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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

昔の話をしよう
カスハラの話を読む度に思い出す昔話。
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22,3歳の頃、買ったこんにゃくゼリーの最後の一個に釘のようなものが入っていたことがあったんですよ。流石にこれは他の購入客に被害があっては……と思って普段の不良品では電話をしないお客様センターに電話をしたんですね。で、調べられるなら流通製品を調べた方がいいのでは?と云って電話を終えたんですよ。

そしたら何故か営業さんが菓子折り持って謝罪に家に来てしまった。

そういうのが目的で電話をした訳ではなかったので、「菓子折りは受け取れない。そちらとしても同様のケースが他にあったらダメージなのだし、先ずは調査をきちんとして欲しい」ってことを訴えたんですけど、この営業さん話が通じないんですよ。
私と同い年の若い男の方だったんですけど、ずうっとタメ語で馴れ馴れしい。接客などで若い人相手の商売ではこういったやり方も増えてきてるってマスコミで取り上げられ始めた頃の話なので、「今は営業活動でもこんな感じなんかなあ」と思ったりもしたんですけど、「いやでもこの人、一応謝罪で家に来てるんだよね??それでこの態度はどうなの??」と、思い直した@kyoさん。営業さんへの話の通じなさも手伝って、「あなたはここに謝罪で来てるんですよね? それなのにその態度はどういうことなんです?」と、説教を始めてしまったんですよ。

ところがこれもあまり伝わってない感じなんですよ。何を云われているのかわからないって表情なんです。もしかしてこの人、場に相応しい態度があるってことを知らない???ってぐらい話が通じない。一生懸命云い訳をしようとしてはくるんですけど、それが悉くピントがずれてるんです。
で、もう仕方がないので、「話にならないので帰れ!」ってやってしまったんです。だってこっちは貴重な休日使ってるんですよ。噛み合わない話の為にこれ以上無駄な時間は使いたくないじゃないですか。だからもう何でもいいから話を終わりにしたかったんです。

そうしたら、彼が帰社をしたと思われるタイミングで、上司である課長さんからお電話をいただいたんですね。「本人から話を聞いたのですが、要領を得ないので、大変申し訳ないがどういったことがあったのかお聞かせいただけないでしょうか」と。
面倒臭かったですけど、あの営業さんが今後もあの調子で方々でやらかしたらって考えたら、これ誰にとっても良くない話じゃないですか。客は疲れる。メーカーはダメージを受ける。だから「謝罪に来た筈なのに延々タメ語で話をされた上に、私の話を理解してもらえない」と、正直にお話したんです。

課長さんは流石にご理解くださって、「それはお怒りもご尤も」と謝罪をくださったんですよ。

その時に少し話をさせて欲しいということでお話を伺ったんですけど、課長さんは私のクレームが上がって来た時点で、「このお客さんは他のお客さんと違う」と思ったんだそうです。

「昔はあなたのようなお客様も多かったんです。我が社や他のお客様のことを考えて連絡をくださる。だからお詫びの品を持って行っても、「当たり前のことをしただけだから」と、受け取ってはいただけなかった。けれども今は違う。取り敢えず謝罪の品を求める。そしてもらえれば満足する。今回の件はそういったことに慣れてしまった我々の責任です」

寂しい話ですよね。本当に寂しい話です。

「ですからあなたにお願いしたい。今回の件、我々はどういった対応を取ればいいのか。彼の件を含めてあなたに決断をお任せしたいのです」

えー?やめてよそんなの。私まだ22、3の小娘よ。社会経験もそんなにないのに適切な対処法なんて上げられる筈がないじゃない。と、固辞したんですけど課長さんも引かない。「このままだと我々は彼を首にせざるを得なくなる。それはあなたも望まないのではないか」などとまあ仰ってこられる。
それで覚悟を決めました。だったら私が三方丸く収めりゃいいんでしょ!と。
それには先ず詳しい話を聞かないといけないということで、件の営業さんについてどういった経緯で入社したのかお話を伺ったんです。彼は前歴も営業で三年ほどの経験があるそうです。即戦力期待の中途採用だそう。三年も続けられたということは、あのやり方で通る業界にいた可能性が高いと考えられます。

