友人たちが駆け込みで次々と結婚してゆく中、どうしても募る思いを断ち切れずに、サイトを立ち上げることを決心した28歳の崖っぷち女子。@kyoさんはそういった子でした。
サイトを立ち上げて暫くして、何人かの仲間が出来ました。
毎日のようにシュウマサについて語り合う。とても楽しい時間でした。
それまでひとりでこそこそノートにシュウマサを書き付けるだけだった@kyoさんは、ネットの世界で初めて同じ世界にいる仲間に出会えたのです。
ところが段々空気がおかしくなっていきました。
AさんとBさんの仲が良くなくなったようなのです。
どうしたのだろう?@kyoさんは思いました。
けれども、Aさんに事情を尋ねてみても、別にと濁されるだけ。
そこまで聞かれたくない話なら詮索しまい。
割り切れない思いはありましたが、個人間の問題です。@kyoさんは黙ることにしました。
そのうち、@kyoさんはBさんからのメールが重荷になってきました。
仕事をしている間に送られてくる長文メール。
返信もそれなりに長くなります。
ひとりで気ままに生きている訳ではない@kyoさんは、仕事の後には家事がありました。
まだ元気だった@kyoさんは、17時に仕事を終えて、スーパーに買い物に行って帰宅。
掃除や洗濯を済ませ、食事の支度をしていました。
それが終わるのが19時頃。自由時間はそれからです。
そんな中で、長文のメールを一日に何通も遣り取りするのがしんどくなってきました。
返事を遅らせるということもしてみました。
そうすればもう少し負担が少なくなるかなと思ってのことでしたが、逆効果でした。
メールが溜まってゆくのです。
だから@kyoさんは、付き合いの距離感を変えられないか。
Bさん本人に云ってみることにしたのです。
これが良くなかったのでしょう。
@kyoさんの云い方が悪かったのかも知れません。Bさんは縁を切られると思ってしまったようでした。
そこから何を云ってもまともに話を聞いてくれないのです。
長文の、今で云う一方的なお気持ちメールが、短い時間の間に何通も届くのです。
@kyoさんは口が悪い人間なので、こう思いました。人力メルボムかよ。
延々鳴り続ける携帯電話。もう無理だ。@kyoさんは携帯電話を放置して病院に向かいました。
そうして点滴を打ってもらいました。中身はただの栄養剤ですが、身体は元気になります。
帰宅した@kyoさんは溜まったメールを見て考えました。
もう返事はすまい。こうしてBさんとの付き合いは終わりました。
その日から一週間ほど、サイトは凄いことになりました。
見覚えのないIPが幾つも大量にアクセスしてくるのです。
しかもそれだけなんです。大量のアクセスだけ。
勿論、それらのIPはサイトの中なんて見ちゃいません。
TOPページとblogにだけアクセスしてくるんです。
無言で。
この頃にはAさんはシュウマササイトを閉じてしまっていました。
書きかけの話も放置して、他のジャンルに行ってしまったのです。
そのAさんから連絡がありました。
Aさんはジャンルを変わるとそのジャンルでの人間関係を清算してしまう人でした。
サイトを閉じる際にあった連絡が最後の挨拶でした。
そのポリシーを曲げて、心配だからと@kyoさんに連絡をくれたのでした。
そこでBさんとの間に何があったのかを@kyoさんは遅まきながら知りました。
AさんはBさんから@kyoさんの悪口を聞かされていたのだそうです。
それだけはないのです。Aさんと一番仲の良いCさんの悪口も聞かされていたのだとか。
相手にしなくとも聞かせてくるから嫌になってしまった。Aさんはそう口にしました。
それを聞いて、@kyoさんも心当たるものがありました。
そう、Bさんは@kyoさんにAさんの悪口を云ってきたことがあったのです。
ただ@kyoさんはそういったことに全く興味がありません。
だから「人それぞれですからねー」で済ませたのです。
IPの謎も解けました。
恐らくBさんのネトゲ仲間だろうとのこと。
AさんもBさんと袂を分かったときにやられたのだそうです。
それを知った@kyoさんはとても悔しかったのです。
一番、新参の@kyoさんに良くしてくれた人でした。
@kyoさんのミュージックフォルダには、Aさんがくれた作業用BGM集が今も残っています。
Aさんがジャンルを去ったのはBさんの問題だけではありません。
@kyoさんはそれを本人の口から聞いています。きっと時間の問題だった。わかっています。
もしかするとその中には@kyoさんの問題も含まれていたかも知れません。
それでも@kyoさんは思ってしまうのです。
Bさんの件がなかったら、私たちはもう少しだけ、楽しい時間を一緒に過ごせたんじゃないかって。
だから@kyoさんは、ジャンルの人たちと距離を保つようになりました。
Aさんとの別れが、それだけ悲しかったからです。
楽しい時間はあっという間で、指の隙間から零れ落ちそうなぐらいにしか思い出を残してくれませんでした。その無邪気な時間がもっと続くと根拠もなく思っていた@kyoさんは、だからこそ、呆気なく瓦解してしまった世界に、だったら初めから何も得なければいいと考えてしまったのです。
長い長い@kyoさんの昔話はこれでおしまいです。
話は今に戻ります。
このジャンルが活況になったのを見た@kyoさんは、ちょっとだけ欲を持ってしまいました。
昔のように無邪気に楽しむのは難しいけれども、ほんの少し、皆様との距離を詰めてもいんじゃないかって。
気付けばAさんとの別れから二十年が過ぎていました。
もう@kyoさんは、どうかすると老害と思われるような年齢になっていました。だから厚かましく感じられないように、本当にちょっとだけ、そう考えたのです。
ジャンルにはいつの間にか色々な人が溢れていて、中には親子ほど年齢が違う人もいるような状況です。若かりし日の自分たちを思い出した@kyoさんは、だからそういった若い人たちの邪魔はしないようにと思いました。キラキラとした思い出をそうして歳の近い人たちで沢山作って欲しい。過去の思い出があるからこそ、今の場所に立っている@kyoさんはそう考えたのです。
だから@kyoさんは許せなかったのです。
Bさんの軽率な振る舞いが。
@kyoさんはちゃんと様子を窺っていました。もしかしたらBさんは、御自身のよろしくない部分を見詰め直し、心を入れ替えたかも知れません。でも、その考えは長くはもちませんでした。
当時から不評だった言動が治っていなかったのです。
だから@kyoさんは怒ったのです。
目には目を。歯には歯をです。一方的にメールを送られ続けたあの日のことを@kyoさんは忘れていません。あんな思いを、Bさんはどれだけの数の大事なこのジャンルの仲間にさせてきたのでしょう。だったら私だって一方的にお気持ち云ってもいいでしょ?そもそも、@kyoさんは、Bさんを相手に物を云い聞かせることがいかに無理なことかを知ってしまっているのです。
私が死ぬまでやります。のんびりと。
私に失うものはもうないのです。
あのキラキラとした若かりし日の思い出はもう二度と取り戻せないものなのですから。
@kyoさんというできたてほやほやのシュウマサ同人作家がいました。
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