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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

DARKNESS MIND(2)
何度も言いますが、設定の割にやることはただエロです。本ッ当にただエロです。
そういうのが苦手な方は回れ右なさってくださいませ。
 
なんでこんな話思いついちゃったんでしょう、私。
敵に情けをかけられるマサキの巻。
<DARKNESS MIND>
 
 微睡みの中にいた。
 寝ているのにも関わらず、頭が半分覚醒している。半陰陽の最中にある頭の中を、ぼんやりとした思考が渦巻く。夢を見ているのか、それとも記憶を見ているのか判然《はっき》りとしない映像の羅列の中で、マサキは延々とシュウのことを考えていた。
 恐らくは、モニカが捕らえられたというのは事実なのだ。でなければ、いくらキナ臭い場所を選んで現れているような印象を受けるあの男でも、あんなたかだか地方議会が主導して編成した私設軍程度の軍勢に与《くみ》してみせはしないだろう。
 何かからの支配を極端に厭う男なのだ、シュウは。
 特に、他人に自分を利用されることを嫌う。
 巨大な組織に利益目的で与してみせることはあるかも知れない。その代わり貰えるものはきっちり貰う男だ。それは知識であるかも知れない。技術であるかも知れない。開発環境であるかも知れない。但し、高額な資金を積まれたからと言って首を縦に振るような男ではない。あくまで、見返りに得られる|モ《・》|ノ《・》に自分の興味が動くか否かが、意思決定の重要な因子《ファクター》であるようだ。マサキの良く知るシュウ=シラカワという男はそういう男だ。
 
 ――賭けをしましょう、マサキ。あなたが勝ったら、ひとつだけあなたの願いを叶えて差し上げます。その代わり、私が勝ったら、ひとつだけ私の願いを聞き入れてください。
 
 不意に頭の中に響き渡った声。さっきは上手く思い出せなかった記憶。マサキはこれだ、と思った。
 薄暗い安宿《モーテル》の一室で、傍から見れば逢引きに近い形で、マサキはシュウと逢った。それは、年単位という程に遠くはないけれども、数ヶ月という程に近くもない過去の出来事だった。
 ラングランを襲った戦禍が収まってから、マサキは時々、シュウに呼び出されては情報交換の名目で個人的に彼と会うようになった。それはマサキにとっては、受け取った情報の対価を求められるような一方的な関係でもあったけれども、シュウの持つ情報は質と精度の高い有益なものが多い。だからこそ、マサキは素直にその呼び出しに応じ続けたのだ。
 その際に、好奇心を言い訳に何度も肌を重ねた。
 最初は口付けだけだった。次第にそれは愛撫を伴うものとなり、最後には性行為を伴うものとなった。けれども、そこまでされてもマサキがシュウと会うのを止めなかったのは、シュウの持つ情報目的というよりも、単純にその行為の数々が、マサキに強烈な快楽を齎してくれるものばかりであったからだった。
 
 ――手首だけです。あなたがその両手首をベッドに繋がれて、動きを制限された状態で、どこまで快感を感じずにいられるのか。三十分でいい。耐え切れたら、私はあなたの願いをひとつ叶えて差し上げますよ。
 
 碌な願いではないだろうとは思った。ラングランの外交上のクリティカルな情報をひとつ寄越せとか、魔装機を駆って自分の個人的な戦いに付き合って欲しいといった。
 どちらも面倒ごとになるのが目に見えている。それでも、マサキがその賭けを受けたのは、三十分だったら充分に耐え切れると思ったからだった。その頃には、マサキはそれだけシュウとの行為に慣れを感じ始めていたのだ。
 丁度、欲しい情報があった時期でもあった。
 その程度の労力でその情報が手に入るのなら安い。マサキは情報入手の手間とリスクをシュウとの賭けと天秤にかけた結果、シュウの誘いに応じた方が早く安全に情報を入手できると判断したのだ。
 けれども世の中、そうは上手くことは進まない。両手首をパイプベットの冊に繋がれて、余裕綽綽でいられたのは最初の五分だけ。マサキは性行為を知った気になっていただけだということを強烈に思い知らされた。知らない愛撫。知らない快感。肌を滑る手が、強弱を付けて身体中を這う。たったそれだけのことなのに、どうしようもなく全身が反応してしまう。
 余計なことを考えようにも、それで楽になった気がするのは一瞬のこと。次の瞬間にはまた快楽に飲み込まれる。後は雪崩を打ったようなスピードだった。息継ぎをするのもままならないくらいに、口を吐く喘ぎ声……身体のそこかしこが与えられる快感に悦びの声を上げるようにわななく……だのにシュウの手は、肝心な場所を一度も触れてはいなかったのだ。
 
 ――私の勝ちですよ、マサキ。
 
 シュウの男性自身を埋められたマサキは、繋がったまま果てた。一度が済めば、二度。二度が済めば、三度。マサキの身体の自由がままならないのをいいことに、シュウはマサキを翻弄するように、何度も何度も思うがままにその身体を陵辱した。
 そしてその都度、マサキは絶頂に達しては、自分自身の精を放ったのだ。
 
 ――いいですか、マサキ。仮にこの先、あなたと私が何らかの事情で敵対することになったとします。私はその時に、あなたの身体に傷を付けるような真似をしたくない。今日のことはその為の準備ですよ。だから忘れなさい、マサキ。大丈夫、必要になったらあなたは思い出す。それが私からの“お願い”ですよ。
 