私がお願いしたことは大きく分けてふたつです。

ひとつは例の営業さんについて。彼は私が説教している時の態度からして、恐らくは場に相応しい振る舞い方があるということを知らないと考えられます。三年間の営業経験からしても、そのやり方しか知らない可能性が高いです。そこで、「御社が可能だと考えられるのであれば、彼には一度時間をかけて社員教育を施してあげて欲しい。その上でやはり使い物にならないというのであれば、首にしてしまっても構わない」とお願いしました。
ふたつめは異物が混入した製品の扱いについて。今回の異物は釘のようなもの。先端が尖った金属片です。普通の異物とは異なり、口の中に入ってしまったら大惨事になるものです。万が一を考えると調査が必要なことであるのは明白です。そこで「これに関しては可能な限りの調査をお願いしたい。そして再発防止に努めて欲しい」とお願いしました。こちらに関しては、課長さんから「経過に関して必ずご報告させていただきます」との言葉をいただきました。

これで肩の荷もおりてひと安心。急ぎ対応してくれれば、これ以上の被害も出ないでしょ。と、やっと休日モードに戻れた@kyoさん。時刻は夕方近く。こんにゃくゼリーを食べて電話をしたのが午前中。なんと目まぐるしい一日であったことか!

と、思ってたら、夜に今度は部長さんと課長さんが揃ってご来訪しちゃったんですよ……

何でも課長さんがことの経緯を報告したところ、部長さんが「未だにそんなお客様がおられるのか!これはもう是非お礼を云いにいかねばならない!」となってしまったらしく、高級酒と高級菓子折りを持ってのご来訪。いや、もういいって……。
いやね、あのですね、私からすればやって当たり前のことをしただけなんですよ。何でそれでこんな大事になるのか意味がわからない。いや、それだけ世の中自分本位な厚かましい人間が増えたってことなんですけど、それとこれとは話が別。やって当たり前のことをしただけで、こんな大層なものをいただく訳には行かないんです。

ところがもーう、「受け取っていただけるまで帰りません!」と、ふたり揃って玄関から動かない。

仕方がないので受け取りました。これが謝罪の品でしたら絶対に突っ返すところだったんですけど、そうではなくお礼の品ということですので、そういうことでしたら謹んでお気持ちお受け取りしますと……。部長さんが「もっとご年配の方かと思っていたのですが、こんなにお若い方だったとは!」と仰っていたのが印象的でした。成程、それで高級酒……。(ちなみに家は酒が駄目な家系ですので、このお酒は料理に使われました。勿体ない……)

その後の経過については二週間ほど経ってから課長さんからご報告をいただきました。

卸した店から当該製品のロットナンバーが確定し、流通経路が判明。どこの工場で起こったトラブルか明確になったようです。それを受けて、異物が混入した可能性のあるロットナンバーの製品を全数引き上げ、検品。幸い、他の商品には問題がなかったとのことで、本当に安心しました。
営業さんについては研修の真っ最中。私が何故怒ったのかについては部長さんから丁寧な説明を受けたようで(この点、私の言葉が足りなかったのだと反省)、きちんと理解いただけたよう。どうやら前職で本当にああいった対応の仕方しか教わってなかったらしく(ちょっと怪しい業界ぽかった)、今回の件は目から鱗だったようです。根は素直な青年みたいで、「チャンスをいただけたのですから頑張ります!」と毎日一生懸命、課長についてもらって研修に励んでいるのだそう。顔つきが変わったとは課長さんの弁。

「ところで、今回の件を社長に話しましたところ、社長がいたく感激なさってですね、社内報にてご紹介をさせいただいて……」

あんたら何してんのーッ!?

と、綺麗にオチが付いたところで話を終わりにしようかと思ったんですけど、まあ締めないことにはこの話なんでしたのかって話になってしまうので締めようと思うのですが、要はこういうことなんですよね。今の世の中のトラブルの根っこって。時代が移り変わるに連れて、日本人の美徳だった義理や人情というものは本当に減ってしまっています。自分本位。自分が良ければ他はいい。その芽は既に四半世紀以上も昔にあったんです。

ですから今はもっとそういった人たちは増えたことでしょう。欧米の価値観の流入だったり、私たちの世代の躾の仕方やされ方の問題でもありますけど、その結果が行き着いた未来はこうしたものであったんだなあと思う次第です。


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