衝いている欲望に、こんな生活に慣れてはいけない。自分は風の魔装機神の操者なのだ。そう言い聞かせることで、自尊心《プライド》を保とうとするも、マサキの思考を邪魔する何かは、それ以上マサキに深く考えることをさせてはくれなかった。
 何度目の思考停止状態に陥ったマサキは、|そ《・》|れ《・》を考えずに堕ちていけ――、とでも言いたげに、自身の身体の中で暴虐に荒れ狂う欲望を、どうすることもできぬまま。
 いっそう深くブランケットに包まる。
 ブランケットの中に沈み込むようにして、足の間に指を這わせると、マサキは自らの男性自身を嬲る。こうだっただろうか? それとも、こうだっただろうか?……シュウの指先の動きを真似ながら、彼が自分に投げかけた言葉の数々を反芻する。ああ、シュウ。溜息にも似た声が洩れた。
 濡れ始めた男性自身から指を離して、足の奥へ。散々、シュウの男性自身を受け入れた場所は、あっさりとマサキの指をも受け入れた。指を何本か埋めながら、これだけじゃ足りない。そう思いながらゆっくりと抜き差しを始める。じわり、と背中を這い上がる快感。それでも自分はこういった行為に快感を覚えずにいられないのだ。
 ――いく……、いく、シュウ……。
 吐息混じりに言葉を吐いて、燻っていた欲望を解放する。自らの手で受け止めたその精を、マサキは自分の口唇で舐めとった。
 ちらと室内に仕掛けられている盗聴器が、この声を拾ったのかが気になった。けれどもそれも少しのこと。どうでもいい。マサキは思った。自身の精を放ったことで、身体はその感情の収まりを見せ始めていた。
 休みたい。襲い掛かってくる虚脱感に猛烈にそう思った。ひたすらな眠りに就きたい。マサキはその気持ちのままに、眠りに落ちていった。
 
 暗く深い眠りの底から、ゆっくりと自分の身体が這い上がっていくのを感じた。ぱあっと明かりが点いたように、いつか行ったようでどこにも存在しない街や、いつか会ったようで見知らぬ他人たちの群れが、マサキの脳内に広がりを見せる。その世界をマサキはひとり歩き続けていた。
 何かを探している。自分はもうずっと何かを。その何かが何であるのか判然《はっきり》としないまま、急ぎ探しださなくてはならないものがあると焦りにも似た気持ちがある。その衝動に突き動かされるようにして、マサキは歩き続けていた。
 コンクリートジャングルの街の中央。スクランブル交差点に渓谷の如き深い亀裂が走っている。そこには一本のロープがかけられていた。先を往きたければ、このロープを伝えということらしい。
 探し物はこの先にある。確信めいた気持ちで、マサキはそのロープを掴んで前に進んでいった。するすると先に身体が進む。落ちて夢から覚めることはなさそうだ。現実的にもそんなことを考えた。
 直ぐに対岸に着く。へりを両手で掴んで、身体を地面に持ち上げる。足を斜面に引っ掛け、一気に地面へ。
 