 そうだ。それで自分は――マサキは、はっと目を開くと、慌てて身体を起こした。背中を包み込んでいる感触が、牢の冷えた床や壁の感触でなくなっていることに気付いたからだった。
 広いサイズの白いベッドの上。服は着ている。マサキは辺りを見渡した。
「起きたのですね、マサキ」
 ベッドの脇、ガラス製天板のローテーブルを白いクッションの長椅子が挟み込んでいる。その長椅子のひとつに腰掛けて、何をするでもなくシュウはベッドを眺めていたようだった。「ここは……」シュウは指を口に当てた。どうやら、まだ自分たちは敵の所有する施設内部にいるらしい。
「私に与えられている部屋ですよ。暫くはここで生活しなければならないものでしてね。必要な家具を運び込んでもらったら、思ったよりも手狭な感じになってしまいましたが、牢で生活するよりは快適でしょう」
「何で俺を牢から出した? 碌なことにならないのはわかってるだろう、シュウ」
「その首輪、良くお似合いですよ」
 シュウに言われて、ようやく、何かが首周りを軽く締め付けているのに気付いたマサキは、ベッドの正面に置かれている姿見を見た。黒い革製と思しき首輪が嵌められている。鎖はない。
「触らない方がいいですよ。バックルの部分に通電性の発火装置、ベルト部分に火薬が仕込まれています。無理に外そうとしたら爆発しますよ、マサキ。
 ちなみに遠隔操作装置も付いています。スイッチを持っているのは私ではありませんから、あまり下手な動きはしないでくださいね、マサキ。私は巻き込まれるのは御免ですよ」
「だからか。簡単に出られるとは思っちゃいないがな」
 マサキは溜息を洩らすと室内を見回した。ベッドの左サイドにシュウが座っている長椅子とローテーブルのセット。その右手奥に扉がある。扉の右側に鉄製のキャビネット。書類をファイリングしているらしいフォルダが並んでいる。
 更に右側に白いクローゼット。そして姿見。角にはテレビ。ベッドの右脇に観葉植物を挟んで鉄柵の嵌った大きめの窓。カーテンはない。どうやらこの部屋はベッドを中心とした家具の配置をしているらしい。
 天井を見上げる。監視カメラの類もないようだ。もしかすると盗聴器があるのかも知れない。マサキは相変わらず、シュウとまともに話をするのもままならない状況にそう思った。
「それにしても、どうして俺がこの部屋に」
「聞かなくともわかることでしょう? できれば穏便にあなたに言うことを聞かせたいのですよ、私たちは。短期間で壊れてしまうのでは人質としての価値も、戦力としての魅力も半減してしまうでしょう? ですから自発的にこちらの仲間となってもらいます。私以外に誰がそれをできるでしょうね。さあ、来なさい、マサキ。きっちり躾けて差し上げます」
 シュウはマサキに向けて手を差し出してきた。マサキは躊躇ったものの、結局ベッドを下りた。「あなたが来ないなら、私がそちらに行きますよ」シュウがそう言ったからでもあったし、それに、そもそもシュウに近付かないことには詳しい話が聞けないのだ。
 詳しい話を聞かないことには、この状況を打破する方法も考え付かない。
 シュウの手を取って、導かれるがまま、マサキはその膝の上に乗った。耳朶を噛まれただけで快感が走る。ここに来てから身体がおかしい。マサキはそのことに気付き始めていた。
(室内に盗聴器の類は発見できませんでしたが、念の為にこの形で話を進めますよ、マサキ。おかしいと感じることが幾つかあるのでね。
 チカを通じて、セニアに呪術的な結界の解析を進めてもらえるよう頼んでいます。完了までどのくらい時間がかかるかはわかりません。準備が出来次第、モニカの救出に向かうとは伝え聞いていますが。場合によっては、あなたに彼らと対立する立場を演じてもらう必要が出るかも知れません。できますか、マサキ?)
(まあ、仕方がねえよな。やらなきゃモニカが危ないってんなら。セニアが悲しむ姿なんて見たくねえしな……けどな、おかしいじゃないか、シュウ。ずっと聞きたかったんだがな、地方議会の背後には何が潜んでいやがるんだ? やっていることの規模が自治区を治める地方の議会にしちゃ大き過ぎる)
(そこなのですよ。私たちで手が出せない結界が出てきている。バゴニア自体にそれだけの技術は)
 そこでシュウは言葉を切った。そしてマサキに口付けると、その身体をまさぐり始める。直後、扉の奥から足音が近付いてくるのが聞こえてきた。そして三度のノック音の後、シュウの返事を待たずに扉が開いた。
「あまり野暮な真似はしないでいただきたいものですね」
「これは失礼した。君が退屈しているんじゃないかと思ってね」
 一般兵とは明らかに異なる軍服姿の男は、顔色ひとつ変えずに長椅子の上で身体を合わせているマサキとシュウを真正面に見据えると、面白味のない声で言葉を吐いた。
 成程、こういうことか。マサキはシュウの言ったおかしなことの意味を悟った。この兵士は沈黙が長いと感じて、様子を見に来たに違いない。
 その瞬間、ぞくり、とマサキの身体を快感が駆け抜ける。自分の身体はどうなってしまっているのだろう? シュウの肩に顔を埋めながら、混乱甚だしいまま。マサキはその愛撫に素直に小さく声を上げた。
「何でしたら混ざりますか? その方が面白いでしょう」
「折角のお誘いを無碍にするようで申し訳ないが、私には妻子がいるのでね。それにしても……いや、何でもない。頼んでおいてなんだが、あんまり壊すような真似はしないでくれたまえ。上からのお達しだ。では、お邪魔した」
 
 
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