茫然と、それはこちらもまた青褪めた表情で、力なくシュウの部屋を後にしたモニカを、天井から見送ったチカが時間を置いて応接間に戻れば、街灯りに微かに照らし出されるソファの上で、シュウが身体を休めているのが見えた。
いつもならば、休むときであろうとも、きっちりと手足を収めてみせる几帳面な主人だったが、それは先ほどの邂逅が原因だっただろう。疲労困憊といった体で、身体を休めるために求めたのだろう。読みかけの書物を胸の上に置いて、片手をソファから崩した状態で横になっていた。
薄く開いた口唇からは、時折、呻きとも吐かない声が洩れ聴こえる……それはモニカには届いていないのだろう。チカがその部屋を覗いたとき、彼女は燈明の灯りの下、声を殺して静かに涙を零していた。
――辛い想いは一緒でしょうに。
そう思わなくもなかったが、それを武器にしようとしたモニカの、それは女だからこそのあさはかさだっただろう。いかに奔放なサフィーネとて、シュウに対しては忠実であってみせたというのに。
他人に対してはそうした性的な醜態を見せて憚らなかったサフィーネだったけれども、シュウにだけは冷酷に窘められるのが常だったからだろう。女の武器を使おうとはしなかったのだ。それを、婚姻を匂わせた上で使おうとしたモニカを、女性との性的な関係を嫌悪しているとも取れる態度が多々見受けられる性質を持つシュウがどうして許せよう。
――それでもあたくしは思ってしまうんですよ、ご主人様。わかりあえる関係の方が宜しいでしょうに。
所定の位置たる天井の梁の上に身を休め、眼下に、決して快い眠りではないだろう主人の姿を認めながら、チカは物思う。サフィーネにしても、モニカにしても年頃なのだ。盛りを過ぎてからでは益々責任を取れなくなるだろうに。ただ己の我欲の為に、使い続けんとするのは、決意してのこととはいえ、卑怯ではないかと。
――いえ、違いますね。わかりあえる関係でも宜しいでしょうに。
同じ過去を共有してきたからこそ、わかりあえる恥辱や汚点があるものなのだ……いかにあどけなくも能天気に映ったとしても、元王女。モニカに物煩いがないとどうして言いきれよう。その胸の内に、王家に対する憤懣を抱いていないとどうして言いきれよう。
ただの恋情だけで、肉親の情すら捨てるのは容易ではないと云うのに。
――何故に、茨の道ばかり求められるのでしょうね。あたくしのご主人様は。
それは相手に対して、紳士淑女として慎み深くあれと、行われる教育らしかった。伝聞調なのは、貴族の口がさない連中が、酒席で面白おかしく語って聞かせる噂話であるからだ。
チカは、直接シュウから王家にいた時代のそういった過去について耳にしたことはない。いかな無理難題であろうとも従わずにいられない使い魔としての性は、それでもチカに、納得づくでありたいと、その過去を求めさせたけれども、それは頑なに、そして厳然としてシュウの口を閉ざさせる話題だった。
あの頃は――と無邪気に口にできたのはモニカだけだろう。庶子として、一段低く扱われるのが当然だったテリウスは、やはりその生活に物思うところがあったのだろう。モニカに話を振られなければ、そうした話題を自ら口にしなかったし、シュウに至っては、口挟まず。ただ二人の他愛ない思い出話を耳に留めるだけだった。
だからこそ、それは王家の闇に足り得るのだ。
GWに打った総字数がですね、なんと8万字を超えててですね、だったら公開できない私小説なんかより、二次創作やってた方がよかったんじゃね？と思った今日……しかしプロットや、当時の小説を見付けたところで、先ず書き出しに悩んでしまっているという、いわゆる混ぜ混ぜこねこねモードに突入中なところで、非常に悩んでしまっています。
どうせパラレルやるんだったら、出来るだけ魔装機操者を出したいよね！と思ったところで、相変わらず、その、ワタクシの二次創作はオリキャラが出張ってくるというアレでナニな作品なので、誰を誰に置き換えるかだけでも大変な事態に……（いや、でも置き換えたらむしろギャグなのかなー(;´Д｀)あんまりそういう意味での汚れ役って（例えるなら後ろ暗い的な陰鬱なキャラクター）出て来ない作品ですよね、魔装って。いい意味でも悪い意味でも悪役が悪役として吹っ切っちゃってるというか、からっとしているというか……）
少なくともザッシュぐらいは出したい（愛情です！）んですが、それだとまた本懐を遂げられないと、私の中のザッシュの白河への殺意が増しそうというか、いい加減真面目にいい想いをさせてあげたいと思ったりもしなくもないんですが、そういう立ち位置が似合うキャラだから好きなのであって、やっぱり君は当て馬でいいや。というところで、本編に全く関係ない呟きはここまでにしておこうと思います。（ファングも出したいんだけどなー。ファング出すとアクション入れないとどうにもならなくなるんです、私の場合）
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