 ――そういったあなただから放っておけないのですよ、マサキ。
 
 探しものはこれだ。目の前のシュウが差し出している手をマサキは掴んで立ち上がった。やっと見付けた。マサキは強くそう感じた。このシュウをマサキはずうっと探していたのだ。
 シュウがマサキの手を引いて歩き始める。マサキは黙ってその後をただ付いて歩いた。
 やがて、見覚えのある建物が姿を現した。あの安宿《モーテル》だ。ただひたすらマサキがシュウに玩具にされ続けた場所。だのに、行くのか? と、夢の中のマサキは聞く。シュウはただ微笑み返してみせただけだった。
 その次の瞬間、場面が突然切り替わった。
 コンクリートの床に寝転がっている裸の自分を、服を着たままのシュウが弄んでいる。身体を這い回る手が、夢を飛び越えて確かな感触を身体に刻んだ。マサキは、ああ、と、納得した。稀に、そう本当に稀に見ることがある五感を伴った夢。それを自分は今、見ているのだ。
 わかっているのに、身体の奥から這い出してくる情欲の炎が、夢を見ている側のマサキを放っておいてはくれなない。
 シュウの昂ぶりが欲しい。その凶器で体の中を思うがままに掻き回されたい。それは強烈な欲望だった。先刻の性行為を途中で中断させられてしまっていたマサキは、その消化不良感を自慰行為だけでは満たしきれずにいたのだ。だというのに、いつまで経ってもシュウは、ただマサキを焦らすように触り続けるだけで、愛撫以上の行為に及ぶ気配を見せない。
 思えば最初の牢での拘束された状態での性行為にしたってそうだ。結局、マサキは達する前に気を失ってしまった。先刻の兵士の目の前での性行為にしてもそう。達《い》くには達っても、それは一人相撲のようなもの。マサキはシュウに貫かれているあの強烈な快感の中で、自分の精を解き放ちたいのだ。
 夢の中でぐらい、自分の思うような展開になってくれてもいいだろうに。マサキは焦れに焦れた。別に手足を拘束されている訳ではないのだ。できることは色々あるだろう。それなのに、夢の中のマサキはその思い通りには動いてくれない。
 やけに明瞭りとその生暖かい感触を伝えてくる口付けが、夢の終わり。
 マサキはゆっくりと目を覚まして、そのシーツの感触が新しいものに変わっていることに気付いた。枕元にはきちんと折り畳まされたマサキの服。どのくらいの時間、自分は眠っていたのだろう? 部屋の中を見渡してみる。シュウの姿はない。変わらずにひとりきりの室内で、ベッドの中にいるマサキは裸のまま。そこかしこに紅斑が刻み付けられている身体がやけにさっぱりしたように感じられるのは、誰かがマサキの身体を拭いたからなのだろう。
 汗でべたついた肌の感触がない。誰がやったのか。シュウならまだしも、あの兵士だったら。
 マサキが兵士の立場だったら、こんな状態の敵兵の世話など気まずくてやりきれない。申し訳ないことに巻き込んでしまった。マサキは少しだけ罪悪感を覚えた。
 そうして暫く、ぼうっとしながら時間を過ごしたマサキは、何もすることのない状態を持て余し始めた。テレビを見てもいいのだろうか? 部屋の隅にあるテレビのリモートコントローラーを探す。ローテーブルの上にそのコントローラーを見付けたマサキは、ベッドに戻り、テレビのスイッチを入れた。
 見たことのない番組ばかりが映し出されるテレビ。バゴニア側にいるのだから当然か。マサキはそう思いながら適当にチャンネルを弄り、現在時刻を確認する。自治区での作戦展開から半日以上が経過していた。
 目的が自治区制圧以外にあったとして、その短期決戦を目論むなら、地方議会としては今が動きどきではある。マサキの状態についても話も伝わっているだろう。モニカとマサキ。ふたつの切り札を手に入れた彼らがもっと大きな野望を持ったとしてもマサキは驚かない。
「しかし、ねえな。これは報道規制が敷かれてるかもな」
 ニュース番組を眺めるに、バゴニア地方議会の自治区制圧についての話題は、そもそも取り上げれてすらいないようだった。バゴニア上層部との思惑とは異なるからか、それとも、出てきた物がとんでもなかったからか。
 シュウと|青銅の魔神《グランゾン》は、それだけ人々に脅威を感じさせる存在でもあるのだ。
 突然、扉が開いた。失礼する、と短く告げる声。
 思いがけず断りの言葉を聞いてしまったマサキは、おやと思った。これまでとは扱いが異なるようだ。何かあったのだろうか? 例の兵士は食事が乗ったトレーを片手に室内に足を踏み入れてくると、相変わらず服を着ていないマサキに、僅かばかり眉を顰めてみせた。
「上との話し合いの結果、少しの間、彼には現場で作戦指揮を取ってもらうこととなった。我々としては、まだ詳細な話を聞かせるほどには信用に足る相手ではないのでね」
 しかしその表情も一瞬のこと。兵士は手にしたトレーをローテーブルに置くと、相変わらずの面白味の感じられない表情で、マサキが身を置くベッドの脇に立ち、
「食事も取らせずに失礼した。さぞ腹が空いてることだろう。おかわりが必要なら言うといい。扉の向こうに兵士を配置してある。トイレやシャワーも必要なら言うがいい」
「どういった風の吹き回しだ。俺は捕虜じゃないのか」
「君は同時に我々の大事な賓客でもあるのだよ。風の魔装機神が操者、マサキ=アンドー」
 挫けてばかりいる場合ではなさそうだ。マサキは服を着て、長椅子に腰を下ろした。
「賓客と言われてもな。今の俺に人質以外の価値なんざないだろうよ」
「それはどうかな。君が我々に与してくれれば、その戦力増強効果は限りない。単機でも充分に一国の大隊と渡り合えるのが、君と風の魔装機神だ。我々の国家がどれだけ君に辛酸を舐めさせられたか、当事者たる君はわからないだろうがね」
 食事に口を付ける。香辛料の効いた野菜と肉のスープにパン。クルトンの乗ったサラダにヨーグルトで和えたフルーツまである。捕虜相手にしては上等な食事だ。あんたも座ったらどうだ? マサキは兵士に声を掛けた。話が長くなりそうな予感がする。
「私は立場上、君と馴れ合うような真似はできないのだよ。ところで、ひとつ聞きたいことがあるのだが、今、それを聞いてもいいだろうか」
「尋問だったらお断りだ。俺にだって答えられないことはある」
「そういった話ではないのだよ。君は彼とは元々そういった関係でもあったと聞いたが、それは事実かね?」
 突然のこと。心の準備ができないままに訊かれたマサキは面《おもて》を伏せた。羞恥に顔が熱くなる。気の利いた答えが思い浮かばない。その沈黙を肯定と受け取ったのだろう。兵士は続けた。
「君たちがそういった趣味の持ち主ならば、我々が口を挟む問題ではないのだが、私個人としてはおかしいと感じている部分がある。君の様子が尋常ではない。だったら、それは呪術的な何かの効果も含まれているのではないか。だから言うのだよ、マサキ=アンドー。もし君が我々の仲間となってくれるのであれば、我々は君の悩みを確実にひとつ取り除いてやれるだろう」
 そういうことか。マサキは納得した。マサキ自身が感じている精神のバランスを欠いた今の状態を、この兵士は何かの呪いをかけられた状態にあると考えたのだ。だからこそシュウを遠ざけ、だからこそそれを交渉のカードのひとつとして場に提示した。
「考えておいてくれたまえ。いい答えを期待している」
 それだけ言うと兵士は扉に向かった。そのドアノブに手を掛けながら、思い出したように彼は言った。
「では、失礼する。少しの間、ゆっくり身体を休めるがいい」
 
 
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